目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
抵抗することなく連行に応じ、しのぶさんと義勇に驚かれたりしたが、それはすでに過ぎたこと。
しのぶさんたちに着いていき、日が空を照らし始める中、私はでかい屋敷の庭……?に連れてかれた。
大人しくその場に座っていれば、ゾロゾロと人が増えてくる。
間違いなく柱合会議、及び裁判が始まる。
ああ、一応、炭治郎たちが入ってる箱は側に置かせてもらってる。
何とか粘って交渉したら、抵抗しない様子のこともあり、それだけは許してもらえた。
(……相変わらず顔がいいなこの人ら。)
柱たちがこちらを見る中、私はそんなくだらないことを考えていた。
炭治郎たちが無事ならば、取り乱す必要はない。
……なんか周りがごちゃごちゃと言っている。
まぁ、何を言ってるのかは大体覚えているのであえて聞き流しているんだけど。
そんなことより……と私は柱たちを盗み見る。
最初に見たのは煉獄さん。
この物語の中で、一番最初に命を落としてしまう炎柱。
下弦の壱との決着のあと、近場にいた上弦の参、猗窩座との戦闘の末に命を落としてしまう人。
……那田蜘蛛山の攻防の末、三人ほど剣士の命を救うことができたが、あれがあったからと油断はできない。
下弦に比べて、あの鬼たちに比べて、上弦の参である猗窩座の戦闘力は桁違いだ。
だから、それに対抗できる程の力を以って、煉獄さんとの共闘に持ち込まなくてはいけない。
そうしなくては確実に彼は命を落とすだろう。
これまで命を落としてきた人々のように。
一時的な痣の発現ではなく、完全なる痣の発現、そしてそれの維持が必要になる。
よほどのイレギュラーが発生しない限りは、炭治郎たちが死ぬことはない。
この裁判を越えたのち、休息を取ったあと、然るべき時のためにも力を向上させなくては……。
次に目を向けたのは宇髄さん。
彼は命を落とすことはない……けど、もしもという可能性もある。
もし、煉獄さんを助けることができたとして、その代償として別の人が死ぬ運命になる可能性は十分に存在している。
それはダメだ、絶対に。
だから、なるべく上弦の陸戦が発生する遊郭での話でもやらなければならないことが多々あるだろう。
せめて、その頃には“透き通る世界”に入れるようになる必要がある。
次に危険なのは、無一郎と蜜璃と、この場にはいない玄弥。
上弦の伍、上弦の肆との戦闘が発生する刀鍛冶の里での物語。
三人の被害の軽微化、同時に里の人々たちの運命をある程度覆せるようにならなくてはならない。
多分、必要になるのは赫刀の発現だ。
……はぁ、考えるだけ考えるほど、とんでもない結論に結びついてしまうな。
何もかも覆すのに必要なもの……それは、結局、縁壱さんができていたこと全てを身につけること。
もうあいつ一人でいいんじゃないかな?と言わせる程の実力を身につけなくてはダメとか、とんだ無理ゲーだ。
………あんな風になれたら、きっと何もかも守れるようになるんだろう。
でも、私にできることなんだろうか?
この世界で、この意識を持って生活したのは二年程。
元はただの学生だった私にできるのか?
鬼を狩ること、鬼を倒すこと……それは必要なことだからと何とか今までやってきたけど、原作以上の人を救うには、鬼の命を奪うことに躊躇わない以外にこれ以上の力を身につけろって?
全く……本当に難儀な世界だよ。
でも、救うと決めた以上、それはやらなくてはならない……いや、絶対にやり遂げる。
……修行のレベル……もうちょっとあげるべきかなぁ。
「優緋さん。」
「はい。」
ぐるぐると考えていると、しのぶさんが静かに話しかけてきた。
こちらの話を聞きたいのだろう。
それならと、素直に私は反応を返す。
……なんかどっかからさっきまで上の空だったのに的な言葉が聞こえてきたような気がしたが無視だ無視。
「何があったのか教えてくださいますか?」
「二年ほど前。私が少し家を離れているうちに、私の家族のほとんどは鬼により命を奪われ、唯一生きていた弟と妹は鬼となってました。でも、この子たちは人を喰べたことがありません。これからもそれは変わらないと思いますよ。下品なことを言いますが、私が月のものを患って常に流血していようが襲ってくることはありませんでしたから。私が側にいても、心配そうに見てくるだけだったし。」
しのぶさんの問いかけに対して過去のことやこれまでのことを告げれば、辺りに静寂が降りた。
「………あれ?」
原作では炭治郎が柱たちにいろいろと言われていたはずなのに、それが全くなかったので、不思議に思いながら辺りを見渡せば、男性陣が視線を逸らした。
伊黒さん、義勇、煉獄さんは顔を赤らめて固まっている。
宇髄さんは“マジか……”と呟いて引きつった笑みを浮かべてる。
悲鳴嶼さんと不死川さんは唖然としている。
「……女の子がサラッとそんなこと言ってはいけませんよ?」
「………すみません。襲わない理由を口にするなら一番手っ取り早いと思って。」
「そうかもしれないけど、男の子もいるからほどほどにしなきゃダメよ!」
「……はい。」
しのぶさんと蜜璃から注意された。
そりゃそうだって?
……まぁ、反省はしますけど。
「……お館様のお成りです。」
何て考えていたら、五つ子の一人である……えっと……誰だっけ……。
髪が白いのは、ひなき、にちか、くいな、かなたの四人だけど……。
と、とにかく、五つ子の一人が言葉を紡ぐ。
……彼女も若干引き気味だったんだけど、うん、気にしないことにした。
「よく来たね、私の可愛い
屋敷の方へと目を向けてみると、そこには顔が病により変色してしまっている一人の青年の姿があった。
「優緋さん。頭を下げてください。私たちを束ねている方です。失礼だけはないように。」
「……わかりました。」
彼の姿を確認したしのぶさんが、小さな声でそう告げてくる。
私は素直にそれに従い、その場で頭を垂れた。
炭治郎たちが入っている箱の背負い紐のとこだけは、しっかりと握りしめた状態で。
私の反応を確認したしのぶさんは、小さく穏やかな笑みを浮かべたあと、その場で頭を垂れた。
すると、他の柱たちもしのぶさんのように頭を垂れる。
……しのぶさんと蜜璃の間にいるからか、かなりの安心感があるのは気のせいではないだろう。
約一名から妬みの視線を向けられているけど。
「顔ぶれが変わらずに半年に一度の“柱合会議”を迎えられたこと、嬉しく思うよ。」
「お館様におかれましても、御壮健で何よりです。益々の御多幸を切にお祈り申し上げます。」
お館様と不死川さんの挨拶が終わる。
私の左側にいる蜜璃から、ちょっとだけ落ち込む匂いがした。
それに少しだけ苦笑いをしそうになったが、顔に出さないように堪えて、私は静かに目を閉じる。
さぁ、会議と裁判が始まる。