目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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26.邂逅、沼鬼!

 あれからしばらくして。

 和己さんの案内を受けながらも、私は少女が消えていると言われている町中を歩き回っていた。

 

 時には和己さんには申し訳ないが、スカート型の制服のまま地面にしゃがみ込み、鼻を近づけることを繰り返して。

 

 うん。

 本当に申し訳ない。

 好きでもない女のパンちらがしょっちゅう起こりそうになる姿を見せてしまって。

 炭治郎たちのようなズボンというか、袴型じゃなかったんだ、私の隊服。

 蜜璃ちゃんみたいなやばすぎる露出隊服じゃなかっただけマシだけど。

 

「!!」

 

 いろいろと考えながら鬼の捜索に当たっていると、不意に腐った油のような、気分が悪くなるような悪臭を強く感じ取れた。

 

「ああ。出てきたか。それならちょうどいい。」

 

「え?」

 

 小さな呟きを漏らすと、和己さんが驚いたような声を上げる。

 

「あんたの恋人を攫った犯人……それを見つけることができたんですよ。間違いなく犯人は鬼だ。このご時世、国中に蔓延ってる……ね。私はそれを滅殺しにきたんですよ。……急がなければまた被害者が出てしまう。先に行かせてもらいますよ。」

 

 そんな彼に向かって、私は小さく笑いながら、自分の目的を素直に話し、その場で跳躍して屋根の上に飛び上がった。

 着地をしたらすぐに屋根を走り抜ける。

 

 少しして隣路地から強い匂いを感じ取れたから、地面に着地する。

 そこで嗅覚を鋭くさせるために目を閉じれば、地面から鬼と人間の女性の匂いが足下にあることを理解する。

 

「そこか!!」

 

「ギャッ!!!」

 

 そこ目掛けて日輪刀の鋒を突き刺せば、ぶわりと広がる沼のような影。

 同時に私より年齢が下である気を失った少女の姿が影から浮かび上がる。

 すかさずその子を片腕に抱えて後方へと飛び上がれば、勢いよく腕が影から伸びてきていた。

 掴ませるわけにはいかないので、日輪刀をその場で振りかぶり、その腕を斬って吹っ飛ばした。

 

「残念でしたっと……。」

 

 小さな呟きを漏らしながら、笑みを浮かべていると、私に腕を吹っ飛ばされた鬼が地面から生え……いや、出てきた。

 斬り飛ばした場所や、突き刺した場所はすぐに元通りになる。

 とは言え、こいつらは十二鬼月でもなんでもないからな。

 治りは若干遅……

 

「うっわうるさ! 歯軋りの音ってこんなにデカかったっけ?」

 

 ついでにいうと、殺気もかなり向けられている。

 まぁそうだよな。

 せっかく飯にありつけたのに、邪魔されたんだもんな。

 そりゃ怒るよな。

 でもこっちも阻止しなきゃいけないんだよ。

 被害者を少しでもなくすためにな。

 

「君!!」

 

「ああ和己さん。ちょうどいいところに。被害者になりかけてた子を見つけたんで、少しこの子を抱えて側にいてもらえますか? 私の間合いの内側なら、きっと守れると思うんで。」

 

 どぷんと影の沼の中へと戻っていった鬼の姿を確認しつつ、私は追いついてきた和己さんに声をかける。

 和己さんは驚きつつも、私の指示に従って、こっちが抱えている女の子を優しく抱えてくれた。

 

「さぁて……次はどう来るかな……。」

 

 原作では地面から三体一斉に襲ってくるはずだが……

 そう思いながら、私は静かに日輪刀を構える。

 すると、地面から強い悪臭を感じた。

 

 どうやら原作通り三体一斉に襲いかかってきたらしい。

 

「やれやれ……」

 

 “水の呼吸 捌ノ型 滝壺”

 

 上から真下へと手にしていた日輪刀を勢いよく振り下ろし、自身の足元に衝撃と斬撃を引き起こす。

 まぁ、この鬼たちから取り返さなきゃいけないものもあるから、少々浅く入るように、軽く調節をしたけど。

 

 とどめをさせなかった三体は、当たり前のように地面に潜って逃げていく。

 再び匂いに集中すれば、背後から一体鬼が出てくる。

 

 型を使わず、通常の攻撃だけで腕を斬り裂けば、すぐに距離を取られた。

 

「なかなかすばしっこいな。」

 

 ポツリと呟いた言葉に焦りはない。

 まぁ、原作を知ってるからこそできる戦い方だもんな。

 初見だったら炭治郎のように焦っていた。

 

「貴様ァアアア!!」

 

「あ?」

 

 そういえば、簪をコレクションしてるやつ誰だっけ?なんて考えながら様子を見つめていると、私から距離を取った鬼が怒鳴り声を上げる。

 それに反応をしてやれば、鬼は殺気増し増しで言葉を紡いできた。

 

「邪魔をするなァァァ!! 女の鮮度が落ちるだろうがァ!! もう今その女は十六になっているんだよ!! 早く喰わないと刻一刻と味が落ちるんだ!!」

 

「いや人間に味なんかあるんかい。鬼の感性ってわかんないな……。しかも十六がちょうどいい鮮度だって? 今年で十七になった私には随分と耳が痛いことで。まぁ、年齢からして十六歳って子供と大人の狭間だもんな。ひょっとしてそれが関係あんのかね。」

 

「いや、あの、なんでそんな冷静に……?」

 

「はは。まぁ、私のネジが数本吹っ飛んでるとでも思ってください。生身で鬼相手に立ち回ろうとしてるような奴なんで。みんながみんなそうじゃないけど、私は結構ずれてるんですよ。」

 

 怒鳴ってくる鬼に対していつもの調子で言葉を返していると、和己さんから耳の痛いツッコミがきた。

 とりあえずはぐらかすように、自分はネジが数本吹っ飛んでるずれ者とでも思ってくれと返しておいた。

 

「冷静になれ俺よ。まぁいいさ、こんな夜があっても。」

 

「ん? ふぅん。あんたはあっちに比べて随分と落ち着いた雰囲気があることで。二重人格?」

 

「さぁ、どうだろうな? ……この町では随分と十六の娘を喰ったからな。どれも肉付きが良く美味だった。俺は満足だよ。」

 

「俺は満足じゃないんだ俺よ!! まだ喰いたいのだ!!」

 

「…………。」

 

 一人上手……いやなんでもない。

 つーか寂しい奴だなこいつ。

 自分と自分で会話するって何?

 あれか?

 鏡の前に立っては毎日自分に今日も美しい的なことを言うタイプのナルシストか?

 なんであれ意味わからん鬼だな。

 約一体変にスカしてるから余計に思うわ。

 

「化物…一昨晩攫った里子さんを返せ!!」

 

 沼鬼に対してドン引きしていると、和己さんが震えながらの声で里子さんを返せと勇気ある言葉を口にする。

 

「里子? 誰のことかねぇ? この蒐集品の中にその娘のかんざしがあれば喰ってるよ。」

 

 それを聞いた沼鬼は、得意げな声音で言葉を紡いでは、自身が上に羽織っている上着を広げて見せる。

 そこには大量のかんざしが収められており、やけに煌びやかになっていた。

 

 うわ、変態かよ……と思っていると、和己さんの匂いに絶望と怒りと悲しみが混ざり合う。

 

「ふむ……どうやらあったみたいだな。よし、わかった。敵討ちと、あまり言いたくないが、遺品の奪還はお任せを。」

 

 確か……あの大きなリボンのかんざしだったか?と原作知識を引っ張り出しながら、刀を構える。

 その瞬間、すぐ横から鬼の匂いがしたため、すかさず日輪刀を振り迎撃する。

 的確に頸めがけて振ったそれは、攻撃してきた沼鬼の頸を斬り落とさんとする……が、寸前のところで地面に引っ込まれてしまった。

 

 同時に入れ替わるように壁から鬼の匂い。

 めんどくさいなと思いながらそれを躱す。

 

 しかし躱した先から鋭い爪がある腕が伸びてきた。

 さらにいうと背後からも鬼の匂い。

 挟み撃ちかよ……と思いながらも、私は背負っている箱の側面を二回ほど叩く。

 

 背後から鈍い音が聞こえてきた。

 

「ありがとう、炭治郎。禰豆子。ちょっとお姉ちゃんだけじゃ難しいから、少しばかり協力してくれるか?」

 

「ん!!」

 

「むん!!」

 

 それが意味するものはただ一つ。

 大切な弟と妹の二人が、同時に箱から飛び出して、背後にいた沼鬼を殴り飛ばした音である。

 

 

 

 

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