目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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38.邂逅、元下弦の陸、響凱!

「これでよし。治るまでは少々時間がかかるだろうけど、歩く分には問題ないだろう。よく頑張ったな、この鬼の根城で。清くんはすごい子だ。」

 

「ありがとう、優緋さん。」

 

 あれからしばらくして。

 感動的な兄妹の再会を見届けた私は、怪我をしていた清に、鱗滝さんからいただいた傷薬と、いざという時のためにと持ち歩いていた包帯を使って、怪我の手当てをした。

 この鬼の根城で一人頑張っていた彼の勇猛さを褒めながら。

 私が褒めると、清はすごく嬉しそうにしてくれた。

 

「さて……清くん。かなり心労が絶えない状態だろうが質問する。ここで、何があったのか話してくれないか?」

 

 だが、私のこの質問で、嬉しそうな表情は一気に青ざめ、恐怖に染まってしまう。

 そうなることはわかっていたため、私は静かに清の頭を撫で、その手を優しく握りしめる。

 

「……化け物に攫われて……喰われそうになったんだ。そしたら、どこからか別の化け物がきて……殺し合いを始めた……。誰が、俺を喰うかって………。それで……体から……鼓が生えてる奴……あいつが他の奴にやられた時、この鼓を落としたから……叩いたら、部屋が変わって……何とか……今まで…………。」

 

 すると、それが多少なりとも清を安心させたのか、先程よりかは顔色がマシになった彼が、ポツリポツリと状況を説明してくれた。

 そうか……と小さく呟く。

 そして、すぐに頑張ったなと告げれば、涙を堪えながら清は頷いた。

 

「そういえば、鼓の鬼は“稀血”って言葉を紡いでいたが……」

 

「!! そうだ、そう…!! 俺のことをマレチって呼ぶんだ!!」

 

 そんな中、静かに稀血という単語を口にすると、清が食いつくように言葉を紡いできた。

 ふむ……と軽く思いながら天王寺を見る。

 

「………稀血トハ 珍シキ血ノ持チ主ヲ示ス言葉ダ。」

 

「うわ!?」

 

「キャア!」

 

「オイコラガキ共。セッカク心労ノコトモ 考エテル優緋ノ気持チモ 汲ンデ 話シテヤッテルノニ ソノ反応ハ何ダオイ。ツツキ回サレタイノカ?」

 

「……そりゃ、鴉が急に流暢に話し始めたら誰だって驚くっての。まぁ、それは置いといて……稀血の説明、続けてくれ。」

 

「フンッ」

 

 何気に私の意思を汲んで言葉を紡いでくれている天王寺を落ち着かせるために話しかければ、天王寺は一度鼻を鳴らしたあと、再び口を開いた。

 

「生キ物ノ血ニハ 種類系統ガ アルンダ。稀血ノ中デモ サラニ数少ナイモノ、珍シキ血デアレバアル程 鬼ニハ ソノ稀血一人デ 五十人、マタハ百人モノ人ヲ 喰ッタノト同ジクライノ 栄養ガアル。ツマリ、稀血ハ鬼ニトッテノ御馳走デアリ 大好物トナルワケダ。」

 

 ドヤさ、と胸を張って威張る天王寺。

 

「なるほどな。説明ありがとう、天王寺。鬼がてる子ちゃんや、もう一人の男の子に目もくれず清くんを連れ去った理由がよくわかった。」

 

 そんな天王寺に感謝の言葉を述べれば、当然だと彼は言葉を紡ぎ、もっと褒めろと言わんばかりのドヤ顔を見せた。

 それを叶えてやろうと口を開く。

 

 が、すぐに響凱の匂いが近づいてきていることに気づき、口を閉じた。

 

「……清くん。てる子ちゃん。今から私が言うことをよく聞いてくれ。」

 

 しばしの無言を作ったあと、私は静かに口を開く。

 真剣な様子であることは理解できているのか、清とてる子は了承をするように頷いてきた。

 

「……少しだけ酷なことを言うが、私はこの部屋を出る。」

 

「えっ!?」

 

 それを確認してすぐに口を開くと、清とてる子が驚いたような表情を見せる。

 同時に不安そうな様子を見せては、少しばかり混乱し始めた。

 

「落ち着いて。大丈夫。ただ、ちょっくら鬼退治をしてくるだけだからさ。だから、部屋を出なくちゃならないんだ。」

 

 しかし、私の鬼退治発言により、二人はすぐに落ち着きを取り戻す。

 自分たちの現状の元凶である存在を倒すと言う言葉が、少しくらいは効いたのかもしれない。

 

「てる子ちゃん。清くんはかなり疲れているから、何かあったら支えてやるんだよ。」

 

 その様子に少しだけ笑みを浮かべた私は、すぐにてる子の頭を撫でながら、疲れている清をいざという時は支えてやるようにと伝える。

 てる子はすぐに頷いた。

 

「よし。それじゃあ、今から二人がやることを伝える。いいかい? 私がこの部屋を出たら、すかさず鼓を打って移動するんだ。今まで清くんがしてきたように、誰かが戸を開けようとしたり、近くで物音がしたら間髪入れずにまた鼓を打って逃げること。大丈夫。私は必ず二人を迎えに行くから。二人の匂いを辿って。戸を開ける時は名前を呼んで、私であることを伝えるよ。」

 

 それを確認した私は、これから二人がやるべきことを静かに伝える。

 二人が不安そうな顔をするから、何度目かわからない大丈夫も口にして。

 

「もう少しだけ、頑張るんだ。できるかな?」

 

 それでも不安そうな二人に、私は穏やかな声音で話しかけながら、優しく頭を撫でる。

 すると、清とてる子はすぐに頷く。

 震えは収まっていないけど、頑張ることを約束してくれた。

 

「えらいね。とても強い子たちだ。それじゃあ、行ってくるよ。」

 

 笑顔を見せながら、行ってくると伝え、すぐに部屋から外へと走る。

 同時に響凱が姿を見せて、この部屋を覗き込むように視線を向けてきた。

 軽くホラーだな、と思いながらも、急いで廊下に出る。

 

「叩け!!」

 

 同時に短く清に指示を飛ばせば、辺りに一度鼓の音が響き渡り、彼らの匂いが遠ざかった。

 

「虫けらが………忌ま忌ましい………!!」

 

 せっかく追いついたはずの稀血がいなくなったことは、響凱にとって、かなり腹立たしいものだったようだ。

 食事を邪魔されたからか、すごく怒ってる。

 

 それは鼓の音にも現れており、連打による部屋の向き変化や、爪痕のような裂傷を作る斬撃が、この一室に襲い掛かった。

 

 

 

 


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