目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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131.少しでも君を救えたら

 獪岳と共に行動を取ることになってしまうと言うまさかの事態に見舞われながらも、鬼がいるとされている森の中を歩き回る。

 善逸や伊之助、杏寿郎さんや宇髄さんのように、彼は私に積極的に話しかけてきたりはしない。

 まぁ、彼とはこれっきりになる可能性の方が高い上、話せるような内容など持ち合わせていないため、仕方ないといえば仕方ないだろう。

 別に、気まずいような沈黙ではないため、不満などはなかった。ただ、少しだけ気になるのは・・・・・・

 

 ─────・・・・・・やっぱり、何か劣等感とか焦りとか、さまざまなことに対する苛立ちの匂いがするんだよね。

 

 一緒に行動を取ることになった獪岳からするマイナスの感情と焦りの匂いが少し強く感じてしまうことだろうか。

 

 ・・・・・・獪岳は努力家だ。自身に呼吸を教えてくれた桑島さんの期待に応えられるようにと必死に血反吐を吐くような思いで教えられたことを身につけようとしていた。

 だけど、雷の呼吸の壱ノ型である霹靂一閃だけは使用することができず、他の型しか身につけることができなかった。

 弟弟子である善逸が、霹靂一閃しか使えない剣士。自身が霹靂一閃以外が使える剣士。どちらも使える技、使えない技があるために、彼らを育てていた元鳴柱の桑島さんからは、二人揃って自身の後継にされてしまう状態だった。

 

 でも、人一倍努力家で、誰よりも真面目で、沢山頑張っているのにと思っていた獪岳は、それが納得いかなかった。

 一つのことしかできない善逸と、一つ以外は全てできる獪岳だったこともあり、きっと、彼は善逸よりも才能があると自負していたところもあるのだろう。

 なのに、彼は一つのことしかできない善逸と、同列の扱いをされることとなってしまい、その現実は、彼の自尊心に明確な傷を残してしまった。

 

 ─────・・・・・・私がどうこう言って、何か変わるかと言われたら、わからないし、逆に、獪岳から鬱陶しいと思われる可能性も大いにある。

 

 幸せを受け止めるための箱の底に穴を開けてしまい、決して満たされない心を持ち合わせてしまった獪岳。

 できることなら彼にも、暖かい未来を歩いてほしいけど・・・・・・

 

「・・・・・・鬼が近いね。」

 

「!・・・・・・わかるのか?」

 

「鬼は血の匂いが強いんだよ。同時に、悪意というか、何というか、ひたすらに不快感しか感じ取れない匂いがある。」

 

「・・・・・・お前も、アイツと同じで五感が鋭いんだな。」

 

「アイツ?」

 

「・・・・・・俺と同じ育手の元にいたカスだ。壱ノ型しか使えねー、な。」

 

 ・・・・・・まさか、獪岳の方から善逸の話が聞けるとは思いもよらず、少しだけ私は目を丸くする。

 しかし、すぐに表情を悟られないように戻し、獪岳に視線を向けた。

 

「壱ノ型しか使えない・・・・・・変わった剣士もいるんだね。」

 

「ああ。」

 

「随分と不満というか、強い苛立ちの匂いがするね。気に入らないんだ、その剣士のこと。」

 

「・・・・・・本当、お前には考えが筒抜けのようだな。」

 

 感情を徹底的に見抜かれるからか、獪岳から少しだけ不快感や苛立ち、焦りなどを感じている複雑な匂いがする。

 そのことに軽く肩をすくめた私は、鬼がいる場所へとすぐに当たりをつけ、その方角へと視線を向けた。

 

「見つけた。さて、それじゃあ行こうか、獪岳。」

 

「・・・・・・ああ。」

 

 私の言葉に頷いた獪岳に小さく笑いながら、私は鬼がいる方角へと走り出す。

 ・・・・・・さて、彼が壱ノ型を使えない原因を少しばかり確かめてみるとしましょうか。

 

 

 

 

 

           ☽❀☾

 

 

 

 

 

 ・・・・・・獪岳とこなすことになった任務の鬼は、十二鬼月と交戦した私からしたら、遥かに弱いものだった。

 だが、通常の鬼に比べたら遥かに強力な鬼であることに変わりはなく、妓夫太郎さんと堕姫ちゃんを斬ったことにより甲となった私に当てられた任務であるというのがすぐにわかるものだった。

 使ってくる血鬼術は植物系。幻惑のようなものは使ってこないが、植物の蔓だったり、木の根のようなものだったり、多種多様の植物に関連するものを使用してくる。

 

「なんなんだこいつ!?」

 

「あ〜・・・・・・多分、私が甲だから当てられた任務だったみたいだね。」

 

「はぁ!?お前甲の隊士かよ!?」

 

「現役の柱に連れ回されていたからね。その分鬼をかなり狩ってるから位が高くなってるんだ。まぁ、安心してよ。獪岳に無理をさせたりはしない。厳しいと判断したら、すぐに撤退してくれて構わないから。」

 

「っ!!」

 

 私の言葉に、獪岳が一瞬言葉を詰まらせる。

 必要ならば撤退して構わない・・・・・・私を置いて逃げろと言っているようなものだからか、何を言っていいかわからなくなったのだろう。

 

 そんな風に獪岳の様子を冷静に分析しながらも、飛ばされてくる種のようなものは食らわないように切り捨てる。

 ・・・・・・明らかに毒と思われる異臭がある。それを回避するために、種を切り捨てれば、今度は毒を纏う根のようなものが飛び出し、自身を狙って飛んでくるという二段構え・・・・・・さらに言うと、それを飛ばせる数はかなり多く、一つ防ぐことが出来たところで、切り逃したそれを食らう確率がかなり高い。

 種を斬ったからと言って安心はできないとは、中堅辺りでも厳しいものがあるかもしれない。

 ただ、根のようなそれも切り捨てることが出来た場合、効力は完全に失われるのか、塵芥となり消えていく。

 

「・・・・・・なるほどね。獪岳。飛ばされてくる種に気をつけて。種には毒を帯びた根のようなものがある。恐らくだけど、食らったら毒を浴びて、そのまま種が体に入り込む感じになるね。

 これから推測できるのは、使われている毒は神経毒。体を麻痺させて動きを封じるためのもの。

 そして、種を斬りつけると飛び出してくる根の様子から、本体は種ではなくその根だ。

 体に入り込んだら、動けなくなってる人間の体に根がはり、そのまま養分として命諸々持っていかれる。

 種を斬りつけたあと、すぐに根も斬りつければ、効力は失われて消滅するみたいだね。」

 

「!?そうか・・・・・・!!わかった!!」

 

 鬼の攻撃を次々と防ぎながら血鬼術の効能を分析し、逃げる様子がない獪岳に伝えれば、彼はすぐに把握できたことを返事で伝えてきて、飛ばされてくる種子や根を切り飛ばしていく。

 うん。動きは悪くない。分析力に長けている甲の剣士がいる分、獪岳も多少なりとも戦いやすいようだ。

 ただ、動きは見るからに慎重なところがあるようで、攻めの姿勢になれていない。

 

 そんな中、ふと原作の獪岳を思い出す。彼の思考は、どちらかというと、他人より自分優先で、生きるためならどんなことでもしてしまう狡賢さがある。

 悲鳴嶼さんが孤児たちと暮らしていたお寺にある金を盗むことだってするし、出会した鬼から自身の命を守るために、寺にいた悲鳴嶼さんと他の孤児たちを生贄に差し出すことだってするし、上弦の壱である黒死牟に命乞いをして、鬼になる道を選ぶことだってするくらいに。

 

 生きていればどれだけ悪い方向に傾いていても、いつかはいい方向に向かい、自身の安寧を手に入れることすらできると信じた。

 生きてさえいれば、自身を認めてくれる存在に出会えると信じた。

 

 ─────・・・・・・生きてさえいればなんとかなる。とにかく生きて生きて生き続けて、いつか掴めるはずの勝利を、自身を認めてくれる存在を探し続けた。だけど、彼が鬼になってしまうまで、その存在に出会うことはなく、結果、自分より先に成長を遂げた弟弟子に討たれることとなってしまった。

 

 そこまで考えながら、私は鬼から放たれている攻撃をさっさと切り払っていく。

 何やら、こっちの方に攻撃の目がかなり向いているようだが、獪岳・・・・・・の方はあまり狙われていないな。

 女だから狙ってきているのか、それとも強い人間を先に潰すことを考えているのか・・・・・・なんにせよ・・・・・・

 

「・・・・・・鬱陶しいことに変わりはないな。」

 

 溜め息を吐きたくなりながらも、私は炎の呼吸を使って鬼の四肢を斬り飛ばす。

 同時に自身の腰に下げていた巾着袋に手を突っ込み、その中にある爆薬丸を鬼めがけて投げつけた。

 上弦ほどではないが、そこそこある回復速度で片腕だけは取り戻した鬼が、反射的に投げつけられたそれを攻撃する。

 その瞬間、辺りに大きな爆発が発生し、藤の花の匂いが勢いよく広がった。

 

「頚を斬れ!!」

 

「!?」

 

 急な爆発に獪岳が驚いた様子を見せていたが、頚を斬るように声をかけてきた私の言葉に反応するなり、その場で刀を構えた。

 

 “雷の呼吸 肆ノ型 遠雷!!”

 

 同時に彼は地面を勢いよく蹴り飛ばし、藤の花の毒が含まれた爆薬により動きが鈍くなっていた鬼の頚を斬り飛ばした。

 頚を斬られた鬼は、断末魔を上げながら消滅する。それを確認した私は、手元にある日輪刀を鞘に戻し、塵芥となった鬼をぽかんとした表情で眺めている獪岳に歩み寄った。

 

「はい、お疲れさん。」

 

「あ・・・・・・ああ・・・・・・。お前、今、何を投げたんだ?」

 

「ん?」

 

 しどろもどろになりながらも、先程、私が何をしたのか聞いてきた獪岳に、何度か瞬きを返したのち、自身の腰にある巾着袋を手に取った。

 

「遊郭の鬼と衝突した時、音柱殿と一緒だったんだ。その時に音柱殿が使うこの爆薬丸を見て、それに藤の花の毒を混ぜることができたらもっと戦略に幅を広げられるのではって提案してね。

 そしたら、音柱殿と蟲柱殿の二人が共同で開発してくれたんだよ。それで、まずは柱と提案者である私が任務でこれを使用し、効能やどの鬼まで効果を発揮させることができるかの情報を集め、結果次第、順次他の隊士にも配給しようって話になってるんだ。」

 

 巾着袋を広げながら獪岳に見せると、彼は興味津々で巾着袋の中を覗き込んだ。

 薄紫色の爆薬丸が大量に入ってるのを見た獪岳は、一度私に視線を向ける。

 

「見てみたいなら手に取っていいよ。ただし、斬撃だけで爆発するし、見ての通りかなりの威力があるから、扱いは注意だけどね。」

 

「・・・・・・わかった。」

 

 その視線から、よく見てみたいと思っていることがわかったため、注意事項を口にしながらも、許可を出せば、彼は巾着袋の中から一つ、爆薬丸を手に取りマジマジと見つめ始める。

 

「・・・・・・こんなちっせぇ丸薬で、あそこまで爆発すんのか。」

 

「そうだよ。音柱殿のお手製でね。音の呼吸の名前の由来にもなってるものだよ。」

 

「なるほどな。でも、話を聞くに、これまでは藤の花の毒は入ってなかったんだろ?」

 

「みたいだね。だからこそ、頑丈な鬼にも通用するように、かなりの威力が出る特殊な配合がされてるんだってさ。

 で、今回のこれには、蟲柱殿が調合した藤の花の毒を混ぜ込み、なおかつ威力が落ちないように改良されたものだ。」

 

「ふぅん・・・・・・。」

 

 しばらく爆薬丸を見つめ、短い相槌や問いかけをしてきた獪岳は、手にしていた爆薬丸を巾着に戻した。

 短い感謝の言葉を口にしながら。

 

「「カアァアッ!!次ハ南南西!!南南西!!墓地ガアル山ノ中デ行方不明者ガ多発シテイルトノ情報アリィ!!」」

 

「「いきなりでかい声出すな!!」」

 

「「様式美ィ!!」」

 

 やっぱこの子、根は真面目なんだよな・・・・・・なんて思いながら、獪岳と話していると、天王寺と獪岳の鎹鴉が同時に次の任務を伝えてきた。

 落ち着いた空気の中で聞こえてきた賑やかな声に、思わず一緒になってツッコミを入れたが、天王寺たちは様式美だと口にして早く移動するように促してくる。

 

「・・・・・・これは、今日の任務は君と常に合同で向かうことになりそうだな。」

 

「仕方ねぇだろ。合流しちまったんだからな。さっさと行こうぜ、優緋。任務になってる以上、行かねぇわけにもいけねぇだろ。」

 

「!・・・・・・そうだね。さっさと終わらせようか、獪岳。」

 

 そんな二羽に溜め息を吐きそうになっていると、獪岳から名前を呼ばれ、早く次の場所に向かおうと告げられた。

 そのことに少しだけ驚きながらも、すぐに頷き返し、獪岳と一緒に今いる場所から移動する。

 少しでも彼と向き合い、できることなら、彼の心を少しでも満たしてあげられたらと願いながら。

 

 

 

なんとなく思ったのですが、皆さんはキメ学時空の優緋はどんな立場で想像しますか?

  • キメ学高等部(しのぶと同級生)
  • キメ学教師陣営
  • キメ学OB(ベーカリーのお手伝い)
  • キメ学OB(社会人として生活中)
  • 煉獄杏寿郎の恋人or嫁(教師陣営)
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