目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「さてと……それじゃあ鬼退治に行きますかっと。炭治郎。禰豆子。箱の中は大丈夫か?」
「ん!!」
「む!!」
「どうやら問題ないみたいだな。じゃあ、鬼退治にしゃれ込みながら、二人が人間に戻れる方法を探しますかね。辛抱ばかりさせて悪いな、二人とも。」
「んーん!」
「むーむ!」
「はは。あまり気を負うなって? はいはい。じゃあ、いつも通りの姉ちゃんで頑張るとするか。」
鎹鴉……これから一緒に動くんだから名前くらい教えろよって話しかけたらちゃんと名前を教えてくれた天王寺松衛門からの指令を聞いて少しした頃。
私は、支給された自身の隊服と日輪刀……そして、炭治郎と禰豆子の二人を入れるために原作よりちょっと幅が広くなってる背負い箱を装備し、鱗滝さんの自宅を出た。
……鬼退治に向かう前、鱗滝さんは隊服や日輪刀、背負い箱の説明をしてくれた。
まず、日輪刀。
持ち主により色が変わり、それぞれの色ごとに特性がある。
まぁ、その特性はいわゆる適した呼吸に合わせたものに変化するということだけど。
……黒い刃の日輪刀を持った剣士はあまりにも少ない。
そのせいで詳細がわからなさすぎて、出世できない剣士と言われていると彼は話していた。
だが、私は自身の適性した呼吸がなんなのかを知っている。
……始まりの呼吸と呼ばれる日の呼吸……それを生み出した剣士が手にしていたのがこれだった。
まぁ、かの始まりの呼吸の剣士は、戦闘じゃ超人的な握力と呼吸による痣の発現、それに伴う高体温を刀に伝達して、赫灼刀へと日輪刀を変化させ、鬼舞辻無惨をあと一歩に追い詰めたけど……今の私には不可能なことだし、下手したら一生できないかもなんで、今は思考から除外しよう。
次に鬼殺隊の隊服。
この隊服は特別な繊維でできており、通気性、濡れにくさ、燃えにくさ、雑魚鬼の爪や牙程度では裂くことができない、防御性に極振りしたもの。
ゲームだとどれくらいのストーリーで出てくるような防具なんだろうか……?
ちょっとだけ下らないことを考えた。
最後に、私が背負って当たる箱……原作よりはちょっとデカくなってるそれについて。
昼間、私が炭治郎と禰豆子を背負うためのもので、“霧雲杉”と呼ばれる非常に軽い素材で作られた特注品。
“岩漆”と呼ばれる特殊な漆で外側を固めてあるため、並大抵のことでは壊れたりしないもの。
改めて思うけど、炭治郎ってば結構特殊アイテム多数持っていたんだな。
……なんて、考えながら、鬼弟妹が入って眠っている箱を背負いながら、てくてくと天王寺のあとを追う。
そうそう……鱗滝さんは炭治郎と禰豆子の特異体質についても言及していたよ。
内容はもちろん知っていたから、説明は不要かもしれないけど……ちゃんと、二人とも、同じ特異体質の鬼となっていたようだ。
炭治郎も禰豆子も、人を喰うことなく、眠ることで体力を回復している。
そのことにちょっとホッとした。
だって、禰豆子はともかく、炭治郎も鬼になるというイレギュラーが発生していたんだ。
もし、原作の禰豆子とは違うことになっていたらと、少しだけ不安だった。
……しかし、炭治郎と禰豆子……この二人が太陽を克服するかどうかはわからない。
まぁ……それは二人の様子を見ていくことで、おいおいと判断するとしようか……。
「あ……町についた。」
考えながら足を進めていると、そこには町が広がっていた。
今はまだ明るいからか、人はそれなりに歩き回っている。
さて……こん中から和己ってやつを探さなきゃいけないんだが……。
「ほら、和己さんよ。可哀想に。やつれて……」
「一緒にいた時に里子ちゃんが攫われたから。」
「毎晩毎晩気味が悪い。」
「ああ、嫌だ……。」
「夜が来るとまた若い娘が攫われる。」
「お?」
……どうやらそこまで歩き回る必要はなかったみたいだ。
店から出てきたらしい女性たちの会話が聞こえてきた。
あの会話が聞こえてきた……ってことは、直ぐ近くに……。
「みーつけた……。」
少しだけ辺りを見渡せば、ふらふらと覚束ない足取りで町を歩く青年が一人。
「すみません。ちょっとお話を聞いてもよろしいですか?」
私は直ぐに小さな笑みを浮かべて青年に話しかける。
青年は一瞬驚いたような表情を聞いて首を傾げた。
「……最近、こちらで発生している少女行方不明事件に関して、少し情報を集めているんです。その犯人をつきとめるためにも。」
静かにここを訪れた理由……それを青年、和己に伝えれば、彼はその両目に涙を溜めて、ボロボロと泣き始める。
私は静かに彼に近寄ったあと、落ち着くまでその背中をさすっていた。
………しばらくして。
「なるほど……この人気のないところで……。」
「うん。一緒に話して歩いていたら里子さんは、ここで気がついたら消えていたんだ。」
少しだけ落ち着いた和己さんは、自分の恋人だった少女、里子が消えた場所まで案内してくれた。
ここは夜になると人気がなくなり、かなり静かなんだとか。
だからこそ、二人で逢瀬するにはちょうど良くて、里子さんの両親に断りを入れて散歩をしていた。
しかし、ふと里子さんの声が聞こえなくなったことに気づいた和己さんは、里子さんがいるはずの方向に目を向けた。
里子さんは忽然と姿を消していたそうな。
「信じてもらえないかもしれないけど……」
「いや、信じますよ。実際に和己さんはそれを経験したんですから。それに、あなたからはウソを感じない。……失礼。ちょっとお見苦しいものを見せます。」
どことなく自信なさげに言葉を紡ぐ彼に、話を信じることを伝え、その場にしゃがみ込み地面に鼻を近づける。
「あ、ちょっ」
すると、和己さんから慌てたような声が聞こえてきた。
「下着見えそうなのは理解してますが、こうでもしなきゃ犯人を見つけることができなくてですね。だからお見苦しいものをお見せすると一言ばかり忠告を。目は閉じていてください。」
私は静かに和己さんに一言忠告した理由を告げ、目を閉じるようにと指示をする。
彼は必死に見まいとしているのか、いろんな感情が混ざったような匂いがする。
まぁ、それ以上に、鬼独特の匂いの方に意識は持っていかれるけど。
「うーん……間違いなく匂いはあるんだけどな……。」
なんて考えながら、私は一旦立ち上がる。
斑というか……変な感じ。
これはこれで気持ち悪いな。
「匂い?」
「ああ……はい。私、幼い頃からかなり鼻が利く体質でして、微かな匂いを辿ることができるんです。でも、匂いがちょっと独特で……。和己さん。他に少女が急に行方不明になったと言われる道とか知りませんか? あまりにも不確かすぎて、見つけるまで時間がかかりそうなんです。」
「は、はい!! 確か、向こうの方でも……」
「案内をお願いしても?」
……これは、なかなか骨が折れそうな捜索になるかもしれないな。