目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「・・・・・・お前は、この話を聞いても何とも思わねぇのかよ。」
本来ならば、怒られてもおかしくないことをしていたと言うのに、小さく笑ったまま話を聞いている優緋に、獪岳は混乱したように呟く。
どうして目の前の女は、こんな話を聞いても優しく向き合ってるんだと思いながら。
「そうだね。お金を盗んだことに関しては悪いことだと思うし、怒られたのも当然だと言える。
そのお金があるからこそ、子どもたちが食事を摂れたり、子どもたちを保護するための設備を維持することもできたわけだから、それを盗まれたとなると怒られても仕方ない。
ただ、子どもたちは子どもたちで、少し判断が早すぎたと思うよ。自分たちを育ててくれていた人にこのことを相談したりすることなく、獪岳を勝手に安全圏から追い出したのだから。
結局のところ、どちらも悪い。お金を盗んだ獪岳も、それを責め立て、大人に話すことなく、勝手に追い出してしまった子どもたちもね。」
自身の問いかけに対し、丁寧に答えを紡いでいく優緋に、獪岳は少しだけ無言になったあと俯いた。
「次に、自分が生き残るため、命を守るために、沢山の人がいる場所を人喰いの鬼に教えてしまったことに関してだけど、これに関しては、正直言って仕方ないとは思うよ。
もちろん、大量の犠牲者を出したことは事実だし、鬼殺隊側からしたら悪だと判断されるだろう。
でもね、私個人としては、鬼殺隊にいない人間が、鬼殺隊を知らなかった一般人が、その流れにしてしまうのは当然ではとも思うんだよ。
鬼は強くなること、そのために沢山の人を食べることを優先する。だから、生贄と言ったら言い方は悪いけど、自分一人を食らうより複数を喰らう方がいいだろうと案を出し、必要ならば手を貸すと告げると言う選択は、きっと、一時的な命の危機回避に使う人も少なく無い。
まぁ、稀血と呼ばれる特異性のある血を持つ人間が目の前にいたら、見逃してもらえない可能性の方が高いけどね。」
しかし、すぐに告げられた言葉を聞き、獪岳は目を見開いて顔を上げた。
話を聞いてくれていた優緋は、困ったように、仕方ないと言うように、穏やかな笑みを浮かべながら彼を見つめていた。
「人は誰しも、自分に危機があれば強い者につく。もちろん、中には抵抗し、衝突する人間もいるけど、それができるのはほんの一握りくらいだ。
獪岳の選択は、今ならば間違いだと断罪されるけど、かつての幼い一般人だった獪岳の場合は、断罪していいと言えるかと言うと微妙なところがある。
まぁ、柱の人はわからないけどね。厳しい人がほとんどだし、どのような処罰を出すかわからない。
でも、私は当時の獪岳が直面していた状況や、生きることを諦めないその性格から見て、その選択肢を出さないと言うのは難しいと思う。」
静かな声音で言葉を紡ぐ優緋に、獪岳は少しだけ俯く。まるで、自身に寄り添うように、小さな子どもに言い聞かせるように、穏やかな声音で紡がれる言葉に、獪岳は心地よさを感じていた。
自身の考えに悪いことではあると注意しながらも、自身の意見や考えを完全に否定することなく、少なからず受け止めてくれているために。
「話を戻そう。これらの考えや行動から見て、獪岳は誰よりも慎重で、沢山の事象・・・・・・起こりうることを考えて、自身の不利益が少ない方法を探して、問題を打破できる選択を選び取っているんだと思う。
きっと、獪岳は最善を選ぶことに思考を回し、生きるために一番必要な行動を選択するから、結果、納刀した状態で鬼に近寄ることを拒んでいるのかもしれないね。
壱ノ型を使おうとして近寄ったとして、鬼から反撃に遭って命を落としてしまったら・・・・・・近寄ったところで頚を斬ることができず、そのまま反撃されて逆に自身が死んでしまったら・・・・・・みたいな感じにね。」
獪岳と言う人間の性格を、考えを、聞いた話から掻い摘みながらも分析し、丁寧に仮説と言う名の答えを立てていく優緋。
獪岳は、そんな彼女を黙って見つめながらも、自身に向けられる赤色の瞳を捉え続けた。
「だから、生き残る中で最も安全かつ最善の方法を選び取るから、失敗した際に、相手からすぐに反撃される可能性が高いにも関わらず、相手の攻撃が届く範囲に納刀した状態で近寄らなくてはならない壱ノ型を本能的に使いたくないと避けている可能性がある。」
“自分で考えてみて、どう思う?”と、優しい声音で疑問を口にする優緋に、獪岳は少しだけ思案する。
言われてみれば、確かに生きていればいい方向に転ぶはずだから、どんな手を使ってでも生きなくてはと足掻いていたような・・・・・・そんな気がしたのだ。
しかし、仮にそうだとしたら疑問が残る。自身の後に桑島に呼吸を習うようになった善逸は、なぜ壱ノ型を使えるのかと言う疑問だ。
「じゃあ、カスは・・・・・・我妻善逸は、なんで壱ノ型が使えるんだ?」
急に現れては勝手に自分の弟弟子となり、自分よりも遥かに怖がりで、少しでも恐怖が上回れば意識を失ってしまうような、嫌なことがあれば逃げ回るような善逸が、なぜ、努力をしている自分が使えない壱ノ型を使えるのか・・・・・・浮かんだ疑問を口にした獪岳に、優緋は静かに言葉を返す。
「なるほど・・・・・・獪岳が言っていた、壱ノ型しか使えない剣士は善逸のことだったんだね。」
「・・・・・・アイツを知ってんのか。」
「知ってると言うよりは、度々任務が一緒になる子だよ。同時期に鬼殺隊に入ったからか、よく組まされていてね。」
告げられた言葉に、獪岳は少しだけ気分が沈む。善逸を知っていてほしくなかった・・・・・・そんな感情を抱きながら、優緋を静かに見つめ返した。
「これも、あくまで個人的な意見だけど、善逸の場合は多分、意識を失うことにより、鬼に対する恐怖心が一時的に抑えられるんじゃないかな?
同時に、やらなくてはやられると言う意識が強く出てくることにより、一瞬でカタをつけることができる壱ノ型をかなりの練度、速度で放てるようになる。
だけど、意識を失い、目を瞑ってしまう分、他の型が使用不可になってしまうんだと私は思うよ。
獪岳の動きを見たところ、他の型はしっかりと相手を見て放つ必要があると言うのに、意識を失った状態の善逸は、音で相手の動きや行動を判断しなくてはならない状態になってしまうから、他の型を放つことが難しくなる。
そう考えると辻褄は合うんだよ。まぁ、真偽は違うかもしれないけどね。」
“ただ、私はそう思うよ”、と自身の意見を告げてくる優緋に、獪岳は瞬きを繰り返す。
しかし、すぐに、確かに辻褄は合うかもしれないと思い、静かに頷き返す。
同時に、自身の課題は、鬼に対する恐怖をどうやって抑えるかによると考え、思案するように無言になった。
「・・・・・・ねぇ、獪岳。一つ、私から提案したいことがあるんだけどいいかな?」
「提案したいこと?」
「うん。まぁ、君自身はかなり嫌かもしれないけど、壱ノ型を使えるようになる可能性を上げることができる話だよ。」
壱ノ型を使えるようになる可能性が上がると聞き、獪岳は驚いたように優緋を見る。
彼女は口元に笑みを浮かべながら、彼のことを見据えていた。
「実はね。遊郭での戦いの時、善逸も一緒にいたんだけど、どうも彼は、私が支援役に徹しながら柱と並んで戦っている姿を見て、火がついちゃったみたいなんだ。
本来ならば、守らなくてはいけないはずの女の子に守られた上、かなりの負担をかけてしまったって思ったらしくてね。
それで、少しでも女の子の負担をなくすためにって、今、炎柱殿と音柱殿の二人から、時間がある時は訓練をつけてもらってるんだよ。
結果、彼は鬼を見ても意識を失わなくなり、同時に柱の任務に連れ回される中で実戦を重ね、柱から度々悪いところやできてないところを指摘されては修正をするを繰り返し、弐ノ型から陸ノ型の全部を、弱いながらも使用できるようになったんだ。」
「!?あのカスが他の型も使えるようになっただと!?」
驚いたように、怒鳴りつけるように、善逸が他の型を使えるようになったことに言及してきた獪岳に、優緋は静かに頷く。
そして、再び緩やかに口を開いた。
「獪岳に比べたら、威力はかなり弱いけど、補助程度には使えるようになってる。
そこで、獪岳も炎柱殿と音柱殿に少し相手をしてもらったらどうかと思ってね。
まぁ、負担が増えると言われたらそれまでだけど、その時は私の任務に同行したらいい。
私は、柱程的確でもないし、どこをどうしたらいいかを正確に指示を出せるかわからない・・・・・・けど、少しだけ違う視点を見ることができるから、その分、獪岳の動きを把握することができる。
それに、もし、壱ノ型が使えない時期が長引くのであれば、別の型を極めることに思考を変えたらいいしね。」
「・・・・・・別の型を極める?」
「そう。君が使える遠雷だよ。足腰をある程度鍛えることができたら、あの技を壱ノ型並みの速さに並べさせることができる可能性がある。
何度か鬼の頚を斬る時、私は使っていたでしょ?遠雷に似た、遠方から距離を詰めて斬りつける、不知火をね。」
“獪岳の目に、あの動きは見えていたかな?”と不敵に笑いながら言ってくる優緋に、獪岳は「あ・・・」と小さく声を漏らす。
自身の目に、炎の呼吸の壱ノ型である不知火を使っていた優緋の姿は全くと言っていい程に見えていなかったと。
「私に水の呼吸が合わず、炎の呼吸やうちに伝わっていた呼吸の方が合っていたように、呼吸の型にも合う合わないがある。
この型はしっかりと使えるのに、この型はどれだけやっても威力もなく上手くならないって感じにね。
それは、人によって筋肉の作られ方やつき方が全くと言っていい程に違うからなんだ。
人は誰しも同じ体質や筋肉量を持ち合わせているわけじゃない。人によって、それらは弱かったり、強かったりするし、鍛え難い、鍛えやすいなども発生する。
だから、場合によっては型を教えてもらっても使えない型になる可能性は十分過ぎる程にあると言うわけだ。」
穏やかに笑いながら言葉を紡ぐ優緋に、獪岳は黙って言葉に耳を傾ける。
彼女が口にする言葉、一つ一つは、獪岳の心に寄り添い、獪岳の全てを前に引っ張っていくものだった。
「これらを考慮すると、合わない型をがむしゃらになって習得するより、合う型をがむしゃらになって極めると言う選択肢を入れるのもありって話。
ただ、獪岳の性格からして、まずは使えるようになることへと挑戦しようと思うだろうからね。
それならそれで、私もできる限りの支援はするつもりだよ。柱程ではないけれど、一般隊士に比べたら体力も能力も高い方だと思うし、それくらいはできると思う。」
“もっとも、獪岳が私の任務についてこれるなら、だけどね”、と告げてくる優緋に、獪岳は何度か瞬きを繰り返す。
しかし、すぐに口元には笑みを浮かべ、言葉を口にした。
「上等だ。優緋が言ってる通り、柱に相手してもらえねぇ可能性は確かにあるからな。
それなら少しでもお前について回って力をつけるだけだ。実際、俺はお前の動きが全くと言っていい程に見えていなかった。
それだけで実力がどれだけ離れてるかすぐにわかる。だから、俺は優緋の任務についていきながら、自分のやれることを探る。
任務についてこれるならついてこいって言ったんだ。ちゃんと俺の動きも見とけよ。何が悪かったのか指摘してもらうからな。」
優緋からの提案を聞き、獪岳はそれを承諾する。
真っ直ぐと自身を見据えてくる獪岳の瞳に宿る晴れやかな光に、優緋は穏やかに笑うのだった。
なんとなく思ったのですが、皆さんはキメ学時空の優緋はどんな立場で想像しますか?
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