目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

62 / 117
62.蝶屋敷での生活。機能回復訓練 その弐

「では、全身訓練を始めるとしましょうか。」

 

 風呂に入る時間だけは作ってくれたしのぶさんが笑顔で言葉を紡ぐ、

 私の前にいるのは、三人娘とアオイ、そしてカナヲとしのぶさんの六人。

 

「全身訓練は私たち全員を相手にする鬼ごっこです。そうですね……では、二時間ほど続けてみましょうか。先程の反射訓練の時は、これくらい粘れていましたし。」

 

「はぁ……わかりました。」

 

 どうやらまずは二時間から始めるようだ。

 ……二時間……うーん……全員捕まえることできるのかこれ?

 いや、無理だな。

 カナヲまではいけるかもしれないけど、しのぶさんは捕まえることができるかわからない。

 

「まぁ、やれるだけやってみっか。」

 

 とりあえずまずは常中の持続時間を伸ばすことに集中、のちに痣の発現を目指そう。

 累との戦闘の時は、一時的に発現できたけど、あれは沸き上がってきた怒りの影響だ。

 縁壱さんは怒りによる影響ではなく、元からの才と技術によって痣を発現させ、そして持ち前の握力で刀を赫く染めていた。

 ……そう言えば、痣って確か、脈拍二百以上と三十九度以上の体温で出る的な話あったな。

 意図的に脈拍二百以上ってできるのか……?

 一応全集中の呼吸は血の巡りと心臓の鼓動の速さを意図的に速める技術で、その影響下で体温を急激に上げる方法だけど。

 

(……この世界の理論的にはできるか。実際やり遂げたのが先代の鬼殺隊にいたわけだし。彼程の技術者はいなかったけど、戦国の世の鬼狩りは全員、痣の発現と維持を可能にしていた。)

 

 ふむ……やっぱり鍛錬を重ねることしかできないなこりゃ。

 物語が進むまでの残り、二ヶ月と三週間。

 痣者に至るまで頑張ろう。

 

「いつでもいいですよ、しのぶさん。」

 

 頭を切り替えて、しのぶさんに声をかければ、彼女は笑顔を見せたあと、一度目を閉じる。

 

「では、全身訓練を始めます。私たち全員を頑張って捕まえてみてください。……-始め!」

 

 しのぶさんが口にした合図と同時に、逃げる役のメンバーが、一気に動き始める。

 私は、全集中・常中を行いながら、周りの様子を見つめたのち、すみ、きよ、なほ、アオイの四人をすぐに捕まえる。

 

 一瞬で捕まったことにアオイたちは目を見開いて驚いていた。

 匂いからも驚きという感情が感じ取れる。

 そのことに少しだけ笑ったあと、今度はカナヲを追う。

 彼女は鬼殺隊に入っている剣士なだけあり、すぐには捕まってくれない。

 けど、しのぶさんに比べたら十分余力を残して捕まえることはできるため、少しだけ時間がかかったが、彼女のことは捕まえることができた。

 多分、三人娘とアオイとカナヲを捕まえるのにかかった時間は三十分から三十五分。

 残りの一時間二十五分から一時間三十分で、しのぶさんにどれだけ追いつけるか……。

 まぁ、捕まえることは難しいだろう。

 だから今はとりあえず、自身の限界だけでも確かめる!!

 

 床を思い切り蹴り上げしのぶさんとの距離を一気に詰め、その腕を掴もうと手を伸ばす。

 しかし、彼女が簡単に捕まってくれるわけない。

 ひらりとその場で宙返り。

 虫網から逃れるアゲハ蝶の如く躱されてしまう。

 

 すぐに向きを切り替えてしのぶさんを再び追う。

 表情は相変わらず余裕そうだ。

 

(まぁ、そりゃそうだよね。常中を極めてる人にとっては、常中を使いこなせる程度の人間なんて相手じゃない。)

 

 やれやれ、と軽く溜息を吐きたくなりながらも、彼女を追い続ける。

 捕まえようと手を伸ばすたびに蝶々のように躱されてしまうけれど、すぐに体勢を立て直しながら。

 

「そこまでです!」

 

「!!」

 

「あらあら。もう終わっちゃいましたか。少しだけ楽しくなっていたのですが。」

 

 そんな中辺りに響いたアオイの声に、私は足を止める。

 しのぶさんはにこにこと笑いながら、穏やかな声音で楽しかったのにと呟く。

 

「あー……やっぱり柱には敵わないか……。」

 

「そんなことはありませんよ? 結構捕まりかけちゃいましたし。」

 

「いや、しのぶさん。あなた何言ってるんですか。明らかにあれ遊んでましたよね? わざと捕まりかけるふりをして蝶々のようにひらりと躱していたじゃないですか。」

 

「バレちゃいましたか。」

 

「むしろあれでバレないと思っていたことにびっくりしましたよ。」

 

 くすくすと小さく笑ってるしのぶさんに呆れてしまい、我慢していた溜息を思わず漏らす。

 

「こっちは全力だったんですけどね……。余力を残した状態であなたは逃げてました。いくら常中が使えようが、やっぱり柱にはまだ遠く及びませんね、私。当たり前ではあるけど。」

 

 お手上げだと両手を上げて呟けば、彼女は私の頭を優しく撫でてくる。

 

「そうですね。確かに優緋さんはまだまだです。ですが、初日でここまでできる人はなかなかいません。確かに、余力を残して相手をしてはいましたが、想像以上の力を引き摺り出されてしまったことにちょっと驚いてるんですよ、私。」

 

「……そうなんですか? そうは見えなかったけど。」

 

 なんか、頭を撫でられたのご無沙汰な気がする……と考えながらも、しのぶさんの言葉に首を傾げれば、彼女は小さく頷く。

 

「この調子なら、早い段階で、こちらが求めている実力にまで追いつけるようになると思います。とりあえず、日中は動き回ることを中心にして、夜は瞑想と、あと瓢箪を吹いてみましょうか。」

 

「……瓢箪?」

 

 瓢箪ってつまり……あれだよな……?

 しのぶさんがカナヲにさせてる訓練の一つで、吹いて破裂させるってやつ………。

 

「はい。」

 

 嫌な予感を抱きながら言葉を紡げば、どこからかしのぶさんが大きな瓢箪を持ってき……

 

「いや、でか!!?」

 

 多分、カナヲが吹いていたサイズの瓢箪。

 思った以上にでかいんだけど!?

 

「現在、カナヲはこの大きさの瓢箪を吹いて破裂させることができます。」

 

「吹いて破裂させる!?」

 

「優緋さんはすでに常中を身につけていますから、最初からこの大きさで大丈夫でしょう。慣れてきたらもうちょっと瓢箪を大きくしてみましょうね。」

 

「いやいやいやいや無理でしょ!?」

 

「私はいけますから、優緋さんもできますよ。」

 

 漫画で知ってはいたよ?

 知ってはいたけど、実際に聞かされたら驚く。

 思った以上に瓢箪でかいし、それに硬いし……。

 

「……………。」

 

「頑張りましょうね?」

 

「…………はい……。」

 

 本当……鬼滅の刃の世界って………。

 とんでもない世界だなぁ………。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。