目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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かなり痛い(物理)表現あります。
結構伊之助がかわいそうなことになっているのでご注意ください。


40.嘴平伊之助、撃沈!!

「ここだな。清くん。てる子ちゃん。私だけど、戸を開けてもいいかな?」

 

「「!! はい!!」」

 

 あのあと、響凱の体から血を採り、珠世さんの遣いの猫にそれを手渡した私は、てる子たちの匂いを追って、ある一室の前にまでやってきた。

 確か、炭治郎はこの場で名前を呼びながら戸を開いたことであの子らに物を投げられたはず、と考えながら、声をかけて間をおけば、二人から戸を開けていいという許可がもらえたので、静かに戸を開く。

 清もてる子も見た感じ怪我はしていないようだ。

 

「待たせたね。迎えにきたよ。鬼はしっかりと退治してきたから、安心して部屋を出よう。」

 

 よかったよかったと安堵しながら、二人にこの屋敷を立ち去ろうと告げれば、すぐに二人は頷いて、私の横に並んでくる。

 うん……小さい時の竈門家を思い出したぞぅ……。

 

 この体が見せてくれた記憶の中に、弟や妹に一気に群がられては苦笑いを溢している姿があった。

 まぁ、記憶の中の状況は、炭治郎、禰豆子、竹雄、茂、花子、六太の弟妹全員にもみくちゃにされていた気もするけど。

 

「女に背負われるのは嫌かもしれないけど、清くんは私におぶさって。こう見えて結構でかい甘えたがりな弟を背負っていたこともあるからな。安定感は保証するよ。」

 

「あ、ありがとう……ございます……。」

 

 そんなことを思いながら、清の前にしゃがみ込んで見せれば、彼は少しだけ恥ずかしそうにしながらも、私の背中に乗る。

 それを確認するなり立ち上がった私は、てる子に目を向けた。

 

「てる子は、私の服の裾を握っているといい。いくら鬼はいなくなったとしても、心細かったり、まだちょっと怖いと感じていたりすることもあるだろうからね。」

 

「うん。」

 

 こちらの提案を聞いたてる子は、すぐに私の服の裾を握りしめた。

 可愛らしいな。

 けど、和んでいる場合じゃない。

 早く行かないと……。

 そう思いながら私は、嗅覚を利用して善逸と正一、そして伊之助の匂いを嗅ぎ取る。

 

 ……ああ、少しだけ遅かったみたいだな。

 血の匂いが混ざってる……。

 

「少し急ぐぞ。血の匂いが混ざってる。善逸か君らの兄弟の正一くんが怪我をしているのかもしれない。」

 

 舌打ちしそうになりながらも、清とてる子に軽く急ぐ趣旨を伝える。

 二人は目を丸くしたあと、何度か頷いた。

 よし、と思いながら、少しだけ早足に外へと向かう。

 清を落とさないように、てる子が離れないようにしながら。

 

「刀を抜いて戦え!! この弱味噌が!!」

 

 急いで玄関から外に出てみると、そこには善逸と伊之助の姿があった。

 善逸の体勢は、炭治郎と禰豆子が入ってる箱を抱きかかえて、絶対に攻撃させないようにするための守る体勢。

 対する伊之助は、刀を抜刀した臨戦体勢。

 

「善逸!!」

 

 慌てて善逸の名前を呼べば、彼はゆっくりと顔を上げた。

 何度も蹴られたり殴られたりしていたのか、顔はパンパンに腫れ上がっており、鼻からは血を流している。

 

「優緋ちゃん…俺…守ったよ。君が…これ…命より大事なものだって…言ってたから………。」

 

 痛々しい姿で小さく言葉を紡ぐ善逸。

 

「威勢のいいこと言ったくせに刀も抜かねえこの愚図が!! 同じ鬼殺隊なら戦って見せろ!!」

 

 伊之助は相変わらず善逸に怒鳴りながら、さらなる追い討ちをかけようとしている。

 流石にそれ以上は怪我をさせるわけには行かない。

 

 私は清をその場ですぐに下ろしては、善逸を蹴ろうとした伊之助に素早く距離を詰め、ガラ空きの股間目掛けて自身の足を振り上げる。

 

「おぶ!? っ〜〜〜〜〜〜〜〜!?」

 

(((股間蹴ったァーーーーーーーーッ!!!?)))

 

 その瞬間、伊之助は男の弱点を蹴り上げられたことにより走るとんでもない痛み……とは言っても、女の私じゃあまりわからないが、それにより悶絶したようにその場に転がりのたうちまわる。

 両手で自身の股間を押さえてゴロゴロゴロゴロと暴れている。

 

 周りの男性陣からは畏怖する視線を向けられる。

 よくみると三人も蹴られてはいないはずなのに、防衛本能か共感からか、股間を押さえて顔を青くしていた。

 唯一てる子だけは首を傾げている。

 

「てる子ちゃん。男はみんな股がかなりの弱点だ。もし、変な輩に絡まれるようなことがあったら、勢いよくそこを蹴り上げてやれば大抵の男はこうなる。ああ、だからといって鬼にはしたら駄目だよ。鬼は人間と違ってかなり強いからね。せいぜい、めんどくさい人間相手だけに最終手段として使うといい。世の中には、変態とかかなりいるからな。可愛らしい女の子は総じて狙われやすいから、覚えておくといいよ。上手く入れることができたらしばらくは動けなくなるし、最悪失神するからな。」

 

「うん!!」

 

「無垢なてる子ちゃんに対してなんてこと教えちゃってるの優緋ちゃぁああん!?」

 

「一つの防衛技術だけどなにか?」

 

「ヒィッ!! 可愛い顔でなんてこと言うの!? ていうか猪の奴動かなくなっちゃったんだけど!?」

 

 ……失神したんだな。

 まぁ、ちゃんと機能不全に陥らないように加減はしたが、かなりの力で蹴り上げたしな。

 痛いと思うのは仕方がない。

 

「そんなことより。」

 

「そんなこと!?」

 

「善逸。手伝え。屋敷の中には、多くの犠牲者が残されてる。救えなかった分、ちゃんと埋葬だけはしないとな。」

 

「……あ、それは、確かに。」

 

「わかってるならさっさと行くよ。」

 

 動かなくなった伊之助に一瞥だけ向けた私は、すぐに善逸に指示を出す。

 股間を蹴り上げたばかりなのにそんなこと扱いした私に対して彼からのツッコミが入ったが、男を大人しくさせるのに一番楽な方法だからな。

 反省も後悔も一つもない。

 

 

 

 

 


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