目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
あれからしばらくして、とりあえず『ときと屋』に客として足を運んだ私は、少しだけ情報収集を行なっていた。
と、言っても、客である以上、お店の中で働いている人たちと話すタイミングがなかなか掴めなくて、収穫するのは難しいのだけど。
「ああ、すみません。少しいいですか?」
「はい?」
「お忙しい中申し訳ないのですが、少しだけお話ができたらと思いまして。」
まぁ、何とかたまに隙をついて廊下を行ったり来たりしている人たちに声をかけることができるから、全くタイミングがないというわけでもないから、マシな方か……。
「実は、この『ときと屋』に生き別れの姉が買われたと言う噂を聞きまして……。そのことを調べにきたんですが。」
「生き別れのお姉さん……ですか?」
「はい。須磨という名前の姉なのですが、何か知ってることはありませんか?」
「……すみません、少しわからなくて。」
「そうですか……。ありがとうございます。」
「いいえ。こちらこそ、お力になれず申し訳ありません。」
だからと言って、簡単に情報が聞けるものでもないけど。うーん……もうどこに行ったらいるかわかってるし、直接そっちに行くべきか?いや、無理だな。
もし、原作通り、狂いがまだないのであれば、須磨さんはすでに吉原の地下にある空間に囚われている状態だ。あそこは、伊之助や宇髄さんだからこそ入り込むことができる場所。宇髄さんのように、特殊な火薬を作ることができればすぐにでも向かえるわけなんだけど、残念ながら、私は扱えない。
時間が遅れていたら……と探してみてはいるけど、空振りばかり。
どっちにしろ、行動は慎重に取らなくてはならない。だって、ヘマをして堕姫ちゃんたちにバレるわけにもいかないし……。
「………どうしたものか……。」
うーん……と首を傾げながら、どのように行動を取ろうかと頭を動かす。
「優緋。ちょっとこっち来い。」
「………ん?」
不意に、私の名前が呼ばれる。驚いて辺りを見渡せば、屋根の上から宇髄さんが手招きをしていた。
それに従い、お店を出て人通りの少ない場所へと足を運べば、私の意図を汲み取っていたらしい宇髄さんが、屋根の上から手を差し伸べてくれた。
すぐにその手に自身の手を伸ばして飛べば、伸ばしていた方の手を宇髄さんに掴まれ、そのまま屋根の上に引き上げられた。
「……力持ちですね。」
「当然よ。柱を舐めんなってな。」
いや、まぁ、そうだけど。私の体重に木箱と竈門兄妹の体重が合わさってるから相当な重さなはずなんだけど?
何で軽々と引っ張り上げた上、そのまま抱えて屋根をぴょんぴょん飛び移れんのさ……。
「何の用でしょうか?」
「ああ。ちょいとお前の意見を聞きたくてな。」
「意見?」
「………ここにいる鬼。お前は、どう捉えてる?」
「え?」
なんて考えていると、宇髄さんが私を呼び出した理由を口にした。どうやら、鬼についての意見を聞きたかったようだ。
「実は、ずっと見張ってるんだが、どうも煙に巻かれているように気配がはっきりしなくてな……。嫌ぁな気配はあるんだが……。しかも尻尾もなかなか出さねぇし、もしかしたら……って、厄介な考えが頭を過って仕方ない。そこで、これまで下弦二体、および、上弦一体と接触したことがある優緋に意見が聞きたい。お前から見てどう思う?」
そう言われて少しだけ考える。軽く嗅覚を利用して、この場にある空気の匂いを確かめた。
……炭治郎が言っていた濁った匂い……確かに、この街にはその匂いが充満している。
いろんな匂いが混ざってるからかとも思ったけど、何か違う気もするんだよね。
あと、うん。多分これ、堕姫ちゃんの匂いだ。ここから離れてる位置にある京極屋の方から、甘くて、だけど、どこか尖ってる匂いがある。
原作の知識もあるからか、かなり強く感じるんだよなぁ……。
「私の私見ですが、多分、上弦が隠れているんじゃないかなとは思います。怪しいのは、やっぱり『京極屋』かな……。やけに甘ったるくて、だけど、妙な刺激臭を感じます。」
「『京極屋』……か……。」
「はい。」
一瞬、誤魔化そうかと思ったけどやめた。だって、もう私は原作に囚われないようにしようって思ってるから。
早めに対処できるなら、さっさと対処した方がいい。
「ありがとよ。じゃあ、『京極屋』の方を中心に探ってみるか。」
「そうですね。」
「ああ、優緋。お前はもう少し俺の嫁たちの捜索も続けてくれ。もし、優緋の判断通り、上弦がいるのだとしたら、見つかってしまった可能性もある。だから、まずはそっちの方の安全を優先に動き、可能であれば鬼の探りを行なってくれ。それと、これをいくつか預けておく。余裕があったら切見世の方も探ってもらえるか?」
「切見世?」
「ああ。客がつかなくなったり、病にかかった遊女が送られる最下級の女郎屋だ。離脱するために、そっちに行くって判断をとってる嫁もいるかもしれないから、余裕が有れば向かってくれ。余裕がなけりゃ、そのまま、遊郭内を探すんだ。」
「わかりました。」
「よし。何かあったら、俺のところの鎹鴉……虹丸をお前の方に飛ばす。確認次第、虹丸の案内に従って加勢してくれ。」
宇髄さんの指示に従い、小さく頷けば、彼は笑みを浮かべたのち、私の頭を撫でてきた。
「無茶だけはすんじゃねぇぞ。絶対にな。」
「それくらいわかってますってば。……もし、何かわかればまた伝えにきます。」
「ああ。次は、定期連絡の時にな。」
そこまで話した私と宇髄さんは、すぐにそれぞれやるべきことをこなすために離れる。
……堕姫ちゃんが潜伏してる場所、教えちゃったけど、いい方に転がってくれたらいいな……。