目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「宇髄さん。相手は帯による攻撃を得意としており、遠距離戦や中距離戦が主力のようです。帯は、まぁ見ての通りかなり切れ味が鋭いので当たったらアレですけど、動き自体はそこまで速くないかと。なんか、姿が変わってますが、宇髄さんならば簡単に終わらせることができると思います。」
「なるほどな。そんじゃま、さっさと終わらせて、優緋が抱いてる疑問……禍々しい何かがあるってやつの答えを暴くとするか。行くぜ。」
「わかりました。とりあえず、まず相手を引きつけます?」
「だな。行けるか?」
「ええ。問題なく。」
「派手に頼もしいじゃねぇか。じゃあ、始めるぜ!!」
堕姫の攻撃方法を伝えれば、宇髄さんは笑みを浮かべたまま地面を蹴り上げる。彼の巨体をブラインド代わりに使いながら、同時に走り出してみれば、堕姫ちゃんはすぐに帯による攻撃を展開した。
放たれた帯は、どう見ても二十は超えている。炭治郎が劇中で見た数の最大は十三本だったと思うんだが、やっぱり、柱と合流されたからだろうか。
とはいえ、堕姫ちゃんは合流した宇髄さんを捌き切れるとは思えない。私だけならともかく、戦闘経験が豊富な彼に、その攻撃を届かせることは難しいだろう。
「優緋!!」
「はい!」
そんなことを考えていると、宇髄さんが私の名前を呼んだ。何かやるつもりなのだろう……そう判断した私は、名前を呼んできた宇髄さんに返事を返す。
すると彼は堕姫ちゃんが放った帯を一瞬にして全て斬る。その際見えたのは、鎖に繋がれた二本の日輪刀を巧みに操り、複雑な斬撃を放った彼の姿と、日輪刀による斬撃と同時に放たれた複数の火薬弾。
宇髄さんは、複数の火薬弾に堕姫ちゃんの攻撃と自身の斬撃による衝撃を当てることで、それを爆発させる。
私の方にまで爆風を届かせない様子は流石だ。爆発により発生した爆煙を目隠し代わりに使い、高く飛び上がった宇髄さんの姿を視界に映しながらも、私はその場に発生した爆煙へと勢いよく突っ込む。
「この!!火薬の匂いと爆煙で視覚と嗅覚が……!!」
火薬の匂いが広がる中、ハッキリと感じ取ることができる堕姫ちゃんの匂い。その匂いが強く感じる方角から、戸惑いの声が聞こえてくる。
まぁ、十中八九宇髄さん特製のこれのせいなんだろうけど……なんて、ちょっとだけ視界の端で考えながらも、爆煙に滑り込ませた体を、彼女の前に出現させる。
「!?」
“炎の呼吸 弐ノ型 昇り炎天!!”
私が放ったのは、大威力であり、広範囲の型で構成されている炎の呼吸の中でも、単調な型である昇り炎天。下から弧を描くようにして刀を振るい、盛炎の如き一撃を放つ技。
単調な分、多少威力は落ちるけど、咄嗟の迎撃に特化してるこれは、いざという時に使用するとそれなりの効力を発揮する。
特に、今回のような見え難い位置から放たれたら、相手側の咄嗟の判断を攻撃ではなく、後退へと誘導することができる。
まぁ、多分堕姫ちゃんだけに通用する手だろう。妓夫太郎や、他の上弦だと、すぐに攻撃に転じられてしまう。
あとは、まぁ、今だからこそ使える技だ。現在の彼女は、私だけではなく、宇髄さんにも気を配らなくてはならない。特に、宇髄さんはついさっき彼女が接触した鬼殺隊であり、柱の立場に腰を置く存在だ。
複数の呼吸をいくつか使い、手の内を明かしている私以上に、警戒しなくてはならない相手になる。
まぁ、だからこそ、宇髄さんはこの攻撃方法に転じたんだろうけど。彼のことだから、堕姫ちゃんの未熟さに多少なりとも気づいていそうだし。
実際、彼の判断は正しいと言える。まだ、それなりに隙を持ち合わせている鬼殺隊の隊員複数を相手にするだけであれば、堕姫ちゃんの力でもこと足りる。柱一人との戦闘も、
なんせ、突然一人が二人となり、厄介な連携と血の効果が追加されるようになるんだから。そりゃ、初見で勝ってみろと言われる方が難しいというものだ。
でも、今の堕姫ちゃんが相手にしているのは現役の柱と、柱にも匹敵する(堕姫ちゃん曰くだからよくわからないが)隊員という二人組。
いくら一人でも強力な力を持つ上弦の鬼である彼女であっても、限界がすぐにやってくる。
“日の呼吸 円舞”
“碧羅の天”
“烈日紅鏡”
“灼骨炎陽”
“陽華突”
彼女の捌き切れる限界を誘発させるために、私はヒノカミ神楽こと日の呼吸を繋げていく。
本来ならば、炭治郎が最後にたどり着く答えだけど、私は最初から知っていた。
知識を持ち合わせている状態だからこそ発生した副作用だけど、利用するに越したことはない。
ついでに、無惨に精神的ダメージ行かねーかなぁー。髪型普段のポニテに戻したし、痣も出してるからゴリゴリメンタル削れてくれないかなー……なんてことを考えているのは仕方ない。
ただ生きたいだけだったことは知ってるし、彼の境遇を考えれば、まぁ、致し方ないと感じなくもないけど、それにしてはちょっと被害を出しすぎでは?
自分は災害、天災のようなもの?だから恨むのはおかしい?自然災害に見舞われた人間が自然に恨みを向けたりはしない。つまり、自然災害と同等であるこちらを恨むのはおかしい?
何言ってんだかね。アンタは自然災害なんかじゃあない。自己中心的な考えしか抱くことができない殺人鬼だろ。
炭治郎がブチギレたのもよくわかる。本当、傲慢で傍若無人な鬼だよね。
正直、あの時の無惨はマジで腹たったからね。精神的ダメージ食らって発狂しとけ。
まぁ、このせいで引きこもり鬼爆誕な可能性も少なからずあるが、太陽を克服する鬼が現れたら、流石に嬉々として出てきそうだよな。
生存本能とクズっぷりだけは一流どころか世界一レベルだし。
「ほい、昇り炎天でも食らっとく?」
「!?」
無惨に対する苛立ちを内心で思い出しながら、呼吸を日の呼吸から炎の呼吸へと切り替えて、弐ノ型を使用する。
下から急に振り上げられた刀にびっくりしたらしい堕姫ちゃんは、咄嗟にその場から後退し、私から距離を取る。
“炎の呼吸 壱ノ型 不知火!!”
そのタイミングに合わせて距離を詰めて切り付ける壱ノ型を使用し、すかさず彼女との距離を詰めた。
「な!?」
それにより堕姫ちゃんは頚を斬られると思ったのか、咄嗟に自身の帯を使って、防御行動を見せた。
でもそれ、意味ないんだよね。だって、
「なんちゃって。」
「!?」
私が使った不知火は、いわゆる一つのフェイク。日の呼吸と、本気斬りの昇り炎天に乗じて、わざと口にした型の名前。
だけど実際は呼吸法を利用して、移動速度だけを使い、今にも斬りつけられそうに見せただけのものだった。
ある程度近寄り、ブレーキをかけた私は、すかさず堕姫ちゃんから離れるようにして、バク転をする。
前方の防御に意識を向けていた堕姫ちゃんの頚が、地面の方へと落下するのは、それとほぼ同時だった。