目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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ヒノカミ稽古
71.始動、鬼化炭治郎のヒノカミ稽古!


 炭治郎から強くなりたいと言われた日の翌日。

 善逸と伊之助の悔しげな声を聞きながら過ごしながら、私は炭治郎にヒノカミ神楽の正しい呼吸と、型をゆっくりと教えていた。

 

 現在は宵闇時。

 日が暮れたことにより炭治郎も外に出ることができる時間帯。

 

 私たちが今いるのは、割り当てられた部屋の前にある広い庭の中央だ。

 

「互いに木刀だから斬れることはない。打ち身はできるかもしれないが、安心しろ。これまで訓練と修行をしていた分、身体能力や基礎体力は十分にある。炭治郎の打ち込み稽古に付き合えない程弱くもない。だから、しっかりと技を打ち込んでみろ。教えたように、ヒノカミ神楽を壱から拾弐まで繋げながら攻撃してきな。」

 

「……う、ん…………。」

 

 そこで私は炭治郎にヒノカミ神楽こと日の呼吸の型を、壱から拾弐まで繋げるように木刀を振るようにと指示を出す。

 だが、炭治郎は木刀を持ったまま、かなり躊躇っているような様子を見せている。

 

「……躊躇わなくていい。私は怪我しないから。」

 

「ほん、とう?」

 

「ああ。信じていい。」

 

 やっぱり炭治郎は優しいな、と少しだけ考える。

 害ある相手なら……攻撃してくる鬼であるなら、容赦なく武器を振るう私なんかとは大違いだ。

 でも、躊躇っているようじゃ強くはなれない。

 厳しいことをいうかもしれないが、戦わなければやられてしまう世界なんだ、ここは。

 だからここは心を鬼にしなくてはならない。

 

「炭治郎。その優しさは否定しない。否定はしないけど、今は肯定もできない。もし、目の前にいるのがあんたの家族である優緋ではなく、全てを奪い尽くす鬼だったらどうする? 大切なものを傷つけて、大切なものを自分勝手に奪っていくような鬼だったら? ……鬼は、皆が皆優しさだけで救える者じゃない。話し合いに応じてくれる者も少ない。目の前にいる人間を、鬼を、自身の力の糧となる食糧としか見ていない者が多いんだ。だから、躊躇っていたら自分の命が危うくなる。それに……怪我を負い過ぎて血を大量に流し過ぎた時、炭治郎……あんたは、自身の本能に抗えるか?」

 

「!!」

 

 静かな問いかけに炭治郎が目を見開く。

 驚きの匂いと焦りの匂い、悲しみの匂い……優しい匂いももちろんするけど、負の感情や焦燥が強く感じ取れる。

 

「もちろん私は信じてるさ。炭治郎たちは人を襲わないって。でも、どこかで信じ切ることを躊躇う自分もいる。血を流し過ぎて治癒のために力を使い続けた鬼は、かなりの飢餓状態に陥ると風の噂で聞いたこともあるからだろうな。……もし、これまでにないくらいの怪我をして、それを全て治した代償に、本能に抗うことができないくらいの飢餓状態に炭治郎たちが陥ってしまったら……私は、それが少し怖いんだ。」

 

 ああ、かなり困らせてしまった。

 きっと深く傷つけてしまった。

 頭の片隅でそう考える。

 

 でも、どうしてもチラついてしまうんだよな。

 原作内にあった遊郭の話……その話の中で、禰豆子が炭治郎を守るために、人々を守るために、堕姫と戦って大量の血を流して、鬼化が進んだ結果、人を襲いかける話が。

 

 あの時は炭治郎がすぐに禰豆子の動きを止めて、なんとかことなきを得たが、もし、私がそのシーンに出くわしたら……炭治郎のように、止めることができるのだろうかと、不安にならずにはいられなかった。

 物語のイレギュラー……明らかな逸脱の果てに最悪な事態を招いてしまう世界線になっていたらどうしようと、考えてしまう日々が絶えないのだ。

 今はいい方向に転んでいるけど、この先にその分の代償が降りかかってきたら……私は……。

 

「……ごめんな、炭治郎。今のは忘れてくれ。」

 

 動きを止めてしまった炭治郎に対して、私は謝罪の言葉をかける。

 この謝罪は炭治郎たちを信じきれていないことの謝罪なのか、それとも酷なことをさせようとしたことに対する謝罪なのか、自分自身でもわからない。

 

「………。」

 

 炭治郎から一瞬、何かを決意したかのような匂いがした。

 辺りには、日の呼吸特有の燃え盛る炎のような音が響き渡る。

 

「炭治郎?」

 

「……………。」

 

 音の発生源は炭治郎からだった。

 驚いて顔を上げてみると、彼は木刀を構えている。

 

「…………。」

 

 その姿が何を意味するものなのか、決意の匂いから理解できた。

 炭治郎は、日の呼吸を私に使おうとしてる。

 強く……なるために……。

 

 一度私は目を瞑る。

 酷なことをさせてごめん……心の中で謝罪する。

 

「………来い!!」

 

「!!」

 

 そして、閉じていた目を開けると同時に、その気持ちに一旦蓋をして、炭治郎に師として向き合った。

 

 日の呼吸独特の呼吸を行いながら、彼は木刀を力強く振るう。

 

 “ヒノカミ神楽 円舞!!"

 

「………その調子だ。」

 

 放たれた日の呼吸の壱ノ型。

 私は日の呼吸の常中を行いながら、その攻撃を受け流す。

 

 “ヒノカミ神楽 碧羅の天!!”

 

 “ヒノカミ神楽 烈日紅鏡!!”

 

 次々と繋げて放たれる日の呼吸の型。

 木刀で受け流していることもあってか、かなりの大きな打撃音が庭全体にこだまする。

 炭治郎の修行は始まったばかり。

 さぁ、どこまで君は成長するのかな……。

 

 

 

 

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