目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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31.邂逅、矢琶羽&朱沙丸!

「キャハハッ!! 矢琶羽の言う通りじゃ。何も無かった場所に建物が現れたぞ。」

 

「巧妙に物を隠す血鬼術が使われていたようだな。そして、鬼狩りは鬼と一緒にいるのか? どういうことじゃ?」

 

「………チッ」

 

 毱が床にてんてんと転がる中聞こえてきた声に舌打ちをする。

 この二人は確か、結構厄介な鬼だったはずだ。

 矢琶羽と呼ばれた鬼は矢印を操って攻撃を仕掛けてくる。

 さらには毱を使って戦う朱沙丸の毱にその矢印を付与することでめんどくさい軌道をし、なおかつ必ず当たるという特性を付与してくるバッファーのような役割をしてくる。

 毱の威力はかなり高く、蹴り返そうとしていた禰豆子の足すら吹っ飛ばしたはず……。

 

「それにしても朱沙丸。お前はやることが幼いというか……短絡というか…。汚れたぞ。儂の着物が塵で汚れたぞ。」

 

「うるさいのう。私の毱のお蔭ですぐに見つかったのだから良いだろう。たくさん遊べるしのう。それに着物は汚れてなどおらぬ。神経質めが。」

 

「………炭治郎。相手は油断ならない相手だ。悪いが私の支援に回ってくれ。禰豆子は診断室で眠ってる奥さんを外の安全な場所まで運んだあと、戻れそうだったら戻ってきてくれるか? この鬼たちは沼の鬼に比べて鬼としての匂いが強い。おそらく、それなりの実力を持ってるだろうから、三人で分散した方がいい。……二人を戦わせるのは、心苦しいけど……」

 

「むん!」

 

「うー!」

 

「………はは。ありがとう。それとごめんな、不甲斐ない姉ちゃんで。本当は、守らなきゃいけないのに。」

 

「「うー!」」

 

 矢琶羽と朱沙丸が会話する中、私は炭治郎と禰豆子に申し訳なく思いながら、一緒に戦ってほしいことを伝える。

 すると二人は気にするなと言わんばかりに返事を返しては、私の指示通りに動き始める。

 

「………。」

 

「ん? 日輪刀が気になるのか?」

 

「む!」

 

「……まさかとは思うが、自分も持っていたらとかそういう?」

 

「むん!」

 

「ははは……まぁ、考えてはおくよ……。」

 

 その際炭治郎が自分も日輪刀を持っていたらみたいな目線を向けてきたため、思わず苦笑いをする。

 何でもかんでも真似しようとすんだからこの子は……。

 まぁ、一応考えてはみるけどさ……。

 呼吸が使えない炭治郎が……いや……待てよ……?

 ヒノカミ神楽が実は武器になることを教えりゃワンチャン……?

 

「キャハハ! 見つけた見つけた。」

 

 っと……そんなこと考えている暇はないんだった。

 まずはこの戦況を……。

 

 なんて考えていると、朱沙丸が毱を掲げ、それを思い切りぶん投げてきた。

 禰豆子はこの場から離れているから怪我はしない……が、炭治郎はここにいる。

 すかさず私は炭治郎を抱え込み、毱の軌道の隙間を縫って躱す。

 

 ……背後の方で、肉や骨が砕けるような音が聞こえた。

 視線をそちらに向けてみると、頭に毱が直撃したらしい愈史郎の姿があった。

 

「愈史郎さん!」

 

 慌てて声をかける。

 問題はないとはいえ、やはり目の前でこの惨状を見てしまうと声をかけざるを得ない。

 

「キャハハッ! 一人殺した! ……ん? ああ……耳に飾りの鬼狩りはお前じゃのう。」

 

「……ふぅん。狙いはこっちか。炭治郎、行くぞ。一旦外に出る。いくら鬼とは死なないとはいえ、回復にかなり力を使うのはお前が一番知ってるからな。だから、珠世さんたちをできるだけ巻き込まないようにするには、建物の外に出るのが先決だ。いいな?」

 

「む!!」

 

 しかし、すぐに朱沙丸の笑い声により意識をそっちに戻しては、急いで建物の外へと出る。

 炭治郎もそれに従うように、私のあとに続いて外に出た。

 

 すかさず朱沙丸が毱を構えて投げてこようとする。

 が、少しの隙を見つけた私は、足に力を入れて地面を蹴り上げ、そのまま朱沙丸の頸目掛けて日輪刀を振るった。

 

「!?(早い!?)」

 

 朱沙丸は目を見開いて間一髪でそれを躱す。

 それを見計らったのか、すぐに炭治郎が動いて、朱沙丸のことを蹴り飛ばした。

 

「カハッ!?」

 

 鳩尾に見事炭治郎の足が入ったのか、朱沙丸は表情を歪めながらその場から吹っ飛んだ。

 一応、勢いを殺すためか多少後方へ飛んでいたようで、そこまで吹っ飛んだりはしていない。

 

「珠世様!! 俺は言いましたよね!!鬼狩りに関わるのはやめましょうと最初から!! 俺の“目隠し”の術も完璧ではないんだ!! あなたにもそれはわかっていますよね!? 建物や人の気配や匂いを隠せるが存在自体を消せるわけではない!! 人数が増える程痕跡が残り鬼舞辻に見つかる確率も上がる!! あなたと二人で過ごす時を邪魔する者が俺は嫌いだ!! 大嫌いだ!! 許せない!!」

 

 背後から愈史郎の怒鳴り声が聞こえてきた。

 あまりにも無謀なことをしていた珠世さんに対しての怒りをぶつけている。

 彼女の身を案じ、自身の安寧のための言葉。

 本当、彼は彼女を深く愛しているな。

 

「キャ……ハハッ……何かいうておる……ッ!! 面白いのう!! 楽しいのう!! 十二鬼月である私に殺されることを光栄に思うがいい!!」

 

「十二鬼月?」

 

 不意に、朱沙丸が十二鬼月という単語を口にする。

 純粋な疑問をぶつけるように、静かにそれを繰り返せば、背後から珠世さんの声が聞こえてきた。

 

「鬼舞辻直属の配下です!!」

 

「遊び続けよう!! 朝になるまで!! 命尽きるまで!!」

 

 朱沙丸が再び毱を構える。

 

「だからそれ、意外と隙があるんだよアホ。」

 

 すかさず一気に距離を詰めて刀を振るえば、朱沙丸は慌てたように距離を取り、また毱を投げようとする。

 

「馬鹿の一つ覚え。鬼なら素手でかかってきたらどうだ? 人間程度、その腕力でも潰せるだろ。」

 

 呆れたように言葉を紡ぎ、すぐに呼吸を使用する。

 

 “水の呼吸 拾ノ型 生生流転”

 

 水の呼吸に使用する特徴的な足運びをあえて封じ、うねる龍の如く斬撃を重ねて放つ連続技。

 水の呼吸で一番強いとされているが、デメリットもかなりあるそれを放てば、朱沙丸はそれを全て躱すことに集中する。

 

「ぐぅっ!!」

 

 なかなか攻撃ができないからか、朱沙丸が表情に焦りを見せる。

 そんな中私は朱沙丸を相手にしながらもう一つの匂いを嗅ぎ分けていた。

 

「炭治郎。木の上に鬼が一体いる。ちょいとばかし引き摺り落としてきてくれるか? それまでこの目の前の鬼の攻撃封じとくから。炭治郎も私と同じで鼻が利くし、一定距離に近づければ位置が分かるはずだ。」

 

「む!!」

 

 それにより矢琶羽の匂いが理解できた私は炭治郎に木の方へと向かうように指示をする。

 炭治郎はすぐに頷いたあと、その場から走り出した。

 

 彼が向かったのは一本の木。

 そこの枝に跳躍した炭治郎は、すかさず木の上にいた矢琶羽に蹴りをかましていた。

 

「なんとか匂いを嗅ぎ分けれたが、厄介なことには変わらないな……。まぁいい。珠世さん。一応聞きますが、本当にこいつらは鬼舞辻に近い連中なのでしょうか? だとしたら、まだ癸である私がこうまで技を封じることはできないと思いますが……。」

 

「おそらく……ですが、私にもよくわかっていません。あまりにも弱すぎるような気もするので……。」

 

 それを見ながら、珠世さんに声をかければ、彼女はよくわからないと言葉を紡ぐ。

 まぁ、十二鬼月が癸程度の鬼狩りに技を封じられるはずもないし、混乱するのも無理はない。

 

「そうですか。まぁ、どちらにせよ血は入手した方がいいですね。安全確保のためにも、まずはおとなしくしてもらう必要がある……。鬼狩りの時間といたしましょうか。」

 

 

 

 


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