目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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押してダメならさらに押せ。時には強引になっていく系男子な錆兎がいるのでご注意ください。


18.二人への報告

 あの日、意識を失うように眠りに落ちた私は、どうやら半日も眠っていたらしい。

 目を覚ましたら、炭治郎と禰豆子がものすごく泣きそうな表情をしていたものだからかなり焦った。

 元気になったよって言っても心配そうに見つめてきてはその日の翌日までずっと私について回っていた。

 膝枕を要求してきたり、抱きしめてくれとせがんできたり、夜なんか三人一緒に同じ布団で寝る始末だ。

 湯あみも一緒だったな。

 二人とは幼い頃からよく一緒にしていたから全員抵抗なんてなくてね。

 

 ああ、でも、鱗滝さんは引いていたな。

 禰豆子はともかく、炭治郎はまずいのでは?と聞いてきたもん。

 確かに、十七歳の姉と十五歳の弟、そして十三歳の妹の三人でいくと、姉と妹はまだ同性だからそこまで気にする必要がないけど、姉と弟や、兄と妹の組み合わせはかなり違和感あるかもな。

 

 でも、私たちはこれが普通だったので、大して気にすることなく入っていた。

 鱗滝さんに呆れられたのはいうまでもない……。

 

 結局、炭治郎と禰豆子が私の単独行動を許してくれたのは、最終戦別の翌日から、四日経った頃だった。

 

 ……今、私がいるのは狭霧山の中。

 自分が刀で斬り裂いた岩がある場所。

 最終選別に向かった時、告げておいた約束を果たすために、ここまできていた。

 

「錆兎。真菰。いるんだろ?」

 

 今日も今日とて霧が深い狭霧山の岩のある場所で静かに言葉を紡いでみれば、霧の中から少年少女の二人組がやってくる。

 花柄の着物を身に纏う真菰と、珍しく狐面を頭の横につけて、素顔を晒している錆兎だ。

 

「あれ。珍しく錆兎がお面を外してる。」

 

「たまにはこういうのもいいかと思ってな。」

 

「ふぅん? なかなか似合ってるじゃん。顔が整ってるから余計にね。」

 

「そ……そういうことをサラッと口にするな。」

 

 随分と珍しいスタイルの錆兎をお世辞抜きにして褒めると、少しだけ照れたような様子を見せて、彼は顔を逸らしてしまう。

 美少年の照れ顔はなかなかレアだ。

 スマホがあったら激写していた。

 

「私たちのところに、こうしてやってきたってことは……」

 

「うん。ちょっとした報告をね。……君らの仇はしっかりと討っといたよ。みんなを喰い殺したあのでっかい異形に、ちゃんと引導を渡してきた。だから、これからは安心して、鱗滝さんの余生をしっかりと見守ってあげたらどうかって伝えにきた。」

 

 アホなことを考えていると、真菰が静かに口を開いた。

 私がこの場にやってきた意味、それを確認するために。

 

 だから私はちゃんと伝えた。

 手鬼にはちゃんと引導を渡しておいたから、もう安心しても大丈夫だと。

 真菰が笑顔を見せる。

 よかったと私に伝えるかのように。

 

 対する錆兎はというと、照れから復活して私のことを静かに見据えていた。

 なんだか物言いたげの様子だが……さて……。

 

「どうしたんだ錆兎? さっきから見つめてきて。」

 

 首を傾げながら錆兎に話しかけると、錆兎は視線を私から逸らし

 

「……お前は、俺たちに対して何も思わないのか?」

 

 静かな声音で質問をしてきた。

 一瞬その質問の意図を測りかねる。

 しかし、少し頭を回せばすぐに理解できるものだった。

 

 どうやら錆兎は、自分たちは魂だけの存在……つまり、形を持たぬ霊的存在だというのに、私が普通に話しかけている理由がわからないようだ。

 まぁ、確かに、幽霊に話しかける人間なんてあまりいないよな。

 オカルトマニアとか祈祷師とか、イタコとかならまだわかるけど、私はそんなんじゃないし。

 

「逆に何を思えと? 確かに錆兎たちは命を落としてしまった存在で、現世(うつしよ)には存在していない、いわゆる虚なる存在……俗に言う幽霊とかって奴かもしれないさ。けどな。私はそんな二人に水の呼吸を教えてもらった人間だ。錆兎と本気の手合わせもしたし、何度も互いの刀をぶつけ合った。真菰とはちょっとした休憩の時に、そこらにあるシロツメクサを摘み取って、互いに互いの頭の大きさにあった花冠を作って、交換する要領で頭に乗せていた。だから、私は幽霊だのなんだのとか考えてない。ちゃんと触れ合って、言葉を交わして、ぶつかり合ったんだ。錆兎と真菰は、もはや私の中じゃ幽霊なんてチンケなものじゃない。ちゃんとした友人と思ってるよ。錆兎のことも、最高の好敵手だって思ってる。」

 

「……………。」

 

 やはり、錆兎が聞きたかったのはこれのようだ。

 素直に返答を返してみれば、彼は一瞬目を丸くしたあと、すぐに穏やかな笑みを浮かべる。

 が、その笑みは一瞬でどこかつまらなさそうなものへと変化していた。

 

「コロコロ表情変わるな。」

 

「……お前が俺を友人だの好敵手だのときっぱり言ったからだろう。」

 

「……違うのか?」

 

「いや、違わない。違わないが複雑だ。」

 

「???」

 

 えっと……錆兎が私に言いたいことが急にわからなくなった。

 違わないのに複雑……とは……?

 

「なんでわからないんだ。一応片鱗は見せていたはずなんだが?」

 

「全然気づかれてないねぇ。」

 

「おい、笑うな真菰。」

 

 ……錆兎と真菰がちょっとした言い争いをおっぱじめたけど、私は錆兎の言葉の真意を見つけるために首を傾げる。

 錆兎が私に言いたいことってなんだ……?

 

「……最終選別に向かう前、俺が本気でお前を袈裟斬りしようとしていたのは覚えているよな?」

 

「ああ。覚えてるよ。あれ喰らったら確実に私は死んでたと思う。」

 

「俺がそれをしようとした理由は覚えてるか?」

 

「確か……私がいなくなるのが少し惜しいと思ったから……あ……。」

 

「ようやく気づいたか。」

 

 錆兎の言葉から一つの仮説を脳裏に描く。

 てっきり私は、好敵手がいなくなるからとか思っていたけど、どうやらそれ以上に厄介な感情だったらしい。

 いや、好かれた代償かって疑問はあながち間違っていなかったけど、その好意のベクトルが違ったようだ。

 

「つまり、錆兎は私が好きってことか。友人とか好敵手とかそんな甘ったるいもんじゃなくて、もっとこう、ちょっとドロドロとした……いわゆる恋愛感情……って、なんで私はあんたにそんな感情を抱かれたんだよ。なんか惹きつけるようなことしたっけ……?」

 

 これは純粋な疑問だった。

 だって私は、錆兎と過ごす間はずっと手合わせという、恋愛のれの字すら存在していないやりとりしかしていなかった。

 恋愛感情を抱くようなきっかけ、あまりなかった気がするんだけど。

 

「最初は俺もそんな感情を生者であるお前に向けるとは思わなかった。本当に、ただの好敵手として、友人として、育てなきゃいけない妹弟子として好いていたんだ。だが、お前が常に鍛錬してる姿や、俺と向き合って手合わせをする際、不敵な笑みを浮かべながらまっすぐと見据えてくる瞳を見ていると、どうしてか惹かれていた。あとは、やっぱりお前は異性なんだと思わざるを得ないことが、共に過ごす年月の中に何度も訪れた。結果、気がついたら俺は、お前に対して、特別な好意を抱くようになっていたんだ。だから俺は、お前を本気で斬ろうとした。お前を斬ってしまえば、ずっと側にいられるんじゃないかって……幽霊的な考えを抱いてしまった。お前が死んだら、別の男にお前を取られるなんてこともなくなっただろうからな。」

 

「……サラッととんでもないこと言ってきたんだけど?」

 

「錆兎は八年くらいずっと幽霊みたいなものだったから、考えが過激になっちゃったのかも……?」

 

「……後半とかもしもを考えた末の嫉妬だったし、幽霊とか魂の嫉妬って怖いんだな。」

 

「正直俺自身も驚いている。まさか、こんな考えが脳裏をよぎるとは思わなかった。実行しようとするなんてことも予想外だった。」

 

 妙な空気が流れる。

 しかし、なぜか私たちの会話は途切れることなく、そのまま繋がっていた。

 

「優緋。刀が出来上がるまでしばらくは鱗滝さんのところにいるんだろう? だったら、その間ここに足を運ぶといい。水の呼吸と、お前が持ってるもう一つの呼吸……それらを磨くのには手合わせが一番手っ取り早いはずだ。水の呼吸は、一応、お前よりは練度があると思ってる。だから、強化したほうがいい点を指摘する。もう一つの呼吸については、俺も真菰も詳しくないが、第三者から見たら、疑問に思う点がちらほらと見つかる可能性もある。修行するにはうってつけだと思うぞ。」

 

 そんな中、錆兎が刀ができるまでの期間に鍛錬をするのはどうかと提案してきた。

 匂いがないから感情はわからないけど、なんとなくこれは、私の兄弟子である錆兎だとわかった。

 剣の特訓は、同じ剣士との手合わせが一番効果的……か。

 確かに、それは一理あるかもしれない。

 

「そうだね。じゃあお言葉に甘えて。変なところや直したほうがいい点、軸のブレとか、そんなのを見つけたら、すぐに指摘してくれるか、錆兎?」

 

 ありがたい提案だと思った私は、それならと錆兎に手合わせの相手を頼む。

 彼は小さく頷いたあと、腰に携えていた真剣を取り出した。

 

「あ、やっぱり真剣でやるのか。」

 

「そうすれば、なんらかの拍子にお前を手に入れることができるかもしれないからな。」

 

「………真菰。不安になってきたんだけど?」

 

「うーん……錆兎って、意外と強引だったみたいだね……。危なくなったら私が止めるよ。でも、もし止めれなかったら……うん……。大丈夫。例え優緋がどんな存在になろうとも、私は友達でいるからね?」

 

「ちょっとぉ……!?」

 

 せ……選択肢早まったかもしれない……これ……。

 

 

 

 

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