目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「では、体もしっかりとほぐれたようですし、反射訓練に移りましょう。最初はアオイが相手になります。次にカナヲ、そして、最後に私となります。まぁ、今日は一日目ですからね。訓練はほどほどに、流れを覚えることを最優先にしましょう。ですが、気は抜かないでくださいね? ほどほどと手加減は違いますから。」
「あはは……はい……わかりました……。」
しのぶさんの笑顔がなんだか怖いです……。
絶対に手加減はしませんからという圧がひしひしと感じ取れます。
でも、柱相手にもある程度張り合えるようになれば、痣の発現と維持も多少はできるようになるんじゃないかとも思うのでやるしかない……。
「それでは、アオイ。こちらへ。」
「はい!」
「優緋さんは、アオイの向かい側に座ってくださいね。」
「………はい。」
しのぶさんの指示に従うように、薬湯が入った湯呑みだらけの机に座る。
対面するようにアオイも座り、よろしくお願いしますと言ってきた。
「ああ……よろしく。」
彼女の言葉に返事を返した私は、ヒノカミ神楽の呼吸を常中する。
「あら? 優緋さん、常中ができるんですね。」
「……これ、常中というんですね。師範がしていたので、必要なのかと真似をしていたのですが。」
「はい。全集中・常中は全集中の呼吸を四六時中やり続けることにより、基礎体力を飛躍的に上げる初歩的な技術です。鬼殺隊の柱の皆さんは当たり前のように使います。もちろん、私も使ってますし、カナヲたちにも教えてます。会得にまでそれなりに時間がかかるのですが……いつ頃から始めましたか?」
しのぶさんの言葉に少しだけ考え込む。
そういや常中の練習始めたのいつだっけ……?
ここ最近いろいろ立て込んでいて数えてなかった。
「そうですね……多分二週間以上は練習したような……すみません。正確な期間は数えてなくて……」
「あら、そうだったんですね。それなら、今の状態も納得できます。ですが、まだ練度は少し低いみたいですね。でも安心してください。ここには常中が使える者が複数人います。私が指令や用事でいない時も、カナヲやアオイたちがみてくれますから、三ヶ月もすれば柱と同じくらいにはできるようになるでしょう。それまで頑張りましょうね。」
「……はい。」
うん……もちろん頑張りますけど、下手したらそれ、私ノックアウトになるのでは……?
かなりの不安を抱きながらも、彼女の頑張ろうという言葉に頷く。
「では、おしゃべりはここまでに。始めますよ。ああ、薬湯はちょっと匂いがありますが、濡れてもすぐにお風呂で洗い流せるので安心してくださいね。遠慮することなく、相手にかけても大丈夫ですから。」
……笑顔で言ってきたんだけど、これ私に向けて言ったの?
それともアオイに対して言ったの?
……いや……もう考えるのやめよう。
「では、始め。」
考え込むのをやめた私は、しのぶさんの声を合図に反射訓練を開始する。
とりあえずまずは様子見をしながら、アオイが持ち上げようとする湯呑みを片っ端から阻止していく。
彼女がいくらスピードを早めようと、それに合わせて阻止しては、自身も湯呑みを持ち上げようとする。
アオイはすぐに阻止しようとしてきた。
けど、私は止められる前に一つの湯呑みを持ち上げ、アオイに中の薬湯をかける。
「!!」
「そこまで。流石ですね。」
「……ありがとうございます。」
びっくりして固まるアオイを見たしのぶさんが穏やかな声で話しかけてくる。
流石だという言葉は褒め言葉だったので、素直に受け取った、
「では、次にカナヲを相手にしましょうか。アオイ、お風呂に入ってきていいですよ。」
「……はい。」
……自信があったのだろう。
アオイが若干落ち込んでしまっている。
「では、カナヲ。優緋さんの前に。」
「はい。」
なんか、ごめんなさい……とちょっとした罪悪感を感じながら、アオイの背中を見送っていると、今度はカナヲが座ってきた。
「……君は……那田蜘蛛山で私たちを追ってきてた……。確か最終選別にもいたよな?」
「うん。」
「一応自己紹介。私は竈門優緋。」
「栗花落カナヲ。」
「カナヲか。反射訓練、よろしく。」
「うん。」
一応自己紹介をしておこう……そう考えて自分の名前を口にすれば、カナヲも自分の名前を口にした。
よろしくと返せば頷き返される。
まぁ、今はこれでいいか……そんなことを思いながらも、常中を続ける。
「それでは始めますよ。反射訓練、始め。」
開始の合図がかかると同時に、カナヲが素早く湯呑みを手にした。
すぐにそれを持ち上げるのを手で抑え込むことで阻止すれば、次の湯呑みに彼女の手がいく。
うん……予想はしていたけどアオイの比にならないくらい早い。
常中をすでに会得してる分、少しだけ難易度が高い。
けど、別に追えない程じゃない。
十分に追いつける。
まぁ、隙を見て仕掛ける私の方も、カナヲに阻止されてしまっているけど。
でも、別に抜けないわけじゃない。
こう言ったら申し訳ないけど、私から見たらまだちょっと遅い。
「!!」
「そこまで。」
湯呑みを抑えようとしてきたカナヲの手の下から湯呑みを抜き取り、中身を彼女にかければ、カナヲが目を丸くして固まった。
それを確認したしのぶさんはすぐにストップの声をかける。
「ふむ……カナヲでも相手になりませんでしたか……。彼女には負けると思っていたのですが、そうでもなかったみたいですね。それに、優緋さんからはまだ余力を感じます。流石、十二鬼月を倒しただけありますね。」
感心感心と呟くしのぶ。
カナヲはキョトンとしたままだ。
「では、最後は私が相手します。カナヲは、お風呂に入ってきてもいいですよ。」
「はい。」
そんな中、しのぶさんが最後は自分が相手だと口にしたあと、カナヲへ風呂に入るように声をかける。
それによりようやく驚きからによる硬直から抜け出したカナヲは小さく頷いたあと、この場から立ち去っていった。
「それじゃあ、始めますよ。反射訓練、始め。」
カナヲが立ち去ったのを確認したしのぶさんが訓練開始の言葉と同時にすぐに湯呑みに手をかけた。
(早っ!!?)
なんとかそれを阻止するが、彼女の手は止まらない。
次々と湯呑みに手をかけてくるため、追いついて抑え込むのがやっとの状態だ。
(柱だから早いと予想はできていたけど、その予想以上のスピードで湯呑みを持ち上げようとしてくる……!!)
辺りに湯呑みを取る音とそれを抑え込む音が響き渡る。
すみちゃんたちが驚いた様子でこちらを見ている気配がするけど気にしている場合じゃない。
気を抜けば一瞬で抜かれてしまう。
隙が一つも見つからない。
こちらの湯呑みも阻止される。
追いつけているだけで奇跡としか言えない。
阻止、攻撃、阻止、攻撃……繰り返しながら続けてどれくらいの時間が経っただろう。
わからない。
集中しているから時間の経過なんて。
「あ……!?」
そう思っていると、しのぶさんの手が抜けた。
ばしゃりと頭から薬湯がかかる。
「うえ……匂いが……。」
「私の勝ち、ですね。」
しのぶさんが笑顔で勝利宣言をする中、私は鼻につく薬湯の匂いに表情を歪める。
かなり臭いです……。
「はぁ……流石は柱の方です……。」
「ありがとうございます。ですが、優緋さんもすごいですよ。結構私、焦っちゃいました。いくら常中が使えているとは言え、やはり練度は低いですからね。早くて数分……長くて数十分と思っていたのですが、まさか二時間も粘られてしまうとは……。」
「え、二時間?」
「はい。」
……柱相手にそんなに粘ったのか私は。
自分でびっくりしたわ……。
「では、次は全身訓練をしましょう。私たち六人全員を相手にしてみてください。」
「ええ!?」
「大丈夫です。優緋さんならきっと追いつけますよ。もちろん、私たちも全力で逃げますけどね。」
休憩を挟むことなく鬼ごっこに移行するつもりらしいしのぶさんに対してマジかと引きつった笑みを浮かべる。
これ……全身筋肉痛になるかもしれないなぁ………。