目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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50.パパ鬼討滅、累の元へ

 操り鬼を倒したあと、他の鬼を探して小川付近に足を運んだ。

 すると、遠くの方から雷が落ちたかのような六つの大きな音が聞こえてきた。

 

「………善逸、ちゃんと倒せたんだな、毒鬼を。」

 

 その音が意味するものは、ある一体の鬼の終わり。

 血鬼術による毒を使い、人間すらも蜘蛛へと変えてしまうアシダカグモのような小物臭満載の男の最期だ。

 

「ところで伊之助……怪我は大丈夫……」

 

「俺は怪我してねぇ!!」

 

「いやいやいやいや、それのどこが怪我してないに結びつくわけ!?」

 

「こんなんかすり傷だっての!!」

 

「ええ……?」

 

 それに軽く安堵しながらも、血をだらだら流しながら私の前を先行する伊之助に怪我の具合を聞いてみると、まさかの返答が返ってきた。

 それのどこがかすり傷なのか。

 明らかに彼の肌に刻まれているのは裂傷だし、そこからだらだら流血しまくっているんだが……?

 

 何言ってんだこいつ、と思いながらドン引きしているとバシャンと水の音が辺りに響く。

 音の方へと目を向けてみると、そこには一人の女鬼。

 繭を使い、そこに入ってる溶解液で何もかも溶かして喰らうウツボカズラのような鬼。

 

 彼女は私たちの姿を見るなり、走ってその場から逃げ始める。

 

「おおお!! ぶった斬ってやるぜ!! 鬼コラ!!」

 

「だから一人で突っ走るな!! どんな能力を持ってるのかわからないんだぞ!?」

 

 すかさず伊之助が繭鬼を追うようにして走り始める。

 制止の声をかけてはみるが、やはり彼は話を聞かない。

 

 ああ、もう!と軽くイラつきを持ちながらも、私も伊之助のあとを追う。

 

「っ……お父さん!!」

 

 私と伊之助が追ってくることを確認した繭鬼が大きな声を張り上げる。

 すると、大きな音を立て地面に着地する存在が現れた。

 完全に蜘蛛のように複数の目を持つ大柄の体躯を持ち合わせている鬼……蜘蛛鬼家族の大黒柱……。

 

「オ゛レの家族に゛!! 近づくな゛!!」

 

 そのデカブツが腕を振り下ろした瞬間、地面に小さなクレーターができる。

 なんてパワーだよ、と思いながらも、私は試しに水車を使って攻撃をしてみる。

 デカブツの腕の半あたりまでは刃を通すことができたが、やはり斬り落とすにはヒノカミ神楽の方がいいらしい。

 

 冷静に分析していれば、デカブツは空いてる腕でこちらを殴り飛ばそうと拳を振ってくる。

 が、それは伊之助の刃による攻撃により私に当たることはなかった。

 

「硬えええ!!」

 

「確かにな。厄介なことこの上ない。」

 

「何平然としてんだテメェ!! 舐めてんのか!?」

 

「なわけないだろ。」

 

 デカブツ鬼の体に蹴りを入れて、伊之助と私は同時に距離を取る。

 水の呼吸が通用しないなら、ヒノカミ神楽を使うのみってね。

 

「もういっちょ。」

 

 “ヒノカミ神楽 碧羅の天”

 

 ヒノカミ神楽の弐ノ型。

 刀を両腕で握り、腰を回す要領で空に円を描くように振るう技。

 垂直方向に強烈な斬撃を放つこれは、強化された上、機関車と一体化していたあの魘夢の巨大化した頸稚すらも両断していた。

 あれだけの威力を出せるのであれば、デカブツの腕なんて問題なく斬り落とせるはず……そう考えて放ってみれば、予想通りデカブツの腕を斬ることができた。

 

「!!?」

 

「はァ!? なんでさっきは斬れなかったのに今は斬れてんだよ!? しかも豆腐みてぇに斬りやがって!! ずりぃぞ!!」

 

「私は複数の呼吸を使ってるだけだよ。一番体にあってるのはこれなのさ。」

 

 まさか女の細腕で自身の腕が斬られるとは思わなかったのか、デカブツが後方へと飛ぶ。

 伊之助からもなんか言われたが、今はそんなことよりデカブツ退治だ。

 

「道は開けたし、ここは二手に分かれるぞ。伊之助。あんたは逃げた女鬼を追ってくれ。」

 

「はァ!? 何でたよ!? あのデカブツは!?」

 

「今の伊之助が敵わないって言ってんだよ。血が流れてるせいでふらついてるあんたじゃ足手まといだ。あんまり言いたくはないが。」

 

「ぐっ……」

 

「わかったらさっさと女鬼を探せ。あれが回復に手を回してるうちに。強い相手と闘いたい気持ちもわからなくもないが、それで負けて死んでしまったらその場で終わり。生き返ることもできず、虚しく土に還るだけ。山で生きてたならわかるだろ。自然はいわば強いもんが弱いもんを食い物にする世界なんだからな。強さの差や自分の状態には気をつけなけりゃ、早死にするだけだぞ。」

 

「………ぐぬぬぬ……っ!! ムカつくけど反論できねえ!!」

 

「わかったならさっさと行きな。無事に帰ってきたら、強くなるための技術を教えてやるから。あんたでもあれくらい簡単に潰せるようになる一歩にもなる。」

 

「チッ……わーったよ!! 絶対だかんな!! テメェも死ぬんじゃねえぞ優緋!!」

 

「わかってる。」

 

 とりあえず、伊之助にはこの場から去ってもらう必要があった。

 多少なりとも被害を抑えるために。

 まぁ、繭鬼を見つけることはできないだろうという確信もあったしな。

 伊之助のことだから猪突猛進の突っ走りで、最終的には迷子になるか、善逸と合流するかのどちらかだ。

 その間に私は繭鬼と累を見つけ出して倒す。

 

 バシャバシャと水を蹴り飛ばしながら立ち去っていく伊之助に背中を向けたままそう考える。

 デカブツは動かない。

 私の出方を伺ってるのだろう。

 

「さぁて、じゃあ、さっさと終わらせますか。」

 

 改めて刀を構えれば、デカブツはすぐに動き出した。

 

「ア゛ア゛ア゛!!」

 

 臨戦態勢をとった瞬間、殴りかかってくるデカブツ。

 攻撃が単調すぎてかなり遅い。

 全集中の呼吸・常中は、本当に大事な技術だな。

 できてなかったら、きっと私はすぐに殴り飛ばされて内臓も骨もやられて死んでいただろう。

 やれやれ、と思いながらも、一撃で終わらせるためにヒノカミ神楽を使う。

 

 “ヒノカミ神楽 斜陽転身”

 

 デカブツの頭上を軽々と超えて、宙で体の天地を入れ替えながら水平に刃を振るう。

 私が放ったこの斬撃は、すぐにデカブツの頸に入り、そのまま丸太のような太さと岩の固さを併せ持ったかのようなそれを、胴から一瞬にして斬り離す。

 

「!!!?」

 

 一瞬による一撃を喰らったデカブツ鬼はその瞬間から塵と化す。

 上手く行ったようだ。

 

「よっと。……ふぅ……流石はヒノカミ神楽。いや、日の呼吸か……。始まりの呼吸で最も強力な力を持ち合わせているだけの威力はある。まぁ、まだ無惨相手には通用しないんだろうけど、そこはそれだな。……最終決戦までに極めれるところまで極めていけばいい。今はただ、救える時は人を救って、救えない時は、救えなかった人の無念を晴らせばいい。」

 

 完全にデカブツが消えたのを確認した私は、小さく呟くように言葉を紡いだあと、空気中にある鬼の残り香を嗅ぎ分ける。

 それにより、繭鬼と累の居場所がわかった。

 ついでに伊之助が向かった先も。

 予想通り彼は、全く別の方向へと突っ走っていた。

 そのことに少しだけ安堵しながらも、私は次の場所へ向かう。

 

 さぁ、そろそろご対面といこうか。

 十二鬼月の下弦の伍……家族の愛に焦がれていた、家族の愛を忘れてしまった男の子、累。

 

 

 

 


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