目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「あなたは・・・・・・確か、柱合会議にいた・・・・・・」
「蛇柱・伊黒小芭内。お前は竈門優緋だったな。」
ポツリと呟くように言葉を口にすると、伊黒さんは静かに自分の名前を打ち明けてくれた。
同時に確認するように紡がれた私の名前に、その通りだと伝えるように頷き返す。
「お久しぶり・・・・・・と言うには初めて真っ当に顔を合わせましたからね。初めましてと言わせてもらいます。
数ヶ月前は、お騒がせさせてしまい申し訳ありませんでした。」
「・・・・・・本当にな。まさか、鬼を連れているような鬼狩りがいるとは思いもよらなかった。
なぜ鬼狩りが鬼を連れているのか今でも理解不能だ。自分の家族だと言っていたが、鬼狩りは鬼を狩るための組織だ。
だと言うのに、なぜお前は鬼を斬らない?家族であれ鬼であることはかわらない。いつ人を食らうかもわからない。
そうなる前にトドメを刺すことが周りのためであり、お前の家族のためだとは思わないのか?」
「・・・・・・耳が痛い話ですね。まぁ、そう言われてしまうのも仕方ないと思っていますから、苦言を申したりは致しません。」
うっわ、原作通り、どことなくネチネチした様子で言葉言ってきた・・・・・・と少しだけ遠い目をしたくなりながらも、苦笑いだけを彼に返す。
原作で彼を知っている分、こう言う人だと知っているため多少なりとも受け流せるが、原作を知らずにこの世に生まれていたらどれだけ精神に来たことか。
炭治郎なら間違いなく怒りそうだと思いながら、苦言を返すことはしないことを告げれば、彼はしばらく私を見つめたのち、深く溜め息を吐いた。
しのぶさん曰く、鬼を連れていなければ、素直に味方として受け入れることもできると彼は言っていたとのことだったし、実力はちゃんと認めてもらえているようだ。
「・・・・・・で?ここには上弦の鬼がいたと聞いていたが、どうやら始末がついたようだな。
お前を連れてここに向かった柱がいるだろう?そいつはどこにいる?」
「宇髄さんでしたらあちらに・・・・・・ああ、三人の奥様に囲まれてますね・・・・・・」
「・・・・・・煉獄もいるようだが。」
「ああ、はい。私の鎹鴉に念の為救援を呼ぶように飛ばしたところ、近隣で任務をこなしていた煉獄さんが合流してくれたんです。」
「そうか。どうやらお前は運が良かったようだな。」
吐き捨てるように言葉を紡ぎ、宇髄さんたちの方に歩みを進める伊黒さん。
その背中を見送っていると、彼は少し進んだところで足を止め、私の方へと向いてきた。
「何をしている、竈門優緋。お前にも報告をしてもらう。さっさと来い。」
「あ、はい。」
伊黒さんに名前を呼ばれ、素直に返事をして走り寄れば、自身の隣に並んできた私を確認するなり、再び歩き始める。
伊黒さんと一緒に歩くの、なんか変な感じ、と少しだけ思っていると、「おい」と小さく声をかけられる。
「一般人の被害は?」
「一般人の被害はありません。宇髄さんと一緒に上弦の陸と交戦する中、彼の三人の奥様が逃していました。見ての通り、建造物の被害はそれなりにあります。」
「負傷者はお前だけか?」
「我妻善逸と嘴平伊之助が裂傷を受けてますね。私は見ての通り軽度で、今あげた二人は中傷です。柱のお二人は負傷無し。若干、宇髄さんの奥様三人が疲労と僅かな衰弱有りです。」
「そうか。わかった。」
淡々と質問に答えれば、伊黒さんは黙り込む。
必要な報告を得るためだったのだろう。この人とは少しばかり話し難いだろうと思っていたから、黙ってくれてありがた・・・・・・
「ところでお前は煉獄の継子となったそうだな。甘露寺から聞いている。」
「・・・・・・甘露寺・・・・・・と言いますと、恋柱である甘露寺蜜璃さんですね。」
「ああ。」
・・・・・・と、思ったら向こうから話かけてくると言う状況に発展してしまった。
何かしらあればネチネチトゲトゲと色々言われそうだから、あまり話したくないのだが、どうも彼からしたら、私は目を向けるべき対象となっているようだ。
「ここ数ヶ月間は煉獄が引き受ける任務に同行し、煉獄の指示の元、炎の呼吸を使用しながら、鬼を狩っていたらしいな。」
「ええ。柱の方の任務に連日同行することになるとは思いもよりませんでしたが、彼の熱く丁寧なご指導の下で、炎の呼吸をしっかりと習得させていただきました。」
「俺が聞いた話では、冨岡と同じ元水柱の師により呼吸を学んでいたと聞いていたが?」
「確かに、水の呼吸も使用していましたが、どうも私は炎の呼吸と相性がいいらしく、現在はもっぱら炎の呼吸を使っています。」
「どこまで学んだ?」
「一通りの型は学んでいますが、主に使用しているのは壱から伍ノ型、それと、奥義である玖ノ型が中心となっていますね。」
飛んでくる質問に淡々と答えれば、伊黒さんがこちらに視線を向ける。
「・・・・・・炎の呼吸の奥義まで身につけたのか。」
「ええ。身につけるまでそれなりに時間は有しましたがね。おかげ様で、今では炎の呼吸で十二鬼月と渡り合えるようになりました。」
私の答えを聞き、伊黒さんが少しの間無言になる。
しかし、すぐに彼は深い溜め息を一つ吐き、再びこちらに視線を向けた。
「・・・・・・お前程の人間が、なぜよりにもよって鬼を連れているのか全くと言っていい程にわからない。
あれさえなければ、こちらもこうまで頭を抱える必要はないのだがな。」
伊黒さんから呆れと苛立ちの匂いがする。どちらも鬼化した家族を連れている私に対する物のようだ。
まぁ、こればかりは仕方ないだろう。原作知識という少しのズルを利用しているとはいえ、私のこの能力は、鬼舞辻を討たんとしている鬼殺隊の中ではきっと重要な力となる。
だと言うのに、当の本人は鬼化した家族などと言う厄ネタを二つも抱えており、いつ人の命を奪ってしまうかもわからないような爆弾状態ときた。
どうしてよりによって・・・・・・そんな感情を向けられるのは、当然としか言いようがない。
「上弦の陸と言う最弱の上弦を滅殺したことは褒めてやってもいい。だが、煉獄から稽古をつけられているのであれば、それくらいはやって然るべきことだ。調子に乗るなよ。
煉獄から学びを得ているにも関わらず重傷を負い、最弱の上弦に太刀打ちすらできないなどと言う頭の悪い結果にならないようにした実力は認めてやる。
だが、まだ俺はお前を信用したわけじゃない。信頼も向けていない。わかったな?」
「・・・・・・実力を認めてもらえるだけでもありがたいことですから、信頼と信用も向けてほしいという言葉までは言うつもりはありませんよ。
ただでさえ厄ネタを抱えた人間ですからね。そこまで強欲な言葉を口にすることができる程厚かましくはありませんし、そのようなことを言っていい立場にあるとも思っていません。」
「・・・・・・お前と話していると調子が狂う。」
とりあえず、彼を刺激しないように言葉を選びながら、認めてもらっているところに対する感謝は述べておこう・・・・・・そう思いながら、ところどころ言葉を受け流しつつ会話を繋げていると、苛立ちの匂いは消え、入れ替わるようにして困惑の匂いを伊黒さんはまとった。
そこまで調子を乱しただろうか?と少しだけ疑問に思いながらも、伊黒さんと一緒に歩き続ければ、煉獄さんたちと合流する。
さて、原作ではダメージを負うどころか、片目と片腕を失う状態になっているにも関わらず、伊黒さんからのお説教を食らうことになった宇髄さんだけど、疲労以外は無傷の宇髄さんに対して、伊黒さんはどのような反応をするのやら・・・・・・。
☽❀☾
「・・・・・・あの野郎・・・・・・こっちが疲労しているところをいいことに散々言いやがって・・・・・・」
「うむ!伊黒には困ったものだな!」
「なんなんですかあの人はぁ!!天元様だって沢山頑張っていたのに!!」
結論から言うと、結局宇髄さんは伊黒さんからネチネチとしたお説教を受けるオチとなってしまった。
どのようなお説教だったか要約すると、柱ともあろう人間が、上弦の中で最も弱い陸程度、救援を呼ぶことなくさっさと終わらせられないとはどう言うことだと言うものである。
上弦の参である鬼と対峙し、煉獄さんの援護を務めて撃退した上、その腕を買われて炎柱の継子として引き取られた剣士がいたにも関わらず、時間がかかることもおかしな話だろうとも言っていた。
お前は竈門優緋にすら力が劣るのか?とまで言っていた時は、流石にそれはと思ったため、妓夫太郎さんが猛毒を持っていたことや、少しでも怪我をさせないようにしてくれていたことを伝えようとしたが、「お前に話は聞いていない、黙ってろ」とピシャリと言われてしまった上、宇髄さんからも口を出さない方がいいと制されてしまったため、何も言うことができなかった。
「何かすみません・・・・・・。私の方にも色々と落ち度があったのに・・・・・・」
「いや、お前のどこに落ち度があったってんだよ。一人でド派手にあの鎌と帯を捌いたりしていたし、誰よりも先に鎌の方に何かあるって気づいて動いてはこっちの被害を抑えたりもしていたってのによ。」
「ですが、私は炎の呼吸を本気で使っていませんでした。その分、宇髄さんにも負担があったはずです。」
「終わらせたあとぶっ倒れた奴が何言ってんだよ。あそこまで一気に体力持ってかれちまうなら、体力の温存も兼ねて本気になれねぇことくらいわかるっての。」
宇髄さんが呆れたような声音で、私に落ち度はないと言う。彼はそう言ってくれているけど、どうも納得することができない。
もう少し私に体力があれば・・・・・・呼吸を使いこなせるようになっていれば、様々なことを考えながら、私は黙り込む。
「あの、優緋さん。」
「!」
自分に足りないものをいくつも挙げていると、静かに声をかけられる。声の方へと目を向けてみると、そこには雛鶴さんがいて、彼女は口元に小さく笑みを浮かべながら私を見つめていた。
「天元様の言うとおり、優緋さんに落ち度はないわよ。」
「そうだよ、優緋。むしろ、私たちの大切な人を守ってくれてありがとう。」
「今回の鬼は、二人に分かれる上、両方の頚を斬らないといけない相手だったんですよ?なのに、天元様も、優緋さんも、炎柱様も、他の隊士の子たちすらも、五体満足で終わらせることができたんですから、落ち度なんて全くありません!
だって上弦の鬼は、これまで沢山の柱の人も食い尽くしてきた鬼だったのに、軽度の怪我と、疲労だけで何とかなったんですから!」
「だから、そう深く気にしないでね。こうして軽度の被害だけで済ませることができたと言うことは、誰一人として落ち度はなかったと言うことなのだから。」
宇髄さんの奥さんである雛鶴さん、須磨さん、まきをさんの三人が、誰一人として落ち度はないと穏やかな声音で言ってくる。
それを聞いた私は、何度か瞬きを繰り返したのち、宇髄さんへと視線を向ける。
私の視線に気づいた宇髄さんは、一瞬だけキョトンとしては、口元に笑みを浮かべて頷いた。
彼女たちの言う通りだとでも言うかのように。
「・・・・・・ありがとう・・・・・・ございます。」
静かに感謝の言葉を述べれば、宇髄さんたちは笑顔を見せてきた。
同時に、すぐ側で小さな笑い声が聞こえる。視線を声の方に向けてみれば、倒れかけた私を心配しておぶって帰っている煉獄さんの笑った顔が映り込む。
「相変わらず優緋は、どこか自信がない部分があるな!今回の勝利は、まごうことなく優緋の助力があってこそだと言うのに、すぐにそのようなことを考える!
優緋がいてくれたおかげで、俺も宇髄も五体満足で上弦に対抗することができた。これは、紛れもない事実だ。
猗窩座と衝突した時も、優緋が援護をしてくれたおかげで俺は今もこうして鬼殺隊の隊士として多くの人を守れている!」
「優緋がいてくれたおかげで、俺も嫁たちも大きな怪我を負うことなく戦えたし、毒なんてもんも食らわずに済んだ。
優緋がしっかりと力を貸してくれたおかげで、俺たちはこうして今も前線に立ち続けることができてんだ。
嫁たちに遺言なんて胸糞悪いもん残さなくて済んだのも、全部お前が派手に助力してくれたおかげなんだぜ?」
「胸を張っていい!優緋のおかげで助かったものが沢山あるのだからな!」
“だから、あまり気負うことはない”・・・・・・穏やかで、だけど頼もしい声音で告げてくる煉獄さんを、何度か瞬きをして見つめた私は、少しだけ無言を返したのち、ポスッとその背中に体重を預ける。
急なことに驚いたのか、煉獄さんが一瞬だけビクッと体を跳ねさせて、後ろを歩く宇髄さんたちが、面白いものを見た子供のように、楽しげな匂いをまとい始めた。
「・・・・・・私は、ちゃんと皆さんの役に立ているのですね。どうしても皆さんに劣るところがあるし、もしも、手元から多くの命がこぼれ落ちたらって、不安にもなることがありましたから、少しだけ、安心しました。」
一人を助けたことにより、もしも別の一人が命を落とすようなことになってしまったら・・・・・・どう足掻いても、助けたいと願った一人が命を落とす運命にあったとしたら、どれだけ力を身につけても、大きな傷を負う人が、同じように大きな傷を負って、取り返しのつかないことになってしまったら・・・・・・。
沢山のもしも、沢山の不安を抱きながら、もっと、もっと力をつけないとと、焦りを抱いていた。
どれだけ自身の命を削ることになろうとも、せめて、原作で命を落とす人たちを助け、本来ならば、私がいる場所に身を置くことになっていたはずの炭治郎や、これから先も沢山傷つくであろう禰豆子、善逸、伊之助のみんなが、命を落とさないように守りたいと走り続けた。
このままじゃダメだ、縁壱さんに追いつけるくらいにならないと、みんなを助けることなんてできないと、刀を振ることを続けていた。
でも、今の私でも十分に役に立てている・・・・・・そう言われてかなり気持ちが楽になった。
もちろん、これから先も私は走り続けるつもりでいる。炭治郎や禰豆子、他の柱のみんなを襲うようなことにならないように、鬼の王の血を体に注ぎ込まれないように、完膚なきまでに鬼舞辻を倒すためには、彼を目指さなくてはいけないから。
でも、今の力でも役に立つことができると言うのならば、少しくらいは休んでもいいのだろうか。
「・・・・・・ったく、何当たり前なこと言ってんだよ、地味な奴だな。」
「役に立つ、立たないなど関係ない!優緋はこれまでよく頑張っているからな!
それに、命が手元からこぼれ落ちたらと言う不安は、俺たち柱にも存在している!」
「もちろん、そんなもんは絶対に表に出したりしねぇがな。・・・・・・俺たちは確かに鬼狩りだが、同時に人間でもあるんだよ。不安を抱かねぇなんてこと、あり得るわけねぇだろ。」
「だからこそ、俺たちは皆、必要であれば周りを頼ることもする。一人で抱え込む必要はないんだ!
力が劣るのであれば、それを補うように周りに手を伸ばせばいい!優緋がいるからこそ、俺たちも足りない部分を補うことができるんだ。それができる程の力を君は持っている。
だから、自信を持ってこれからも俺たちを助けてほしい。伊黒や不死川はわからんが、俺たちは優緋の力も頼りにしているのだから。」
煉獄さんと宇髄さんの言葉に、安堵が体の力を抜かせる。
そうか、少しは私も自信を持っていいのか。私には、みんなを助ける力があるのだから。
「・・・・・・はい。わかりました。これからは、少しずつ自信を持っていきます。皆さんの手助けをすることができるくらいには、確かな力があるんだって。」
「そうそう。あんだけの力を持ってるってのに、自信がねぇとか嫌味にしかなんねぇぞ。」
「そうだな。優緋程の力の持ち主が自信がないと言うのは、俺も少しばかり思うところがあったぞ!」
少しだけ、煉獄さんと宇髄さんから拗ねたような、呆れたような匂いを感じ取る。
そのことに私は苦笑いをこぼし、そのまま煉獄さんの背中に体を預けた。
「ん?どうした、優緋。眠たいのか?」
「・・・・・・少しだけ、疲れちゃっただけですよ。」
「そうか。今回は流石に拠点としている場所には戻れないからな。近場にある藤の花の家紋の屋敷で一旦は休息を挟む予定だし、眠っていても構わないぞ。」
「だな。この中じゃ、一番優緋が体力を減らしてるだろうし、煉獄に甘えて眠っといたらどうだ?」
「・・・・・・そう・・・・・・ですね。少しだけ眠気が強いですし。」
煉獄さんと宇髄さんから眠るように促され、私は少しだけ考えながら、それがいいかもしれないと呟く。
しかし、不意に自身のベルトに括り付けられていた爆薬丸が入った巾着袋が視界に入ったため、すぐにそれに手を伸ばした。
「あの、宇髄さん。これ、貸してくれてありがとうございます。」
「ん?」
巾着袋をベルトから外し、宇髄さんの方に差し出せば、彼は何度か瞬きをしたのち、小さく笑い声を漏らす。
そして、私が手渡した巾着袋を受け取ったかと思えば、煉獄さんに足を止めるように声をかけた。
煉獄さんが足を止めると同時に、宇髄さんは手にしていた巾着袋を再び私のベルトに括り付ける。
「こいつはお前にやるよ。」
「・・・・・・え?」
再び戻ってきてしまった爆薬丸入りの巾着袋に固まっていると、宇髄さんはこれを私に譲ると言ってきた。
どうしてそんなことを・・・・・・混乱したまま宇髄さんを見ていると、彼は小さく笑いかけてくる。
「今回、上弦との戦闘の中でこっちの使い方をしっかりと把握できただろ?だから、これからも鬼殺の役に立てくれ。」
「でも・・・・・・こんなに沢山・・・・・・」
「いいっていいって。どうせこれ自分で作ったもんだしな。屋敷に戻れば予備もあるし、すぐに作ることもできるから気にすんな。」
再び巾着袋を外そうとすれば、片手でやんわりと手を掴まれ、巾着袋から手を離された。
必要ならばすぐに作ることもできるものだと口にして、私が返却しないようにするためか、掴まれていた手は煉獄さんの肩に戻される。
「・・・・・・ありがとうございます。それなら、これからも使わせていただきますね。」
「おう。もし、使い方の詳細をもっと知りたいってんなら、暇な時にでも教えてやるから言ってくれよ。
なんなら、煉獄の継子じゃなく、俺の継子になるか?」
「宇髄!優緋にちょっかいを出さないでもらえるだろうか!」
「・・・・・・って冗談に決まってんだろ。まぁ、使い方の詳細を教えることに関しては冗談じゃねぇけどな。」
楽しげな様子で笑いながら、宇髄さんは私の頭を優しく撫でる。
妻と呼べる人が三人もいる彼の手は、やはり頭を撫で慣れているからか、どこか心地良いもので、疲労も重なっているせいか、瞼が緩く閉じかける。
「・・・・・・お疲れさん。ゆっくり休めよ、優緋。夜になったら、また任務が入るだろうからな。」
とても穏やかな声音の労りの言葉が鼓膜を緩く揺らす中、私の意識は少しずつ暗くなっていく。
完全に眠りに落ちるまで、優しく頭を撫でる大きな手が止まることはなかった。
☽❀☾
「・・・・・・優緋は眠ったか?」
「ああ。やっぱかなり無理してやがったな、こいつ。」
しばらくして聞こえてきた穏やかな寝息。
それを聞いた炎柱・煉獄杏寿郎と、音柱・宇髄天元の二人は、静かに眠りに落ちる少女剣士の様子を見つめる。
生憎と、彼女を背中に背負っている煉獄の目には、彼女の長い髪が少しだけ映り込む程度で、寝顔が映ることはなかったが、彼女の顔を覗き込める位置にいた宇髄は、幼さの残る寝顔を見つめていた。
「ったく・・・・・・頑張りすぎなんだよな、こいつは。一体何がここまで突き動かすのやら・・・・・・」
「そうだな・・・・・・俺もそれに関しては気にしていたため、何度か話を聞いてみようとしたんだが、まだ、それを聞かせてくれる程心は開いてもらえてないんだ。」
煉獄の言葉を聞き、宇髄が目を丸くする。
難しい性格をしている伊黒小芭内や、不死川実弥、冨岡義勇や時透無一郎と言った、柱の面々からも好意的な反応を見せる程である煉獄ですらも、その背におぶる炎の継子たる鬼殺隊士から完全に心を開いてもらえないのかと、驚きにより言葉を失った。
「おい、我妻。嘴平。」
「うわはい!?」
「あ?」
少しだけ考え込んだ宇髄は、自分たちより後ろを歩いている隊士、我妻善逸と嘴平伊之助に声をかける。
まさか、話しかけられるとは思わなかった善逸は、素っ頓狂な反応を見せ、上擦った声で返事をした。
「なんつー反応してんだよ・・・・・・。まぁ、いいや。お前ら、確か優緋と同期だったろ?なんか話聞いてねぇのか?こう、家族を人間に戻したい以外にやりたいことがあるみたいな感じによ。」
あまりにも善逸の反応が大きすぎたため、少しだけ呆れながらも、宇髄は彼らに質問をする。
何かを抱え、走り続けている様子がある優緋のことを、少しでも紐解けるように。
宇髄の質問を聞き、善逸と伊之助は一時的に顔を見合わせる。
しかし、すぐに彼の方に向いては、左右に首を振った。
「んな話聞いたことねぇぞ。」
「優緋ちゃんが、炭治郎と禰豆子ちゃんを戻したいって思ってることはわかりますけど、それ以外はどうもぼやけててわからなくて・・・・・・。
俺、耳がいいから、その人がどんな人で、どんな感情を持ってるのか音で判断できるんですけど、優緋ちゃんからする音は、家族を想ってる温かさと優しさのある音以外に、何かを決意しているような、そのためにはなんでもしてやるって言ってるような、そんな音がよくしてるんです。
でも、根底にあるその音は、いつもどこか遠くで鳴ってて、基本的には、家族を想う優しい穏やかな音に覆われてて、何が奥底にあるのかまでは全く・・・・・・」
善逸と伊之助の言葉を聞き、煉獄と宇髄は静かに顔を見合わせる。
しばらくして、眠ってしまっている誰よりも頑張り屋で、力を求めて走り続ける後輩を見つめながら、その表情を心配に曇らせた。
「・・・・・・俺たちの力を信用してねーってことはねーと思うが、これから先、力を必要とする何かを知ってるってことか。」
「そう言うことだろうな。優緋は、時に何か先を見据えているところがある。だが、それを話すにはあまりにも内容が膨大か、突拍子もないかのどちらかなのかもしれんな。」
「・・・・・・いつか話してくれたらいいんだが・・・・・・。人間が一人で抱えることができる量は限られてるしな。
こっちにも何かできることがあるかもしれねぇし、優緋がところどころ庇ってくれなかったら俺は毒を喰らって戦線離脱する可能性もあった。
こうしてまだ前線に立てんのは、優緋のおかげでもあるし、ちゃんと恩返ししねぇとな。」
「そうだな。話してもいいと思ってもらえるように、これからも精進あるのみだ。」
何かを抱えている恩人でもある後輩が、しっかりと心を開けるように・・・・・・そのためには何が必要か考えながら、煉獄たちは足を進める。
そんな二人の柱を見ながら、善逸と伊之助は黙り込んだ。柱と並べる程の力を持ち、倒れるまで刀を振い続けた自分たちの同期。
今回もまた、彼女が自分たち以上の負担を担ってくれたおかげで、怪我も軽いもので終わらせることができた。
それに関しては、彼らには思うところがあった。
「・・・・・・あの、煉獄さん。宇髄さん。」
そこまで考え、先に口を開いたのは善逸だった。
急に自分たちの名を呼んだ善逸に、煉獄と宇髄は視線を善逸に向ける。
「俺たち、ずっと優緋ちゃんに守られてばかりで、何もできてないんです。
確かに、帯鬼の方にはある程度対処できたけど、鎌鬼の方には何もできなくて・・・・・・」
「優緋ばっか強くなんのは納得いかねぇ!!俺たちにだってやれるってこと見せつけてやりてぇんだ!!庇われてばっかなのも気にくわねぇ!!」
「優緋ちゃんばかりに負担をかけたくないから、俺たちも強くなりたい・・・・・・だから、強くなるために、少しでいいから訓練をつけてもらえませんか!?
柱が忙しいことは知ってるし、稀の機会になってもいいから!!」
善逸と伊之助の言葉を聞き、煉獄と宇髄は驚いたように目を丸くする。
しかし、すぐに口元に笑みを浮かべては、静かに頷いた。
「時間がある時なら構わねぇよ。まぁ、基本的に柱ってのは、他の隊士に比べたら警備する地域や、こなす任務の数が多い分、継子にしかつけねぇから、本当に稀になるとは思うがな。」
「時間が作れそうになった時は連絡しよう。」
二人のやる気を見て、煉獄と宇髄は稀になってもいいのであればと告げ、その話を承諾する。
二人の柱から承諾を得た善逸と伊之助は、その瞳に強い光を宿すのだった。
柱稽古編、義勇さんと不参加のしのぶさんの話はなかったけど、他の柱はどんな稽古をつけるのかしっかり描かれてましたよね。
・・・・・・煉獄さん、生存していたら何を担当してたんだろ。ここら辺しっかり練らないとな。
なんとなく思ったのですが、皆さんはキメ学時空の優緋はどんな立場で想像しますか?
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キメ学高等部(しのぶと同級生)
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キメ学教師陣営
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キメ学OB(ベーカリーのお手伝い)
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キメ学OB(社会人として生活中)
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煉獄杏寿郎の恋人or嫁(教師陣営)