目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「狭霧山に行くなら、あの山を越えなきゃならないけど…もう日が暮れるのに、そんな大荷物背負って行くのかい? 危ないよ。」
「ええ、それは重々承知しています。でも、私が背負っているのは、何よりも大切な宝物なので、このまま向かいます。十分に気をつけながら。道を教えてくださりありがとうございました。」
「お嬢ちゃんがいいなら止めはしないけど、ほんとに人が行方知れずになったりしてるからね。迷わないように気をつけて行くんだよ?」
「はい。」
あれからしばらく歩いていると、だいぶ空は暗くなり、人もまばらになる時間になった。
炭治郎と禰豆子はしばらくは元気よく私に話しかける……といっても、今は「ん」とか「む」とか「う」くらいしか話せないんだが、声をかけてきていたため、結構早く時間が経った。
でも、原作の炭治郎と同じスピードで道をたどることができてはいるようで、あの子と同じタイミングで子連れの女性に出会うことができた。
道は合ってるかどうか確かめるために、女性に狭霧山への道のりを聞いてみたらこっちで合っているようで安心した。
「よっと……二人の子供を背負って登山か……。多少疲れそうだが、我慢我慢。長子ならしっかりしないとね。」
子連れの女性とわかれた私は小さく呟きながら山登りを開始する。
と、背負っている籠がぐらぐらと揺れた。
わざと揺らされた感じだ。
「なんだ? 外に出たいのか、炭治郎?」
「ん!!」
「むー。」
「禰豆子もか……。ちょっと待ってろ。今いる場所、少し不安定な場所だから下手をしたら転んでしまう。」
「「ん!!」」
それが意味するものにすぐに気づいた私は、確認のために外に出たいのかと問いかけた。
返ってきたのは元気のいい返事。
同時に禰豆子も出たいことを訴えるように籠をつついてきたので、足場が不安定じゃないところまでは我慢してくれと声をかける。
炭治郎と禰豆子は元気よく了承するような声を出し、大人しくなった。
……今のうちに移動しよう。
足場が悪くない場所まで……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
少し歩いてみれば、足場が安定した場所にまでたどり着いた。
私は、すぐに籠を地面に置いて、籠を覆っていた布を外す。
それを合図にしたのか、炭治郎と禰豆子はひょっこりと籠から顔を出したあと、のそのそと中から外へと出た。
「ゔ!!」
……禰豆子が転んじゃったよ。
「ゔ……ゔぅ……っ」
「あ〜……うん、痛かったな。大丈夫か禰豆子?」
すぐに禰豆子を起き上がらせた私は、痛かったな……と話しかけながら頭を優しく撫でる。
炭治郎はすぐ側でオロオロとしては、つられて泣きそうになっていた。
「大丈夫。大丈夫だから。禰豆子に怪我はないよ。幸いなことにたんこぶとか擦り傷とか切り傷や打身もないみたいだぞ? 泣くな泣くな炭治郎。禰豆子。痛かったな。でも大丈夫。ほら、痛いの痛いの飛んで行け〜ってしちゃえば、痛みなんてどっかに吹っ飛ぶはずだ。な? 痛いの痛いの飛んで行け。痛いの痛いの飛んで行け〜。……ほら、痛みはなくなっただろう?」
そんな二人をあやすように、穏やかな声音で話しかけながら、禰豆子の頭と炭治郎の頭の両方を優しく撫でれば、鼻をスンスンと鳴らしつつも、完全に泣き出してしまう前に落ち着いてくれた。
少しだけほっとする。
いやぁ……子供ってなんで一人泣いたら側にいる子も泣きそうになるんだろうね……?
ふぅ……この体に刻まれてる記憶に助けられたな。
向こうじゃ私は一人っ子だったから小さい子をあやしたことなかったし、どうなるかと思った……。
「むー?」
「はは。大丈夫だよ炭治郎。最近は炭治郎が弟や妹たちをあやしてくれていたから、久々に自分でやれるか不安だっただけだからさ。ほら、私って長女だろう? 十五になって、いろいろとやることが増えていたから、下の子らを見ることできなかったし、前みたいにあやせないと思っていたんだ。でも、ちゃんと前のようにできてほっとしたんだよ。」
「ん!!」
「心配はいらないって?」
「うー!」
「そうか。それはよかった。」
安堵していたら、炭治郎が心配そうな表情をしてきた。
だから、安堵の理由を素直に伝えると、にこにこ笑いながら大丈夫と励ましてくれた。
匂いで励ましであることがわかった。
感謝を伝えるように小さく微笑んだ私は、すぐに炭治郎の頭を撫でる。
炭治郎は無邪気に笑いながら、私にくっついてきた。
「うー!!」
「おっと。」
原作では長男だからと甘えを見せたりしていなかった炭治郎が自分より先に生まれた優緋という姉に全力で甘える姿にほっこりしていると、炭治郎の反対側から禰豆子が突進する勢いでやってきた。
勢いに押されないようになんとかそれをバランスを崩すことなく受け止めると、ぐりぐりと頭を私に押しつけたあと、炭治郎に対してフーッと威嚇する猫の如く唸りを漏らす。
お兄ちゃんだけずるいって言う嫉妬の匂いがする。
「はは。普段は甘えられないお兄ちゃんがたまに姉に甘えるのはいいと思うけどな。構われすぎていると、今度はその下の子が拗ねるか。」
思わず笑い声を上げてしまった。
今まで兄弟も姉妹もいなかったから、下の子らに取り合われることなんてなかったから新鮮だ。
……相当、私は弟や妹たちに好かれていたみたいだな。
「狭霧山まではまだあるみたいだからそろそろ進むぞ。とりあえず、一旦二人とも離れてくれ。荷物持つから。」
「「ん!!」」
素直でよろしい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「うん、思った通りだ。お堂がある。ずっと歩きっぱなしはきついからな。休憩できそうなら休憩するか。」
「う!!」
「………。」
炭治郎と禰豆子の手を引きながら、山道を歩くこと数十分。
原作通りならばそろそろお堂が見えてくるはずだと思っていると、目の前に開けた場所が見えてきた。
そこの中央にはぼろっちいお堂がポツリ。
わずかな明かりが漏れているため、確実に何かがいる。
まぁ、鬼だってわかってるけどな。
原作を知ってるからと言うのもあるが、匂いに混じってる。
強い血の匂いもするため、少しばかり気分が悪い。
「……炭治郎。大丈夫か?」
が、それ以上に私は炭治郎のことを心配した。
なぜなら炭治郎も鼻が利く。
だから、血の匂いはすでに強くしているのではないかと思ったんだ。
「うゔ……」
「……やっぱり血の匂いがするんだな。大丈夫だ炭治郎。大丈夫。お前なら堪えることができるはずだ。難しいならこれを頭から羽織ってろ。私の匂いがついてる羽織だからな。多少なりとも落ち着けるはずだ。」
「フーッ……フーッ……」
唸り声をわずかに漏らした炭治郎を見て、血の匂いに誘発されて、鬼としての本能が出ていることに確信が持てた。
それならと、私はすぐに炭治郎に自分が羽織っていた羽織を頭に乗せる。
炭治郎はすぐに私の羽織りを抱きしめるように持ち始めた。
「えらいな、炭治郎。ちゃんと堪えることができている。……禰豆子。お兄ちゃんの側にいてやれ。今わかったが、あのお堂からは強い血の匂いがする。人がいるのか、行方不明になるという話ができる原因となった何かがいるのか……このどちらかだと思うから。血の匂いは、今の炭治郎と禰豆子にはきついものだろうから、なるべく近寄らないように。わかったな?」
「うー……」
「大丈夫。ちゃんと私は戻ってくるから。だから、炭治郎の側にいてやれ。」
「……ん。」
「フフ……いい子だ。」
私が離れることに不安を抱いている様子の禰豆子に何度も大丈夫だと言い聞かせるように言葉を紡げば、ようやく禰豆子は小さく頷く。
褒めるように頭を撫でると、禰豆子は気持ち良さげに撫で受けたあと、炭治郎のことをぎゅっと抱きしめた。
私の服と禰豆子の匂い……うん、これなら炭治郎も落ち着けるだろう。
「さぁて……様子見してくるとしますか……。」
そう判断した私は、斧を片手にお堂に近寄る。
近づくたびに血の匂いが濃くなってくるのは正直不快でしょうがないが、我慢だ我慢。
匂いの強さに顔をしかめつつもなんとかお堂の戸に手をかけて、勢いよく開く。
そこには複数の血塗れな人間と、人間の女性の腕に噛み付いていたのか口元に大量の血をつけている鬼の姿があった。
「なんだ、おい。ここは俺の縄張りだぞ。俺の餌場を荒らしたら許さねぇぞ。」
「……いや、荒らすつもりはなかったんだが、あまりにも血生臭くてね。気になって顔を覗かせた。なるほど、人喰い鬼の巣か。」
声がグリリバな鬼……そういや、アニメだと、こいつそんな声だったわ……と思いながら、容赦なく私は、自身の腰にあった斧を鬼目掛けて振り上げた。