目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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後書きに主の設定と挿絵があります。
あまりイラストは描かないので、決してうまくないので、閲覧する時はご注意ください。
なお、閲覧は閲覧者様の自己責任としますので、見た後の批判、および文句、中傷は受け付けません。


無限列車と分かれ道
76.突入、無限列車


「体調は万全のようですね。しっかりと休息を取れています。これなら問題はありません。」

 

「そうですか。ありがとうございます。」

 

 二日後。

 カラスを通じてある指令が耳に入った。

 それは、とある列車に乗った人間が次々と消えるため、鬼が潜んでいる可能性があるという内容だった。

 行方不明者は実に四十人以上……送り込んだ鬼殺隊の数名の剣士も消息を絶っているため、手の空いている鬼狩りは、柱と合流し、討伐に向かえとのこと。

 原作ではその内容は煉獄さんと合流した後に聞く内容だったが、どうやらこれは変わってたようだ。

 

 とうとう無限列車編が始まった……とかなりの不安に苛まれる。

 確かに、私は痣を発現させて痣者になり、“透き通る世界”にも入り込むことができた上、それを長く維持できるようにはなった。

 でも、やはりどこかで最悪な未来を考えてしまう。

 

 もし、煉獄さんを助けることができたとしても、自分が命を落としてしまったら?

 もし、原作通り煉獄さんを失ってしまったら?

 もし、猗窩座が本気を出して、私と煉獄さんの両方が命を落としてしまったら?

 

 ……私というイレギュラーが原因で、それに誘発されたかのようにこれらの未来が発生する可能性は存在している。

 むしろ、逆に発生しやすくなっている可能性だって否めない。

 

 そのイレギュラーがいい方に転べば、未来も多少明るいだろう。

 でも、悪い方に転ぶ可能性がそれなりに存在しているとなると……暗いことしか考えられない。

 本当に私は煉獄さんを助けることができるのか?

 わからない……わからないよ……。

 

「……さん………ひ………さん……優緋さん?」

 

「!」

 

 無言で考え込んでいたら、しのぶさんが声をかけてきた。

 私はそれにハッとする。

 彼女はこちらに心配そうな目を向けて、首を傾げながら見つめてきていた。

 

「どうしました? 急にボーッとされてましたが……。やっぱり、熱が原因なのでは? 今の優緋さんの温度は三十九もありますから。優緋さんは大丈夫だと言ってましたが、本来ならば動くのも辛い温度なんですよ? やはり、今回の任務には向かわない方がいいのでは……。」

 

「………大丈夫です。体調には何の変化もありません。むしろ、今の方が調子がいいんですよ。体も羽が生えたかのような軽さがありますから、問題はないんです。」

 

「ですが……」

 

「大丈夫です。大丈夫、だから……行かせてください、今回の任務に。」

 

「…………わかりました……。ですが、無理はしないで……必ず帰ってきてください。必ず生きて、戻ってきてください。もう、大切な人を失いたくありませんから。」

 

 悲しそうに、寂しそうに、懇願するように言葉を紡ぐしのぶに小さく微笑みかける。

 自分より体が小さな彼女の頭を撫でたくなったが、年上である彼女の、先輩である彼女の頭を撫でるのは失礼だと思い、その衝動をグッと抑える。

 

「お世話になりました。他の皆さんにも挨拶を済ませ次第、指令に向かいます。」

 

 そして、小さく笑いながらしのぶさんに挨拶をして、診察のための部屋を出る。

 彼女から不安の匂いは消えなかったけど。

 

「あ。」

 

「ん? ゲッ……」

 

 廊下を歩いていたら目の前に玄弥が現れた。

 彼は私の顔を見るなり、ゲッという言葉と共に嫌悪の表情をした。

 

「ひどいな顔を見合わせた瞬間ゲッなんて。」

 

「何でいるんだよお前……」

 

「そりゃ治療を受けてましたから。那田蜘蛛山での任務終えた後過労でぶっ倒れてね……しばらく指令受けんの禁止ってされたんだよ。」

 

「……過労でぶっ倒れるって何やってんだ。」

 

「無傷で鬼狩ってたから仕方ない。」

 

「マジか……。」

 

 玄弥の質問に素直に答えれば、引きつった笑みを返された。

 無傷で鬼狩るのやっぱり変なのか?

 いや、つい最近なった奴が無傷討伐をしてるからこれは当たり前の反応か。

 

「あれから女の子殴ってないよな?」

 

「してねぇって……掘り返すな……。あの時は、その、本当に焦ってて、周りが見えてなかった……。まぁ、今でも焦りはあるんだけどな……。」

 

 ……おや。

 随分と落ち着いて会話をしてくれた。

 私が気づいて声を漏らしたのも関係あんのかね。

 まぁいいや。

 

「ふぅん……。まぁ、何に焦ってんのかはわからないけど、焦り過ぎたら逆に空回りして、悪い方に悪い方に転がることがある。そこら辺よく考えないと、自分の目的って果たせないと思うよ?」

 

「!」

 

 玄弥の焦りの理由……それはきっと、早く柱になって、兄である不死川さんに会って過去の謝罪をしたいという奴だろう。

 でも、柱になるには鬼を五十体以上倒すことと、十二鬼月の下弦でもいいから一体でも己の力で倒さなくてはならない。

 しかし、そのために必要である全集中の呼吸が使えないというデメリットを抱えてしまっており、焦りは加速している。

 

「私にもさ。ある一つの目的があるんだけど、そのために身に付けなくてはならないものがいくつもあったんだ。つい最近まで、その必要なものがなかなか身に付かなくて焦ってた。でも、その焦りのままに必要なものを身につけるための鍛錬を行っても、なかなか出来なくて、ただひたすらに苦しかった。だから、まずは一旦冷静になって、一歩ずつやれることを時間がかかってもいいからやることにしてみた。すると、今まで苦しかった鍛錬が格段に楽になったんだ。まぁ、簡潔に言うなら“塵も積もれば山となる”ってところかね。塵程度の小さなものも重ねていけば山のように大きくなる。と、いうことで。今は高い目標ではなく、まずはこれを、次はこれを、って感じに、目標難易度を下げて、コツコツとやってみることも試してみたらどうかな?」

 

 焦りこそ最大の敵であることを玄弥に伝えて、私が今までやってきた方法を試してみたらどうかとアドバイスする。

 余計なお世話だったかもしれないが、別の方法を提示した方が、今の玄弥の焦りを少しくらい和らげることができると思って。

 

「……焦り過ぎも良くない……か。……ありがと。少しだけ気持ちが楽になった。」

 

「どういたしまして。」

 

 予想は大当たりだった。

 私の指摘を聞いた玄弥から、先程までしていた焦りの匂いが無くなった。

 そのことに少しだけホッとして、口元に小さく笑みを浮かべる。

 が、不意に私は、そういえば玄弥の名前を本人から教えてもらってないことを思い出す。

 原作知識で知っていたけど、呼ぶためには自己紹介が必要だ。

 

「そういや、あんたの名前を聞いてなかったな。私は竈門 優緋。そっちは?」

 

「不死川 玄弥だ。……確かに、まともな自己紹介はしてなかったな。」

 

「そうか。玄弥って言うんだな。私のことは優緋って呼んでくれ。もしかしたら、任務で一緒になることがあるかもしれないし、これで多少は連携が取れるようになったな。」

 

「………ああ。」

 

 互いに互いの自己紹介を行ったことで、少しだけ距離が近くなったんじゃないかなと思いながら、笑顔を見せれば、玄弥はポリポリと自身の頬を掻く。

 ちょっとだけ照れているように見えたのは気のせいだろうか?

 

「と、私今から指令に行かなきゃならないんだった。呼び止めて悪かったな玄弥。そっちもしのぶさんに用事があったからここにいたんだろ?」

 

「そうだな。俺は、呼吸が使えない代わりに特殊な戦い方をするんだが、本来ならばあまりしない方がいいもので、何が起こるかわからないって呼び出されたんだ。……指令、頑張れよ。」

 

「ああ。生きてたらまた会おう。」

 

 そんなことを考えながら、私は玄弥と挨拶を交わす。

 玄弥はおー、と間延びした返事を返したのち、しのぶさんがいる部屋の方へと足を運んでいった。

 

 それを確認した私は、アオイたちに挨拶をするべく蝶屋敷の中を歩いていく。

 さて……無限列車編……いい方に転ぶのか、悪い方に転ぶのか……。

 

 どうか悪い方に行かないでくれと、願いながら移動する。

 さぁ、新たな物語を始めよう。

 

 

 

 




 竈門 優緋 (かまど ゆうひ)

 年齢:十七歳

 性別:女

 容姿:赤みがかった癖のある長い髪をポニーテールにしており、炭治郎や禰豆子と同様に赤い瞳をしている。顔立ちは二人と同じように整っている。桜の花が華やかに咲き誇る紅色の羽織を着ている。
 しのぶと蜜璃の間くらいのスタイルをしており、身長は165cm。
↓↓イメージ(画力は高くないので閲覧注意)↓↓
 
【挿絵表示】


 持ち物
 鱗滝からもらった厄除の面
 日輪刀二本(片方は炭治郎のもの)
 炭治郎と禰豆子を連れて移動するための背負い箱
 代々受け継ぐ花札のような耳飾り


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