目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
次回は来週の水曜日に更新いたしますので、ご理解の程よろしくお願いします。
127.遺伝の記憶
夢を見た。
どこか穏やかで、だけど何だか寂しくて、それでいて温かい夢。
優しく日差しが差し込む中、視界に映るのは握り飯とお茶が乗っている小さなお盆。
映り込む手はゴツゴツとしていて、完全に男性のものであるとわかるものだった。
畳が広がる一室には、1人の女性が眠っている。
縁側には長い髪を一つにまとめた一人の男性が座っており、両耳に花札を思わせる飾りが揺れていた。
あ、これ、記憶だ。遺伝した記憶・・・・・・。
一瞬だけ浮かんだ一つの物語。原作に含まれていた、遥か昔から伝わって来た記憶の話を思い出し、これが遺伝した記憶であることを把握する。
同時に私は、本当にこの世界の血を流し、この世界に自身が組み込まれている存在なのだと思い知る。
この記憶は本来、炭治郎が見るはずだったもの。だけど、私がそれを見ると言うことは、完全に私は、この世界の重要な歯車であると言うことだ。
どうしてそんなことになったのか・・・・・・疑問が浮かんでは消えるを繰り返す間も、記憶の景色は流れ続けた。
「お茶が入りましたよ。」
「ああ。ありがとう。」
縁側に座る男性・・・・・・継国縁壱さんに話しかける私達竈門家の先祖たる男性、炭吉さんは、赤子を抱く縁壱さんの隣に腰をかける。
まるで、炭吉さんになったかのような感覚を覚えながら、流れている景色を見つめていると、炭吉さんが縁壱さんの腕に視線を落とした。
「いやあ、よく寝てるなあ。」
穏やかな声音で紡がれる言葉はひだまりのように温かく、縁壱さんの腕の中で眠る小さな命に確かな愛しさを向けているとわかるものだった。
しかし、温もりにあふれた穏やかな気持ちは、唐突に申し訳ないと言う気持ちへと変わる。
「すみませんね、女房も寝てしまったようで。本当に申し訳ない。客人に子守をさせてしまって。」
表情は笑顔に溢れているが、確かな謝意を感じ取ることができる声音。
言われてみれば確かに、客人に子守をかせてしまうのはなかなかにおかしな話だ。
しかし、客人であれ任せることができると言うのは、それだけ炭吉さんたちが縁壱さんを信頼している証拠でもあり、縁壱さんがどれだけ優しく誠実な人であるかを示すものでもあった。
「気にするな。疲れているのだろう。子供を産んで育てるのは大変なことだ。」
淡々と、だけど、穏やかさを感じ取れる声音で言葉を紡ぎながら、縁壱さんはおぼんの上に乗せられいた湯呑みに手を伸ばす。
「これを飲んだら私は出ていく。ただで飯を食い続けるのも忍びない。」
縁壱さんの言葉に、炭吉さん・・・・・・の記憶に刻まれている感情である驚きと困惑、それと寂しさを感じ取る。
原作でも提示されていた。彼がいなくては、自分たちはこうして穏やかに暮らすことができなかったと言う強い恩義があると。
だからこそ、そのお礼の一貫として何度も食事を振る舞っていたのだったか。
「そんな!あなたは命の恩人だ。あなたがいなければ、俺たちどころかこの子も生まれていなかった。」
どこか必死に呼び止めるように、炭吉さんが縁壱さんに声をかける。
しかし、縁壱さんはそんな炭吉さんの言葉に何かを返すこともなく、湯呑みのお茶に口をつけた。
炭吉さんから、どこか諦観したような感情を感じ取る。きっと、この人は足を止めてくれない・・・・・・きっと、そう思ったのだろう。
「・・・・・・わかりました。ならばせめて、あなたのことを後世に伝えます。」
しばしの無言のあと、炭吉さんが決意したような声音でせめて後世に残させてほしいと口にした。
自分たちがこうして子孫を残すことができたのは、一人の恩人がいてくれたからだと伝えたいと言う気持ちが強く湧き上がる。
「必要ない。」
だが、縁壱さんはそんな炭吉さんの言葉をキッパリと断った。
同時に縁壱さんから感じ取れたのは、深い悲しみと怒り、そして、確かな虚しさと言う感情だった。
・・・・・・炭吉さんは、なおも食い下がるように言葉を紡ぐが、必要ないの一点張り。
何度か口を開こうとするが、それは、縁壱さんの自身の名を呼ぶ静かな声音により閉ざされる。
「道を極めた者が行き着く場所は
お前には、私が何か特別な人間のように見えているらしいが、私は大切なものを何一つ守れず、人生において為すべきことを為せなかった者だ。」
炭吉さんは、そんな縁壱さんの背中を見つめながら言葉を失い、ただ、虚しさと悲しみを宿すことしかできなかった。
☽❀☾
・・・・・・不意に、自身の意識が浮上する。
従うようにして瞼を開ければ、そこには見慣れない天井が広がっていた。
そういえば、遊郭での争いを終えた後、煉獄さん・・・・・・杏寿郎さんの提案のもと、槇寿郎さんたちにも炭治郎と禰豆子の話をして、別邸からこっちに引っ越したんだっけ・・・・・・未だにぼーっとする頭の中で考えながら、私は静かに起き上がる。
外はまだ仄暗く、完全に夜が明けていないことを知らせていた。
「・・・・・・まだ眠れる時間だけど、変に目が覚めちゃったな。」
少しだけ溜め息を吐きたくなりながらも、私は静かに立ち上がる。
炭治郎と禰豆子はぐっすりと眠っている。これならば、二人が起きてついてくることはないだろう。
そんなことを思いながら、私は音を立てないように自室として使わせてもらっていた部屋から縁側に出る。
夢の中とは違って太陽はなく、その代わりに星が瞬いている。
そんな景色を見つめながら、私は脳裏に先程夢として見たどことなくリアリティのある記憶を思い出す。
自分には何の価値もない・・・・・・最愛の女性も、最愛の女性の中でしっかりと育っていたはずの胎の子も、共に同じ方角を見ていると信じてやまなかった大切な兄弟も、彼は助けることができなかった。両手からこぼれ落とすことしかできなかった。
その上、鬼の王を見つけ出すことができたにも関わらず、それを滅殺することもできなかった・・・・・・。
きっと、彼はたくさんのものを取りこぼしてしまったから、確かな力があったはずなのに、何も為し遂げることができなかったから、自分のことを無価値だと決めつけ、同時に責め立ててしまったのだろう。
「・・・・・・そんなことないですよ、縁壱さん。確かに、あなたはたくさんのものを取りこぼしてしまいました。ですが、それと同じくらい未来に繋げる確かなものを残しています。」
あなたがいたからこそ、鬼殺隊は呼吸を扱うための知識を手に入れた。
あなたがいたからこそ、私はこうしてこの世界に生まれ、未来を歩くための道筋を手に入れた。
あなたがいたからこそ、あなたが残してくれたからこそ、最後の最後で鬼舞辻無惨に一矢報いるための痕跡を用意することができた。
他にも、あなたにはたくさんの人が救われて、たくさんの人が未来へと何かを残すことができたんです。
「自責の念に駆られるなとは言いません。人間、誰しも生きていればたくさんの後悔を、悔恨を、この世界に刻んでいく生き物ですから。
ですが、何も為せなかったとは言わないで。あなたがいたからこそ、使命を果たせる手立てが今に残っているのですから。」
誰かに告げるわけでもなく、風に聞かせるように言葉を紡げば、そよそよと緩やかな風が吹き、私の頬を撫で付ける。
それを感じ取るように、静かに瞼を閉じていると、嗅ぎ慣れている一つの匂いが流れて来た。
「優緋?何をしているんだ、こんな時間に。まだ、ゆっくりと眠れる時間のはずだぞ。」
匂いがした方へと視線を向けてみれば、そこには鬼狩りの仕事から帰還した杏寿郎さんの姿があった。
私の姿を見つめるなり、彼は困惑したように瞬きを繰り返す。
「杏寿郎さん・・・・・・。すみません。驚かしてしまいましたね。実はちょっと、悲しい夢を見てしまったもので。」
どことなく幼い雰囲気を見せている杏寿郎さんの質問に、私は素直に悲しい夢を見たことを告げる。
正確には夢というよりは、竈門家の先祖であった一人の男性から遺伝してしていた記憶を見ていたのだが、刀鍛冶の里編で、霞柱である時透無一郎の鎹鴉である銀子が口にしていた通り、あまりにも突拍子がなく、非現実的な話でしかないため、あえて夢としてはぐらかす。
「夢見が悪かったのか?」
「ええ。すごく悲しくて、寂しい夢でした。どんな夢だったかは曖昧ですが悲しみと寂しさがずっと胸を渦巻いていて・・・・・・」
嘘と真を織り交ぜながら、何があったのかを説明すれば、杏寿郎さんは小さく「そうか・・・・・・」と呟いた。
しかし、すぐに縁側に座る私のもとに歩み寄り、そのまま大きな手で頭を撫でて来た。
「夢見が悪かったならば、確かにすぐには寝付けないかもしれないな。俺も、何回か似たような経験がある。
だが、鬼殺隊は体をしっかりと休ませることも仕事だ。少しだけ夜風に当たった後、ちゃんと布団に戻りなさい。
布団に入って目を瞑っていればそのまま眠ることもあるだろうからな。」
「・・・・・・はい。そうします。」
「・・・・・・・・・。」
短く返事をしたのち、再び日中とは違う色に染め上げられている空を見上げる。
すると、杏寿郎さんから物言いたげな雰囲気を感じ取れた。
「杏寿郎さん?」
「・・・・・・・・・よし。」
不思議に思って杏寿郎さんに声をかけると、彼は何か考え込むような様子を見せた。
そして、何かを思いついたように頷いて、自身が羽織っている羽織を私の肩にかけてきた。
「君は、放っておいたらこのまま朝を迎えていそうだからな。俺の羽織で悪いが、それを羽織っておきなさい。
どの時期であっても、夜風はかなり冷えるからな。風邪を引いてしまっては大変だ。竈門少年と竈門少女も心配してしまう」
「・・・・・・ありがとうございます。」
炎柱になった煉獄家の人間が必ず羽織ると言われている大切な羽織をかけてもらえるとは思わず、驚きながらも感謝を述べると、煉獄さんは笑顔を見せて立ち去っていく。
任務から帰って来たばかりだから、湯浴みにでも向かうのだろう。まぁ、鬼との戦闘があったのだから、砂埃などを浴びても・・・・・・いや、杏寿郎さんの場合、一瞬で終わらせちゃうな、うん。
炎の呼吸が使えるようになったあと、かなり早い段階で柱である彼の任務に同行していたから、その度に一瞬で灰燼と化す鬼を何度も見て来たし。
となると、長期の移動などでかいたであろう汗を流してくるのだろうか?何にせよ、ゆっくりしてほしいものだ。
「・・・・・・・・・。」
そんなことを思いながら、私は自身の肩にかかっている羽織に視線を落とす。
さっきまで羽織られていたためか、羽織の内側はほんのりと暖かく、長く使われている影響か、杏寿郎さんの匂いがかなりついていた。
わずかながらに違う匂いがあるが、多分、これは槇寿郎さんの物だろう。
本当に、この羽織は代々、煉獄家と共に歴史を歩いて来たんだな。
「・・・・・・別に、自ら嗅いでるわけじゃないけど、嗅覚が明らかに鋭くなったこの体に生まれた影響か、羽織っているだけでしっかり匂いがわかってしまうな。」
嗅覚が鋭いのも考えものだと思いながら、私はかけられている羽織を握り、そっと広がっていた前を閉じる。
その瞬間、現在の持ち主である杏寿郎さんの匂いが一気に入り込んできたが、変に意識しないようにと無関心を貫いた。
しかし、程なくして羽織に残った温もりと、側に居させてくれる杏寿郎さんの匂いによる落ち着きの影響か、ウトウトと眠気が誘発される。
杏寿郎さんに羽織を返さないと・・・・・・眠気を耐えるように意識を強く保とうとするが、眠気の方が上回り、瞼はあっけなく落とされた。
☽❀☾
「優緋?」
汗を流すために湯浴みへと向かい、そろそろ自身の継子は眠っている頃だろうかと思いながら、実家でもある炎柱邸の廊下を歩いていた煉獄は、次第に見えてきた自身の継子の姿に目を丸くする。
風邪を引いたら大変だと思い、少しでも体を冷やしすぎないようにと貸した羽織。
彼の継子である竈門優緋は、それに包まるようにして、縁側で横になっていたのだ。
まさか体調を崩していたのではと心配し、慌てて彼女に近寄ったが、聞こえてきたのは穏やかな寝息。
そのことにホッとしながらも、煉獄は眠る優緋に視線を向ける。
「優緋。ここで眠っては風邪を引いてしまうぞ。寝るなら布団の中で寝なさい。」
自身より小柄な体にそっと触れ、声をかけながら優しく揺する。
しかし、あどけない寝顔を晒して目を閉じる少女は完全に眠ってしまっているのか、起きることはなかった。
そのことに少しだけ苦笑いをこぼした煉獄だが、夢見が悪かったせいで目を覚ましてしまった少女が気持ち良さげに眠っているのに、起こしてしまうのは酷だと思い、その体をそっと抱き上げる。
「・・・・・・む?」
「あ、れんごくさん。おかえりなさい。」
「ああ。ただいま、竈門少年。竈門少女。」
静かに彼女に使わせている部屋に足を運ぶと、そこには目を覚ましてしまったらしい優緋の家族、炭治郎と禰豆子に出迎えられる。
慣れた様子で挨拶を返した煉獄は、抱えていた優緋を布団の中にそっと横たわらせた。
「あれ、ねえちゃん?・・・・・・なにか、あったんですか?」
「うー・・・・・・」
まさか、自分たちの姉が世話になっている人に運ばれてくるとは思わなかったのか、炭治郎と禰豆子は驚いた様子で煉獄へと視線を向ける。
二人の少年少女に目を向けられた煉獄は、口元に小さく笑みを浮かべながら、彼らの姉である継子の頭を優しく撫でた。
「どうやら、夢見が悪かったようでな。先程まで縁側で夜風に当たっていたんだ。
だから、しばらく夜風に当たったら、すぐに布団に戻るようにと言ったのだが・・・・・・どうやらそのまま眠ってしまったようでな。」
優緋を運んできた理由を炭治郎たちに説明しながらも、煉獄は優緋に視線を落とす。
自身が貸した羽織を掴んだまま眠ってしまった彼女の姿は、幼なさが際立つ印象があった。
「・・・・・・羽織はこのまま貸しておいた方が良さそうだな。」
「そうですね・・・・・・ねえちゃんからは、なんだかすごくおちついているにおいがします。
れんごくさんさえよければ、このままねえちゃんにはおりをかしておいてくれますか?」
話し始めた頃に比べ、流暢に言葉を紡ぎながら聞いてくる炭治郎に、煉獄は小さく頷き返し、羽織を握りしめたまま眠る優緋の上に布団をそっとかける。
炎を思わせる暖色の瞳には、穏やかな温もりある光が宿っていた。
なんとなく思ったのですが、皆さんはキメ学時空の優緋はどんな立場で想像しますか?
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