目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
正一とてる子と離れ、優緋は善逸と二人で屋敷の中へと入る。
かなり広い出入口だ。
なんでこんな屋敷が人気の少ないところにあったのやら……。
血鬼術が影響してるんだったか?
うーん……相変わらず鬼滅の世界はファンタジーがいっぱいありすぎて、謎が尽きないな。
まぁ、だからこその和風ファンタジーなんだけどさ。
「ゆ、ゆゆ、ゆ、優緋ちゃん! 優緋ちゃんのことは絶対に俺が守ってあげるから!! 怖いけど!! 逃げたいって思っちゃうけど!! 絶対、絶っっっ対に女の子である優緋ちゃんを置いて逃げたりしないから!!」
「はは。ありがとう、善逸。でも、私だってちゃんと鬼殺隊の一員だから、無理して守らなくても……」
「だだだ、だって!! 優緋ちゃんが死んじゃったら誰が俺と結婚してくれるの!?」
「いや、他にも可愛い子はいっぱい……」
「絶対に守るから!! 弱いけど頑張るから!!」
「は……はは……。どうも……。」
そういや善逸って、戦いの場に禰豆子を連れて行っちゃった炭治郎を追いかけてたな。
女の子を危険な場所に連れてくなって。
まぁ、多分、女の子は男が守るものって認識が強いんだろう。
別に私のことは守らなくてもいいのにね……。
「って、なんで着いて来ちゃってるんだ君らは!!」
「ヒィッ え!? 何!?」
「後ろ後ろ。」
「え、あ、あの子たち!!」
なんて考えていたら、正一とてる子の二人の匂いが近づいて来ていることに気づき、慌てて声をかける。
善逸が一瞬混乱したけど、私が後ろだと声をかければ、正一とてる子の姿に気づき、目を丸くした。
「お、お姉ちゃん!! あの箱、カリカリ音がして……!!」
「あ……ああ、それは驚かせちゃったな……。謝るよ。でも流石に置いてこられるのはちょっとお姉ちゃん傷つくかなぁ……? あれは私の命より大切なものだから……」
恐怖とパニックに襲われている二人を見て素直に謝罪する。
心細い中、急に箱から物音がしたりしたら、怖いからね、うん。
ホラー映画とか、心霊番組の怖いところをたまたま見てしまって泣きたくなる中、急に不意打ちで音が聞こえて来たり、声をかけられたりして悲鳴を上げて泣きたくなった経験がある身としてはわからなくもない。
けど、やっぱり炭治郎と禰豆子の二人が怖がられた上、置いてけぼりにされたのは悲しいと言うか虚しいわけで……。
かなりのショックを受けていると、不意に大きなものが床を踏ん付けたような軋む音が聞こえてきた。
驚いて側にいたてる子を抱きしめ顔を上げていると男の悲鳴と同時に軽い衝撃に襲われる。
バランスを崩しながら衝撃が感じ取れた方に目を向けてみると、そこには顔を両手で覆いながら、お尻を突き出してる善逸の姿があった。
「うわ!?」
「あっ!! ごめん…!! 尻が!!」
善逸の謝罪が途切れる。
同時に辺りに鼓の音が響き渡った。
音がなくなるのを見計らって顔を上げると、先程までいた玄関の景色ではなく、一室の部屋に移動する。
「マジかよ……。」
思わずポツリと呟く。
血鬼術で空間転移とか、本当になんでもありだ。
無限城も大概だがな、琵琶の音で城全体がめちゃくちゃに変化するし。
「ううう……」
「!」
元の世界ではありえない出来事……二次元の世界だからこそ許される不思議。
それを経験していくというのはなかなか慣れない……そんなことを考えていると、てる子の嗚咽が聞こえてきた。
視線を彼女に向けてみると、ポロポロと両目から涙が溢れている。
「お兄ちゃんと離れ離れにしてしまったな……ごめん。でも、大丈夫。私が君を守り抜くよ、必ず。お兄ちゃんの方も、善逸が守ってくれるから大丈夫さ。」
心細そうにしている小さな少女の耳が、自身の胸元に触れるように優しく抱きしめる。
人は、人の心臓の鼓動の音で落ち着くことがあると聞いたことがあったけど……少しくらいは効能があるかね……?
「そうだ。ずっと君呼びじゃ失礼だな。名前を教えてくれるか?」
「……てる子。」
「フフ……いい名前だな。明るい女の子に育ちますようにって願いが込められているのかも。」
優しく頭を撫でながら、少しでも気を紛らわせて落ち着けるようにと名前を訪ねれば、てる子はすぐに自分の名前を答えてくれた。
うん、ようやくこの子の名前を口にすることができる。
確かに私はこの子の名前を知っていたけど、それは一方的なもの。
だから口にするわけにはいかなかったから。
誰だって、初対面の知らない人に名前を呼ばれたらすごく怖くなるだろうしね。
「……と……あまりゆっくり話せないな。てる子ちゃん。そのまま顔を私の胸元に押し当てといて。耳…は流石に塞げないから、怖い声が聞こえてくるかもしれない。だが、私が側にいるから大丈夫。てる子ちゃんを悪い奴に傷つけさせたりしないから、絶対に。だから信じて。叫び声は決して上げてはいけないよ。」
不意に……鬼の匂いが近づいてきていることに気付いた私は、すぐにてる子に優しく声をかける。
叫んでは駄目だという忠告と、必ず守るから安心してほしいという言葉を紡ぎながら。
てる子は小さく頷いたあと、私の背中に腕を回して、指示通りに胸元へと顔を押し当てた。
「なぜだ。どいつもこいつも余所様の家にづかづかと入り込み……。腹立たしい…。小生の獲物だぞ。小生の縄張りで見つけた小生の獲物だ……。あいつめ…あいつらめ……!!」
………うん、べ様ボイス。
何というかその……鬼滅ってモブ鬼というか……一つの話に出てくる鬼が一人一人豪華な声優だよな。
すごいとしか言えない。
「てる子ちゃん。悪い奴を見つけたから少し離れるよ。この羽織を頭から被って、部屋の隅に。」
「う、うん。」
こんな状態であっても、私は読者や視聴者側としての関心が抜けないな……と少しだけ苦笑いをしながらも、てる子が退がったのを確認して、日輪刀を抜刀する。
炭治郎は不意打ちができない子だったけど、私は不意打ちに抵抗はないので、特に声をかけることなく斬りかかる。
「俺が見つけた“稀血”の子供なのに!!」
が、鬼……響凱と距離を詰める際に蹴り上げた床の音が思った以上にデカかったのか、普通に鼓を叩かれてしまった。
「あらら……。もうちょっと距離の詰め方考えないとな……と。」
部屋がぐるりと回転する。
すぐに私はバックステップでてる子の元へと移動して怪我をしないように、そして鬼を視界に入れないようにと抱き寄せて、そのまま着地する。
「大丈夫だったか?」
「うん……お姉ちゃん、ありがとう……。」
てる子に怪我の有無を問えば、彼女は無傷であることを教えてくれた。
それに安堵の息を吐いた私は、視線をてる子から響凱の方へと目を向ける。
が、そこに広がってるのは、側面側に来ている畳の壁だった。