目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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107.突入準備 其ノ弐

 ………再び時は経ち、宇髄さんが口にしていた藤の家にたどり着く。

 

「ハァ……ハァ……ッ……優緋ちゃ……はやすぎ……っ」

 

「ゼェ……ゼェ……ッ……優緋……っ……てめ……どうやってそんな強くなって……っ」

 

「……流石に飛ばしすぎた?」

 

「いや、こいつらの体力が無さすぎるだけだろ。」

 

「そうなんでしょうか……?」

 

「普通は、あれくらい走っただけじゃ疲れねーもんさ。基礎体力無さすぎだろ。」

 

「おれ……らを……っ……アンタらと……一緒にすんな……っ」

 

「ゼェ……ハァ……ゼェ……ハァ……ッ」

 

 特に体力の消費をしていない私と宇髄さんの前で、善逸と伊之助の二人は息を切らして項垂れる。

 なんとか呼吸を整えようとしてるみたいだけど……なんか時間かかりそうだな……。

 やっぱ、私、体力が桁違いに上がり過ぎたっぽい。

 炎の呼吸と日の呼吸……両方を問題なく使えるように、煉獄さんに鍛え上げられたからかな……。

 

「さて……じゃあ、準備をするとしますか。」

 

 なんて考えていると、宇髄さんが藤の家の扉を叩く。すると、そこかやこの藤の家の家主と、その家族が姿を現し、私たちの姿を見るなり、

家の中へと案内してくれた。

 お邪魔します、と一言声をかけて家の中に入る。宇髄さんはすでに家主へといろいろ指示を出していた。

 

「すぐに用意いたします。待つ間、お茶でも飲んでゆっくりしてください。」

 

 宇髄さんがあれこれ指示を出し終えた頃、家主さんが待つ間、お茶でも飲んでくださいと一言告げて、その場から去って行く。

 入れ替わるようにやってきた家主さんの奥さんは、人数分のお茶と、そのお茶請けであるお煎餅を用意して、頭を下げて立ち去っていった。

そのお茶請けであるお煎餅を用意して、頭を下げて立ち去っていった。

 

「準備をするまでもうちょい時間がかかるみたいだからな。今のうちに簡潔にどうするべきか指示を出す。いいか?遊郭に潜入したら、まず俺の嫁を探せ。俺も鬼の情報を探るから。」

 

 それを確認した宇髄さんが、これからのことに対する指示を口にする。

 その瞬間、辺りに落ちる静寂。私のお茶を飲む音と、お煎餅を食べまくる伊之助の咀嚼音だけがこだまする。

 

「とんでもねぇ話だ!!」

 

「あ゛あ?」

 

「ふざけないで下さい!!自分の個人的な嫁探しに部下を使うとは!!」

 

「はあ!?何勘違いしてやがる!!」

 

 その静寂を破ったのは善逸だった。思わず笑いそうになる。確かに、宇髄さんの今の言葉だと勘違いが生まれるのも無理はない。

 原作を知ってるから、彼が口にした嫁というのが、すでに娶っている三人の女性であることだとわかるけど、知らなかったら彼の嫁=結婚したいから女性を探して来いに聞こえなくもないからな。

 私も、次のページを見るまではそんな認識だった。

 

「いいや、言わせてもらおう!!アンタみたいな奇妙奇天烈な奴はモテないでしょうとも!!たがしかし!!鬼殺隊員である俺たちをアンタ、嫁が欲しいからって!!」

 

「馬ァ鹿かテメェ!!俺の嫁が遊郭に潜入して鬼の情報収集に励んでたんだよ!!定期連絡が途絶えたから俺も行くんだっての!!」

 

「………そういう妄想をしてらっしゃるんでしょ?」

 

クソガキが!!

 

「ングフッ!!ゲホッゲホッ!!やば……変なところにお茶入った……!!」

 

「おいおい、大丈夫か優緋……。」

 

 何とか吹き出さないように堪えたら、飲んでいたお茶が変なところに入り、咽せてしまう。

 宇髄さんから呆れの匂いがした。でも、背中はさすってくれるらしい。

 

「何やってんだよ。」

 

「すみません。」

 

「ったく。気をつけろよ。」

 

 頭を撫でられ、気をつけろと注意される。謝罪をしながらわかりましたと一言告げれば、微笑み返された。

 うん。やっぱり宇髄さんはイケメンだ。これは女性隊員にモテる。まぁ、たまにちょっと残念なイケメン感があるけど。

 

「ほら。これが鴉経由で届いた手紙だ。嘘でも妄想でも何でもねぇよ。」

 

「ぎゃっ!?」

 

 なんて、呑気なことを考えていると、どこから取り出したのか、大量の手紙の束を善逸に投げつけた。

 投げつけられた善逸は、顔面でその束を受け止め、ひっくり返る。

 

「いっぱいありますね。」

 

 一枚一枚丁寧だけど、どこか違う書き癖がある手紙に目を通しながらポツリ。

 漫画を見るだけじゃよくわからなかったけど、こんなにいっぱいあったんだ。

 

「ああ。三人いるからな。嫁。」

 

「なるほど。俗に言う一夫多妻制って奴ですか。」

 

「そうだな。俺が生まれた里の風習でな。」

 

「へぇ……。宇髄さんのような素敵な方を旦那様にもらったお嫁さんたちは、きっと幸せなんでしょうね。」

 

「当然よ。女を幸せにしてやれないほど、俺は落ちぶれてねぇさ。お前も来るか?」

 

「冗談もほどほどになさってください。」

 

「バレたか。」

 

 宇髄さんと軽口を叩きながら、床に散らばる手紙をまとめる。にしても、鬼についてあまり書かれてないな……。

 いや、それと思わしき存在に目星をつけることはできた、という内容がちらほらあるから、完全に情報が掴めていないわけではない……か。

 

「三人!?嫁…さ…三!?テメッ…テメェ!!風習だとしても何で三人もいんだよざっけんなよ!!!優緋ちゃんに近づくn…おごぇっ」

 

「………何か文句あるか?」

 

「……痛そう。」

 

 騒いだ善逸が宇髄さんの腹パンで撃沈した。痛そうだなって感想を素直に口にしながら、手紙を束ね直して、宇髄さんに返却する。

 

「おう。丁寧にまとめてくれてありがとな。」

 

「これくらいは当然です。にしても、手紙に一通り目を通しましたが、どれにも来る時は極力目立たないように、と念を押す言葉が綴られてますね。具体的にどうするか教えてもらっても?」

 

「そりゃまあ変装よ。不本意だが地味にな。お前らにはあることをして(・・・・・・・)潜入してもらう。俺の嫁は三人共優秀な女忍者、くの一だ。花街は鬼が潜む絶好の場所だと俺は思ってたが、以前に俺が客として潜入した時、鬼の尻尾は掴めなかった。だから、客よりももっと内側(・・・・・)に入ってもらったわけだ。すでに怪しい店は三つに絞っているから、お前らにはそこで俺の嫁を探して情報を得る。」

 

「ん?私もですか?」

 

「ああ。本命の潜入方法は、煉獄からの注意もあるし、させるつもりはないが、多少なりとも情報を得る方法は他にもある。それなら、変な奴に絡まれる頻度も少ないだろうし、使えるだろうと思ってるから、優緋にはこっちの方法を使ってもらう。」

 

「はぁ……わかりました……。」

 

 なんか、明らかに私の知らない展開に入りそうな気がする。いや、それは覚悟してたけどさ。

 本命……って言うのは、間違いなく遊女の見習いとして入る方法だと思うけど、もう一つの方法……ってなんだ……?

 

「潜入先の遊郭は『ときと屋』、『荻本屋』、『京極屋』の三つ。集めて欲しい情報は、ときと屋の『須磨』。荻本屋の『まきを』。京極屋の『雛鶴』だ。」

 

 本命じゃない潜入方法というものがなかなか思い付かず、首を傾げていると、宇髄さんからどこで誰の情報を集めて欲しいのかを告げられる。

 となると、だ。多分、そろそろ伊之助の地雷発言が入るはず……。

 

「嫁もう死んでんじゃねえの?ごふ!?」

 

「あ……」

 

 ……はい、見事なまでの腹パンが入りました。伊之助はノックダウンです。

 

「………何かすみません。うちの同期が。」

 

「いや、お前が謝ることじゃねぇから気にすんな。」

 

 いろいろと失礼なことをしたような気もしなくもない、と思いながら、宇髄さんに謝罪の言葉をかける。

 彼は気にするなって言ってくれてるけど、匂いですごく怒ってるのがわかった。

 その怒りの矛先は私に対してじゃないのもわかってるけど。

 

「ご入用の物をお持ち致しました。」

 

「どうも。」

 

 伸びてる善逸と伊之助を見つめながら、あとで二人にも謝罪させとこうか……と考えていると、藤の家の家主さんたちが、何かを持って、部屋に戻ってきた。

 多分、あの中には化粧道具とかが入ってるんだろうな。

 

「とりあえずまずは優緋から始めるか。」

 

「ん?ああ、変装ですね。わかりました。」

 

「おう。」

 

 そんなことを思いながら、私は宇髄さんの指示に従って行く。

 遊郭突入まで、あと数時間。

 

 

 

 


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