目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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52.戦闘、下弦の伍・累!

「お前は一息では殺さないからね。うんとズタズタにした後で刻んでやる。でも、さっきの言葉(・・・・・・)を取り消せば一息で殺してあげるよ。」

 

 殺気を放ちながらも冷静に言葉を紡ぐ累。

 殺そうと思えばいつでも殺せる……だから選ばしてやるとでも言いたいのだろう。

 一息で死ぬか、苦しんで逝くかを。

 

「取り消すつもりはないよ。だって事実だからな。あんたの言ってる絆は温かさなど感じることがない紛い物だ。温かさに満ちている家族の絆を、そんな薄寒い偽物と一緒にしないでもらえるか? あと、私は生きて帰るよ。大切な家族が心配するからな。」

 

 私はすぐに偽物の絆という言葉を取り消すつもりはないと言い返して地面を蹴り上げる。

 間違った絆を信じている彼の認識を完全に否定するために、累との戦闘に臨む。

 

 累の血鬼術により作り上げられた強靭な糸は頭上。

 前に走れば当たることはない。

 だが、攻撃をしようとすれば、もちろん相手も防衛のため、または邪魔なものを排除するために攻撃を仕掛けてくる。

 目の前に、私のことを斬り刻まんとする糸が現れた。

 

 私はすぐに水の呼吸……ではなく、ヒノカミ神楽の呼吸を使用して刀を振るう。

 

 “ヒノカミ神楽 円舞”

 

 刀を両手で握り、円を描くように振るえば、目の前に現れた糸はどこにでもあるような蜘蛛の糸のように、あっさりと斬り裂くことができた。

 

「!!」

 

 累から驚いた匂いがする。

 でも、それは一瞬発生したもので、すぐに敵意へと変化した。

 何十かに重なり、避けるのが困難と思わしき攻撃。

 まるで生き物のように動く糸は隙を見つけ出すのが困難だ。

 すり抜けて懐に入ろうものなら、その隙間を糸により覆われてしまうだろう。

 

 “ヒノカミ神楽 碧羅の天”

 

 避けていくのは得策ではない……そう判断した私は、すぐに目の前に出現した隙間なく放たれた糸を斬り裂く。

 おかげでダメージを受けることはなかった。

 

「っ!!」

 

 “血鬼術・刻糸牢!!”

 

 通常の攻撃がことごとく意味をなさないことに気づいたらしい累がとうとう血鬼術を使ってきた。

 複数の蜘蛛の巣が近づいてくる。

 

(確か、この技を炭治郎は円舞で攻略していたな。)

 

 かなりの近づいてきた糸を目掛けて私は再び円舞を放つ……寸前のところで目の前に現れた人影を抱え込み、私は素早く攻撃範囲の隙へと退避し、そのまま地面を転がる。

 腕の中には二つの温もり。

 まさか、飛び出してくるとは思わなかった。

 

 あれか?

 少しだけ思案しすぎたか?

 それとも、糸の量やらなんやらから、二人が危ないと思ってしまったのか……まぁ、そのどちらかであるのかは確定的だろう。

 

「……炭治郎。禰豆子。箱から出てくるとは思わなかったんだけど。姉ちゃんちょっとびっくり。」

 

「「うー…………。」」

 

 なんとかダメージを受けることなく済んだことに安堵しながらも、腕の中の温もりに声をかけると、私のことを見上げている鬼弟妹が心配そうな声で唸る。

 

「ん? 血の匂い……って禰豆子。おま、糸を喰らっちゃったのか? 傷は浅いみたいだけど……痛くないか?」

 

「ん!」

 

「ならいいんだが……。」

 

 少しだけ怪我をしている様子の禰豆子に慌てて声をかけるが、問題はないと言った返事が返ってきた。

 それならいいと安心するが、私は小さくため息を吐く。

 

「お前らな……心配してくれるのは嬉しいけど、いきなり前に飛び出るなんて真似はしないでくれよ……。危うく斬っちゃうところだったろ? まぁ、心配かけた私も悪いけど、大丈夫だったから、な?」

 

「「うー………」」

 

「うっわー……すっごい不満顔……。……やれやれ、下の子に危ないと思わせるような戦い方をしていたようで不甲斐ないよ……。」

 

 訴えるような眼差しに申し訳なさを感じてしまい、思わず目を逸らしてしまう。

 ……まぁ、確かに、あの糸攻撃はなぁ……初見では危険を感じてしまうのも無理はない。

 それに、二人が飛び出してきた時、咄嗟の判断で二人を守るために回避に専念していたから気づいてなかったが、冷静になって考えればあの刻糸牢とかいう技……意外とスピードあったもんな……。

 二人が入ってきた時の距離は、人一人分の隙間しか空いてなかったくらい近かったし、あと数ミリでも判断が遅れていたら、私たち三人は綺麗に斬られていたかもしれない。

 それこそサイコロステーキのように。

 

 うん……そう考えるとかなり危ない戦い方になっていたかもしれない!!

 反省しなくちゃいけないな。

 

「……姉弟か?」

 

 そう考えていると、静かな声で累が言葉を紡いだ。

 姉弟か……という短い質問だったが……。

 累の方に目を向けてみると、彼は震える指で私たちを指差して、驚いたような表情を見せていた。

 

「姉弟であり、姉妹であり、兄妹だよ。私たちは、生まれた時……と言っても、最初は私は一人だったけど、のちに生まれた弟、そして妹とは幼い頃から一緒さ。それが何か?」

 

 累に対して、冷静な声音で言葉を返しながら、私は血の匂いが強い禰豆子の腕を見る。

 血は止まってるし、裂傷ももうなくなってる。

 

「……怪我は問題ないみたいだな。よかった。……今回は私にも非があったからね。ガミガミ言うつもりはない。けど、いきなり飛び出してくるのはよしてくれ頼むから……心臓が止まるかと思った。下手したら自らの手で、二人を傷つけていたかもしれなかったからな……。」

 

「「むー………。」」

 

「ああ、わかってくれたならいい。二人とも。しばらくは姉ちゃんに任せてくれないか? もし、本当に危険だと判断した時は戦闘に加わっても構わないけど、しばらくは様子を見ていてほしい。大丈夫。私は、絶対に無理はしないから。」

 

「「………ん!!」」

 

 私の言葉に頷く炭治郎たちの頭を優しく撫でる。

 二人は一瞬気持ち良さげな表情を浮かべたが、すぐにキリッと表情を変えて、私のことを見つめてくる。

 しばらくは手を出しませんの意味だろう。

 

 その姿に小さく笑みを浮かべた私は、自身の日輪刀に目を向ける。

 刃にはわずかな刃こぼれが生じているが、そこまで大きいものではない。

 が、あまり戦闘を長引かせてしまったら、きっと危ないだろう。

 折ったら鋼鐵塚さんにブチギレられる……脳裏に原作の鋼鐵塚さんが刀を折った炭治郎に対して自分で研ぎに研ぎまくった包丁で刺殺しようとしていたことを思い出しては引きつった笑みを浮かべる。

 あれには追われたくない……決して追われたくない……。

 

 そう思いながら視線を累に向けてみると、彼は思案しているようだ。

 

「姉弟……姉妹……兄妹……。弟と妹は鬼になってるな……それでも一緒にいる……」

 

「る……累……?」

 

 小さな声で……しかし、静寂の中だからこそはっきりと聞こえてくる累の声に耳を傾ける。

 

「弟と妹は姉を庇おうとした……身を挺して……。そして姉は、そんな二人を怪我をさせまいと考えて、危険を承知の上で二人を守った……。」

 

「!」

 

「本物の“絆”だ!! 欲しい……!!」

 

 明らかに原作とはどこか異なるセリフを口にした累に、私は驚いて目を見開く。

 これは……何かしらのイレギュラーが発生してしまうかもしれない……。

 そのイレギュラーが吉と出るか凶と出るのか……しっかりと見極めなくてはならない。

 

 

 

 

 

 

 

 


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