目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「……つまり、今の炭治郎の状況をまとめると、話すことはできる。けど、鬼としての能力や、弱点に変化はなく、人間に戻ったわけじゃない、ってところか?」
「うん。たぶん……」
しばらくして取り乱していた自分を落ち着かせることができた私は、炭治郎に心配かけてしまったことを謝罪したのち、今の炭治郎の状態を分析するために、少しだけ話していた。
これによってわかったことは、炭治郎はかなりのスローペースで話すことが可能になったことや、鬼としての強靭な強さはそのままであること、日の下に出ることはできないことだった。
日の下に出れないというのは、調べる術がないため、実際のところどうかはわからないけど、炭治郎が「陽の光はやっ」ってイヤイヤ期の子供よろしく拒絶したので、判断した。
ああ、一応誤解を招かないように訂正しておくが、縁側に連れ出そうとするような真似はしてないぞ。
流石に二人に対して家族というより読者視点でしか見れていないことを自覚しても、そんな鬼畜な行動取れるはずがない。
「炭治郎も、よくわかってないんだな。」
「うん。」
「話せるのもついさっき自覚したんだな?」
「うん。」
「そうか。」
ふむ……まぁ、それならまだ無惨がでしゃばってくることはないな。
太陽を克服している鬼は、まだ生まれていないのだから。
よかった……完全にあれに太刀打ちできる程の戦力が整っていないというのに、ラスボス戦になるという最悪なバッドエンドにはなってないんだな。
安心したわ……。
「ねえちゃ。おれ、もっとつよく、なりたい」
そう安堵の息をこぼしていると、炭治郎から強くなりたいと告げられる。
「強く?」
「うん。ねえちゃ……みたいに、つよく、なれば。ねえちゃ、も、ねずこ、も、まもれる、から。ねえちゃ、が、たいへんな、とき、たすけること、できるから。」
「炭治郎……。」
強く、まっすぐな眼差しを向けてくる炭治郎。
その姿に思わず笑みが漏れる。
だって、鬼化してはいるけれど、その目は私がずっと紙越しに、または画面越しに見守っていた、大ファンだった男の子と変わらなかったから。
「やっぱり、炭治郎は炭治郎だな。」
「うん?」
「こっちの話さ。気にしないでくれ。」
不思議そうに首を傾げる炭治郎の頭に優しく手を置いてわしゃわしゃと少しだけ強く撫でれば、彼は幼児のようにキャッキャと笑う。
「でも、強くなるったって、どんな風に? 自分が思い描いてる強さはあるか?」
「うん。ねえちゃ、ひのかみかぐらで、たたかってる。おれにも、たぶんだけど、できるとおもう。おしえて、ねえちゃ。」
……日の呼吸が使える鬼………?
うわぁ……無惨が可哀想な目にあう世界線になりそう……。
いや、でも、あの鬼にはそれくらいきつい目に遭ってもらったほうが、被害者たちの無念を晴らせるか?
「なるほどね……。まぁいいよ。今の炭治郎に体力の限界は存在していないからな。血を流し過ぎない限りは、多分イケると思う。けど、無理だけはしないように。今からじゃ大事な場面でも付け焼き刃程度の技術になる可能性が高い。」
「うん、わかったぁ。」
……そうと決まれば、無限列車の話に進むまでの期間、炭治郎に日の呼吸を使用できる最低限のラインまで教えないとな。
それと並行するように、私も“透き通る世界”を開花させるための修行を行う。
うん、対人修行が終了してしまったからどうしようかと悩んでいたけど、新たにやることが見つかったな。
「じゃあ、日中は部屋の中で呼吸と型を教えよう。まぁ、炭治郎も父さんにヒノカミ神楽を教えてもらっていたんだ。型ならすぐに覚えるさ。だから、鬼との戦いに用いることができるくらいに昇華できるかが鍵になると思う。炭治郎も外に出ることができる時間帯になったら、時間が許す限り、剣術の基礎的なことや、ヒノカミ神楽同士の打ち込み稽古をしよう。恩師である鱗滝さんや、柱であるしのぶさん程教えるのは上手くないかもしれないけど、ついてきてくれるか?」
「うん!!」
笑顔を見せる炭治郎の頭を優しく撫でながら小さく笑えば、炭治郎がふんすっと若干奮起したように鼻を鳴らす。
「ねえちゃ、よろしく、おねがいします。」
「ああ。」
頭を下げる炭治郎に了承の返事を返せば、再び太陽のような笑顔を見せてきた。
しかし、すぐに自身の首からぶら下げている竹を自ら口元に持っていき、再びそれをかぷっと咥えた。
「あら? 炭治郎君、起きたんですね。」
「う!」
「お姉さんに甘えていたんですか?」
「うー!!」
「むむむ……。何を言ってるかはちょっとわかりませんが、雰囲気的にそうだと肯定しているのでしょうか……?」
「むん!!」
「あら、当たっていたみたいですね。」
(………なるほど。)
一瞬、不思議に思ったが、どうやらしのぶさんの接近に気づいていたらしい。
(……まさかの事態に驚いていたからちょっと気づくの遅れたな。)
まだまだ私は精進が足りないらしい。
「そういえばしのぶさん。何か用事があったのでは?」
苦笑いをしそうになるのを堪えて、部屋にやってきたということは、私に用事があったのではないかと考えて、彼女に要件を問いかける。
「あ、そうでしたそうでした。もうすぐ夕飯ですから呼びにきたんです。」
……夕餉についてのお知らせだったらしい。
「なるほど。もうそんなに時間が経っていたんですね。炭治郎と久々に遊んでいたので気づきませんでした。」
うっかりしていた、とウソともホントとも取れる言葉を返して、私はその場から立ち上がる。
「夕飯食べてくるよ。」
「う!!」
手を振ってお見送りしてくれる炭治郎に手を振りかえした私は、割り当てられた部屋を退室する。
さて、明日からは炭治郎も修行だな。