目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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13.藤襲山の最終選別

 鱗滝さんの自宅から離れ、しばらくした頃。

 私の嗅覚は、藤の花の匂いを強く感じ取った。

 

 顔を上げてみると、そこには美しく咲き誇る満開の藤の花。

 

「おお……。」

 

 思わず感嘆の声を上げる。

 ここまで満開の藤の花が咲いてる場所なんて、テレビでしか観たことがない。

 まぁ、今の時期は咲く時期じゃないんだけどさ。

 

 でも、これだけ咲き誇っているのをみるとあれだな。

 花見とかしたくなる。

 炭治郎と禰豆子が人間に戻ったあととかに、藤の花や桜の花が咲き誇るような場所に、花見でもしに行こうかね……。

 

 そんなことを考えながら、私は藤襲山の中腹を目指してゆっくりと歩みを進めた。

 

 ………少しして、私は藤襲山の中腹にたどり着く。

 そこには二十人前後の子供たちが集まっており、皆、腰に育手から受け取ったのであろう日輪刀を携えていた。

 

 辺りをきょろきょろと見渡す。

 視界に入ったのは目立つ金髪の少年善逸。

 ガタガタと震えているようだ。

 

 次に視界に入ったのは不死川玄弥。

 風柱である不死川実弥の実弟で、呼吸を使うことができない少年。

 鬼喰いという力を使って戦う中、彼が送る最期は……。

 それをなんとか回避できればいいのだけど、さて、どうするべきか。

 

 最後に視界に入ったのは、今回の集まりの中の女の一人である栗花落カナヲ。

 蝶々と戯れながら過ごしている。

 

(ここから最後には五人に減るのか……。できることならみんな助けたいところではあるけど、それができるほど私は器用じゃない。多分、原作通りの人数となるだろう。)

 

 助けられるものならば助けたいけど、全部が全部抱え込んでいたら、必ず手からこぼれ落ちてしまう命もある。

 それが、重要な人物だったり、炭治郎や禰豆子だったり……その可能性がわずかにでもあるのだとしたら、得策とは言えない。

 

(……何度も見たことある二次創作に含まれているオリジナル主人公のように振る舞えたらどれだけいいことかと思わなくもない。でも、私が持ち合わせているのは原作知識と、ほんの少し高い身体能力のみ。)

 

 結局、二年間で痣を発現させることはできなかった。

 あの世界にも入ることができていない。

 今まで見てきたオリジナルの主人公たちのように、私は天才じゃない。

 そりゃ、ヒノカミ神楽を実用化することはできたさ。

 水の呼吸もしっかりと身につけた。

 でも、所詮はそれだけであって、結局は炭治郎よりちょっと強い程度にしかなれていないと思う。

 知識があったから、実用化まではできただけ。

 それ以外は全くできていない。

 完全なる最強にまでは至ってない。

 

(こんなんで煉獄さんを助けることできんのかな……。不安でしょうがないんだけど……。)

 

 いや、弱気になってる場合じゃないな。

 できるのかなじゃない。

 やらなきゃいけないんだ。

 私に遺言を残して去るなんて許さない。

 自分自身で言葉を伝えて、家族団欒を迎えろって話だ。

 

(弱気になるな優緋。最終選別を乗り越えたあと、しっかりと鍛錬を怠らずにヒノカミ神楽の練度上げを行えば、きっと痣も発現することができる。炭治郎も父さんも身につけることができたんだ。必ずたどり着くべき場所にたどり着くことはできる。緑壱さんが言っていた通り、彼らを越えることも可能になるはずだ。彼らも果てに行き着いたように。)

 

 心の中で自分自身に喝を入れる。

 今から弱気になっていては何も始まらない。

 後退し、停滞していくだけなのだから。

 

 だから今は、やることなすことをしっかりと終わらせるんだ。

 二度と鱗滝さんを悲しませないように、錆兎と真菰……他にも失われた多くの鱗滝一門全員が安心して休めるように。

 そして……二度とこの最終選別で、残虐なまでの結末を迎える子供たちを出さないために。

 

「皆さま。」

 

 目を閉じて自分のやるべきことを再認識していると、不意に幼い声が辺りに響いた。

 ゆっくりと目を開けて声の方を向いてみると、そこにはよく似た二人の子供の姿があった。

 

 産屋敷輝利哉と、産屋敷かなた……。

 最終決戦では、鬼殺隊全員のサポートを行い、最後まで生き抜いた幼子たち。

 そういえば、二人が案内役だったな、と少しだけ考えながらも、私は二人の話を聞く。

 

「今宵は最終選別にお集まりくださってありがとうございます。この藤襲山には、鬼殺の剣士様方が生け捕りにした鬼が閉じ込めてあり、外に出ることはできません。」

 

「山の麓から中腹にかけて、鬼共の嫌う藤の花が一年中狂い咲いているからでございます。」

 

「しかし、ここから先には藤の花は咲いておりませんから鬼共がおります。この中で七日間生き抜く。」

 

「それが、最終選別の合格条件でございます。では、行ってらっしゃいませ。」

 

 最後まで話を聞いた私は、山の中へと次々入っていく剣士の卵たちに続くカタチで山の奥へと足を運ぶ。

 ……確か、最初は雑魚鬼二体と鉢合わせるはずだったけど。

 

「オイオイ!! てめぇは向こうに行け!! 俺がコイツを喰う!!」

 

「いや貴様がうせろ!! 俺の獲物だぞ!!」

 

「黙れ!!」

 

「………ああ、やっぱりか。」

 

 しばらく歩いていれば、茂みの方から声が聞こえてきた。

 同時に突き刺さる殺気と敵意……だが、それを放っていながらも、口喧嘩をしている二体の鬼にやれやれと小さく溜息を吐く。

 めんどくさいと思いながらも、私はすぐに水の呼吸を行っては、襲いかかってくる前に技を放つ。

 

「獲物を前にして、どっちが喰うかなんて口喧嘩をするなんて、馬鹿馬鹿しいにもほどがある。」

 

 “水の呼吸 肆ノ型 打ち潮”

 

 隙の糸が見えまくりの雑魚鬼相手に肆ノ型を容赦なく放つ。

 

「ゲッ!!!?」

 

「ガッ!!!?」

 

 流れるように放ったそれは、雑魚鬼二体の頸へと吸い込まれるように叩き込まれる。

 二体の鬼は短い悲鳴を上げながら、そのまま塵となって消えていった。

 

「油断してるからだよアホ。言い争ってる間に頸斬られちまうとか、呆気なさすぎ。」

 

 呆れたように言葉を紡ぐが、その声を聞く者は誰一人としていない。

 まぁ、誰かに聞かせるつもりはなかったし、別に構わないけどさ。

 

「………来たか。」

 

 そんなことを考えていると、鼻につくような刺激臭を私の嗅覚は捉えた。

 間違いなくこれは、手鬼の匂いだ。

 ここまで匂いがきついのかよ、と少しだけ気分が悪くなった。

 けど、すぐに頭を切り替える。

 

 手鬼は絶対に始末しなくてはならないから。

 

「うわァァァ!!」

 

「!!」

 

 自ら出向くかと考える中、一人の少年の悲鳴が辺りに響き渡った。

 視線をそちらに向けてみると、恐怖に呑まれ、顔を真っ青にしている少年がいる。

 

「何で大型の異形がいるんだよ!! 聞いてないこんなの!!」

 

 少年はある一点を見つめながら叫ぶ。

 彼と同じ方に目を向けてみれば、そこにはあの手鬼の姿が。

 

「思った以上にでかい上、肌質がかなり硬そうだな。」

 

 素直な感想を漏らしながら、私は鞘に収めていた日輪刀に手をかけ、足に力を入れる。

 

「ギャアアァッ!!」

 

 少年が手鬼に足を掴まれ宙吊りにされる。

 アニメで見た通り、手鬼は少年を喰らおうと、自身の口がある方へと引き寄せる。

 

「させるかよ。」

 

 “水の呼吸 弐ノ型 水車”

 

 地面を強く蹴り上げて、一気に手鬼との距離を近づけた私は、そのままジャンプして回転斬りをかます。

 ……これ、連続でくるくる回ったら某RPGの裂空斬だな。

 上手くしたら真空裂斬もできそう。

 

 呑気なことを考えながらも、手鬼の手から離れた少年を空中受け身を取りながら蹴り飛ばす。

 少しでも距離を取ってもらわないと正直邪魔。

 

「いでっ!!」

 

「受け身くらいとれよ。習ったろうに。」

 

 背中から落下した少年に呆れながら声をかける。

 

「確かに習ったけど混乱してる中できるわけあるか!!」

 

「あっそう。じゃあ鬼殺隊に向いてないなそれ。鬼との戦闘は急な襲撃とか当たり前にあるようだし、混乱して受け身取れないとか技が使えないとか致命的なことだと思うよ?」

 

「う……うるさい!! それくらいわかってるんだよ!!」

 

 言葉を言い返してくる少年を放置して、私は手鬼に目を向ける。

 見えない位置から急にやってきた剣士に呆気にとられている様子の手鬼。

 だが、こいつはすぐに私が頭につけている狐の面に目を向けては、ニタリと嫌な笑みを浮かべた。

 

「また来たな。俺の可愛い狐が。」

 

 紡がれた言葉に悪寒がした。

 こいつの声は某戦ゲームの赤い虎に仕えるオカンだけど。

 ……っていうか、予想はしていたけどさ。

 やっぱりこの世界の鬼や人間たちの声帯って、アニメ版鬼滅の刃のと全く同じ声帯なんだな。

 

 

 

 

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