目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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30.襲撃、矢琶羽&朱沙丸!

「……鬼を人に戻す方法はあります。」

 

 私の静かな問いかけに、珠世さんはすぐに答えてくれた。

 確か、炭治郎はこの場で乗り出した結果、愈史郎に投げ飛ばされたんだっけ?

 

「あるんですね。それはよかった。どのような方法でしょうか?」

 

 だったら乗り出さなければいいだけだよな、なんて軽く考えながらも、その方法を問いかける。

 原作通りなのか、パラレルワールドだから違うのか、それだけは絶対に確認しなくてはならないから。

 

「どんな傷にも病にも、必ず薬や治療法があるのです。ただ、今の時点では鬼を人に戻すことはできない。ですが、私たちは必ずその治療法を確立させたいと思います。治療薬を作るためには、たくさんの鬼になった方の血を調べる必要がありますが。」

 

「なるほど……。」

 

 どうやら、原作通りの方法のようだ。

 と、なると、イレギュラーが起こり得る可能性は、これに関しては少ないかもしれない。

 まぁ、場合によってはその確立するまでの時間が遅くなると言う恐れもなきにしもあらず。

 安堵して油断をしてはならない。

 

「優緋さん。あなたは、できることがあれば手伝うとおっしゃいましたね。」

 

「ええ、もちろん。大切な宝物を取り戻すためであれば、なんだってやる所存ですよ。」

 

「むー!!」

 

「………まぁ、無理はしない程度にですが。」

 

 安堵も少しにして、すぐに気持ちを切り替えて、私は珠世さんにできることがあるならばなんだってやると返す。

 ……無理をしてでもやろうとしてると感じたらしい炭治郎から抗議の声が上がったから、ちゃんと訂正の言葉は口にして。

 

「でしたら、優緋さんには二つほど、手伝っていただきたいことがあります。それは、弟さんと妹さんの血を調べるための血液提供。出来る限り鬼舞辻の血が濃い鬼からも血液を採取して提供してほしいこと……この二つです。」

 

 私の肯定を聞いた珠世さんは、すぐに私に手伝ってほしいことを口にした。

 

「……弟と妹の血の提供…?」

 

「はい。私の見立てでは、現在の炭治郎さんと禰豆子さんは今、極めて稀な状態で落ち着いていると判断します。確か、あなたの弟さんと妹さんは二年間眠り続けて体力を回復したのでしたよね?」

 

「ええ、はい。愈史郎さんが最初に私の弟たちに鬼じゃないかと言ってきた際、聞いてなかったのかと指摘したくなりましたが、珠世さんはしっかりと聞いてくださっていたご様子で……安心しました。」

 

 そう、実をいうと、街で出会った時、私は珠世さんたちに二年間人を喰うことなく眠ることで体力を回復していた鬼の弟と妹を連れていることを話していたのである。

 だのに愈史郎はその話がなかったかのように炭治郎と禰豆子を指差して鬼じゃないかと言ってきたのだ。

 まぁ、多分だけど、“人間に優しくしている珠世様も美しい”とか、かなり上の空なことを考えていたのだろうけど。

 

「……その話を聞いて、私はその二年間のうちにお二人の体が変化したのだと思いました。本来ならば、それ程長い間、人の血肉や獣の肉を口にしなければ、鬼はまず間違いなく凶暴化しますから。しかし、驚くべきことに炭治郎さんと禰豆子さんにはその症状がない。この奇跡は今後の鍵となるでしょう。」

 

 私の指摘を聞いて、珠世さんは一瞬物言いたげに愈史郎に目を向けた。

 まぁ、愈史郎にはそんな珠世さんも美しいものに見えているのか、全くの無反応だったけど。

 少しだけ珠世さんから呆れの匂いがする。

 だけどすぐに頭を切り替えたようで、炭治郎と禰豆子の血を調べたい理由を口にした。

 

「次に、もう一つの願いの方ですが……これはとても過酷なものとなります。鬼舞辻の血が濃い鬼とは即ち、鬼舞辻に……より近い強さを持つ鬼を示すものです。そのような鬼から血を奪るのは容易ではないでしょう。それでも、あなたはこの願いを聞いてくださいますか?」

 

 覚悟と意思を問うように紡がれた言葉。

 その言葉に私は少しだけ考える。

 いくら炭治郎が物語上でクリアできたものだとしても、そのポジションにどういうわけか当てはまるようにして意思を持ってしまっただけの存在である私にもできることであるとは限らない。

 

 最悪、それがクリアできず命を落としてしまう可能性だってあるのだ。

 断りたいと思いたくなるのは仕方ないことだろう。

 鬼舞辻のように、生き物は誰しも、自身の死が見えていると生存本能に従う節がある。

 私だってそうだ。

 できることなら死にたくない。

 

 けど……

 

「ええ。それ以外に方法がないのであれば私はやります。不安はもちろんいっぱいあるけれど、珠世さんがたくさんの鬼の血を調べて薬を作ってくれるのであれば……私の大切な宝物……大切な家族である炭治郎や禰豆子だけでなく、もっとたくさんの人を助けることができるはず……だから、その話を受け持ちましょう。」

 

 だからと言って逃げるわけにはいかない。

 物語の主人公になったからじゃない。

 この体に刻まれている、竈門優緋という一人の女の記憶の中にある幸せで温かい物を、少しでも多く取り戻すために。

 

「ありがとうございます、優緋さん。」

 

 素直な気持ちを織り交ぜながら、珠世さんのお願いを引き受けることを伝えれば、珠世さんは穏やかな笑みを見せてきた。

 それに釣られて小さく笑う。

 

 うん。

 炭治郎がちょっとドキッとしてしまうのも、愈史郎が女神の如く慕うのもわかるほど綺麗な笑みだ。

 男だったら炭治郎のように若干見惚れて顔を赤らめていたかもしれない。

 これほど女性同士でよかったと思うことはそうそうないだろう。

 

「!? まずい!! ふせろ!!」

 

 なんで考えていたら、愈史郎が怒鳴るようにふせろと告げてきた。

 あ、やっぱりあいつら来んのね、なんて緊張感のカケラもないようなことを考えながらも、側にいる炭治郎と禰豆子を抱きしめてその場に伏せる。

 それとほぼ同時だっただろうか?

 不規則な動きで手鞠が壁を破壊し、襲ってきたのは。

 

 

 

 


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