目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
59.蝶屋敷での生活。生き残った三人との会話
蝶屋敷での生活が始まった翌日。
私は診療ベッドの上に寝転んだままぼーっとしていた。
特にやることがないし、炭治郎たちはぐっすりとお休み中のようで目覚める気配が一つもない。
二人が起きていたら、二人を甘やかしながら過ごせるし、何よりの癒しになっていたんだが、休むように言ったのは私だし、起こすわけにはいかない。
自分勝手すぎるしね、そんなの。
「飲んだっけ!? 俺昼の薬飲んだ!? 飲んでるトコ見た!? 誰かーーーーーーっ!!」
「うるっせぇぞ紋逸!!」
「あんたもうるさいからな伊之助。あと彼の名前は紋逸じゃなくて善逸だ。ったく……大丈夫だよ善逸。ちゃんと飲んでたから。むしろ、私が飲めって言ったから飲んでた。」
「よ、よかったぁ!! 見ててくれてありがとうね優緋ちゃん!! 結婚して!!」
「断る。はぁ……なんで病室がこんなに賑やかなんだ……。」
あー……スマホが欲しい。
ウォークマンでもいいから欲しい……。
音をシャットダウンするのにちょうどいいもん、あれ。
でも、今は大正時代だからそんなもんないんだよなぁ……。
うん、どれだけスマホとかに依存していたのか嫌でも理解できるな。
小さく溜息を吐きたくなる。
が、そこはなんとか堪えて、私は再び天井を見つめる。
「よっ」
「こんにちは。」
「ん? 」
不意に聞こえてきた声と足音に、私は視線をそちらに向ける。
そこにはサラツヤキューティクルな頭が印象的な村田と、本来ならば命を落としていたはずの女隊員、尾崎さんの姿があった。
「あ、村田さん。それと……」
「尾崎よ。」
「尾崎さん……二人とも、ご無事だったんですね。」
しっかりと生存していた二人の様子に、思わず笑みが溢れる。
二人は、私の笑みを見るなり笑顔を返しては、病室に入ってきた。
背後にサイコロステーキ先輩……いや、生存してるから噛ませ犬先輩?を引きずりながら。
「あ………。」
噛ませ犬先輩に目を向ければ、彼はどことなく気まずそうな表情をしては、目を逸らした。
「……あんたも無事だったようで、何よりだよ。」
「あ、ああ……。」
うーん……なんだろうこの匂い……。
羞恥と悲痛と、後悔……?
「カラスから話は聞いたよ。」
「君、十二鬼月を倒したんだろ。こいつのことも助けてさ。」
「………。」
村田から目を向けられた噛ませ犬先輩が目を逸らす。
不甲斐ないという表現が似合いそうな顔だ。
「そう……なるみたいですね。まさか、十二鬼月を相手にしていたとは思いませんでしたが。」
……もちろんこれは嘘である。
でもさ。
話を合わせるためには仕方ないよなこれ。
十二鬼月と知って戦ってました、なんて言ったら変な反応されるに決まってる。
「鬼殺隊に入ってそこまで経ってない剣士が疲労困憊になるだけで、怪我をすることなく倒した……俺、一応鬼殺隊に入って何年か経つけどさ、見たことないよ。」
「まぁ、たまたま見てないだけで、柱になってる人たちは、そんなこともできちゃってるのかもしれないし、過去にそんなこともあったかもしれないから、鬼殺隊内では初めてのことじゃないのかもしれないけど、私たちからしたらすごいとしか言えないわ。」
「ひょっとしたら、陰では次の柱候補とか言われてるかもしれないな。」
「いや、流石にそれは持ち上げすぎでは……?」
なんだか盛り上がりを見せる村田と尾崎さんの二人組。
噛ませ犬先輩は、ずっと無言で口を開こうとしない。
………何のために来たんだこの人?
「………その……な……」
ジーッと噛ませ犬先輩を見つめていたら、こちらの視線に気づいたのか、静かに口を開いた。
「何?」
首を傾げながらどうしたのか問えば、彼は何度か言葉を口にするのを躊躇うように何度か開閉を繰り返した。
黙って紡がれる言葉を待つ。
「……あの時は、混乱してたせいで言い忘れたが……その……助かった……。十二鬼月と思わず……俺……舐めてかかってたからな。お前が助けてくれなかったら、今頃、俺は死んでた。」
反省の色が含まれた声音と、反省している人から感じ取ることができる匂い。
どうやら思い知ったらしい。
金のためだけに行動した結果の危うさを。
「……これからはちゃんと考えて行動を取った方がいいっスよ。見た目だけで強さを判断してちゃ、今回みたいな状況に陥ると思うんで。金も大切かもしれないっスけど、それ以前に私らは鬼による被害を少しでも減らして、戦えない人らを守る立場の人間でしょ。悲劇をこれ以上増やさないためにも、命を懸けてる。金だけのために自分勝手なことしてたらいずれ足を掬われる。だから、これからは多少は気を引き締めた方がいいっスよ。鬼狩りでい続けるためならね。他人のために命なんか懸けれるかって考えなら、まともな就職先見つけてコツコツ仕事をしていく方が安全だし、鬼殺隊を辞めることをすすめますね。」
「……………ああ。」
若干冷たいかもしれないが、これくらい言った方がいいだろう。
そう考えながら言葉を口にすれば、噛ませ犬先輩は再び黙り込み、先に出て行くと言って、病室から出ていった。
「……言い過ぎましたかね。」
「いや、俺はあれくらい言っていいと思う。」
「私も村田君に同意ね。」
なんか落ち込んでいるような様子の噛ませ犬先輩を見送りながらぽつりと呟くと、村田と尾崎さんは問題ないと言ってきた。
まぁ、そう言ってくれるのであれば、あまり考え込まないことにしよう。
そう思いながら、私は診療ベッドに再び寝転ぶ。
「竈門……だったよな。」
「そうですよ。」
「うっし、じゃあ竈門。なんか退屈そうだからこっちの日常話でも聞いてくれよ。」
「ちょっと愚痴もあるかもしれないけど、退屈凌ぎにはなると思うから、私の話も聞いてくれるかしら、優緋ちゃん。」
すると、村田と尾崎さんが、退屈ならこっちの日常話や世間話につきあってくれと言われた。
「それはいいですね。ええ、構いませんよ。愚痴も世間話もどんと来いです。一週間は行動が取れないので、助かります。」
私は笑顔で二人の提案にノることにした。
確かに二人が口にするのは愚痴がちょっと多めだったけど、それ以外の話もしてくれたし、私としては大満足だった。