目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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42.藤の花の家紋の家

 あれからしばらくして、藤の花の家紋の家に住んでいるひささんと対面を果たした私たちは、このお屋敷で少しばかりお世話になることになる。

 

 屋敷に入るまでにひささんに善逸がお化けと言ったり、伊之助がひささんの頭をつついたりといろいろあって、二人に注意したりと忙しかったが、今はゆっくりと炭治郎と禰豆子の二人と一緒に風呂に入っていた。

 

 そうそう。

 ひささんが呼んだ医者の診断によると、善逸と伊之助の二人はどちらも骨を二本やっていたらしい。

 で、私は疲労の蓄積がひどいと言われたよ。

 

 まぁ、うん。

 疲労が蓄積した理由はなんとなくわかる。

 多分、気を張り詰めすぎていたり、なかなか鬼の犠牲者が減らないという事実からの焦りによって思いつめすぎたのだろう。

 

 そんなに焦ったところで、すぐに物語が変化しないことなんてわかりきったことのはずなのに。

 ていうか、最終戦別の時に考えていたばかりじゃないか……。

 全てを助けようとしたら、必ず手からこぼれ落ちるものが発生するって。

 だから、今は柱を助けるってことに重点を当てろって。

 

 目に入るもの全てを助けるなんて、よほどの力を持ってるものしかできるはずがないんだから。

 それこそ、緑壱さんくらいの力がなければ。

 

 ……いや、そんな力をつけたところで、起こることに間に合わなかったら意味がないか。

 

「はぁ……。」

 

「むー?」

 

「んー?」

 

「んあ? ああ、炭治郎に禰豆子……。そんな顔すんなって。大丈夫。少し疲れてるだけだからさ。」

 

「むー……。」

 

「いててて。炭治郎。頭をペムペム叩かないでくれ……。大丈夫。少しだけ落ち着いたから。うん。無理はしないよ。」

 

「むー………。」

 

「んー………。」

 

「はは……。ごめんごめん。心配かけちゃったな。」

 

 考え込んでいると、炭治郎と禰豆子が心配そうな様子を見せながら、私にギュッと抱きついてきた。

 思わず苦笑い。

 この子たちに心労をかけさせてどうするんだよ。

 私が無理して悲しむのは、目の前にいる可愛らしい弟妹たちだろうに……。

 

「もう大丈夫。少しだけ戦いから離れるから、その間にしっかりと心の整理をつけるよ。二人に心配をかけさせてしまうのは、姉ちゃん自身も心許ないからな。」

 

「む!!」

 

「う!!」

 

 少しだけ反省しつつも、私は二人の頭を優しく撫でて、小さく笑みを浮かべる。

 それにより漸く二人も安心したのか、笑顔を私に見せてくれた。

 

「じゃあ、二十数えるからしっかりと体を温めて風呂を出ようか。夕飯に遅れたら伊之助が怒りそうだ。」

 

「「う!!」」

 

「二人は、風呂から出たらすぐに髪を乾かそうな。いくら鬼が病気にならないとはいえ、びしょ濡れのままじゃ二人も気持ち悪いだろうから。」

 

「「ん!!」」

 

「よし、じゃあ数えるぞ。い〜ち、に〜い……」

 

「「う〜う、むー!!」」

 

 炭治郎と禰豆子の頭を優しく撫でながら二十を数え始めれば、二人も私の声に合わせながら、声を出し始める。

 炭治郎たちも数えるのか……と少しびっくりしながらも、二人の無邪気な笑顔を見せてくれる姿に癒されながらも、私は数を数え続けた。

 

 

 

 ……しばらくして風呂から出た私は、炭治郎と禰豆子の髪をしっかりと大きな布……いわゆるバスタオルのような布で拭いたあと、与えられた自室で二人には留守番してもらい、食事の用意がされていると伝えられた広間に向かった。

 そこにはすでに善逸と伊之助が座って……ん?

 

「……伊之助。その顔…………」

 

「あ゛あ゛!? 俺の顔に文句あんのか!?」

 

 真ん中に座っている綺麗な顔立ちをした少年の姿があった。

 間違いなく伊之助なんだけど……うん……本当に女の子みたいな顔をしてるな。

 

「いや、文句はないよ。一瞬呆気にとられただけさ。猪頭の被り物を被ってる姿しか見てなかったからな。」

 

 噛みつくように突っかかってきた伊之助に対して、冷静に言葉を返せば、彼はぐっ……と言葉を詰まらせた。

 喧嘩腰で言葉を紡いだハズなのに、軽く流されたからちょっと動揺したのだろうか?

 善逸から、なんでそれだけの反応で受け流せるの……という呟きが聞こえてきたが、気にすることなく空いてる膳の前に座る。

 

「そんじゃ、食べますか。」

 

「あ、うん! いただきます!」

 

 そして食べるかと言葉を紡げば、善逸はすぐに頷き、手を合わせていただきますと呟いては、箸を手にとり食事を口に運ぶ。

 対する伊之助は、善逸が食べ始めたのを確認するなり、箸を使うことなく食事をガツガツと食べ始めた。

 うん、ちょっと汚い。

 

 その様子に小さく溜息を吐きつつも、自分の食事に手をつける。

 と、横から手が伸びてきて、端にあった煮物の芋がとられた。

 目を向けてみると、伊之助がニヤニヤと笑ってこちらを見ている。

 ……ふむ、さっきスルーされたのがムカついたのだろうか?

 明らかに私のことを挑発しようとしているような……?

 

「なんだよ。腹減ってんの? だったら食べていいよ、これも。」

 

 しかし、残念ながら私は炭治郎ポジとして小さい時から生活しているため、竹雄や茂がこちらの漬物とか煮物を横から取っていたから特に痛手にはならなかったり。

 まぁ、私は長子だし、元からそこまでの量を食べないから、問題ないんだよな。

 

「ムキーーーーッ!!」

 

 そう思いながら煮物が入ってる皿を差し出したら、伊之助が怒った。

 気に食わなかったらしい。

 あ、でも煮物は食べるんだな……。

 別に構わないけど。

 

 

 

 ……少しして。

 食事を終えた私は一人自室の方へと戻っていた。

 戸を開けばすぐに炭治郎と禰豆子が私に気づき、てててっと軽い足取りで近寄ってくる。

 

「ただいま。二人だけで留守番させて悪かったな。」

 

 しゃがみ込んで両腕を広げてみれば、二人はすぐにこちらの腕の中へと収まった。

 同時に抱きしめてやれば、私にすりすりとすり寄る。

 可愛いな、癒されるな。

 この殺伐とした世界で、唯一和やかになれる瞬間だ。

 

「ごめん、優緋ちゃん。まだ眠ってないようだったらちょっといいか……な……」

 

 そう思いながら、炭治郎たちの頭を撫でていると、善逸が部屋に入ってくる。

 

「ん?」

 

「「う?」」

 

 入ってきた善逸に目を向けると、そこには固まっている様子の善逸の姿。

 彼の視線の先には、禰豆子の姿があることを理解するまで、そんなに時間はかからなかった。

 

 

 

 

 


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