目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「……やれやれ。ひどい目にあった。酔うところだったわ……。」
断末魔と共に叫びながら激しく暴れ、横転した汽車に向かって吐き捨てる。
原作では汽車の下敷きになっていた運転手は私が抱えたからそこまでひどい怪我をしていない。
一緒にいた伊之助も膨れ上がっていた肉塊のおかげでそこまで怪我していないようだ。
「ねえちゃん!」
「むー!!」
「ん? おー……炭治郎たちか。二人も怪我はないか?」
「うん!」
「む!」
これから発生する出来事を考えて、安全地帯になるであろう場所に運転手を座らせていたら、炭治郎と禰豆子が駆け寄ってきた。
怪我の有無を聞いてみれば、どちらもないとのこと。
よかったと少し安心する。
「……他のみんな……乗客の状況は?」
「おれたちがまもったばしょはだいじょうぶ! ぜんいつも、ねずこも、おれも、のっていたひとたちもみんないきてるよ。けがをしたひとは、いっぱいいるけど。」
「そうか。教えてくれてありがとう。炭治郎も禰豆子もよく頑張ったな。ちゃんとみんなを守ることができた。えらいえらい。」
「へへ……」
「ん〜!」
炭治郎から状況を聞いた私は、ありがとうと一言伝えた後、しっかりとみんなを守ってくれた二人を褒めながら頭を撫でる。
すると二人は笑顔を見せて、軽く手のひらにすり寄ってきた。
「……他の車両のことを煉獄さんに聞いてくる。炭治郎たちは善逸と合流して休んでいてくれ。」
「ねえちゃんは?」
「ちゃんと後で合流するよ。だから先に休んでな。」
「………わかった。」
少しだけもの言いたげな目を向けられた。
しかし、すぐに炭治郎は私の指示に従って、禰豆子と手を繋ぎ歩いて行く。
「伊之助。二人のことを少しの間お願いしていいか?」
「おう。子分のお願いを聞くのがいい親分って奴だからな! 頼まれてやるよ!」
それを見送った私は、伊之助にもこの場から安全な位置に向かってもらうため、炭治郎たちをお願いするという形で移動を促す。
彼は指示されることは嫌うけど、お願いだけは必ず聞いてくれるからな。
読み通り伊之助は炭治郎たちを追ってこの場から立ち去っていった。
それを確認した私は、煉獄さんと合流する……前に、石炭が積まれていた車両に目を向ける。
そこにはすでに人型など持たない、残骸となった魘夢の姿があった。
「………どうだ。絶望を与える側だった自分が、絶望を与えられる側になった気分は。」
「!!」
至極穏やかな声音で話しかければ、目を見開く。
二百人の人質を与えられていながらも、一人も喰らうことなどできず、死という崖に突き落とされる。
アドバンテージをないものとされてしまい、散り逝くこと程、絶望を感じることはない。
「本当は、お前の力なんざ知ってたんだよ。でも、あえて罠にかかったんだ。確認したいことを確かめるために。おかげでいろいろと割り切ることができた。私は私としてこれで動ける。」
「な……にを……!!」
「夢の中であれ、この子の家族に会わせてくれてありがとさん。おかげで彼女の最後の言葉や言いたい言葉を伝えることができた。作られたものに対して言うより、本当の家族にちゃんと伝えてあげたかったが、残念ながら、それは既にできなくなっている。でも、形だけでも行ってきますと、この子の大切な人らに対する感謝を告げることができた。」
顔に笑顔を浮かべながら、魘夢の残骸にそう告げて、鞘に収めていた刀を引き抜く。
「やめ……っ……その顔で最期を……っ」
肉塊でありながら真っ青になってる様子の魘夢の残骸。
向けるならば幸せそうな顔ではなく、笑顔ではなく、怒りや憎しみを望むように懇願してくる。
「さようなら、悪夢に囚われた哀れな鬼いさん。」
だが、私はそんな懇願など気にすることなく穏やかな笑みだけを向けて刀を振るう。
「や……め……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
最後の断末魔をあげながら、残骸はこの場から消滅した。
「………ケジメをつけさせてくれてありがとよ。」
風に吹かれていく塵に対して、冷めた目を向けてぽつりと呟く。
これが、絶望に悦楽を感じていたお前の最期に相応しいよ。
「竈門少女!」
「あ……煉獄さん。」
最期を見届けて刀を納めていると、背後から煉獄さんの声が聞こえてきた。
振り返ってみれば、無傷の彼の姿がある。
「うむ。どうやら鬼を倒せたようだな! しかも無傷のままときたか! 感心感心!」
私の状態を見つめながら、煉獄さんがワハハと笑う。
鬼を倒したあとだというのに、随分と元気なことで……と思いながら、私は狐面を外した。
「む? 君のその痣はどうした! 此度の戦闘でできたもののようには見えないが!」
「まぁ、それは後程お話しするとして、まずは状況確認を……。乗客の皆さんは? 死傷者の数はどうですか?」
その際、私の痣について煉獄さんが言及してきたが、後程と返してはぐらかし、乗客の状況を確認する。
「おおそうだった! 共に戦った者に情報を共有しないのはよくないな! 乗客は皆無事だ! 怪我人は大勢だが命に別条はない! 君もよくやった、竈門少女! 疲れただろう? ゆっくりと休息を……」
煉獄さんはすぐに乗客の無事を教えてくれた。
死者は誰一人として出なかったらしい。
これでようやく一つ荷が降りた。
安堵の息を小さく吐く。
だが、すぐにドォンッという大きな音が辺りに響き渡ったことにより、一瞬の安堵は霧散する。
「……休息したいのは山々ですが、どうやらそうもいかないようですよ、煉獄さん。」
「うむ。そのようだな!」
静かに休息は取れないと告げれば、同意の言葉が返ってくる。
「……まだ行けるか、竈門少女!」
「ええ。大丈夫ですよ。」
自身の刀の柄に手をかけ、まだ戦えることを煉獄さんに返せば、彼は一瞬ニコリと笑う。
しかし、すぐに真剣な表情をしては、私と同じように刀の柄に手をかけて、警戒態勢を取った。
大きな物音がした方角に、砂埃が立ち込めている。
だが、しばらくすればそれは風に流れていき、やってきた存在の姿を明かす。
そこにいたのは十二鬼月・上弦の参……猗窩座。