目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「畏れながら、柱合会議の前に、この竈門優緋なる鬼を連れた隊士について、ご説明いただきたく存じますが、よろしいでしょうか。」
しのぶさんと蜜璃の間にいることに安堵しながら、無言で頭を下げていると、不死川さんが静かに、私についての説明をお館様に乞う。
「そうだね。驚かせてしまってすまなかった。優緋、炭治郎、禰豆子のことは私が容認していた。そして、皆にも認めてほしいと思ってる。」
すると、お館様は穏やかな声音で、私たちのことはあえて容認していたことや、この場にいる全員に認めてほしいことを口にする。
義勇以外から驚いた匂いがした。
当然だろう。
まさか、鬼狩りの統率者が鬼を連れている剣士を容認している上、それを全員に認めてほしいなどと口にするなんて、本来ならばあるはずないのだから。
「嗚呼…たとえお館様の願いであっても、私は承知しかねる……」
最初に口を開いたのは悲鳴嶼さん。
数珠がじゃらじゃらとやかましい。
癖なのかな……?
「俺も派手に反対する。鬼を連れた鬼殺隊員など認められない。」
次に口を開いたのは宇髄さん。
無駄にキラキラしてる。
めっちゃキラキラしてる。
というか、派手に反対ってなんだ。
何にでも派手をつけるんじゃない。
どこぞの赤っ鼻思い出すのでやめてほしい。
「私は全てお館様の望むまま従います。」
三番目に口を開いたのは蜜璃。
ちょっとだけハートが飛んでいるような錯覚を覚える。
誰に対してもキュンとしちゃうそれ、たまに変な人に捕まらないといいけどと思うのは私だけだろうか?
「僕はどちらでも…すぐに忘れるので…。」
四番目は無一郎。
いや、サラッとすぐに忘れるって言うなよ。
大事なことを忘れちゃダメでしょ。
「…………。」
「…………。」
しのぶさんと義勇の二人は無言だ。
義勇は鬼にされた弟妹を連れている人間に対して、鬼狩りを目指したらいいと口にしたため、言葉を紡ぐ資格はないし、信じているからこそ、否定をするつもりはないと言ったところだろう。
しのぶさんは……これは、複雑と言った感情かもしれない。
私の発言から、炭治郎たちが人を襲わないのはわかるが、自分の目で見てみなくてはわからないと言いたいのかもしれない。
「信用しない。信用しない。そもそも鬼は大嫌いだ。」
……大事なことなので二回言いました……ってか?
本当にネチネチしてるなこいつ、と言った感情を抱きたくなる。
まぁ、今言葉を紡いだ蛇柱こと伊黒小芭内の過去を考えれば、ね。
さっきは黙らせることができたけれど、疑り深い部分があるし、否定してもおかしくはない。
「心より尊敬するお館様であるが理解できないお考えだ!! 全力で反対する!!」
うわうるさ!!
……じゃなくてだな。
いや、うるさいと感じるくらいのクソデカボイスだったのは否定しないけど、ちょっと抑えてほしい、と感じるくらいの声音で否定する煉獄さん。
……うん、体調悪い時じゃなくてよかった。
絶対体調悪かったら頭痛くなっていただろう。
「鬼を滅殺してこその鬼殺隊。竈門・冨岡両名の処罰を願います。」
最後に言葉を紡いだのは不死川さん。
彼の言葉は正論と言えるだろう。
鬼を滅殺するはずの存在が、いくら人を襲わないとはいえ、ある意味で野生の獣と同様に手綱を握ることなど不可能と言っても過言ではない暴走爆弾持ちの鬼を置いておくことは容認できないだろう。
場合によっては、お館様も危険に晒すことになる可能性もあるのだから。
まぁ、それは周りにいる面子も考えてはいるか。
その上でお館様の意見に従う人もいる。
「では、手紙を。」
「はい。」
柱たちの意見を聞いたお館様は、傍に控えていた五つ子の一人に声をかける。
声をかけられた少女は短い返事を口にしたのち、一つの手紙を取り出した。
「こちらの手紙は、
静かに読み上げられた手紙に、私はそっと目を閉じる。
鱗滝さんには感謝以外何もない。
義勇に対してもだ。
…………ちゃんと義勇、話聞かされていたよな……?
鱗滝さんに限って無断で弟子の命懸けたりしないよな……?
二次創作に聞かされてない義勇が困惑する漫画がちらほらとあったけど、流石にあんなことにはなってないよな?
「……切腹するから何だと言うのか。死にたいなら勝手に死に腐れよ。何の保証にもなりはしません。」
「不死川の言う通りです! 人を喰い殺せば取り返しがつかない!! 殺された人は戻らない!」
辺りに静寂が満ちる中、少しばかりの不安と疑問を脳裏に描いていると、不死川さんと煉獄さんの二人が、切腹しようが人を殺してしまっては意味がないと抗議する。
「確かにそうだね。人を襲わないという保証ができない。証明ができない。ただ、人を襲うということもまた、証明ができない。」
「!!」
お館様は、二人の抗議に対して一理あることを口にしたのち、同時に人を襲う証明も今の時点ではできないことを告げる。
不死川さんが、どことなく驚いたような……信じられないというような匂いを纏った気がした。
「炭治郎と禰豆子が二年以上もの間、人を喰わずにいるという事実があり、二人のために三人の者の命が懸けられている。これを否定するためには、否定する側もそれ以上のモノを差し出さなければならない。」
「………っ」
「………むぅ!」
お館様の言葉に黙り込む不死川さんと煉獄さん。
そんな二人を軽く盗み見た私は、小さく息を吐く。
ここでも妙なイレギュラーは発生していない。
信じないと言って斬りかかられるゼロとは言えない可能性をわずかながらにも考えていたが、そんなことはなかった。
「それに、優緋は鬼舞辻と遭遇している。」
「!!?」
再びの静寂が落ちる中、お館様が不意に紡いだ私に鬼舞辻との遭遇履歴があることを聞いた瞬間、周りが急に騒がしくなる。
「そんなまさか……!!」
「
「こいつが!?」
一斉に視線を向けられて思わずびっくりする。
だってそうだろ。
顔が良い面子に一斉に目を向けられたら誰だって驚く。
一部顔がいかついし、勢いよくいかつい顔が振り向いてきたら誰だってビビるだろ。
「どんな姿だった!? 能力は!? 場所はどこだ!?」
「戦ったの?」
「鬼舞辻は何をしていた!?」
「根城は突き止めたのか!?」
「ぎゃ!? 私は聖徳太子じゃないんで一気に問われても答えられないですって!!」
「遭遇したのお前だけだからだろうが!! あいつの能力は!!?」
急に動いた人の波により転びかけた蜜璃の体を自身の体で支えながら、ギャンギャンと一気に話しかけてきた柱たちに思わず言い返してしまう。
しかし、そんなのは関係ないと言わんばかりに質問攻めに遭い、頭が痛くなる。
「…………。」
不意に、お館様が静かに、という言葉を伝えるように、人差し指を口元に添える。
すると、先程の質問の嵐はぴたりと止まり、静かになった。
「…………大丈夫ですか?」
ようやく落ち着いた……と思いながら、咄嗟に自分の体で支えていた蜜璃に大丈夫だったかと静かに問いかける。
「う、うん、ありがとう……!」
「……………。」
私の体の支えもあり、尻餅をつくことはなかった蜜璃が感謝の言葉を口にしながら、顔を赤らめる。
……はい、伊黒さんから妬みの視線が痛いです。
でも仕方ないだろ。
あのままじゃ下手したら擦り傷できていたし、怪我しないようにしたんだからその目はやめてくれ。
「鬼舞辻はね。優緋に向けて追っ手を放っているんだよ。その理由は単なる口封じかもしれないが、私は初めて鬼舞辻が見せた尻尾を掴んで離したくない。恐らくは炭治郎と禰豆子にも鬼舞辻にとって
わかってくれるかな?と穏やかな声音で問いかけるお館様。
その言葉に柱たちは無言になる。
「わかりませんお館様!! 人間ならば生かしておいてもいいが、鬼は駄目です!! 承知できない!!」
……ただ一人を除いて。
離れた位置にいる不死川さんが、自身の腕を自ら刀で傷つけ血を流す。
「……炭治郎。禰豆子。私が月一のあれになってる時も二人は平然としていたから心配はしてないが気をつけろ。」
それを見た私は、すぐに箱に軽く口を寄せ、炭治郎たちに気をつけろと短く伝える。
箱の中に入ってる二人は了承するように箱をカリカリと軽く引っ掻いたあと、大人しくするように動きを止めた。
「お館様…!! 証明しますよ俺が!! 鬼という物の醜さを!!」
「実弥……」
血がダラダラと流れる腕を気にすることなく、不死川さんが炭治郎たちが入る箱に近づいてくる。
「オイ鬼!! 飯の時間だぞ、喰らいつけ!!」
箱の隙間から血を流し入れるようにして言葉を紡ぐ不死川さん。
その様子を確認した私は、背負い紐から手を離す。
「口を挟むようで申し訳ありませんが、鬼が陽の光に弱いのは、柱と呼ばれる方であれば理解できるかと。こちらで血を流したところで、この子たちは出てきませんよ。」
そして、冷静な声音で不死川さんにそう指摘すれば、彼は驚いた様子を見せる。
「チッ……お館様、失礼仕る。」
が、すぐに口を挟んできた私に舌打ちを漏らしながらも、不死川さんは一言お館様に断りを入れ、目の前の屋敷の部屋に上がり、その刀を構えた。
「優緋さん?」
「……信じてるので、あの子たちのことを。」
「………。」
明らかな自身の弟妹を差し出す行為に、しのぶさんが驚いたように声をかけてくる。
不死川さん以外の柱たちも、私の行動が意外だったのか、驚いて固まっている様子だ。
だが、私はその様子を気にすることなく、まっすぐと不死川さんのことを見つめる。
刀を構えた不死川さんは、何度か二人が入ってる箱をその刀で貫いたのち、
「出て来い鬼ィィ!! お前の大好きな人間の血だァ!!」
箱の扉を勢いよく開ける。
いや、開けるって表現合わないなあれ。
破壊してるよ。
ちゃんと直してもらえるよな……?
「……だから二人は人を襲わないんだって。」
ボソリと言葉を呟きながら見つめていると、炭治郎と禰豆子は本来の大きさに体を戻して不死川さんの腕を見つめる。
「「……………。」」
「………あ?」
不死川さんから疑問の声が上がる。
そりゃそうだ。
だって、本当に二人はただ見つめているだけだし。
食人衝動を抑え込んでいるような様子なんて一つも見せずに。
「………う?」
「むー………。」
むしろ知らんぷりというか……うん。
あれは心配って感情を抱いてる雰囲気だな。
「う!」
「むん! うー!!」
「……すみません。行動の許可をいただいても? 二人が呼んでるので。」
「構わないよ。」
「ありがとうございます。」
炭治郎たちが何か相談するような様子を見せたのち、何らかの結論に至ったのか、私に来て欲しいと訴えてきているので、お館様に許可をもらい、屋敷の縁側に近く。
すると、炭治郎がてくてく近づいてきて、私を拘束する縄を爪で切る。
同時に禰豆子が不死川さんの手を引っ張り、私の元へと近寄らせる。
「????」
今の状況が飲み込めていない様子の不死川さん。
炭治郎たちは困惑している彼のことなど気にせずに、私の方に血がダラダラ流れている腕を近づける。
「……まぁ、その爪だもんな。」
それが意味しているものがなんなのか理解しているので、私は小さく溜息を吐き、傷薬を一旦塗り、包帯を巻いて応急処置を済ませる。
「確かめるためとは言え、普通、自分の腕斬りますか?」
「?………!!!!?」
「ブフッ」
ようやく状況を理解できたらしい不死川さんが目を見開いて固まった。
鬼の本性を暴くつもりが、逆に心配された上に治療を施されてしまうという展開になったのが信じられなかったようだ。
蜜璃が吹き出し、他の柱たちは笑いを堪えるように肩を震わせている。
「どうしたのかな?」
周りの様子が一気に変わったからか、お館様が不思議そうに言葉を紡ぐ。
「鬼の男の子たちは不死川様に何度か刺されていましたが、彼のことを襲いませんでした。むしろ、突き出された不死川様の血塗れの腕を見ても平然とした様子で何かを相談するような素振りを見せ、優緋様を呼び、彼女に不死川様の手当てを任せ、その手元を見つめていました。」
「そ、そうなんだ。」
その問いに五つ子の一人が答えると、お館様もわずかに笑いを漏らす。
まぁ、そんな展開になるなんて、いくら先視の才を持ち合わせているお館様でも読めなかっただろうし、笑ってもおかしくない。
「では、これで炭治郎と禰豆子が人を襲わないことの証明ができたね……っ」
笑いを堪えながら、そう紡ぐお館様に、不死川さんが目を見開いて固まった。
「……優緋。それでもまだ、炭治郎たちを快く思わない者もいるだろう。」
笑いを落ち着かせたお館様が話しかけてくる。
私はすぐに、庭へと戻り、その場で頭を垂れる。
「証明しなければならない。これから、優緋と炭治郎と禰豆子が鬼殺隊として戦えること。役に立てること。」
彼の声は、確か特殊な声だったはず。
知らず知らずのうちに、人を心酔させる……ああ、確かにその通りだ。
不思議な高揚感に襲われる。
「これからも、十二鬼月を倒しておいで。那田蜘蛛山で接触した、下弦の伍を一人で倒した時のように。今度は三人で一緒に。」
が、その高揚感はすぐに霧散する。
周りの空気が一気に変わったのだ。
義勇以外の柱が、明らかに驚いている………。
「………えっと……?」
「優緋が倒した、少年鬼だね。」
「あ……あはは……なるほど……。」
……どうして累が下弦の伍だと彼は気付いたのだろうか。
私は原作で知っていたけど、あの子メカクレだったし、隠れた方の目に数字が刻まれていたから見えないはずなんだが。
「鎹鴉から聞いたよ。」
「………。」
天王寺が教えたようです、はい。
どっから見ていたんだあいつ。
「……これからも精進いたします。炭治郎と禰豆子のことを認めてもらうためにも。私のことも認めてもらえるように。いつか訪れるであろう、鬼の首魁との決着のためにも。二人を人間に戻すためにも。少しでも多くの人々が、安心して暮らせる世の中にするためにも。」
いろいろとツッコミどころ満載の展開だったが、なんとか乗り越えることができた柱合裁判。
そのことに安堵しながら笑うが、不意に訪れた疲労感と頭の痛みにより体勢を崩してしまう。
「優緋さん!?」
意識が遠のく中、誰かがとっさに体を受け止めてくれた気がした。
だが、それを確認する前に、私の目蓋は重くなる。
「「うーーーーーー!!?」」
炭治郎と禰豆子の悲痛な声が聞こえてきた。
大丈夫だと言いたいけれど、どうもそんなことを口にする余裕はないようだ。
そういえば……倒れる前に、しのぶさんの声が聞こえた気がしたけれど……ひょっとして彼女が支えてくれたのだろうか。
それにしては………腕は男の人のように、逞しく硬いものだった気がするけど…………。
ぐるぐると考え込む中、ふわりと私の視界が大きな手に覆われた気がした。