目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 side Another.



150.黒雷は、少年を激励する

 “あの子の元に行ってあげて”・・・・・・優緋の言葉を聞き、絡繰を守ろうとしていた少年、小鉄を探しに森の中へと足を運んだ獪岳は、辺りをキョロキョロと見渡しながら、消えていった少年の姿を探っていた。

 

「あのチビ・・・・・・どこに行きやがった・・・・・・。」

 

 しかし、森の中を走り抜けても、なかなか少年の姿を見つけ出すには時間がかかるのか、舌打ちをしたくなりながらも移動し続ける。

 すると、自身が通り過ぎようとした木の上から、めそめそとした嗚咽が聞こえて来た。

 足を止めた獪岳は、視線を上の方へと向ける。そこには、嗚咽の持ち主であるひょっとこ少年の姿があった。

 

「うお!?お前そんなとこに登ってたのかよ!?」

 

 まさかのひょっとこ少年の姿に、獪岳は思わず声を上げる。

 しかし、少年・小鉄は、彼の声に反応することなく、はらはらと涙をこぼし続けていた。

 

「・・・・・・お前、諦める気かよ。直すことなんざできねぇって何で言えんだ?やってみなきゃわからねぇだろ?」

 

 その姿を少しだけ見つめた獪岳は、小さな彼の背中に、少しだけ自身の後に師から呼吸を教わった剣士の姿を重ねる。

 これまでの自分だったなら、きっと、その姿に虫唾が走り、罵倒するくらいはしていただろうと考えながら。

 

「今はできねぇとしても、生きてりゃ何とかなるだろ?五体満足ならいくらでもやろうと思ってることができるだろ?

 ウジウジして諦める前に、やってやるって思わねぇのかよ?」

 

 これまで自身が持ち合わせていた、生きるために連ねて来た信条。

 生きてさえいればいつかは勝てる・・・・・・その考えを脳裏に過らせながらも、獪岳は小鉄に話しかけた。

 

「・・・・・・ならないよ。自分で自分が駄目な奴だってわかってるんだもん。俺の代で全部終わりだよ。」

 

 しかし、小鉄は自分には無理だと口にする。

 刀鍛冶としても、絡繰技士としても、才覚など持ち合わせていない自分に、できることはないのだと。

 それを聞いた獪岳は、苛立ちを隠すことなく舌打ちをする。どことなく認めたくもない弟弟子のように、逃げ回る少年に腹を立てるように。

 そして、立っていた地面を軽く蹴り飛ばし、涙を流す小鉄の元へと一瞬で辿り着いた彼は、目の前にいる少年の頭をスパンッと平手で叩いた。

 

「いったぁ!?何するんだよ!?」

 

 まさかの衝撃に悲鳴をあげ、同時に怒鳴りつける小鉄。しかし、すぐ目の前に現れていた獪岳の姿を見ては、そのまま言葉を失った。

 “気づかなかった”・・・・・・一瞬にして自身の前に移動をしていた獪岳に、思わず固まってしまう。

 

「やってみなきゃわからねぇのに、努力もしねぇでピーピーピーピー泣いてんじゃねぇよ!!

 手足を失わず、命を失わず、生きてりゃ何とでもなるんだよ!!何でテメェは何もやらずに逃げようとしてんだ!!虫唾が走んだよお前みてぇな逃げてばっかの人間は!!」

 

「!!?」

 

 獪岳から怒鳴られ、小鉄は思わず目を見開く。

 彼が口にした言葉には、確かな重みが含まれていると、ハッキリと感じ取れるものだったのだ。

 

「俺は雷の呼吸を使ってる。だが、基本となる壱ノ型は使えねぇ。俺にはカスだと言いたくなるような弟弟子がいる。そいつは壱ノ型しか使えねぇ。

 両方とも中途半端だった。中途半端な才能しかなかった。だが、優緋が繋いだ縁から、それを克服するための術を手に入れた。

 壱ノ型しか使えねぇカスも、今じゃ弐ノ型以降も軟弱ながらに使えるようになりやがったからな。

 俺も、優緋が繋いだ縁が、優緋と言う縁が、壱ノ型を使えるようになるための手立てになった。

 才能がないだ?そんなの知るか!!才能がないなら才能がないなりにまずは努力を重ねやがれ!!」

 

「努力・・・・・・」

 

 獪岳が口にした言葉を、小鉄は一度復唱する。

 それを聞いた獪岳は、そのまま軽い身のこなしで、自身が掴んでいた木の枝の上に飛び乗った。

 

「何もしねぇで逃げる前に、まずは何とかできねぇか試行する。それでも駄目だと言うなら、今度はその試行を後に繋げりゃいいだけだ。

 今はできねぇことだとしても、生きて努力を重ねて行きゃいつかできるかもしれねぇだろ。

 壱ノ型しか使えねぇカスが、弐ノ型以降も使えるようになったように。壱ノ型だけ使えねぇ剣士が、壱ノ型を身につけるためのコツを見つけたようにな。」

 

「・・・・・・・・・」

 

 獪岳の言葉に、小鉄は静かに耳を傾ける。

 彼が口にした、確かな経験・・・・・・それは、小鉄の心に重くのしかかるものだった。

 

「生きてりゃいつか勝てる。俺の経験からしても、それは間違いねぇよ。実際、身につけることができなかった技術を、俺も、弟弟子と認めたくもねぇカスも、身につけるための手立てを見つけたんだからな。」

 

 そこまで獪岳は口にして、小鉄を真っ直ぐと見下ろす。

 どことなく鋭さのある瞳に、ハッキリとした確信を宿して。

 

「努力は一回きりじゃねぇんだよ。何百回、何千回、何万回も繰り返すもんなんだよ。

 ほんの数回程度の試行だけで自分には無理だとか言ってんなら、巫山戯んのも大概にしろ。

 だったら俺は何なんだ?何百回、何千回も繰り返していた俺は何なんだ?数え切れねぇくらい同じことを繰り返していた俺は何なんだ?

 お前は、何百回も、何千回も、繰り返したことあんのかよ?」

 

 苛立ちを吐き捨てるように、何回の試行を繰り返したと聞いてくる獪岳に、小鉄は無言だけを返す。

 自分は、目の前にいる剣士のように、何百と、何千と、繰り返したことはあっただろうかと。

 

「そこまで・・・・・・繰り返したことはない・・・・・・」

 

「だったらまずは繰り返せ。血反吐に塗れる気持ちでやってみろよ。もしかしたら、何か見つかるかもしれねぇだろ?

 五体満足で生きてんなら、必ず掴めるもんがある。掴めたもんが些細なもんでも、今度はそれが、お前から別の誰かに伝わるかもしれねぇだろうが。」

 

「っ・・・・・・・・・」

 

 獪岳の言葉に、小鉄は静かに涙を流す。

 しかし、それは目の前にいる剣士に怒られたからではなく、逃げ続けていた自身に対する悔しさによるものだった。

 どうして気づかなかったのだろう?数回繰り返しただけで諦めるより、もっと努力を重ねてみることにと。

 

「・・・・・・チッ・・・・・・男が情けなく泣いてんじゃねぇよ。」

 

 涙を流す小鉄に、獪岳は小さく悪態を吐く。しかし、すぐにその視線は小鉄に戻され、彼は真剣な目で彼を見据えた。

 

「人は一人だけでは大した力を持ち合わせていない。これまでの道のりの中で、巡りに巡って出会ってきた人に背中を押され、心を支えられ、様々なことを教えられて来たからこそ、沢山の力を発揮することができる。

 世の中には一人で何もかもできる人もいるんだろうが、そんなことができる人間なんざ、何万人の一とか、そんなごく僅かな存在だけだ。

 だから人は支え合い、互いに足りないところを補えるような仲間と共に道を歩く。

 支えられているからこそ、強大な力を発揮することができる。」

 

「!」

 

 同時に紡がれた言葉に、小鉄は弾かれたように顔を上げる。

 自身の姿を真っ直ぐと見つめる、獪岳の視線に合わせるように。

 

「これは、俺が優緋に言われた言葉だ。例えどれだけ力があっても、人間一人がこなせるもんには限度がある。

 努力を重ねてみて、自分だけじゃどうにもならねぇなら、周りにも手を伸ばせだとよ。

 俺も、優緋に会うまでは一人だった。一人で努力を重ねていた。だが、思うように行かなくて、優緋に出会ってからようやく物事が動き始めたんだ。」

 

 そこまで告げて、獪岳は木の枝から下に飛び降りる。

 足音を特に立てることなく、静かに地面に降り立った獪岳は、木の枝に座る小鉄を見上げた。

 

「だからお前も、周りの手を借りることも視野に入れながらやってみろよ。何か変わるかもしれねぇだろ。」

 

 そして、まずは変わるために行動を取り、時には人の手を借りてみろと告げた。

 

「・・・・・・っ・・・・・・うん・・・・・・。俺、人形が壊れるの見たくなかったけど、決心をつけるよ。

 戦闘訓練は夜までかかるはず・・・・・・だから、心の準備して、見届ける・・・・・・ちゃんと・・・・・・っ」

 

 ようやく告げられた小鉄の覚悟。

 それを聞いた獪岳は、一つ深い溜息を吐き、やれやれとその場で首を左右に振る。

 “めんどくせぇ、役割押し付けやがって”・・・・・・と、自身に指示を出した赫灼の少女を思い出しながら。

 

 

 

 

最近の傾向から、話が獪岳VS煉獄さんの流れになりそうなのでここで一つアンケート。最終的な√は・・・

  • これまで通り煉獄さん√へ
  • 獪岳が巻き返す獪岳√へ
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