目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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02.冨岡義勇と竈門優緋

「悪いな。家族の埋葬してもらって。」

 

「……俺が、あと半日ほど早くここにたどり着いていれば、お前の家族を助けることができたはずだったんだ。だが、俺は間に合わなかった。だから……せめて、これくらいは手伝う。お前は、そこの二人の面倒を見ているしな。」

 

 あれから私は、昨日の夕方から今日の朝方にかけて起こったことを全て説明した。

 炭治郎と禰豆子の二人は、どうやら私が誰であるか理解している様子であることも。

 義勇は黙って話を聞いてくれた。

 たまに相槌をうつ程度のことをしながら。

 

 それらを終えた私は実家に戻り、亡くなってしまった母さんや、弟、妹たちを、家の横にあるスペースへと埋葬していた。

 義勇は、念のためにと私についてきた感じだな。

 炭治郎と禰豆子の二人が目を覚まして、私に襲いかかってきたりした時の対処を行うと言って。

 でも、炭治郎と禰豆子の二人はぐっすりと眠ったまま目を覚ますことなく、ただひたすらに私に抱きついて眠っていたため、彼の心配はある意味必要がなかった。

 

「……なぁ、義勇。この子ら、人間に戻すことできると思う?」

 

「……そうだな……。同じ鬼ならばその方法を知っているかもしれないが、鬼は人を喰らうことしか考えることができない、理性を飛ばした者たちばかりだ。話が聞けるとは思わない。」

 

「そうか……。でも、家族を見捨てるわけにはいかないしな……。はぁ……地道に探すしかないかぁ……。方法あるかわかんないけど。」

 

 義勇の返答を聞いた私は頭を抱える。

 原作では最終的に禰豆子が人間に戻っていたけど、この私がいる世界ではわからない。

 パラレルワールドというのはいいことづくめじゃない。

 時には最悪なもしもが発生する。

 必ず、敷かれたレール通りの内容を紡げるかと言われたら、無理だと答える方が無難だ。

 

「……それならば、狭霧山の麓に住んでいる、鱗滝左近次という……俺の知己のもとに向かうといい。冨岡義勇に言われて来たと伝えれば、応じてくれるはずだ。」

 

 どうしたもんかと頭を抱える。

 すると義勇は原作で炭治郎に伝えていた言葉にプラスアルファを加えたような言葉を紡いだ。

 

「狭霧山? 鱗滝左近次……?」

 

 な、なんか話がサクサク進んでないかと少しだけ戸惑う。

 そんな私の内情など知らないであろう義勇は、こちらが聞き返した言葉を肯定するように頷いては

 

「今は日が出ていないため問題はないが、弟と妹を太陽の下に連れ出すなよ。」

 

 質問に答えることなく、用件だけ告げては、踵を返して立ち去ろうとする。

 

「あ、待ってくれ。」

 

「?」

 

 私は慌てて義勇を呼び止めた。

 だって、少しだけ気になったんだ。

 原作では問答無用で禰豆子を始末しようとしていた義勇が、このパラレルワールドの炭治郎と禰豆子に問答無用で斬りかからなかった理由が。

 

「……なんで、炭治郎たちに斬りかからなかったんだ? 刀に刻まれていた惡鬼滅殺の文字からして、あんたは鬼を……殺す側なんじゃないのか……?」

 

 静かな声音で問いかける。

 静寂のみが存在するこの場では、そんな声音でも十分、義勇の耳には届いているようだった。

 

「……今まで俺は、何度も見てきた。自分の身内は違う。人を喰ったりしないと言って、そのまま鬼と化した身内に喰い殺される奴を。“飢餓状態”となっている鬼は、親でも兄弟でも殺して喰べる。それだけ人は栄養価が高く、鬼にとっての格好の餌なんだ。だが、木陰から見ていたが、そこの二人は近寄ってきたお前を喰わなかった。一瞬だけ、お前を無意識に襲おうとしていた様子を見せたが、すぐにその衝動を抑え込み、縋るようにしてお前に抱きつき、そして眠りに落ちていた。本来ならば、ありえない行動だ。なぜならそこの二人は、鬼へと変わる時や、体にできた鬼になる前にできたであろう傷を治す時に、力を使い、体力を消耗しているため、重度の飢餓状態に陥っているはずだからだ。なのに、その二人は自ら近寄ってきた人の血肉を喰らうことはせず、縋ることを選んだ。」

 

 ─────……これらの一連の動作からして、そこの二人は……お前たち三人は、何か違うかもしれないと判断したまでだ。

 

 義勇は私にそう告げたあと、今度こそこの場から立ち去っていった。

 ……うん、ヨボヨボの老鴉に一瞬焦らされていたから、かっこついてない。

 

 ……義勇が炭治郎たちを斬らなかった理由……それだったんだな。

 

「う?」

 

「むー……」

 

 なんて考えていたら、炭治郎と禰豆子が目を覚ました。

 ……禰豆子が竹を咥えてる姿は漫画で見ていたから見慣れてるけど、炭治郎が竹を咥えてるの……なんか……ちょっと新鮮さと違和感があるな。

 まぁ、原作じゃあ主人公だもんな。

 竹は咥えないもんな……。

 

(……うーん……これはこれからを楽しむべきなのか……それとも不安に思うべきなのか……。かなり判断が困るタイプだな……。)

 

 ま、それはそれとして……だ……。

 

「………せっかく鬼滅の刃の世界に来たんだし、原作キャラの救済はしたいよな……。どうせなら大団円のハッピーエンドを迎えたいし。生でおばみつとかぎゆしのとか、どま一方通行しのとかいろいろ見たいし。」

 

「「んー?」」

 

「なんでもないよ。それより、炭治郎、禰豆子。大丈夫か? 体がだるいとか痛いとか……あとはしんどいとか……体に不調はないな? 怪我は?」

 

「「ムームー!」」

 

「そうか。ないんだな。それなら安心した。……とりあえず、義勇に言われた通りの場所に行くとしようか。」

 

 

「「ん!」」

 

 ……なんか、意外と意思疎通できちゃってるんだけど。

 これが姉弟、姉妹の絆なんだろうか……?

 

 

 

 

 


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