目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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32.戦闘、決着、矢琶羽&朱沙丸!

「土埃を立てるな!! 汚らしい!!」

 

「!!」

 

 さて、どうやって倒してくれようか……“透き通る世界”に入っていたら血鬼術が見えるんだろうか?

 朱沙丸の攻撃を封じながら考えていると、ふくじゅんボイスの怒鳴り声と共に、炭治郎の匂いが勢いよく近づいてくることに気がつく。

 

 炭治郎にダメージを喰らわせるわけにはいかないと判断した私は、打ち潮を使用して朱沙丸の腕を斬り落としたあと、飛んできた炭治郎を片手で抱え、一旦後方に飛ぶ。

 

「すまん、愈史郎さん。あの無駄にいい声してる鬼の攻撃が見えないんだけど、見る方法ってない?」

 

「なんで俺を頼るんだ!! ないこともないが!!」

 

「見えなかったら時間かかりそうだからだって。あんまり時間かけたくないし、私も怪我したくないからさ。」

 

「チッ……だったら俺の視覚を一時的に貸してやる!! これを貼っとけ!!」

 

「いでっ!! ったく……珠世さん以外には優しくないんだから。まぁ、ありがとさん。」

 

 そして、一時的に愈史郎に近寄り、矢琶羽の矢印を見る方法はないかと問い掛ければ、でこに思い切り平手で何か……いや、あの血鬼術による札を貼りつけられた。

 かなり強めに叩かれたからちょっと痛い。

 けど、まぁ、力は貸してくれたからよしとしよう。

 

「むーー!!」

 

「炭治郎。大丈夫だから落ち着け。少し額が赤くなる程度だよ。これくらいはまだ怪我じゃない。ほら、続きいくぞ。」

 

「………む!!」

 

 私を叩くような形で愈史郎が札を私に貼ったからか、炭治郎が少し愈史郎に怒った。

 まぁ、すぐに私の声を聞いておとなしくなってくれたからよし。

 

「威力は凄まじいが、あの毱の鬼は攻撃が単調だ。だから毱が投げられる前に毱の鬼を攻撃すれば、一方的な防戦を強いることができる。禰豆子が戻ってきたら、彼女にも参加させて連携を取れ。その間、厄介な男鬼の方は私が引き受けるから。互いに無茶しないように、頑張るぞ炭治郎。」

 

「むん!! むーーー!!」

 

「う?」

 

「むー!」

 

「むん!!」

 

 炭治郎のやる気は十分。

 ちょうど禰豆子も戻ってきたから形勢はそれなりに有利なはず。

 二人の怪我はこれで軽減できるだろう。

 

 ……つか、やっぱり兄妹だなこの二人組。

 “む”と“ん”だけで会話成立しちゃってるよ。

 私にも内容はわかるけど。

 

「じゃあ、サクッと終わらせて安全確保をするとしますか!!」

 

 そう思いながら、私が矢琶羽の方へと走り出せば、炭治郎と禰豆子の二人は私の指示通り朱沙丸の方へと走って行き、まず炭治郎が攻撃をして、躱されたら禰豆子が続くような形で彼女に襲いかかる。

 

「なんじゃお前ら!! ぐっ!! 絶妙に時間差で襲ってきて毱が投げられん!!」

 

 鬼兄妹同時に襲われている朱沙丸が焦りの声を上げる中、私は矢琶羽に走り寄る。

 日輪刀をしっかりと手にして、頸を斬らんと行動する。

 

「何という薄汚い子供じゃ。儂の側に寄るな。」

 

 そう言って矢琶羽がこちらに掌を向けてきた。

 掌にある矢印が描かれた目がバチンと一つ瞬きをする。

 

 そのタイミングで跳躍すれば、矢印の効果範囲外に抜け出すことができた。

 あと一歩で届かないという状態にはならない。

 

 “水の呼吸 捌ノ型 滝壺”

 

 同時に私は日輪刀を振り上げ、滝壺を使用する。

 

「!!」

 

 矢琶羽は慌てて攻撃を避けるために後方に飛び、再び矢印を使用しようとした。

 

「ぎゃっ!!?」

 

 まぁ、そんなの食らうつもりはないので、その矢印の目を掌ごと縦に斬ったけど。

 

 “水の呼吸 壱ノ型 水面切り”

 

 痛みに声を漏らした矢琶羽の頸目掛けて一閃する。

 一瞬の隙につけいられた矢琶羽の頸は胴体とすぐにサヨナラした。

 

「くっ……!! おのれおのれおのれ!! お前の頸さえ持ち帰れば、あの御方に認めていただけたのに!! 許さぬ!! 許さぬ許さぬ許さぬ!! 汚い土に俺の顔をつけお……」

 

「悪あがきしたって無駄だっての。とっととあの世に直行しなってな!!」

 

「ぎゃっ!?」

 

 恨みごとのように言葉を紡いでいた矢琶羽の顔面を真っ二つに斬り裂き、すぐに置き土産ができないようにと残っている掌の目も二つに斬り裂く。

 それが止めとなったのか、矢琶羽は完全に事切れて、程なくして塵となり消えていく。

 

「よし。」

 

 厄介な矢印は無くなった、そう思いながら朱沙丸と戦う炭治郎と禰豆子の元へと向かう。

 二人は私の指示通り、上手く連携を繋げながら朱沙丸相手に立ち回っており、彼女の攻撃をしっかりと封じていた。

 

「よ、炭治郎、禰豆子。お疲れ。片方は片付けて来たから、あとは姉ちゃんに任せときな。」

 

「ん!!」

 

「むん!!」

 

「!!?」

 

 炭治郎たちに声をかけながら駆け寄れば、二人はすぐにその場から後退するように飛び退く。

 それと入れ替わるように朱沙丸の前に姿を見せれば、急に離れた二人のせいで反応が遅れた朱沙丸と目が合う。

 

「命を狙われたらやり返す。それがこの世の理ってもんだよ。悪いけど、あんたはこの場で倒す。」

 

 そんな彼女に不敵な笑みを見せながら、私は両腕をクロスさせ、そのまま一閃する。

 

 ”水の呼吸 壱ノ型 水面斬り”

 

 月光を反射しながら煌めいた刃は容赦なく朱沙丸の頸に牙を剥く。

 彼女の胴体と頸は、この一撃だけで分かたれた。

 

「バカ……な……!! 鬼狩りの……子供如きに……!!」

 

 ショックを受けたように呟く朱沙丸。

 茫然と塵となる自身の体を見つめながら、彼女は静かに固まっている。

 

 そんな朱沙丸に、珠世が静かに近寄り、彼女の瞳をじっと見つめる。

 

「……優緋さんが疑問に思っていた通り、この方は十二鬼月ではありません。本物の十二鬼月は眼球に数字が刻まれているはずです。しかし、この方には刻まれていない。もう一方もおそらく十二鬼月ではないでしょう。弱すぎる。」

 

 そして、静かに朱沙丸と、矢琶羽は十二鬼月ではないと口にしては、どこからともなく注射器を取り出し、まだはっきりと形が残る朱沙丸の体から血液を採取する。

 

「……ふむ……となると、鬼舞辻から私の首を持って来たら十二鬼月にしてやるとでも言われて乗せられたのかもしれませんね。私のことを狙っていたし。」

 

「はい。おそらくはそうでしょう。」

 

 珠世さんと静かに会話をする中、朱沙丸は完全な塵と化し、風によって飛ばされる。

 ……うん、結構呆気なかったな。

 

 

 

 


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