目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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ちょっと他より短い内容です。


ひとときの日常を兄(姉)弟子と共に
17.優緋、帰宅。目覚めの鬼弟妹。


 玉鋼を選び、そのまま解散となった最終選別最終日。

 私は、帰路につきながら背中を伸ばす。

 

 なんとか無傷のままでクリアできたはいいけど、少しばかり疲れてしまった。

 

「ふぅ……なんとか第一関門は突破したな……。次の関門は、沼鬼か。で、そのあとは鬼舞辻との邂逅と、珠世さんたちとの接触。そんで矢琶羽、朱紗丸コンビで……」

 

 無限列車での戦いが始まるまでの流れを整理しながら道を歩み進めていると、いつの間にか狭霧山の麓にまで戻っていた。

 考え込んでいたから気づかなかったけど、空もすでに夕暮れだ。

 あ、と見慣れた場所を見るために顔を上げる。

 

 と、同時に鱗滝さんのご自宅の戸が思い切り吹っ飛んだ。

 

 そこから出てきたのは、慌てている様子の炭治郎と、炭治郎を落ち着かせようとしている様子の禰豆子の姿。

 

「ああ、こらこら。居候させてもらってる人の家の戸を壊すんじゃない。行儀がなってないぞ炭治郎。」

 

 その姿を見て、炭治郎があの戸を破壊したことに気づいた私は、呆れたように声をかける。

 すると、炭治郎と禰豆子の二人は私に気づくなり同時に走り寄ってきた。

 

「あ、嫌な予感……。」

 

 勢いからして今から起こるであろう出来事に引きつった笑みを浮かべる。

 その間も二人は走っており、真っ直ぐと私の方へと向かっていた。

 

「はは……まぁ、そうなるよな……。」

 

 溜息を吐きながら苦笑いをする。

 その瞬間、私の体はバランスを崩し、そのまま地面に倒れ込んでしまった。

 

「いっで!!?」

 

「ムー!!!」

 

「んー!!」

 

 倒れ込んだ私の上には炭治郎と禰豆子の姿。

 目を覚ましたら私がいなくなっていたから、パニックを起こしてしまったのかもしれない。

 その証拠に炭治郎が泣いている。

 禰豆子は泣いてこそいないけど、私のことをギュウッと強く抱きしめてきていた。

 

「あー……しばらく家を離れていたのが仇になったか……。」

 

「ムー!!」

 

「いてててて! ちょ、ペムペム叩くな炭治郎!! 悪かったって二人を置いていって!! でも最終選別に二人を連れて行くわけにはいかなかったんだよ!!」

 

「ムー……!!」

 

「あーはいはい、悪かったよ反省してますって! せめて書き置きくらいは置いときゃよかったよ……。」

 

「うー………。」

 

「心配してくれたんだな。ありがとう。でも大丈夫。見ての通り私は無傷だ。ちゃんと、怪我をすることなく帰ってきたよ。これからはまた一緒に過ごせるから、ほら、泣くなって。お兄ちゃんがそんなんじゃ、妹が心配するよ。」

 

「ムン!」

 

「ほら、禰豆子も泣かないでって言ってる。」

 

「うー……。」

 

 私に抱きついてはぐりぐりと頭を押し付けてくる炭治郎を禰豆子と二人がかりで落ち着かせていると、私たち三人をまとめて包み込む温もりを感じ取る。

 顔を上げてみると、そこには鱗滝さんがいた。

 

 よくみると天狗のお面の間から、涙が流れているのが確認できる。

 

「よく、生きて戻った!!」

 

「………はい。ちゃんと生きて帰りました。ただいま、鱗滝さん。炭治郎と禰豆子も、ただいま。」

 

 私が生きて帰ってきたことを喜び、安堵の声を口にする鱗滝さんに、穏やかな声音で挨拶をすれば、さらに強く抱きしめられた。

 まるで、ちゃんと生きている私のことを確認するかのようなハグ。

 父親のようだと感じながらも、炭治郎と禰豆子にも声をかければ、二人も私の存在を確認するように抱きしめてきた。

 

 こんなにいっぱいじゃ、私が抱きしめ返せないじゃないかと少しだけ心の中で文句を言う。

 だけど、それとは裏腹に、私が感じているのは穏やかな気持ち。

 ああ、ちゃんと帰ってこれたんだ……もし、イレギュラーな存在として私が加わったせいで、最悪な事態を招いたらどうしようって不安だったから、その温もりに安堵する。

 

 なんとかひと段落終わったんだ……そう思うとドッと疲れが押し寄せてきた。

 

「ごめん、みんな……。ちょっと疲れちゃったみたいだ……。」

 

 その言葉を最後に、私は意識をその場で手放す。

 手鬼を倒すことや、自分がやろうとしていることに備えて準備しないといけないこと、私が関わったことで、物語の重要人物が……本来ならば死ぬ必要もない存在が死んでしまったらどうしようと言う不安……それらは意外と、私の体に重くのしかかっていたようだ。

 

「うー!!!?」

 

「んー!!!!」

 

「落ち着け二人とも。お前たちの姉は、少し疲れて眠るだけだ。今はそっと休ませてやろう。」

 

 意識が完全に薄れる前に、私の聴覚が捉えていたのは、急に意識を朦朧とさせて、倒れ込んだ私の姿に驚いて泣きそうになる炭治郎と禰豆子の声と、それを鎮めるために優しく声をかける鱗滝さんの声だった。

 

 鱗滝さんには感謝の気持ちを。

 炭治郎と禰豆子には、情けない姿を見せてしまったことへの謝罪を。

 

 それぞれの感情を胸中に抱きながらも、私は一旦眠りにつく。

 

 ああ……目を覚ましたら、錆兎と真菰にも……会いに行かないといけないなぁ……。

 

 

 

 


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