目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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66.蝶屋敷での生活。新たな一歩

 善逸と伊之助が逃走して訓練をサボる中、一人難易度ナイトメアレベルの訓練を行うこと十五日。

 今日も複数人相手に取りながらしのぶさんを追わなきゃならないのかぁ……なんて考えながら、洗顔のために洗面所へと移動した時だった。

 

「………ん?」

 

 洗顔した顔を手拭いで拭き、いつものように縁壱さんヘアーをしようと鏡を見たら違和感を感じた。

 なんか……うん……なんか違うような……?

 

 ジーッと鏡を見つめながら、違うところはなんだ?と首を傾げる。

 自分の顔の隅から隅まで視線を巡らして。

 そして気づいた。

 自分の額付近の変化に。

 

「あ……!?」

 

 そこにあったのは痣だった。

 縁壱さんが発現していたものと全く同じの。

 

「………!! せ……セーフ……!!」

 

 思わず大きな声を出してしまいそうになったがなんとか抑える。

 この場で叫んだりしたら、しのぶさんがすぐに駆けつけてきては、何があったのか確実に聞かれてしまうために。

 

「……とうとう行ったかぁ…………。」

 

 鏡に映る自分と睨めっこをしながら呟くように言葉を紡ぐ。

 安堵するように息を吐きながら、自分の額にそっと触れた。

 

「なんとか第一段階は突破したか……。」

 

 この日をどれだけ待ち侘びたことか。

 これで、煉獄さんを助けるための一歩がようやく踏み出せた。

 でも、だからと言って油断することだけはできない。

 いくら痣を発現させることができたからと言って、猗窩座を退けることができるとは限らないのだから。

 

「次は、痣を発現したままどれだけ動き回れるか……だな。」

 

 それと、ほんの短時間だけでもいいから、“透き通る世界”に足を踏み入ることを目指す必要がある。

 なんせ猗窩座の攻撃の速さは凄まじいから。

 漫画の方にも記されていたけど、あの義勇ですら完全に攻撃を防ぎ切ることができなかった。

 煉獄さんも、あの速さと威力により敗戦を強いられ、そのままあそこで命を落とした。

 

(物語から分析すると、猗窩座の撃退に必要なのは“透き通る世界”に入ること。付け焼き刃程度の練度での滅殺は原作のような辛勝になるだろう。でも、決められた時間内を粘り、タイムリミットまで持ち堪えるくらいならば、快勝も十分に可能だと思う。)

 

 ソシャゲでいう耐久戦ってやつだな。

 あれも、防御力や攻撃力をある程度高くしていれば楽々クリアできる。

 まぁ、ゲーム感覚でやるには、あまりにも命懸けすぎるし、失敗したら私がお陀仏だけど。

 

「……ちょっとだけやることが増えたな。でも、この残りの日付である程度は準備できる……と思う。開花できればいいんだけど……」

 

 うーん……と考え込むように鏡の自分と睨めっこする。

 ……炭治郎と禰豆子の顔が整ってることもあり、血を分けた姉である私も随分と容姿いいな。

 まぁ、柱面子や無惨、黒死牟や童磨や猗窩座たち程ではないけど。

 

 ちょっとだけくだらないことを考えながら、洗面所から立ち去る。

 さて、朝食を食べたらまた修行ですな……。

 ……そろそろ刀握りたいけど、まだかなぁ…?

 

「おはようございます、優緋さ……あら?」

 

「おはようございます。どうしました、しのぶさん?」

 

 廊下を歩いていると、しのぶさんと鉢合わせした。

 いつものように挨拶をしてきたけど、今回は不思議そうに首を傾げては、じっとこちらを見つめてきている。

 ……美人さんに見つめられると、流石に同性相手でもちょっとドキッとするな。

 

「まぁ……どうしたんですか、その痣……?」

 

 なんて考えていると、しのぶさんがどことなく心配そうな表情をしながら、どうしたのかと聞いてきた。

 そういや、過去の鬼殺隊に存在していた痣者と呼ばれる剣士たちのこと、現在の剣士たちは噂やお伽話程度に聞き齧った……または、知らないのが基本なんだっけ?

 じゃあこの反応も当然のことか?

 

「それが、私にもわからないんですよね。洗顔していた時に気付いたもので……痛くはないんですけど。」

 

「そうなんですか? うーん……なんなんでしょうね、これ。ただ打っただけじゃ、こんな痣はできないはずですし……。」

 

 だったらヒラ隊員が戦国の時代の鬼狩りが出していたものらしいですよ、なんて言うわけにはいかないので、知らないふりをすることにした。

 痣に関しては、お館様から伝えられる方がしっくりくるはずだし。

 

「まぁ、痛くないのであれば、今は診察をする必要もないでしょう。痛みを感じたらすぐに言ってくださいね?」

 

「わかりました。」

 

 しのぶさんに短く返事を返せば、彼女は綺麗な笑顔を見せる。

 ……しのぶさん、心の内を打ち明けてくれたあの日からだいぶ変わったな。

 笑顔なのに怒ってる……その矛盾を感じ取る頻度がグッと少なくなった。

 まぁ、たまにその匂いがするけど、基本的には喜怒哀楽の匂いと表情がシンクロしている。

 うん、相反する感情の板挟みからだいぶ抜け出せたようで安心した。

 

「それでは、本日も訓練、頑張りましょうね? あ、今日から十回負けたら強制的に私の継子になってもらうのでそのつもりで。」

 

「………いや、なんつー条件出しちゃってるんですかしのぶさん!?」

 

「力づくです。検討すると口にするばかりで、全く検討している様子は確認できていませんからね。考えるつもりがないのであれば、私もちょっと強硬手段に出てみることにしました。」

 

 ……素晴らしい笑顔でなんてことを言うんだこのお姉さまは……勘弁してくれ………。

 

 

 

 


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