目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 side Another.



169. 黒雷の成長

 ・・・・・・時は少し遡り、無一郎が半天狗の分身体に吹き飛ばされていた頃のこと。

 

 ─────・・・・・・刀鍛冶の里には滞在してる鬼殺隊がいるって話だろ!!なんでどこにもいねーんだよクソッ!!!!

 

 上弦の伍、玉壺と接敵してしまった獪岳は、雷の呼吸の基礎となる足腰を利用し、なんとか玉壺を引きつけ、他の鬼殺隊と合流するために、刀鍛冶の里を走り回っていた。

 時折勢いよく近づいて来ては、まるで揶揄うように離れていく玉壺の気配に、少しの焦りを抱きながら。

 

「ヒョッヒョッ!これはこれは、凄まじい速さですなぁ!人間にこれ程の速度を出せるものがいるとは思いもよりませんでした。」

 

「チッ・・・・・・・・・!!(思ってもねぇこと言いやがって!!)」

 

 玉壺の動きから、明らかに自身が遊ばれていることに獪岳は気づいていた。

 向こう側からしたら、自分なんてその程度で、獲物を狙う訓練のためだけにちょっかいを出されるだけの存在なのだと突きつけられているのだから。

 

 かつての獪岳であれば、そのことに対して明確な苛立ちを抱いていただろう。

 自分は玩具でしかない、遊ぶだけの価値しかない、お前は本気を出さなくても狩れる弱者に過ぎないのだと思われていることに、自棄を起こしていたかもしれないだろう。

 

 だが、今の獪岳は知ってしまった。自身の年齢と変わらないというのに、鬼に対して脅威にしかならない存在を、直接見て来たことにより、自身の実力を、能力を、客観的に見ることができるようになったのだ。

 

 上弦の鬼・・・・・・そこに名を連ねる鬼ともなれば、下位に位置する伍の数字を持ち合わせている存在であろうとも、自分自身が一人でどうにかできる存在ではない。

 獪岳の脳裏に、自身と一緒に行動を取るようになった剣士、優緋の姿が瞬時に過ぎる。

 

 彼が知る優緋は、誰よりも強い剣士だった。

 複数の呼吸を使い分け、まるで、相手の動きを明確に把握しているように刀を振るい、一撃で鬼を屠ってしまう。

 羨ましくもあり、怖くもある実力を持ち合わせている存在。だが、そんな彼女であっても、上弦の鬼・・・・・・さらに言うと、一番下の位についている陸の鬼に、無傷で対処するのは難しいと口にした。

 

 その時は、音柱と二人の剣士、後から合流した炎柱と、彼女自身が連れ歩いている、鬼となってしまった二人の弟妹がいたからこそ、最小限の負傷で乗り切ることができたのだと、告げられていた。

 

 明確な実力を持ち合わせているにも関わらず、そこまでしてようやくだと言う程の存在、十二鬼月、上弦の鬼。

 自身の実力が、彼女に追いつける程のものじゃない。追いつくためには、訓練をしっかりとこなす必要がある・・・・・・それを理解している今だからこそ、獪岳は、一人では不可能だと判断することができた。

 

 経験者がそのように語るのだから、それが正解・・・・・・これまで、自分しか見ることができなかった獪岳が、初めて外部からの見解を知り、それを知識として取り入れて動けるようになったからこその行動だった。

 

 だが、話に聞いていた他の鬼殺隊との合流は、未だに果たすことができていない。

 もしかしたら巡回しているかもしれない、そう思って走り回っていると言うのに、なぜ他の鬼殺隊はいないのか、そのような疑問を脳裏に過らせながらも、獪岳は走り回る。

 

 ・・・・・・不意に、前方から何やら鬼に良く似た気配が近づいてくることに気づく。

 まさか先回りされたのか・・・・・・焦りを浮かべ、気配の方へと目を向ければ、そこには、壺を背負った魚のような化物の姿があった。

 

「なんだよこれ!?血鬼術か!?」

 

 自身の方に突っ込んでくる化物を見て、獪岳はすかさず刀を構える。

 

 “雷の呼吸 肆ノ型 遠雷!!”

 

 ようやく扱うためのコツを把握することができた壱ノ型、霹靂一閃・・・・・・しかし、獪岳はまだ、それが十分な練度を持ち合わせていないこともわかっていたため、瞬時に自身が元から使えていた型の一つである、肆ノ型を使って勢いよく現れた化物を斬り捨てる。

 

 優緋や炎柱が使用する、炎の呼吸の壱ノ型である不知火や、雷の呼吸の基礎となる壱ノ型の霹靂一閃程の高速移動は不可能ではあるが、優緋や、音柱の宇髄から指摘された、体の使い方を工夫すれば、十分な速度と、複数の斬撃を放つことができるために。

 

 ・・・・・・獪岳が放った遠雷は、背中に壺を背負う化物の頸に直撃する。だが、すぐにその切り口は修復され、獪岳へと襲いかかって来た。

 一瞬だけ獪岳は怯みそうになるが、視界に映り込んだ背中の壺を見て、もしやと思い、再び遠雷でそこを狙う。

 

 彼が放った斬撃が、壺に直撃した瞬間、化物が断末魔を上げて消失した。

 それにより獪岳は、化物の弱点が壺であることを把握した。だが、瞬時に自身の近くに来ている玉壺の気配に気づいては、自身の足に力を込めて、大地を思い切り蹴り飛ばした。

 獪岳の体が勢いよく前の方へと飛び出すと同時に、血鬼術と思われる魚の群れが、彼がいた場所へと散らばった。

 

「ほほう・・・・・・これも避けますか・・・・・・。では、こちらも少々本気で鬼遊びを始めましょうかねぇ・・・・・・!!」

 

 声音から、明確な殺意を感じ取り、獪岳は冷や汗を流す。

 このままでは間違いなく自分の命が危ない・・・・・・そんなことを考える。

 

「カァ!!獪岳!!里ニ血鬼術ニヨル襲撃アリ!!滞在シテイル鬼殺隊対処中!!」

 

 しかし、その意識はすぐに頭上にいる自身の鎹鴉の声により戻され、彼は驚いて鎹鴉を見た。

 里の中心部の方に、鬼殺隊が集まっている・・・・・・それを聞いた瞬間、獪岳は、無意識のうちに口を開いていた。

 

「中心部の連中には壺を狙うように伝えろ!!刀鍛冶連中にもだ!!壺ぶっ壊せばあの魚は消える!!近くに戦闘に入ってねぇ隊士はいるか!?」

 

「南南西!!南南西!!」

 

「わかった!!」

 

 それは、中央にいる鬼殺隊達に対する血鬼術の対処法と、自身の近くにいる鬼殺隊の把握のためのものだった。

 獪岳の鎹鴉は、すかさず戦闘から外れている鬼殺隊の位置を告げ、中央へと向かうために向きを変えて飛行する。

 それを見た獪岳は、自身の近くに来た玉壺が壺から勢いよく飛び出してくるのを確認した瞬間、刀を勢いよく振り下ろした。

 

「ヒョッ!!?」

 

 壺から出てくる動きに合わせて振り下ろされた刀に、玉壺は目を見開いて固まる。

 すぐに壺に退避しようとしたが、獪岳が振り下ろした刀の振りの方が早かったのか、腕を一本持っていかれてしまう。

 

「チッ・・・・・・!!オラァ!!!!」

 

 それを見た獪岳は舌打ちをしながらも、片足を軸にして刀を横に薙ぎ払った。

 自身の頸を狙って正確に放たれた刃を見た玉壺は、すぐに壺の中へと入り込み、獪岳がいる位置から離れた場所へと一瞬にして移動する。

 同時に最初の一撃で持っていかれた自身の腕をその場で生やし、獪岳の方へと目を向けた。

 

「またやり損ねたか・・・・・・!!まぁ、腕一本持って行けただけマシか?大量にあるから意味はねぇが・・・・・・」

 

 ポツリと呟いた獪岳に、玉壺はわずかな怒りを抱く。

 腕・・・・・・それはすなわち、芸術を探求する自身にとって、大切な部位の一つ。

 鬼であるため、腕を斬られたところで、再び生やすことができるとはいえ、自身の腕を斬られたことに、そして、相手にとっては大したものではないと言う認識であることに、苛立ちがふつふつと沸き上がる。

 

「貴様ッ・・・・・・!!芸術を生み出すための私の腕をよくも・・・・・・!!」

 

「あ?鬼なんだから腕の一本無くなったところですぐに生やせるだろ。実際復活してるじゃねぇか。」

 

「この・・・・・・っ!!芸術がどのようにして出来上がるかわからぬガキが軽々と・・・・・・!!」

 

「ハッ!!腕一本でガタガタうっせぇな。そんなにムカついたんなら、俺を捕まえてみろよ!!」

 

 吐き捨てるように言葉を紡いだ獪岳は、勢いよく地面を蹴り飛ばし、素早くその場から離脱する。

 先程よりも速度を上げて、南南西へと向かうために。

 玉壺はすかさず獪岳を追った。芸術とは何たるかを叩きつけ、生意気なガキの腕を同じように奪い取ってやろうと考えて。

 

 中央へと向かうために羽ばたいていた獪岳の鎹鴉は、混戦状態に陥っている方に押し付けるわけではなく、自身が引き付けて混戦した場所から本体を引き離す判断をした獪岳が向かった方角を少しだけ見つめる。

 随分と変わることができたな・・・・・・そんな、親心を胸に抱き、中央にいる鬼殺隊に、声をかけるために。

 

 

最近の傾向から、話が獪岳VS煉獄さんの流れになりそうなのでここで一つアンケート。最終的な√は・・・

  • これまで通り煉獄さん√へ
  • 獪岳が巻き返す獪岳√へ
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