目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
静かに紡いだ言葉に、妓夫太郎さんと堕姫ちゃんの二人が静かに反応する。
片方は両目から大粒の涙をこぼし、片方は驚いたような表情を見せて、私の方へと視線を向けてきた。
「・・・・・・君たちはちゃんと兄妹で、確かな愛情を向け合っていた。だってそうだろう?妹の頚を斬り、それを遠くへと運ぼうとした鬼狩りに、兄はすかさず狙いを定め、助けるために凶刃を振るった。
兄が鬼狩りに斬られそうになり、妹は明らかにこれまで以上の力を出して、それを防ごうと鬼狩りに牙を向けた。
生憎と、私たちも死ぬわけにはいかないし、それらは全て防がせてもらったが・・・・・・」
ポツリポツリと言葉を紡ぎ、私は交互に二人への視線を向ける。
片方の頚が斬られ、自分の頚まで斬られたら、死ぬ以外の道がないから防ごうとしたと言われたらそれまで・・・・・・だが、私には、そう言った生存本能からのみの行動ではないことがわかっていた。
原作と言う物語の知識があるからと言うのも確かにあるが、それ以上に、互いに互いを助けようと力を振るおうとした時に、大切な兄妹を助けたいと言う、確かな愛情の匂いを感じることができたから。
「・・・・・・互いに互いを助けようとしていた時、君たちからは確かな愛情を感じ取れた。
兄を助けたい、妹を助けたい、これからも一緒に生きていきたい・・・・・・そう言った、強い想いが確かにあった。
それをなかったかのように言うのは駄目だ。隠しきれない程に強く、温かい想いがあるのに、それを否定しちゃ駄目だ。」
この世に生まれたたった二人だけの兄妹・・・・・・それを示す確かな想いと強い絆を、私は否定させたりしない。
「兄妹喧嘩をするなとは言わない。兄妹とは言え、意見が食い違うことだって、相手の行動に苛立つことだって、場合によってはあるからね。
でも、本音をぶつけ合うことで、強くなる繋がりも存在する。だからこそ兄妹喧嘩は否定したりしないし、止めたりもしない。
だけど、自分たちが持ち合わせている本当の気持ちを否定するような言葉だけは、見過ごせないな・・・・・・。」
静かにその場でしゃがみ込み、堕姫ちゃんと妓夫太郎さんの瞳を真っ直ぐと見据える。
私に真っ直ぐと見つめられた二人は、その両目に涙を溜めていた。
「君らは確かに血が繋がっている兄妹だよ。だって、こんなにも互いに想いあって、温かい感情を向け合っているんだから。
本当にそっくりだよ。互いに強く助けたいと願った時、強大な力を発揮するところとか、特にね。」
小さく笑いながら言葉を紡ぐ。
先にボロボロと涙を地面に流し始めたのは、一番精神が幼い堕姫ちゃんの方だった。
「うわああああん!!うるさいんだよォ!!アタシたちに偉そうに口を出すな!!何も知らないくせに!!アタシたちに勝てたからって生意気な態度とりやがって!!
アタシたちの前からいなくなれ!!どっか行けぇ!!」
幼い子供が言い返すかのように言葉を紡ぐ堕姫ちゃんは、その場で大声で泣き声を上げる。
まぁ、自分たちに敗北を与えた上で、さらには説教じみたことを言われたのだから、彼女の反応も仕方ない。
でも、だからと言ってこの場から離れるつもりはない。妓夫太郎さんには、他にも伝えないといけないことがあるのだから。
「悔しいよう!!悔しいよう!!何とかしてよォ!!お兄ちゃあん!!死にたくないよォ!!」
「っ・・・・・・!!梅!!」
妓夫太郎さんが大きな声で堕姫ちゃんの本当の名前を呼ぶ。
私は、その言葉を聞くと同時に、自身が知っている原作の・・・・・・彼らがどのような生き方を強いられていたのかを思い出す。
・・・・・・羅生門河岸と呼ばれていた遊郭の最下層・・・・・・妓夫太郎さんと梅ちゃんの二人は、かつてそこに生まれ落ちた。
原作で記されていた話だと、そこはかなりの貧困地域で、子供は生きているだけでも食事代がかかるため迷惑以外の何物でもないとされていた。
最初に生まれ落ちた妓夫太郎さんは、何度も殺されそうになっていた。
生まれる前も、生まれてからも。
それでも彼は必死に生き抜いていた。どれだけ体が弱くても。どれだけ周りから様々な罵倒を言われながら、石を投げられてしまおうとも。
よく・・・・・・そんな世界で生き抜けたもんだと思う。この世にある罵倒が全て自分のために作られたのではと思う程に言われ続け、空腹を凌ぐために虫や鼠なんかを食べて、命を食い繋いできたのだから。
私だったら・・・・・・いや、ほとんどの人が、彼のような生活を続けたら精神を病み、それこそ、生きることを諦めてしまう可能性だってある。
そんな生活を送り、生きるために必死に頑張ってこれた彼には、尊敬の念すら抱きそうだ。
・・・・・・そんな彼の転機は、自身の妹が生まれたことだった。
死んだ母親の病名・・・・・・おそらくは梅毒のことだろう。これに使われる梅の文字を名前にあてがわれたとは言え、幼い頃から誰にも負けない美しさを持ち合わせていた自慢の妹ができたことや、同時に把握することができた、自身の強さが確かな自信となり、彼は妹の手を取って、前へ前へと走り出した。
自身の醜さも武器になる。誰よりも美しい妹を持つ自分を羨むものも出てくる。
そんなプラスの感情を胸に秘め、光の方へと人生は加速していくと思いながら。
だけど、その考えは、新たな絶望により粉々に砕かれてしまった。
奪われる前に奪い、取り立てる・・・・・・そんな、兄の姿を見て育っていたことも影響したのか、ある時、梅ちゃんは客の侍の目玉を簪でついて失明させる事件を起こす。
もしかしたら、彼女はその侍に酷いことを言われたのかもしれない。自身の純潔を無理やり奪われそうになったのかもしれない。
もしくは、大切な兄を引き合いに出し、何かを伝えてきたのかもしれない。
多分、梅ちゃんはそれらを動機にして、侍の目を簪で突いたのだろう。
だが、身分が低い人間が、当時は立場が上だったであろう侍に抵抗し、一生治らない傷を残すことなど、当初は許されることではなかったのだろう。
身分が低い人間の分際で・・・・・・そんな考えを向けられてもおかしくないことをしてしまった梅ちゃんは、その報復として縛り上げられ、生きたまま火を放たれた。
妓夫太郎さんが戻った時、報復として火をつけられてしまった梅ちゃんは、ほぼ虫の息と言ってもおかしくない程に命を脅かされ、丸焦げになってしまった。
唯一の自慢・・・・・・唯一の宝物・・・・・・それを奪われそうになり、妓夫太郎さんは神や仏にすらも恨みを抱き、慟哭をあげた。
そんな妓夫太郎さんもまた、彼を忌み嫌う人間と、梅ちゃんが失明させた侍により、命を脅かされることとなってしまった。
でも、妓夫太郎さんの生命力は、一太刀で終わらせることができる程弱くはなかった。
自身を始末するように依頼したであろう女と、梅ちゃんを焼き殺そうとした侍の命を奪える程だった。
・・・・・・二人の人間を手にかけた妓夫太郎さんは、虫の息となってしまった梅ちゃんを抱えて歩き続けた。
誰も助けてくれない世の中に、手を貸そうとする人間が一人もいない世の中に、絶望と失望、そしてたくさんの怨嗟を抱きながら。
そして出会ってしまった。自分たちに手を差し伸べた、一体の鬼に。
─────・・・・・・妓夫太郎さんは、それでも構わないと言っていたな。もし、仮に何度も生まれ変わったとしても、こっちを差し置いて幸せになる人間から幸せを取り立てる鬼になることも厭わないと。
だけど、素直で染まりやすい梅ちゃんだけは、そんなことになってほしくないと願っていた。
少しでも環境が違う場所であれば、鬼にならなくて済む未来だってあるはずだったからと。
自分のような人間と共にいたからこそ、梅ちゃんも自分のようになってしまったのだと、最期の最期で後悔を抱いていた。
だからこそ、妓夫太郎さんは黄泉路で出会した梅ちゃんに、自分が巻き込んでしまったせいで暗闇の中に堕ちてしまった大切な妹に、光のある方へと向かえと言って突き放した。
でも、梅ちゃんはそれをしなかった。大切な兄と離れ離れになる世界を否定した。
どれだけ辛く苦しくても、大好きな兄と共にいることを選んだ。
そんなことを考えながら、私は梅ちゃんがいた場所に視線を向ける。
泣きじゃくっていた幼子は、すでにそこにはいなかった。灰となって消えてしまった。
きっと、妓夫太郎さんと最後に顔を合わせたあの場所へと逝ってしまったのだろう。
暗闇の中で、大好きなお兄ちゃんを探しているのだろう。
「・・・・・・妓夫太郎さん。」
「・・・・・・なんだ。」
「あなたはきっと、大切な妹が自分と同じ道へと歩んでしまったことに思うことがあるのでしょうね。
なんとなくですが、そう思います。だって、彼女は最後まで純粋だった。きっと、過去には沢山の道があったのでしょう。」
「・・・・・・ああ。俺の妹は、本当に素直で染まりやすくてなぁ。花街のもっといい店にいたなら、真っ当な花魁になっていた。
普通の親元に生まれていたなら普通の娘に、良家に生まれていたなら上品な娘になっていただろうよ。
俺が育てちまったせいで、梅はあんなになっちまった。やるせねぇよなぁ・・・・・・」
もはや敵意は一つもない。それならばと妓夫太郎さんに声をかければ、彼は涙をこぼしながら、自分の想いを静かに紡いだ。
その言葉を聞き、私は少しだけ目を閉じる。この人もまた、もう直消えてしまうだろう。
「確かに、やるせないかもしれません。でもね、私はこうも思うんです。あなたの妹さんは・・・・・・梅ちゃんは、きっと、あなたの側にいたことを後悔していません。
だって、あんなにも必死にあなたを助けようとしていた。強い想いを持っていたのですから。」
「・・・・・・・・・・・・。」
私の言葉に、妓夫太郎さんは黙り込む。そんな彼に視線を向けて、私は口元に笑みを浮かべた。
「唯一の家族・・・・・・唯一の宝物・・・・・・あなたは、梅ちゃんのことをそう思っていましたよね?」
「ああ。全部事実だからなぁ・・・・・・」
「それは梅ちゃんも同じです。彼女にとってあなたは、何よりも大切な家族で、何よりも大切な宝物です。
だから・・・・・・もし、黄泉路で彼女に会うことがあったら、彼女を突き放さないであげてください。
何よりも大切な、たった一人の家族に突き放されたら、きっと、彼女は深く傷付きますから。」
「・・・・・・俺ァ、見ての通り沢山の人間を殺してきた。生きるために柱も殺した。だから地獄に逝くに決まってらァ・・・・・・。そんな場所に、梅を連れて行けるわけねェだろうが。」
「それでもですよ。確かに、地獄ではこれまで犯してきた罪を、全て禊ぎ終えるまで、沢山の苦しみや痛みを伴うでしょう。
ですが、きっと梅ちゃんはそれでもあなたと逝こうとすると思いますよ。だって、唯一の家族なのですから。」
妓夫太郎さんの顔が、半分以上灰となって崩れている。もしかしたら、もう返事は返ってこないかもしれない。
でも、これだけは言わせてもらいたい。
「彼女を突き放さないであげてください。彼女が縋りたいと思える人は、抱きしめて欲しいと思える人は、唯一無二の家族である妓夫太郎さんだけなのですから。」
幼子に言い聞かせる母親のように、妓夫太郎さんに梅ちゃんを突き放さないであげてほしいことを伝える。
彼女にとっての唯一の心の拠り所・・・・・・唯一温もりを感じられる場所を、壊してほしくないと言う想いを込めて。
「・・・・・・ハッ・・・・・・最後まで・・・・・・口うるせぇ女だなぁ・・・・・・。」
「口うるさくもなりますよ。私にも家族がいますから。」
どこか呆れたような、だけど、どことなく嬉しそうな声を漏らしながら、妓夫太郎さんの頭が灰となって消滅していく。
それを見守りながら、私は静かに口を開いた。
「・・・・・・これから先、長きに渡る呵責の果てに生まれ変われたら・・・・・・その時はどうか、兄妹揃って幸せに生きれる来世でありますように。
私は、それだけを願っています。今生で沢山の絶望と苦しみをその身に与えられ続けてしまったのですから、来世では幸福でないと割に合わないでしょう?」
「・・・・・・そうだなァ・・・・・・それは言えてらァ・・・・・・。せめて・・・・・・梅だけでも幸せになってりゃあいいんだがなァ・・・・・・」
「梅ちゃんだけが幸せになっても意味ないでしょうに。幸せになるのであれば、あなたも一緒に・・・・・・ですよ、妓夫太郎さん。
あなたの幸せも、梅ちゃんにとっての幸せになるはずですからね。」
「・・・・・・偉そうに・・・・・・言いやがって・・・・・・本当にムカつく女だなぁ・・・・・・。
でも・・・・・・ありがとよ・・・・・・。そんなふうに言ってくれてよ・・・・・・」
穏やかな笑みを浮かべながら、涙を流す妓夫太郎さん。
彼は、消える寸前・・・・・・最後の最後に、静かに口を開く。
「あの時、お前みてぇなお人好しがいたら・・・・・・多少は違う生活を・・・・・・送ることができたかもしれねぇなぁ・・・・・・」
呟くように紡がれた言葉は、私の言葉が何かしら彼に響いたことを知るには十分すぎるものだった。
だけど、その言葉に対する返事を口にする前に、妓夫太郎さんは完全に灰となり、この世から消滅する。
最後までそれを見届けた私は、静かにその場から立ち上がった。
「・・・・・・おやすみなさい、絶望の果てに鬼にならざるを得なかった子供達。長い呵責の果て、穏やかな来世を迎えられられますように。」
静かに瞼を閉じ、祈るように言葉を紡いだ私は、しばらくの間黙祷する。
しかし、不意に近づいてきた匂いがあることに気づき、閉じていた目を開ける。
「お前は・・・・・・」
視線を向けた先にあったのは、柱合会議の時に顔を合わせたっきりなんの接触も無かった蛇柱、伊黒小芭内の姿だった。
なんとなく思ったのですが、皆さんはキメ学時空の優緋はどんな立場で想像しますか?
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