目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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82.竈門優緋、意識覚醒。

 かなり離れた位置まで走った私は、足を止めて辺りを見渡す。

 魘夢の気配は充満してるが、先程までいた人の気配が感じ取れない。

 

 多分、私の無意識領域に足を運んだのだろう。

 異物が混ざった私の無意識領域……気にならないといえばウソになるが、本人には知覚することが不可能なため、知ることは永劫にないだろう。

 

 そんなことを思いながら、私は日輪刀に手をかけて、鞘から引き抜こうとする。

 しかし、刀を抜く前に、私の手からひらひらと何かが落下した。

 

 よく見るとそれは、先程川で拾った桜の花びらだった。

 

「………そういや、なんで桜の花びらがあったんだ? まだ禰豆子たちが入る背負い箱とかなら本能の警告だと結びつけることができるけど、桜の花びら……なんか私に関係してるっけ?」

 

 桜といえば、私が着てる羽織だけど、この羽織は昔から着ている奴だしなんの関係もないはず……。

 少し気がかりな部分があるが、今はそれどころじゃないと判断して、日輪刀を抜刀した私は、自身の頸に刃をあてがう。

 後はこれで頸を掻き斬るだけだ。

 

 そう思いながら私は刃を勢いよく滑らせる。

 痛みは感じなかった。

 夢の中だからなのかはわからないが、ありがたいことだ。

 

 

 ………赤い血飛沫が広がる世界、それを最後の景色として、私の意識は浮上する。

 目をゆっくりと開けてみると、真っ先に視界に入ったのは煉獄さんと、煉獄さんの夢に入っていたらしい女性の姿。

 ……女性の首を片手で締める男性の図って、実際に見るとかなり衝撃的だな。

 

「ムー……」

 

「ねえちゃん………。」

 

「ん?」

 

 かなりシュールだな、と異常事態にも関わらず考えていると、炭治郎と禰豆子の声が聞こえてきた。

 そちらの方に目を向けてみると、二人が眉をハの字にして見つめてきている。

 

「炭治郎。禰豆子。心配かけたな。悪かった。禰豆子。目を覚ます前、禰豆子の血の匂いがしたが、どこか怪我を?」

 

「うー……」

 

「ねずこ、ねえちゃんがうなされていたから、ねえちゃんのあたまにずつきしたんだ。そしたら、ぎゃくにちがでちゃって……いまはもう、なおってるからだいじょうぶだ。そういえば、ちがでていたとき、ねずこがねえちゃんにひをつけたんだ。ちがついたところからいきおいよく!」

 

「……なるほど。つまり、禰豆子は血鬼術を会得していたんだな。」

 

 とりあえず二人から状況を聞くと、先程まで発生していた状況を炭治郎が説明してくれた。

 その話を聞いて、禰豆子の頭を撫でながら、血鬼術のことを口にすれば、彼女は小さく頷いた。

 自分でもびっくりしてると匂いから感じ取れる。

 

「………やっぱり、私に繋がってたのはこの人か。」

 

 禰豆子も信じられないと思っていたのか、と考えながらも、私は自身の背後にある席に目を向ける。

 そこには未だに意識を失ってる……というより、浅い眠りに入ってるのであろう青年の姿。

 間違いなく結核を患っていた彼だ。

 

 これも賭けだったけど、上手く勝つことができたらしい。

 ホッと一息つきながら、私は自身の手首にある違和感に目を向ける。

 そこには焼き切れた一本の縄が。

 

 辺りを見渡せば、煉獄さんたちにも同じ縄が繋がっている。

 私のように焼き切れていないため、入り込んでいる人にもそれは繋がっていた。

 

「……禰豆子。少しだけ血を流すことになるが、すぐに煉獄さんたちの縄も私の縄のように焼き切ってくれ。多分、これは日輪刀で斬ったらいけないだろうから。」

 

「う!!」

 

 縄の存在を確認した私は、すぐに禰豆子に指示を出す。

 彼女は力強く頷いた後、自身の手の平を爪で傷つけ、滲み出た血を縄に触れさせ、そこから勢いよく炎を発生させる。

 

「炭治郎。私は鬼を探す。だから、禰豆子と二人で煉獄さんたちを起こしつつ待機を。もし、鬼の攻撃があった場合は、ヒノカミ神楽で応戦を。大丈夫。炭治郎は十分強くなってる。だから耐え凌ぐこともできる。わかったな?」

 

「うん、わかった!」

 

 それを見届けつつ、私は炭治郎にも指示を出した。

 席の下に隠している刀の一本を炭治郎に渡しながら。

 私から刀を受け取った炭治郎はこちらの指示に頷いて、善逸たちを起こそうとする。

 

「! 炭治郎!!」

 

 炭治郎目掛けて錐を振り下ろす女性の姿が視界に入った。

 慌てて彼の名前を呼べば、炭治郎は驚きながら後方に飛ぶ。

 炭治郎に対して放たれた攻撃は空を切り、炭治郎は怪我をすることがなかった。

 

「邪魔しないでよ!! あんたたちが来たせいで夢を見せてもらえないじゃない!!」

 

 怒鳴るように言葉を紡いだのは煉獄さんと繋がっていた女性。

 その声に釣られたように、善逸と伊之助に繋がっていた人もゆらりと立ち上がる。

 周りから感じるのは確かな敵意。

 同時に悲しみや苦しみの匂いがした。

 

「何してんのよ!! あんたも起きたなら加勢しなさいよ!!結核だか何だか知らないけど、ちゃんと働かないならあの人(・・・)に言って夢を見せてもらえないようにするからね!!?」

 

 女性がある一点に怒鳴りながら目を向ける。

 その視線の先にいたのは、結核の青年。

 

「…………人の弱った心につけ入る……ねぇ……。鬼らしいっちゃ鬼らしいが、なんかちょっと腹立つな。わざと術にかかった私が言えることじゃないけど。」

 

 ボソリと呟くように言葉を紡ぎ、小さく溜息を吐く。

 だが、ここで足止めを食らってやるつもりはない。

 一先ず魘夢の元に向かおう。

 絶望した顔が好きなあいつに、ちょっとした仕返しをするために。

 

「……嫌なことがあったら、現実逃避したくなるよな。私もよく夢の中だけでもいい思いをしたいって、何度も考えたことがある。だから気持ちもわからなくもない。苦しさから逃れるたいと思うのは、一つの人間の本能だからな。でも、ごめん。君らの意見は尊重できない。私は、足を止めるわけには行かないんだ。」

 

 再び攻撃される前に、敵意を見せてくる魘夢側の人らの首に、手刀を軽く叩き込む。

 敵意を向けてきていた三人は、その一撃だけで意識を失った。

 

「………大丈夫?」

 

 気を失った三人をそれぞれ席に座らせた私は、こちらに繋がっていた青年な声をかける。

 

「……うん。大丈夫だよ。ありがとう。あの人を……倒すんだよね? 気をつけて。」

 

 彼は穏やかな声音で気をつけてと言ってきた青年に小さく頷き返した私は、踵を返して車両を移動する。

 

「ああ、そうだ。もし、鬼退治終わった後会うことができたら、君が私の中で何を見たのか聞いてもいい?」

 

 が、その前に一旦足を止めた私は、青年に鬼退治後の話を口にする。

 彼は小さく頷いた後、私に笑顔を見せてきた。

 その姿に私も釣られて笑う。

 

「……炭治郎。禰豆子。煉獄さんたちを頼んだよ。」

 

「うん!」

 

「ムー!!」

 

 そして、炭治郎と禰豆子にみんなのことを一旦頼んで、車両の外へと飛び出した。

 さぁ、魘夢との邂逅と行こうか!

 

 

 


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