目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
村田と分かれて数分後。
伊之助の案内に従い走り続けていると、一人の女性隊員が姿を見せた。
彼女の体には無数の糸がついている。
確か……この人は尾崎……って名前がついていたんだったか?
「!! こっちに来ちゃ駄目!! 階級が上の人を連れて来て!! そうじゃないとみんな殺してしまう!!」
そう思いながら近寄ろうとしたら、彼女は声を張り上げて、涙を流しながら近寄るなと怒鳴って来た。
思わず足を止める。
しかし、こちらが足を止めたところで、鬼が攻撃の手を止めるはずがない。
早めに動いていたとしても、きっと……
「逃げてェ!!」
「……やっぱりか。」
私の予想通り、尾崎さんは操り鬼の糸により操られ、こちらの方へと攻撃して来た。
かなりの斬撃スピードだ。
生半じゃ受け止めきることはできない。
でも、私は違う。
「……………。」
呼吸を自らヒノカミ神楽へと変え、私は自身の刀を構える。
“ヒノカミ神楽 円舞”
刀を両手で握り、円を描くように振るう技。
これを尾崎さんの刀の側面に叩きつければ、刃は大きな音を立てて破壊され、そのまま近くにあった木の幹へと深々と突き刺さる。
「!!」
“ヒノカミ神楽 火車”
刀を叩き折られた彼女が目を見開く中、私はその頭上を飛び越えヒノカミ神楽の拾ノ型を使い、位置を調節しながら技を放てば、彼女に繋がっていた糸は全て斬れる。
いくら太くて強靭な糸とはいえ、ヒノカミ神楽の前では少しでも力を加えればプツリと斬れる蜘蛛の糸にしかならないようだ。
「………急いで退避してください。入口付近では村田さんが操られている人と戦ってます。糸を斬れば動きは止まりますから、命を落としてしまった人から少しだけ刀を拝借し、彼の援護へ。蜘蛛には気をつけてください。操り糸をつけて来ますから。」
「っ……ありがとう……!!」
それがわかっただけで十分だ。
これなら、命を救うことはできなくても、苦しい思いをしている人たちを少しだけ助けることはできる。
そう思いながら、私は尾崎さんに逃げるように声をかける。
彼女は涙を流しながら、急いでその場から立ち去っていった。
「伊之助。第二陣が来る。」
「ああ、わかってらァ!!」
それなら程なくして、辺りにキリキリという耳障りな音が聞こえてた。
視線を音の方に向けてみると、腕があらぬ方向に曲がっていたり、血だらけだったりする隊員たちが現れた。
「伊之助!! とにかくまずは刀を叩き折るか遠くに飛ばせ!! 多少なりともそれで攻撃は弱体化させることができる!!」
「刀を叩き折るってどうやってだよ!!? 」
「刀は縦の力には強いが横の力には滅法弱いんだ!! 刃の側面から一定の力を与えれば折れる!!」
「横から叩きゃいいんだな!!」
「ああ!! だが、自分の刃にも気をつけろ!!」
「いちいちうるせェなァ!! わーったよ!!」
それを確認した私は、すぐに伊之助にまずは相手の弱体化を図ることを口にしては、第二陣である隊員と対峙する。
かなりめちゃくちゃな攻撃を相手はしてくるが、ヒノカミ神楽の全集中・常中を行えばかなり遅く見える。
体温はかなり高い。
が、痣の発現はまだまだ時間がかかりそうだ。
おそらくだが、今の体温は37.8〜38.0辺り。
原作で読んだ痣の発現条件温度は39.0。
……やれやれ、なかなかこれ以上は上がらないものだ。
原作の体温には程遠すぎる。
だとしても、これだけ遅く見えるのはありがたいものだ。
おかげで襲ってくる隊員にどうやって刀を振れば苦しさから解放することができるか、判断するための時間ができた。
“ヒノカミ神楽 円舞!!”
尾崎さんにしたように、ヒノカミ神楽の円舞を使用することで、襲って来た隊員たちの刀を片っ端から叩き折り、時には柄に刃を当てて叩き落とす。
かなり動きが遅く見えたから、柄を持つ手の隙間に当てることができた。
「オラァ!!」
「……それなりに、弱体化はできたみたいだな。」
少しだけ伊之助の方へと目を向けてみれば、彼も襲って来た隊員の刀を叩き折っており、刃を遠くへと飛ばしていた。
おかげで操り人形となっている鬼殺隊隊員たちの武器がかなり短くなったり、無くなったりと、かなりの弱体化を図ることができた。
まぁ、折れていても、わずかに残っているのであれば、攻撃の手を止めることはないとわかっていたので、そこは私が柄を刀で殴り飛ばすなり何なりして、木の幹へと突き刺しているが。
「おっしゃあ!! これでこいつらは丸腰!! 殴ることしかできねェな!! 見たか優緋!! お前にできることは俺にもできるのさ!!」
「ああ。しっかり見てたよ。流石は伊之助だな。」
「フフンッ当然だ!! もっと褒めてもいいぜ!!」
「あとでな!! まだ襲ってくる奴はいるから!!」
伊之助と会話をしながらも、何とか操り人形にされている隊員たちの刀を折って、飛ばしてを繰り返す。
だが、そうしていると不意に、目の前の隊員の首がぐるりと百八十度回転し、バキリという音と共に絶命した。
「おい優緋!! 急にこいつら首がぐるっと回って……」
「…………そうだね。」
「………優緋……? 大丈夫かよ、お前………。」
吐き気がした。
命を軽々しくも奪う鬼の行動に嫌悪感を抱く。
向こうでも殺人とかが起こるたびに胸中を渦巻いた感情だ。
なんで人は人を殺すのか。
なんらかの事情があったとしても許せない行為だ。
「……少しだけ、吐き気がしただけだ。もう大丈夫。行こう、伊之助。操り鬼を倒しに。」
「………ああ。」
少しだけ、伊之助から心配そうな目を向けられた。
でも、私が大丈夫だと告げれば、これ以上は聞かないと言わんばかりに、伊之助は小さく頷き、私の前を先行して走り出す。
彼の後を追うように、私も走り出した。