目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
善逸に炭治郎と禰豆子の二人を引き合わせたあと、すぐに休息を取った私は、日中である現在、炭治郎と禰豆子の二人と鬼ごっこを家内でしている。
なぜ?と思うだろう。
私もわからない。
急に二人が起きて、日が当たりにくい広い部屋に向かおうと誘ってきたので、その誘いに乗ったらこんなことになっていた。
まぁ、別に構わないけど。
だって、常中の訓練になるし。
……全集中“常中”。
鬼と戦う鬼殺隊の柱クラスならば普通に行っているもの。
走り回る身体能力爆上げな鬼兄妹を人間である私が鬼役として追いかけるこれはなかなかに骨がおれる。
なんせ二人は日に当たらないように工夫しながら移動するため、縦横無尽に駆け巡るから。
かなりきつい中、ヒノカミ神楽の方の呼吸を常中できるようにしている。
水の呼吸ももちろん必要だが、なによりも大事なのは十二鬼月戦……特に上弦の鬼戦に集中しなくてはならないから、鬼相手に鬼ごっこ……というのも変な話ではあるけれどやる。
二人はただ遊びたいだけかもしれないけど、朝はひたすらに走り回った。
昼間は刀を振る。
基礎鍛錬も技術に必要なこと。
いざという時に刀がすっぽ抜けては元も子もないため、どれだけ振っても手に力が入らないということだけはなるべく回避しなくてはならない。
素振りのあとはヒノカミ神楽を舞う。
狭霧山で何度も舞い続けたこともあって、いつの間にか体が勝手に父さんが舞っていた通りに舞い続けることができるようになった。
まだ透き通る世界には至らないけど、多少はマシになったかな。
この間炭治郎と禰豆子は、日が入らない部屋の中でじっとこれを見つめていた。
私が集中しているのがわかるんだろう。
昼間の鍛錬が終われば夜まで休憩を取り、夜になれば鬼を狩る。
善逸と伊之助の二人とは違い、疲労だけだったから、二人より早く指令が来るんだ。
私としてはありがたい。
全集中・常中の訓練もできるし、技の練度もあげることができるからな。
だから今は雑魚鬼程度相手にもヒノカミ神楽を使ってる。
今は次の戦いに備えてメインウェポンを鍛える時だから。
まぁ、水の呼吸も使う時は使うけど。
だって、水の呼吸がポンコツだったら意味ないしな。
ああ、そうそう……。
水の呼吸もある意味で剣舞のようだと思ってる。
意外と、水面斬り→水車→流流舞い→打ち潮→干天の慈雨→ねじれ渦→雫波紋突き→滝壺→水流飛沫・乱→生生流転はヒノカミ神楽のように動きをつなげることができるとわかったから。
だから、時には型と呼吸の復習として剣舞として動くと効率が良くなった。
「ふぅ……今日の指令は終わりっと……。」
そんな生活を送る四日目の朝方。
私は、善逸と伊之助の二人が療養している藤の花の家紋の屋敷に戻り、休息を取る。
明日は非番だから、ゆっくりと眠ることができる。
ああ、寝ている間ももちろん常中を維持できるように努力している。
まぁ、なかなか難しくて、起床まで維持できたことは今のところないのだけど。
「炭治郎。禰豆子。おやすみ。」
「う!!」
「………むん。」
なんてことを思いながら、寝支度を済ませた私は、炭治郎と禰豆子の二人に寝る前の挨拶を伝える。
すると、禰豆子は元気いっぱいに頷いては、体をしゅるしゅると縮めて、私が寝る布団に潜り込み、ペシペシと隣を叩く。
それに従うように布団に入れば、禰豆子は私にすり寄ったあと目を瞑った。
対する炭治郎は、何か考え込んでいるような様子を見せながら、体を小さくして、禰豆子の反対側へと寝転び目を閉じる。
……一瞬、炭治郎から役に立ちたいという感情を感じ取れたような気がしたけど気のせいか……?
首を傾げながらも私も目を閉じる。
常中を行いながら。
…………しかし、不意にペシペシと頭を叩かれる感触に気づき、思わず目を開ける。
よく見ると炭治郎が私の体の上に乗っかり頭を叩いてきていた。
「ん……どうした炭治郎?」
何かあったのかと思い声をかけると、炭治郎は私をじっと見つめたあと、口元と鼻付近を軽く触ってきては、手でバッテンを作って見せた。
「………?」
よくわからず首を傾げる。
しかし、炭治郎はその行動を一回も止めることなく続けている。
「………あ、ひょっとしなくてもあれか? 独特な呼吸が途切れていたとか?」
「む!!」
少しだけ思案したところ、脳裏に描いたものは私が常中を途切れさせてしまったという結論だった。
もしかしてと思い問うてみると、どうやら当たっていたようだ。
「うー……」
「………なるほど。」
様子からして、炭治郎は私が何かしらの訓練をしていることを理解しており、なんとかして手伝うことができないだろうかと考えたようだ。
その結果、独特な呼吸をしながら眠ろうとしているし、それが途切れたら起こしてあげようと判断したらしい。
ありがたいことだ。
「助かるよ、炭治郎。より強くなって、人を守るために必要な訓練だったんだが、どうしても一人じゃ限界があってね。炭治郎が手伝ってくれるならば安心だ。それじゃあ、独特な呼吸が途切れて普通に眠ってしまっていたら、さっきみたいに叩いて起こしてくれるか?」
「む!」
それならお言葉に甘えて手伝ってもらおう。
そう判断した私は、小さく笑いながら炭治郎の頭を撫で、手伝いをお願いする。
炭治郎は元気よく返事をしては、私の訓練を手伝い始めるのだった。