目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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05.戦闘、グリリバボイス鬼

「うお!?」

 

 小さく笑いながら振り上げた斧は、うまくグリリバボイス鬼の首元へと切り傷を作る。

 それを確認した私は、すぐにお堂から外へと出た。

 

「ハ、ハハ。斧か。女がそれを振り回す上、それなりに硬いはずの俺の首を斬るとはやるな。」

 

「うわ喋ってる。喉斬られたら出血多量になるなりなんなりして死なないか普通?」

 

「残念だったな。鬼はこんなんじゃ死なねぇんだよ、すぐ治るからな。ほらもう血は止まった。」

 

「いや、顔面……というより喉元血だらけでほらって言われてもわかんないんだけど。」

 

 互いに妙な沈黙が落ちる。

 得意げに鬼の特徴を口にして笑っていたグリリバボイス鬼も無表情になった。

 すまん。

 本来ならばシリアス展開とか切迫した状況なんだろうけど、素直に言って血が止まったとか言われてもどこら辺が?って感じちゃってね。

 だって見えないんだよ、真っ赤っかで。

 

「……これでわかるか?」

 

「ん? あ、本当だ。マジで止まってるわ。じゃなくて、なんで血だらけだったに全くなかったように血も消えるんだこれ。鬼の体ってわかんないな。」

 

「………お前、自分の状況分かってんのか?」

 

「うん。一応危ないよな。」

 

 ……グリリバボイス鬼に呆れた表情されたわ。

 まぁ、緊張感がないとおかしい状況だもんなこれ。

 でもな……こいつが噛ませって知ってる側からするとなぁ……。

 

「だったら思い知らせてやるよ!!」

 

 ええ〜……そう言われても困るんだけど。

 ていうかおっそ。

 まだ鬼化炭治郎と禰豆子の方が動きは速かったわ。

 

「よっと。」

 

「いや避けんじゃねぇよ!!?」

 

「避けるだろ常識的に考えて。だって襲われてるんだぞこっち。」

 

 とりあえず隙があったので斧をグリリバボイス鬼の腕目掛けて振り上げれば、片腕が吹っ飛ぶ。

 ……あ、刃こぼれが少し発生してら。

 長引かせたらダメだなこりゃ。

 

「うお!?」

 

「意外と腕ってすっぱり切れるんだなぁ……」

 

「お前人間じゃねぇ!!」

 

「失敬な。私はちゃんとした人間だっての。つか鬼に人間じゃねぇとか言われたくないんだけど。」

 

 片腕を失っていながらも襲ってくるグリリバボイス鬼。

 私はすぐに地面を蹴り上げることで背後に飛び、それを回避する。

 着地狩りされそうになったけど、回避すると同時に蹲み込んだため、着地狩りをしようと飛びかかってきたグリリバボイス鬼はそのまま上を通過していった。

 

「……何やってんのおたく。」

 

「グルルル!!」

 

 呆れたように声をかければ獣のような唸り声をグリリバボイス鬼は出す。

 簡単に狩れる人間じゃないと判断したのか、少しだけ敵意の匂いが強くなった気がした。

 

(多少本気出してくるかこれ?)

 

 やろうと思えば普通に斧だけで斬首できそうではあるけど、それをしたら刃こぼれがさらにひどくなりそうだ。

 と、なると……あえて受けることにして、あんまり参加させたくないが、原作通り禰豆子を参加させるべきか?

 

 なんて考えていると、先程以上のスピードを出したグリリバボイス鬼が襲いかかってきた。

 炭治郎と禰豆子に比べたらまだまだ遅いが、あえてそれを受ける。

 

「いって!?」

 

 その力はかなりのもので、思い切り地面に押し倒される形になった。

 かなり背中が痛い。

 

「さっきはよくもやってくれたな……!! 同じように腕を切り裂いてやる!! その次は首だ!!」

 

 血走った目でこちらの片腕をへし折ろうとするグリリバボイス鬼を無言で見上げる。

 だって、炭治郎と禰豆子の匂いが動いてこっちに近づいてきてるし。

 

「……それは……多分できないんじゃない?」

 

「は?」

 

 呟くように言葉を紡げば、ボンッと言わんばかりの勢いでグリリバボイス鬼の頭が吹っ飛び、私の腕をへし折ろうとしていたこいつの腕も消える。

 禰豆子に蹴鞠よろしく蹴り飛ばされた頭は、原作通り雑木林の木に勢いよくぶつかる。

 炭治郎が攻撃した腕は、よく見ると炭治郎が粉砕していたのか肉片だけになっていた。

 

 まぁ、それでも動くのが鬼だからな。

 一瞬怯んだ様子の鬼の体を蹴り飛ばして、未だに動こうとしていた体の拘束から抜け出した。

 同時に、私に襲いかかろうとしていた体は炭治郎と禰豆子の鬼化兄妹Wキックにより遠くへと飛んでいく。

 

「うー……。」

 

「んー!!」

 

「あ〜……大丈夫。大丈夫だから。二人のおかげで怪我はしてないよ。」

 

「むー!!」

 

「おわっ!? ああ……掴まれた腕さすってくれるのか……。ありがとうな炭治郎。それと禰豆子。なぜ私の頭を抱く。って泣いてる!? 泣いてるのか!? 怪我してないのに!?」

 

「うー……!!」

 

「あ……あ〜……私が無茶しようとしていたからか……。」

 

「うー……!!」

 

「ごめんって……生身の人間が鬼と真っ向勝負しようとして。」

 

「う〜……!!」

 

 ……めちゃくちゃ炭治郎と禰豆子に怒られました。

 いや、でもほら、グリリバボイスの割にはあの鬼咬ませ犬だったし、やろうと思えばやれるんじゃないかって……あ、ハイ、もうしません。しませんから泣こうとしないで!?

 

「妙な気配が外にあると思えば……!! なんで人間が二体もの鬼とつるんでやがるんだ!?」

 

「うっわマジかよ。生首になっても話してんだけどこいつ!!」

 

「フーッ!!」

 

「グルルル……!!」

 

 禰豆子と炭治郎が威嚇をしながらグリリバボイス鬼を睨みつける。

 私はというと、生首になっても話してるそれに軽く引いていた。

 原作やアニメを知ってるから展開はわかってるけどさ。

 生首が話す姿を生で見るのはかなり衝撃的だからな?

 引かないほうが無理だろ。

 

「まぁいいや。炭治郎、禰豆子、走れ!!」

 

 なんて考えながらも、私は炭治郎と禰豆子に走るように指示を出す。

 二人は一瞬驚いたような表情を見せるが、すぐに自分たちの方に頸がなくなった体が失ったはずの腕を生やして襲いかかろうとしている姿に気づいて、すぐに走り出した。

 二人の鬼をグリリバボイス鬼の体が追いかける姿はかなりシュールではあるけど、私はそれを見送ったあと、近づいてきた鬼の匂いが濃くなるタイミングで手にしていた斧を振りかぶる。

 

 が、この一撃は原作通り口で止められ、頭から生やしたらしい腕により肩を掴まれる。

 

「ハハッ!! 随分とトチ狂った姿してんじゃん!! 鬼ってのは本当、妙な造りをしてるよなぁ!!」

 

 でもそんなの関係ない。

 だって、炭治郎のポジションになってる私は、頭が硬いからな!!

 

 思い切りグリリバボイス鬼の頭目掛けて頭突きを喰らわせてやれば、一瞬こいつは白目を剥いた。

 思った通り、私の頭は炭治郎と同じく硬いらしいので、今度は頭を固定して、もっと強く頭突きを喰らわせる。

 そして、それによりできた隙を利用して思い切り斧を振りかぶって、その場にあった木の幹に、グリリバボイス鬼の短い両腕を持ち手の部分で拘束するように挟み込み、斧の刃を打ち付ける。

 

「そこで大人しくしてな、生首。」

 

 動けない様子のグリリバボイス鬼の頭に冷めた目を向け、すぐに踵を返して炭治郎たちの元へと走る。

 原作だと炭治郎が禰豆子を助けるために体にタックルして崖下に落ちかけるところを禰豆子に助けられるカタチになっていたはずだけど、こっちではどうなるのやら。

 

「あ。」

 

 ……うん、答えがしっかりと見えたわ。

 炭治郎が崖から蹴り落とすんだな。

 原作通り炭治郎が禰豆子を助けたようだ。

 

「炭治郎! 禰豆子! 大丈夫か!? 怪我は!?」

 

「う!」

 

「んー!!」

 

「え? ちょ、おわぁ!?」

 

 とりあえず二人の名前を呼びながら駆け寄れば、二人は私の姿を見るなり走り寄ってきて飛びついてきた。

 なんとか二人を受け止めようと足を踏ん張ったが、ちょっと反動が強かったため、その場で尻餅をつく。

 

「いってて……。」

 

「うー!」

 

「むー。」

 

 尻餅をついてしまったお尻を軽くさする中、炭治郎と禰豆子は私にすり寄ってくる。

 まるで、褒めて褒めてと尻尾を振る犬みたいだ。

 

「……炭治郎も禰豆子もがんばったな。おかげで怪我なく終わらせることができた。ありがとう、守ってくれて。」

 

 なんとなく、二人が何を求めているのかがわかった私は、小さく笑いながら二人の頭を優しく撫でる。

 二人は気持ち良さげな笑顔を見せては、体を小さくしてすやすやと眠り始めた。

 

「……あはは……。まーた子供二人を抱っことおんぶか。」

 

 思わず苦笑いをこぼしながら、一旦二人を私から離しては、禰豆子を背負い、炭治郎を抱き上げ、二人を起こさないように歩みを進める。

 

「さて……一旦生首のところに戻るか。」

 

 そうしないと、物語は進まないからな。

 

 

 

 


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