目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「だーかーらー!!俺んとこに鬼がいたんだよ!!こういう奴がいるんだって、こういうのが!!」
客として宇髄さんのお嫁さんたちの聞き込みを始めて、約二日目。夜の時間も終わり、日中に設けられた定期連絡の時間。
私の目の前では伊之助が体全体を使って、自分のところに鬼がいたんだと訴えて来ている。
「あー……え〜っと……。」
「こうか!?これならわかるか!?」
「うん、とりあえず一旦落ち着け?あと、非常に申し訳ないけど、ちょっとよくわからない。」
「はぁ!?わかれよ!!こうなんだよこう!!俺にはわかってんだよ!!」
「わかった、わかったから一旦落ち着け!!鬼がいたんだとしたら宇髄さんや善逸が来た時に説明しろ!!私だけに言ってんじゃない!!」
原作通りで安心したわ……と少しだけ考えながら、伊之助の訴えに対して怒鳴り返す。
わかってるよ?伊之助が言いたいことは。でも、常識的に考えて、私たちだけで動くわけにはいかないわけで……。
どうしたもんかと頭を抱えたくなる。でも、不意に鼻腔に届いた匂いに気づき、私は伊之助から視線を逸らし、匂いの発生源へと向けた。
「善逸は来ない。」
「!?」
「……やっぱりこうなるか。」
匂いの方にはやっぱり宇髄さんがいて、彼は屋根の上にしゃがんだ体勢で言葉を紡ぐ。
気配もなく、いつのまにかやって来ていた宇髄さんに対して、伊之助が目を見開く中、私が知る流れとなっていることに対して、小さく溜息を吐く。
やっぱり善逸、堕姫ちゃんに捕まっちゃったか……。
「善逸からの連絡が途絶えたんですか?」
「ああ。昨夜から連絡が途絶えてる。」
私の質問に対して、宇髄さんが肯定の言葉を口にする。それにより、辺りに訪れたのは静寂。
「お前たちには悪いことをしたと思ってる。俺は嫁を助けたいが為に、いくつもの判断を間違えた。」
これは……物語通り、私も帰るように言われてしまうのだろうか?少しの不安が頭を過ぎる。だけど、それはすぐに霧散することになった。
明らかに、彼が口にした言葉は、私が知らないものだった。
「……優緋。お前にはちょいとばかり酷なことを頼むことになるが、聞いてくれるか?」
「……何でしょうか?」
「お前は、このまま花街に俺と残れ。ここにいる鬼が『上弦』だった場合、少しでも支援してもらう方が俺としては助かる。だが、無理強いはしない。難しいようだったら、伊之助を連れて花街を出ろ。だが、まだ粘れるというのなら、一緒に来てくれ。だが、伊之助。お前だけはどちらにせよ花街から出てもらうことになる。階級が低すぎるからな。もし、本当に『上弦』の鬼が潜んでいた場合、お前じゃ対処できない。」
「な!?」
「………わかりました。宇髄さんに付いて行きます。」
「……ありがとな。」
宇髄さん本人から告げられた言葉……それは、私は宇髄さんに同行し、伊之助は花街を出ろというものだった。
まぁ……これくらいのイレギュラーは確かに可能性としてあったから、特に驚くものじゃなかった。
なんせ私は、煉獄さんと行動を取り続けていたからね。彼の任務に同行し、炎の呼吸を使いこなすための実地訓練をさせられた分、階級がかなり上がってしまっていた。
多分、累を自分の刀で斬ったことも関係があるんだろう。
おかげで、今じゃ私は甲の一つ手前、乙にまで上がってしまっている。
だからだろうか?宇髄さんが、酷なことを頼むと、前置きの言葉を紡いだのは。
そんなことを考えながら、宇髄さんの申し出を引き受ければ、彼は少しだけ申し訳なさそうな笑みを浮かべながらも、感謝の言葉を述べて来た。
「だが優緋。もし、厳しいようだったらすぐに離脱しろ。消息を絶った場合、お前であっても死んだと見做す。」
「それくらい、覚悟の上ですよ。」
「おいテメェら!!俺を置き去りにして話を進めてんじゃねぇ!!」
伊之助が怒鳴りつける中、宇髄さんと行動を共にすると聞いた当本人は、私の方に近寄ったのち、さらりと頭を優しく撫でてきた。
彼から感じ取れた匂いは、心配と、無茶はしないでほしいという感情と、罪悪感に近い、仄暗い感情の匂いだった。
そんな感情を抱かなくてもいいと口にしたいけど、きっと告げたら彼は、もっと自分を責めるだろう。
だから、あえてそれは告げることなく、心に留めておくだけにした。
「行くぞ、優緋。」
私が大人しく撫でられるのを確認した宇髄さんは、真剣な表情をしながら、行動に移すと伝えてくる。
私は、その言葉に頷こうとした。でも、納得行かないとばかりの状態にある伊之助のことが気がかりだったため、少しだけ耐えたのち、伊之助に目を向けた。
「すみません。先に向かっていてもらえますか?伊之助が納得しないとばかりに睨んできているので、少しだけ、説得します。」
「……わかった。なるべく早く来てくれ。あとでな。」
私の言葉を聞いた宇髄さんは、すぐに頷いたのち、その場から立ち去って行った。まぁ、多分、伊之助を説得するってのがウソだってことはバレてるだろうけど、見て見ぬ振りをしてくれるようだ。
いや、それとも、こっちにカマかけてる暇がないと考えているのかな?どちらにせよ、追求せずに立ち去ってくれたことはありがたい。
「おい優緋!!てめ!俺を説得するって何だよ!?お前も俺をのけもんにすんのか!?」
「違うよ、伊之助。私は、伊之助にやってもらいたいことがあるからここに残ったんだ。」
「やってもらいたいこと……?」
私の言葉を聞いた伊之助がキョトンとした表情を見せる。まさか、帰れって言う説得ではなく、やって欲しいこと伝える為に残ったとは思わなかったようだ。
「ああ。伊之助は、自分が潜入した店に鬼がいるのを感じたんだろう?」
「ああ。ぬめっとした気持ち悪ィ感じがあった。間違いなく鬼だ!!」
「その鬼は、『荻本屋』のどこにいたか覚えてる?」
「まきをの部屋だ!」
「じゃあ次の質問。伊之助が鬼がいるそこに入った時、鬼はどうやって逃げた?」
「天井裏を伝ってどっかに行ったんだ!下の方に行ったのは覚えてる!」
「なるほどね。じゃあ、一つの可能性が見えてきた。」
「可能性……?」
伊之助が不思議そうな表情をしながら首を傾げるのを見て、私は、仮説……という名の鬼の食糧庫への行き道を口にする。
「宇髄さんが外を見張っているにも関わらず、善逸は姿を消したし、伊之助が見つけた鬼は姿を隠してる。つまり、その鬼は建物の中にある何かしらの通路を通り、身を隠せる場所へと移動しているわけだ。それに、宇髄さんが見つけてないということは、鬼は店を出入りしていない。となると、鬼は店の中で働いている誰かということになるよな?」
「ああ。」
「そうなると、鬼は慎重にならないといけないと思わないか?だって、人を殺すわけだし。」
「そうか…!殺人の後始末には手間が掛かる。血痕は簡単に消せねぇしな。」
「御明察。流石は伊之助。」
「ふん!俺は親分なんだからこれくらい当然だ!」
綺麗な顔でドヤ顔を見せる伊之助の頭を一瞬撫でたくなる。でも、それは一旦堪えたのち、私は伊之助にしてもらいたい本題を告げる。
「ここは夜の街。だから、鬼にとって都合がいいことがたくさんある。けど、同時に都合の悪いこともある。だって、夜は仕事しないといけないからな。いないと怪しまれる。となると……だ。この街のどこかに、鬼が身を隠す為に利用している空間があるはずなんだ。そこで、空間を把握するのが得意な伊之助には、その空間を探し出して、調べて欲しいんだ。もしかしたら、そこに行方知れずになった人たちがいるかもしれないから。お願いできるかな?」
真っ直ぐと伊之助を見据えながら、彼に頼みたいことを伝えれば、伊之助は真っ直ぐと私を見つめ返したのち、口元に笑みを浮かべる。
「任せとけ!子分の頼みを聞いてやるのが親分だ!どうしてもって言うなら、この伊之助様が鬼の隠れ場を潰してきてやるよ!」
頼もしい限りの言葉を口にして、伊之助は自信満々に胸を張る。その様子に思わず笑みを浮かべる。
うん、これならみんなを助けることができる。
「残念ながら、私は宇髄さんと一緒に行動を取るって言ってるから、伊之助に付いて行くことはできないけど……」
「ハン!!俺を誰だと思ってんだ!山の王の嘴平伊之助様だ!お前がいなくてもやってやるっつーの!!」
「それは頼もしいな。流石だよ。じゃあ、お願いしていいね?」
「何度もうるせぇわ!!いいっつってんだろ!!」
「そうだったな。……絶対死なないでよ、親分。」
「ああ。お前も死ぬんじゃねぇぞ優緋!!」
伊之助と意見のすり合わせを終わらせた私は、適当に店の影に隠れて今着ていた着物を脱ぎ、鬼殺隊の隊服に着替える。
着物じゃ、上手い具合に動けないからね。人が来ない場所とは言え、外で着替えるなんてはしたないけど、今はそんなことを言ってる場合じゃない。
サラシとか外したいところだけど、その時間も惜しいかな……。髪もこのままで、男装状態のままだけどこれで行こう。
「さて、本当は宇髄さんと合流したいところだけど、待ち伏せすることにしましょうか。」
ようやく動きやすい格好になれたと思いながら、私はその場にあった足場を利用して一気に屋根の上へと駆け上がる。
そこから向かうはただ一つ。鯉夏さんが過ごしている『ときと屋』だ。