目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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101.炎の継子は見送りたい

 煉獄さんと共に過ごしている屋敷に戻り、「うまい!」と「わっしょい!」が響く賑やかな夕餉を終え、数刻。

 炭治郎と禰豆子の寝かしつけをすませた私は、一人、屋敷の縁側から月夜を眺めていた。

 眠れないから眺めているわけじゃない。ちゃんとした用事があるから、私は今ここにいる。

 

「む?優緋。まだ眠らないのか?」

 

「ええ。まぁ、少ししたらちゃんと眠りますよ。明日もありますからね。」

 

 その用事とは、ここの家主である煉獄さんに関係するものだ。まぁ、ただ単に、彼が今から夜の警備に行くから、それを見送ろうというものなんだけど。

 

「そうか!ならば安心だな!」

 

「煉獄さん。一応もう炭治郎たちが寝てるので声は抑えてください。」

 

「む!?それはすまなかった……!」

 

 こちらの指摘を聞いて、極力大きい声を出さないように、言葉を紡いだ煉獄さんに苦笑いを返す。

 相変わらず元気な人だ。でも、本来ならば、この姿を見ることはもうなかったのだと思うと、なんだか安心すると同時に、泣きたくなってくる。

 その泣きたいという感情は、嬉しさからのものなのかそれとも……いや、考えるのはよそう。

 もう、この世界は私の知る世界じゃなくなったのだから、元となる物語に関する知識は、一時的に蓋をしなくては……。

 

「今から警備でしたよね?お見送りします。」

 

「それは嬉しい申し出だが、先程優緋が言った通り、明日のこともある。見送りはここまででいいから、もう寝なさい。」

 

「いいえ、見送ります。」

 

「寝なさい。」

 

「絶対見送ります。」

 

 ……なんか、似たようなやりとりを籠のおじさんとしたな……なんて少しだけ思いながらも、見回りに向かう煉獄さんを見送ると口にする。

 煉獄さんは私に早く寝て欲しいみたいだけど、なんか見送らないと落ち着かないので、とりあえず粘れば、煉獄さんは苦笑いを返してきた。

 「君はたまに絶対譲らない時があるな。」と、頭を撫でてくる。その大きく優しい手に安心して、思わずウトウトしかけたが、なんとかそれを堪えて、ゆっくりと立ち上がる。

 すると、煉獄さんは、微笑みを浮かべながら廊下を歩き始めた。

 それについていけば、煉獄さんから一瞬だけ視線を向けられる。

 しかし、すぐに彼は前を向いて、玄関のほうへと向かう廊下を、ゆっくりとした足取りで歩み進めていくのだった。

 

 

 

 背後から自分よりも小さな足音が聞こえてくるのを耳にしながら、炎柱、煉獄杏寿郎は、夜の警備に向かうために、今いる屋敷の玄関の方へと向かう廊下をゆっくり歩いていく。

 たまに背後を確認するように目を向ければ、赤い瞳と視線が()()った。

 その瞬間、どこか拗ねたような表情を向けられる。

 寝るように言われたように感じたのだろうか?どことなく子供っぽいその姿に、小さく彼は笑い声を漏らした。

 

 ─────……父上に対して物申した時は、あのように凛とした……どこか母上と似たような雰囲気を纏っていたというのに、今の優緋は、年相応の……いや、どこか少しだけ幼い雰囲気があるな。

 

 例えるとしたら、彼女について回り、時には甘えている竈門少年と竈門少女のような、そんな雰囲気があるような気がする。

 やはり、この子たちは姉弟姉妹なんだな、と思わされるような一面。普段はしっかりものであろうとする少女の、年相応とも取れる場面に、僅かながらに愛らしさを感じた。

 

 どこか常に張り詰め、何かを抱えているような様子があり、そこそこ共に過ごすことが長くなった自分に対しても、どことなく距離を置いて、あまり頼る様子を見せない……大人びた雰囲気とはどこか違い、少しだけなんらかの危うさを感じるようなことが多い少女だったが、僅かながらでもわがままを言ってもらえるくらいには、距離も近くなっていたようだ。

 

 少しだけ嬉しく思う。だが、その反面として、やはりまだ距離があると感じてしまうのも否めない。

 まるで、今の自分たちのような、三歩か四歩ほど離れている距離。

 その距離が無くならない限り、彼女はいろいろと抱え込み続けるのかもしれない。

 ほんの少し、そんなことを感じた煉獄は、どうすれば距離をもう少し近づけることができるだろうかと考える。

 なんとなくだが、誰か一人にでも頼れるようにならなくては、この少女は重荷を背負いすぎて、いつか壊れてしまうのではないかと感じていた。

 そうなる前に、少しでも抱えてるものを、自分だけでも支えてやらなくては……どこか、使命感にも似たようなものを抱く。

 

「む!玄関に着いたな!」

 

 どうしたものかと頭を悩ませているうちに、煉獄と優緋の二人は、玄関先にたどり着いた。

 これは、少しだけ考え事はお預けか、と少しだけがっかりしながらも、履き物を変えて外に出る。

 それに続くようにして、優緋も草履を履き、玄関先まで足を運んだ。

 

「では、行ってくる!」

 

「はい。お気をつけて。煉獄さんの無事の帰りをお待ちしております。」

 

「ああ!ちゃんと帰ってくるから、優緋はもう寝るんだぞ!」

 

「わかってますよ。」

 

「それならばいい!」

 

 一言二言交わしたのち、煉獄は優緋に背中を向けて、屋敷の門を潜り抜ける。

 対する優緋は、そんな煉獄の姿が見えなくなるまで、静かに頭を下げていた。

 しかし、彼がいなくなったことがわかれば、すぐに頭を上げて、屋敷の中へと戻っていく。

 

 煉獄が戻ってくるまでは、一部の隠と自分たちのみだからと、夜番の隠に彼が戻ってきたら、鍵を開けるようにお願いをした彼女は、明日に備えて眠るのだった。

 

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