目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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106.突入準備 其ノ壱

「……で?どこ行くんだオッさん。」

 

「伊之助。流石に宇髄さんはまだオッさんって年齢じゃないと思うんだけど?」

 

 蝶屋敷から出発してしばらくした頃。歩進める道の途中で、伊之助が宇髄さんに声をかける。

 私は、伊之助のオッさん発言に対して少しだけ指摘を入れたのち、宇髄さんに目を向けた。

 煉獄さんと離れる時にも聞いたし、原作を知っているからわかるけど、話はちゃんと聞かないといけないからね。

 

「日本一、色と欲に塗れたド派手な場所。鬼の棲む(・・・・)遊郭だよ。」

 

 ……振り向きながらイケメン顔でこう言われると、何かシュールだと思ったのは私だけだろうか?

 いや、内容は知ってますよ?言われる言葉もわかってたし、その時の体勢もわかってたけどさ。うん。やっぱりシュールだ。

 

「いいか?俺は神だ!お前ら……いや、優緋はないな。実力もあるし、階級も高い。ってわけでお前ら二人は塵だ!まず最初はそれをしっかりと頭に叩き込め!!ねじ込め!!俺が犬になれと言ったら犬になり、猿になれと言ったら猿になれ!!猫背で揉み手をしながら俺の機嫌を常に伺い、全身全霊でへつらうのだ!!そして、もう一度言う。俺は神だ!!」

 

 …………これ、何て返答したらいいわけ?

 言葉を失って無言になる。善逸が言ってた通り、確かにこれはやべぇ奴扱いしたくなるわ。

 見た目はいいんだよ?それなりにこっちも気遣ってくれるし、頼り甲斐はあるんだよ?でも、言動が小学生……いや、何でもない。

 

「神なんですか……。」

 

 何て言ったらいいのかわからなくて、黙っておこうと思ったんだけど、神発言に対してつい呟いてしまう。

 ツッコミはしっかりと口にしないとね……。

 

「その通り!俺は、派手を司る神……祭りの神だ!!」

 

「……………。」

 

 何言ってんだこいつって感想が出そうになったが、何とか飲み込む。上官であり年上のこの人に、そんな口叩いたら失礼だろうから。

 ものすっごくツッコミたくなったけどな……。

 

「俺は山の王だ。よろしくな祭りの神。」

 

「…………伊之助、張り合うな。」

 

「あで!!」

 

 思わずチョップを伊之助の頭にしてしまった。だってややこしくなるっつーか、うん、頭痛くなる。原作読んでた時は笑えたんだけどね。

 いざ、こんな風に張り合われると流石にドン引きするし、ツッコミたくなる。

 

「何言ってんだお前…。気持ち悪い奴だな。」

 

 ─────……いや、アンタも同類だよ!!

 

 内心で声を大にしてツッコむ。遊郭編に入る前の箸休めのギャグパート。物語としては笑えるけど、当事者になると笑いよりドン引きしたくなる感情の方が上回る。

 善逸からも現状に対してドン引きしてる匂いがする。

 伊之助は気持ち悪いと言われたからか、怒りの匂いがしてる。

 

「花街までの道のりの途中に、藤の家があるから、そこで 準備を整える(・・・・・・)。ついて来い。」

 

 何か少しだけ頭が痛くなってきたわ……なんて考えていると、宇髄さんがくるりと踵を返した。

 シャラ…という飾りの音が一瞬だけ聞こえ、辺りに僅かな風だけを残して彼は姿を消す。

 いや、正確には姿を消していない。足音を立てることなく、その場から走り去ったんだ。

 彼の動きは目で追えていた。かなりの速さだったけど、確かに捉えることはできた。

 これは、痣を発現させた副作用の一つなんだろうか?透き通る世界は使っていないはずなんだけど。

 

 そんなことを思いながら、私は自分の足に力を加え、背に背負っている箱を軽く叩く。今から移動するから……その意味を込めて。

 箱の中にいる二人は、合図の意味をすぐに理解したのか、互いを守るようにくっついたらしい。動かない様子が確認できた。

 ありがとう、と小さく呟き、私は炎の呼吸特有の呼吸をその場で使う。

 多分、これなら宇髄さんに追いつけるはず……。炎の呼吸なら、移動速度もかなり上がるし。

 どうしても足腰の強化が必要だったからね、これ。

 

 炎の呼吸の壱ノ型。不知火を使う要領で地面を強く蹴り上げる。すると、大きな爆音のような音が辺りに響き、かなり離れていた宇髄さんとの距離を一気に縮めることができた。

 

ええええ!?優緋ちゃん速すぎない!?

 

すげぇ!!どうやったんだあれ!?俺もやりてぇ!!

 

 かなり離れた位置から、善逸と伊之助の声が聞こえてくる。軽く背後を振り向いてみると、胡麻粒くらいにしか見えないくらい離れていた。

 

「よく追いついたな。派手に驚いたぜ。」

 

「炎の呼吸、意外と足の力がいるんで、使いこなすためには強化が必要だったんです。だから、鍛えたんですけど……何か、副作用なのか、足も速くなっちゃいました……。」

 

「あー……まぁ、炎の呼吸はな……。確かに、ありゃ足と腰が大事だよな……。煉獄とは何回か一緒に任務に行ったことがあるが、あの時も派手に速かったしな、あいつ。」

 

「でしょうね。無限列車の時も、かなり後方の車両から一瞬にして私がいた前方車両に来ましたし、そのあとも一瞬にしてまた後方車両の方へと向かわれましたから。」

 

「なるほどね。それを身につけちまうたぁ、やるじゃねぇか。」

 

「お褒めに与り光栄です。……が、私なんてまだまだですよ。」

 

「地味に謙遜すんじゃねぇってさっきも言っただろ。ったく……四ヶ月そこらでよくそこまで身につけることができたもんだ。煉獄が継子にしてなかったら俺が引き取りたかったぜ。」

 

「……残念ながら、私は煉獄さんの継子なのです。でも、ちょっと気にはなりますね。音柱である宇髄さんの戦い方がどんなものか。」

 

「今度教えてやろうか?」

 

「気が向いたら引き受けさせていただきますね。まぁ、炎柱の継子を辞めるつもりはありませんが。」

 

 後方で慌てて私と宇髄さんを追いかけ始める善逸と伊之助を確認しながらも、近くなったことにより言葉を交わせる位置にいる宇髄さんと話しながら足を動かすのだった。

 

 


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