目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

140 / 175
140.二人の息抜き

 獪岳と町に出た私は、まず、彼が隠の人から教えてもらった甘味処へと向かった。

 彼が話を聞いたそこは、おすすめされるだけあって、かなり繁盛している場所だった。

 でも、店内に入って餡蜜にありつくことができ、食べてみたところ、確かにこれならばしばらく待ってしまいたくなるのも頷けると言える程、餡と蜜の甘さのバランスが取れており、一緒に入っていた白玉やフルーツの味も完璧だった。

 獪岳は餡蜜は甘すぎるからと、白玉ぜんざいを頼んでいたが、かなり美味しそうに食べていた。

 桃を丸齧りしながら善逸と話している姿が原作でも初出だったし、甘いものが嫌いというわけではないらしい。

 

 まぁ、餡蜜は確かに甘過ぎるかもな。餡子と黒蜜のせいで。

 フルーツが割とさっぱりしてるから、問題はないような気もするけど。

 

 ・・・・・・餡蜜と白玉ぜんざいを食べ終えたあとは、支払いでちょっと一悶着あった。

 私もお金をもらってるから自分が食べた分は自分で払うと言ったのに、獪岳が女に払わせられるかって言い返してきて、そのまま二人分の支払いを終わらせてしまったのだ。

 多目に給料入ったんなら、それは弟と妹のために取っとけとのことらしい。

 この時代って、あまり割り勘の概念ないのかな・・・・・・。

 

 ・・・・・・甘味処を出た後は、適当に町をぶらついた。元々私がいた時代に比べたら、はるかに娯楽はないけど、雑貨や反物を売ってるお店が充実していたり、書店のようなものがあったりと、退屈をしない設備は揃っているようだ。

 まぁ、スマホやゲームがあった時代から来た人間からすると、つまらないと思ってしまうようなことばかりだが、別段悪くない生活もできる。

 

 そんなことを考えながら、そう言えば、そろそろ髪をまとめるための紐が切れそうだったなと現在の状況を思い出し、獪岳に少しだけ雑貨屋に寄りたいことを伝えた。

 理由を話せばすぐに納得してくれたようで、それならと町の中にある雑貨屋に足を運んだ。

 

 入った雑貨屋は非常に品揃えが良く、私が求めているシンプルな髪留めだけでなく、派手な髪留めやオシャレな髪留め、かなり豪勢な簪など、さまざまなものが揃っていた。

 もちろん私はシンプルな髪留め一択を選び、それを複数購入することに。

 ・・・・・・店内には、少しだけ気になった簪や鏡とセットになってる櫛なんかもあったけど、今はそんなオシャレなものを持っていられるような状況じゃないし、買うのは鬼舞辻との決着をつけてからにすることにした。

 まぁ、とても綺麗なものだったし、きっと、決着がつく頃には売れてしまっているのだろうけど、それならそれで別のものを探せばいい。

 

 ・・・・・・雑貨屋で必要なものを買った私は、獪岳が行きたい場所があるならそこに向かおうと提案した。

 自分だけが買い物をする、行きたい店に寄る、と言うのは流石に獪岳に申し訳ないからね。

 彼の要望もしっかりと聞いてこそ平等になる。

 

 私の提案を聞いた獪岳はと言うと、それなら少しだけ書店に寄りたいと口にした。

 訓練をするのもいいが、訓練をしない間、もしくは休憩の間などで読める本があったら少しは息抜きになるからとのことだ。

 それならと私は獪岳と一緒に書店に向かった。この時代にはどんな本があるのだろうかと思いながら。

 

 たどり着いた書店は、なかなか趣のある場所だった。まぁ、平成や令和の時代の本屋に比べたら質素なもので静寂そのものではあったが、品揃えは悪くなく、小説から番付のようなものまで沢山あった。

 

 そんな中から獪岳が選んだのは数冊の小説。上巻、中巻、下巻の三部に分かれているもので、そこそこの厚さがあった。

 どんな内容なのか聞いてみたところ、一応は伝記ものだと言っていた。獪岳が読み終わったら借りてみようか・・・・・・そんなことを考えながら、再び町の散策に戻る。

 当てもなくブラブラ町を歩くのも、なかなか悪くないものである。

 

 

 

 

 

          ☽❀☾

 

 

 

 

 

 あれからと言うもの、私と獪岳は当てもなく町を歩き回り、気になる店があったら寄ってみるを繰り返し、最後は喫茶店でまさかのコーヒーと出会し、私はそれを飲んでいたが、獪岳からは怪訝な表情で見られてしまった・・・・・・。

 まぁ、見た目が泥水に見えるもんね。仕方ないね。

 

「うん。なかなかいい息抜きになったんじゃない?たまにはのんびりするのも悪くないね。」

 

「ああ。確かにな。いつもは訓練か任務しかしてなかったからな。久々にのんびりできた。」

 

「私が珈琲を飲んでいた時の獪岳の表情はなかなか面白かったよ。」

 

「面白がるんじゃねーよ・・・・・・。つか、珈琲ってなんなんだ?」

 

「豆から作られた飲み物としか・・・・・・。苦味が割と強かったかな。」

 

「よく飲めたよな、そんなもん・・・・・・」

 

 獪岳とのんびり話しながら、私は炎柱邸への帰路に着く。

 今日の出来事を一つ一つ思い出しながら、今回の息抜きはどうだったかの感想を口にするのも、お出かけの醍醐味と言えるだろう。

 

「新しい髪留めもしっかり買えたし、これでまた、安心して任務につけるよ。

 まぁ、任務が入るまではまだ時間がかかるだろうけど、焦って買いに行くよりはマシだよね。」

 

「そうだな。にしても、本当に優緋が今使ってる髪留め、随分と傷んでんな。」

 

「仕方ないよ。鬼殺隊に入ろうと決意して、元水柱だった育手の鱗滝さんから剣術を教えてもらう前からずっと使っていたからね。

 私の家は、家族が多かった分、下の子や、母さんのために炭焼きで入ったお金を回していたから、切れない限りは新調しなかったんだよ。

 今は鬼殺隊として生活する中で給料が入る分、定期的に新調することができて安心してるところ。

 この髪はあまり切りたくないからね。母さんや父さん、弟や妹たちが綺麗だって言ってくれた大切な宝物だから。」

 

 “ついでに鬼舞辻に対して嫌がらせできるし”・・・・・・と言うちょっとした本音は隠しながら、傷んだ髪留めに言及してきた獪岳の言葉に返答する。

 私の話を聞いていた獪岳は、「ふぅん・・・・・・」と短く答えながら、何かを考え込むような様子を見せた。

 

「ん?考え事?何かあった?」

 

「何かあった・・・・・・ってわけじゃねーけどよ・・・・・・」

 

 何か気になることでもあったのだろうかと思い、考え込む獪岳に声をかければ、彼はなんでもないと答えながらも、身にまとう着物の袂へと視線を向ける。

 不思議に思いながら獪岳を見つめていると、彼はしばらく無言になったあと、袂の中へと片手を突っ込んだ。

 

「・・・・・・折角綺麗だって褒められてんだ。たまにはこんなのつけて、弟たちに見せてやれ。

 お前のことだから、任務中に邪魔になるって言うだろうが、息抜きとか休みの時くらいはいいんじゃねーか?」

 

 そこから彼が取り出したのは、一つの贈り物用の袋で、彼は少しだけ私から目を逸らしながら、それを差し出してきた。

 何だ何だと思いながら、差し出されたそれを受け取ると、それなりの重量を感じ取る。

 

「何これ?」

 

「開けりゃわかる。」

 

 手渡された袋に関して言及すれば、開けろと短く返される。

 それに従うようにして、手渡された袋を開けてみれば、そこには藤の花がモチーフになっている簪と、桜の花があしらわれている髪飾り、それと、桔梗の花と月があしらわれている手鏡がセットになっている柘植の櫛が収められていた。

 それら全ては見覚えがあり、私は思わず目を見開く。

 

「これ・・・・・・」

 

「雑貨屋で見てただろ。でも、すぐに首を振って必要な髪留めを買いに行ってた。

 本当は買いたかったんだろ?でも、任務には適さねーって買わなかった。違うか?」

 

 まさか、獪岳に自分の行動を一通り見られていたとは思ってなかったため、驚いて顔を上げてみれば、彼は顔を赤くしながらも、私の方を見つめていた。

 

「何で・・・・・・高かっただろう・・・・・・?」

 

 買えない値段ではなかったが、間違いなくかなりの出費になるレベルのそれを、獪岳が買ってくれるなんて・・・・・・困惑しながら言葉を紡げば、獪岳は中にある簪を取り上げ、まとめてある私の髪にそれをつけ始めた。

 

「これくらい大した値段じゃねーよ。優緋について回っているせいで、俺もかなりの鬼を狩ってきたからな。

 その分、今回、お館様から届けられた手紙と一緒に明らかにこれまでの給与どころじゃねー金額が入っていたから、使い所を考えてたんだ。

 だから、ちょうどいいと思ってついでに買った。息抜きに付き合わせたのは俺だしな。その礼だ。」

 

 自身がこれらを買った理由を口にしながら、獪岳は私の髪を軽くいじる。

 そして、簪の飾りがぶつかり合い、シャラリと小さく音を鳴らす中、彼は静かに私から手を離した。

 

「・・・・・・なかなか似合ってるんじゃねーか?善逸辺りが見たらやかましくなりそうなくらいにはな。」

 

 ぶっきらぼうだけど、本心からであることがわかる匂いをまといながら、獪岳は簪をつけた私に対する感想を口にする。

 その姿に何度か瞬きをした私は、一緒に入っていた鏡を手に取り、自身の姿を少しだけ映す。

 

「・・・・・・そう?炭治郎たちも、喜んでくれるかな。」

 

 まさかのイケメンムーブをかましてきた獪岳に少しだけ気恥ずかしくなりながらも、鬼殺隊に入った際に諦めていたおしゃれを楽しめると言う状況に笑みを浮かべながら、炭治郎たちに見せたらどんな反応をするだろうかと口にする。

 

「あいつらも、自分の姉が少しでも着飾ることができるなら嬉しいと思うぞ。まぁ、別に似合ってねーわけじゃねーし、喜んでくれるんじゃねーか?」

 

「だとしたら嬉しいな。」

 

 自身でもわかるくらい穏やかな声音に、無意識のうちに笑みを浮かべる。

 簪や綺麗な髪飾りをつけるなんて、これまで考えたことなかったけど、たまにはいいかもしれない。

 

「・・・・・・ありがとう、獪岳。綺麗な贈り物をくれて。」

 

「・・・・・・それくらいしか、お前に感謝する方法が思いつかなかっただけだっつーの。

 ほら、さっさと帰るぞ。丸腰な上、動き難い格好してんだ。滅多にねーとは思うが、早く屋敷に帰った方が、鬼にも会わねーだろ。」

 

「そうだね。帰ろうか。夕餉の準備もしないといけないしね。」

 

「ああ・・・・・・。戻ったら手伝う。」

 

「助かるよ。」

 

 静かに差し出された獪岳の手に、出かける時のようにそっと自分の手を重ねれば、優しく握りしめられる。

 そこから感じ取れる温もりに少しだけ心地よさを感じながら、私は炎柱邸へと向かうための帰路に着いた。

 

 

最近の傾向から、話が獪岳VS煉獄さんの流れになりそうなのでここで一つアンケート。最終的な√は・・・

  • これまで通り煉獄さん√へ
  • 獪岳が巻き返す獪岳√へ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。