目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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二体の鬼を連れた鬼狩り
24.漆黒の日輪刀


 錆兎たちと別れた翌日。

 

「あ……ねぇ、鱗滝さん。笠に風鈴ぶら下げまくってる人が見えてきたんですけど、あの人ですかね?」

 

 私は昼頃、そろそろきてもいいんじゃないかな、と思いながら鱗滝さんの自宅の戸から外を眺めていた。

 すると、かなり特徴的な笠が見えてきたため、あの人かと鱗滝さんに問いかける。

 

「ああ。お前の刀は、あれが作ったのか……。」

 

「あれ……って……。」

 

 すると、鱗滝さんは刀鍛冶……まぁ、風鈴がついた笠の時点でわかると思うけど、鋼鐵塚蛍のことをあれ扱いする。

 予想外の反応に、思わず引きつった笑みを浮かべてしまったのは言うまでもない。

 

 チリンチリンと風鈴を鳴らしながら、鋼鐵塚さんはこちらにやってくる。

 ……原作通りの人が刀を打ってくれたんだな、なんてちょっとだけ感動すると同時に、折らないようにしなくてはと考える。

 折れたら怖いからな、この人。

 

「俺は鋼鐵塚という者だ。竈門 優緋(かまど ゆうひ)の刀を打った者だ。」

 

「ああ、竈門 優緋(かまど ゆうひ)は私ですよ。外で話すのもあれなんで、中へどうぞ。」

 

 見事なまでのなみかわボイス……。

 アニメと同じ声だとアホなことを考えながら、中の方へ入るようにと声をかける。

 

「これが“日輪刀”だ。」

 

「……………。」

 

 が、やっぱりこの人話を聞いてくれなかった。

 思わず無言になる。

 本当に刀のことしか話さないな……。

 

「俺が打った刀だ。日輪刀の原料である砂鉄と鉱石は太陽に一番近い山でとれる“猩々緋砂鉄”、“猩々緋鉱石”。陽の光を吸収する鉄だ。陽光山は一年中陽が射してる山だ。曇らないし雨も降らない。」

 

「……あー……はい。そうなんですね。それはすごい刀だなー……ってことで、とりあえず中に入りません?」

 

 呆れたような声が出てしまったのは無理もないんじゃないかと思う。

 だって別に聞いてもないのにベラベラと刀や刀の素材について話されるのもかなり困る。

 ほら、たまにいるだろ?

 聞いてもないのに自己語りするやつ。

 それに出会った時のような、急に話し出したわこいつっていう呆れがな……溢れ出てきたんだわ。

 

 原作では炭治郎がいくら声をかけても刀についてある程度語り終えるまで顔を上げなかったから黙っていたけど。

 うん、とりあえず切り上げよう。

 

 なんて考えながら声をかけると、鋼鐵塚さんは急に顔を上げた。

 ……ひょっとこのお面……もったいないな、下はイケメンなのに。

 

「んん? んんん?」

 

 なんで刀鍛冶の里の人はひょっとことのお面をかぶる風習があるんだろう……火男を意味する言葉だからそれ繋がり?

 そんな疑問を抱いていると、鋼鐵塚さんは私の顔をまじまじと見つめてくる。

 

「あぁお前、“赫灼の子”じゃねぇか。こりゃあ縁起がいいなぁ。」

 

 そして、私を赫灼の子と称して感心したような声を上げた。

 

「赫灼の子? なんですかそれ?」

 

 とりあえず知らないふりをして、赫灼の子とはどういう意味か問いかける。

 

「頭の毛と目ん玉が赤みがかってるだろう。火仕事をする家は、そういう子が生まれると、縁起がいいって喜ぶんだぜ。」

 

「へぇ……それは知りませんでしたね。じゃあ、炭を作って売っていた私の実家は、相当縁起が良かったんですかね。私の弟と妹も、同じように赤みがかった髪の色や目の色をしていましたし。あと、鬼殺隊に入っているとはいえ一応女なんで、それ以上手を伸ばすのはやめていただきたい。指が頬に突き刺さりそうなんで。」

 

「こりゃあ刀も赤くなるかもしれん。なぁ、鱗滝。」

 

「話聞けよ、指差すなよ。」

 

 答えてくれたのは別にいいけど頬をぐりぐりすんのはやめてくれ。

 地味に痛いから。

 

 ……そんなやりとりが少し前にあったが、なんとか鋼鐵塚さんは家に上がってくれた。

 ようやくかと溜息を吐きたくなる。

 

「さぁさぁ刀を抜いてみなぁ。」

 

「はぁ……わかりました。」

 

 だが、こちらの心境など知らない鋼鐵塚さんは、謎のうねうねダンスをしながら私に刀を抜くように言ってきた。

 呆れながらもそれに従い、静かに鞘から刀を引き抜く。

 現れた鈍色の刀身……できたばかりで鋭く光るそれには、私の姿が映り込む。

 できたばかりの刀って、滅多に触らない……っていうか、初めて触ったから少しだけ新鮮だ。

 

「日輪刀は別名色変わりの刀と言ってなぁ。持ち主によって、色が変わるのさぁ。」

 

 鋼鐵塚さんが日輪刀の別名と、どうしてそう言われているのかを教えてくれる中、私はじっと刀身を見つめる。

 すると、徐々に鍔の方から刀身が黒く染まっていき、最終的には漆黒の刃へと変化した。

 

「黒っ!!」

 

「黒いな……。」

 

 鋼鐵塚さんがショックを受けたように、鱗滝さんが少しだけ驚いたように黒いと呟く。

 私はというと、やっぱり日の呼吸なんだな……と自身の適性呼吸を改めて認識していた。

 

「驚いてるみたいですが……漆黒の日輪刀って珍しいものだったりするんですか?」

 

「ああ。少なくとも儂はあまり見たことがない。」

 

 とりあえず鱗滝さんに珍しいのかと問いかける。

 彼は静かに頷いたあと、少なくとも自分はあまり見たことがないと呟く。

 

「キーーーーーーッ!! 俺は鮮やかな赤い刀身が見れると思ったのにクソーーーーーッ」

 

 対する鋼鐵塚さんは、原作通り発狂して、私に襲いかかってくる。

 ここでバタバタと攻撃されたら、炭治郎と禰豆子が鋼鐵塚さんを襲いかねないな……。

 そう思い私は危ないので刀はすぐに鞘に収め、襲いかかってきた鋼鐵塚さんをヒョイっとその場で躱す。

 

 同時に彼の手を取って引っ張りその場に転倒させたのち、その上に座り込んで押さえつけた。

 

「自分の思い通りにならないからって泣く子供ですかあんたは。いったい何歳なんです?」

 

「………三十七だ。」

 

「それならもうちょっと落ち着きましょうや、大人気ない。」

 

 女にすっ転ばされた挙句、上からのしかかられ動きを封じられたからか、鋼鐵塚さんは意外にも大人しくなった。

 うん。

 仮に刀を折るような事態に陥って殺意増し増しで襲ってきた時は同じように動きを封じよう。

 

「カァァ!! 竈門 優緋ィ!! 北西ェノ町ヘ向カエェェ!!」

 

「うっわびっくりした!! 話すんかいあんた……。」

 

 鋼鐵塚さんの上に座ったまま、これから先鋼鐵塚さんが暴走したらこうやって止めようと考えていると、鎹鴉が大声を上げる。

 知っていた展開だったけど驚いてしまった。

 意外と声でかいなこの鴉。

 

「鬼狩リトシテノォ、最初ノ仕事デアル!! 心シテカカレェェ!!」

 

「最初の仕事……ねぇ。了解。概要は?」

 

「カァァ!! 北西ェノ町デワァァ!! 少女ガ消エテイルゥ!! 毎夜毎夜少女ガ!! 少女ガ!! 消エテイル!!!」

 

「………わかった。」

 

 いや、鴉のことは今はどうでもいい。

 物語がまた一歩進んだんだ。

 気を引き締めて行かなきゃならない。

 

 なんせ、どこでどのように物語にイレギュラーが生じるかわからないんだ。

 私という、本来の主人公ではない存在が物語を紡いでいるのだから。

 

 もし、変なイレギュラーが生じたら……それに対応しなくてはならない。

 

 ゆっくりと深呼吸を繰り返す。

 頭を切り替えて、物語にまた身を投じるとしよう。

 

 

 

 


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