目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
煉獄さんに並んで日輪刀に手をかけながら、現れた鬼、上弦の参である猗窩座を真っ直ぐと見据える。
「優緋ちゃん!?」
「今すげぇ音がしたぞ!! なんかあったのか!?」
「!? 馬鹿!! 来たら駄目だ!!」
しかし、大きな物音に気づいたらしい伊之助と善逸の声に、猗窩座から二人へと視線を移す。
が、すぐに猗窩座の匂いが勢いよく近寄ってくるのに気づいたため、手にしていた刀を振るう。
二人に猗窩座の攻撃が当たる前に、彼の腕を斬り飛ばすことができた。
「うお!?」
「え、ちょ、待って、この音……嫌ぁーーーー!? 十二鬼月ぃーーーーーー!? 明らかに音が違うんですけどぉ!?」
咄嗟に猗窩座の腕を斬り飛ばした私に、善逸たちは一瞬呆気にとられた様子だったが、すぐに状況を理解したようで、焦りを見せる。
善逸の場合は恐怖も感じる。
……しかし、まさか善逸がこの段階で目を覚ますとは思わなかった。
猗窩座の前に、無傷の私がいたからだろうか。
全く……うまい具合にできてるもんだ。
「流石だ竈門少女!」
「ありがとうございます。」
私の代わりに善逸か、と溜息を吐きたくなる中、煉獄さんから褒め言葉をもらう。
上弦の参である彼の腕を素早く斬り飛ばすのは、困難極まりないことだからだろう。
褒め言葉を素直に受け取りながら、私は猗窩座に目を向けた。
「………女でありながら一撃を止め、さらにはこの威力か。」
メキメキという音と共に腕を再生しながら猗窩座がこちらに目を向けてくる。
一瞬おたくそんな声だったの?意外と声高いな……なんて間抜けな感想が出てきたが、口にする前に黙り込む。
「女。お前の名はなんという?」
「………竈門優緋。階級はまだ下っ端の方の鬼狩りですが何か?」
「そうか、優緋というのか。」
彼の問いかけに素直に返答を返せば、彼はどことなく楽しげな笑みを浮かべては、私と煉獄さんを見据えてきた。
「……なぜ手負の者から狙うのか理解できない。」
そんな中静かに言葉を紡いだ煉獄さん。
口元には笑みを浮かべているが、声はひどく静かだった。
いつもの彼の声はひどく大きく、賑やか通り越して騒音とも取れそうな声なのに。
怪我をしている善逸たちを狙ったこと、それに対して怒っているのか軽蔑をしているのか……はたまたどちらともか。
いや、今は考える必要はない。
私は、煉獄さんと力を合わせてこの場を乗り越えるだけだ。
「話の邪魔になるかと思った。俺とお前たちの。」
……待て、なんかとんでもない認定をされた気がする。
「君と俺たちが何の話をする? 初対面だが俺はすでに君が嫌いだ。」
「……申し訳ないけど、私も彼と同意見。初対面だけどあんたのこと私も嫌いだ。」
明らかに知ってる展開じゃないと思いながら、煉獄さんの意見に同意することを告げる。
「そうか。俺も弱い人間が大嫌いだ。弱者を見ると虫唾が走る。」
その言葉に私は一瞬、猗窩座の最期を思い出す。
彼のこの台詞の根底にあるのは自己嫌悪だったはず。
しかし、人間の記憶を失ってしまってる今、弱い者が嫌いという認識しかできておらず、強さだけをひたすらに求めている。
「俺と君とでは物ごとの価値基準が違うようだ。」
「その強さの物差しって何に当ててる? 肉体の強さだけにか? だとしたら、この話はおしまいだな。多分、私の強さの物差しや価値基準は、隣の彼に寄っているから。」
そんなことを考えながら、煉獄さんと同じように、彼の価値観と自分の価値基準はどちらかと言えば違うと吐き捨てる。
確かに肉体の強さも必要だ。
一意見としては十分頷ける。
だけど、私は今の状態に至るまで、肉体の強さだけを頼りにしたわけじゃない。
記憶があったことも関係していたこと……それは否定しない。
だが、記憶だけじゃここには行きつかなかった。
何度も何度も苦しんで、修行中上手くいかない時はやっぱり無理なのかと挫折しそうにだってなった。
だけど私は諦めなかった。
全てはこのため、この時のために。
被害を最小に抑えながら、一旦この物語に区切りをつけるために。
区切りをつけた後はもっと私は迷うし苦しむだろう。
だって、最終的に目指してるものは、頂点に立つあの人だから。
そのためには精進しなくてはならない。
苦しみもがいて折れそうになって、それでも諦めず前に進むために。
この子の宝物を支えながらも歩いていくために。
それを成し遂げるためには肉体の強さだけに頼ることはできない。
精神の強さ……それも必要不可欠だ。
「そうか。では、素晴らしい提案をしよう。お前たちも鬼にならないか?」
「「ならない。」」
そこまで考えていたら、猗窩座が静かに言葉を紡ぐ。
私たち二人に、鬼にならないかと言ってきた。
私まで勧誘対象か……と一瞬思ったりしたが、女という存在としてではなく、剣士として見られたことに少しだけ安心する。
猗窩座の過去や最期を引っ張り出していた際に、あることを思い出したから。
それは、猗窩座という鬼は、鬼として長く生き続ける中、決して女を殺すことも喰らうこともしなかったと、童磨が言っていたことだ。
まぁ、女という認識のままだったとしても、その時はその時で対処するつもりだったし、むしろこちら側の可能性が高かったが、真っ向から挑めることがわかったから助かった。
とはいえ、鬼への勧誘は即答でお断りしたが。
「見れば解る。お前たちの強さ。お前、柱だな? その闘気、練り上げられている。
……女がそこに至ってちゃおかしいのかよこの野郎。
まぁ、どっかのにんじんさんに死に際に美しいとか言われて侮辱されたと捉えたアマゾネス姐さんのようにならなくて済んだからいいか。
今ならなんとなく解る気がするから、彼女の気持ち。
確かに私は女ですけど、は? 女だからって戦っちゃいけないんですか、は? ちょっとツラ貸してくれません?ってなりそうだったから。
何のために戦ってきたのかわからなくなるし、女だからって見逃されるとかちょっと癪に触るって感じだったし。
「……俺は炎柱、煉獄杏寿郎。」
脳内の怨敵に対して叫びながら殴った後、首に食らいつく狂戦士姐さんを浮かべていると、煉獄さんが自分の名前を猗窩座に告げる。
なんで告げたんだろって思ったけど、自分はお前なんて名前じゃないってのがあったのかね?
「俺は猗窩座。杏寿郎。優緋。なぜお前たちが
自分の名前を明かした猗窩座が、至高の領域に至れない理由を口にする。
何百年も鍛錬すれば、その分強くなれるのだと。
「「……………。」」
その言葉を聞いた私と煉獄さんは一瞬だけ互いの目を合わせる。
だが、すぐに小さく頷きあい、猗窩座に再び目を向けた。
「老いることも死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ。」
「悠久の時じゃ輝けないものがある。終わりがあるからこそ、美しく、そして眩く輝くものがある。人間は後者の輝きを持ち合わせている生き物の一つさ。だから堪らなく愛おしくて尊いんだよ。」
「強さという物は、肉体に対してのみ使う言葉じゃない。」
「強さにもいろいろある。それが合わさることにより、成し遂げられる未来があり、結末がある。」
「彼らは弱くない。」
「ちゃんとした強さを持ち合わせてるんだよ。内側に秘めていて見えないけれど、ちゃんとした未来を歩む力を宿してる。侮辱すんのはやめてくんない?」
「何度でも言おう。君と俺たちとでは価値基準が違う。」
「「俺は/私は、如何なる理由があろうとも鬼にはならない。」」
煉獄さんの言葉に繋げるように言葉を紡いだ私は、彼と同時に刀を構える。
「そうか。」
交渉決裂……そう判断した猗窩座は、血鬼術を発動させる。
“術式展開 破壊殺・羅針”
「鬼にならないなら殺す。此度は少しばかり信条も曲げるとしよう!」
強者と認定されたことにより、彼の標的は私にも向けられた。
ならばそれを討ち果たそう。
救いたいと私が願う、熱き炎の剣士と共に。
後書きという名の私なりの解釈と言い訳
猗窩座は女を殺すことも、喰らうこともしないですが、もし、女の身でありながらも煉獄さんに並ぶ強者がいたのであれば、強さを求める猗窩座ならその腕を認めて戦ってくれるのではと思い、このような展開にしました。
こんなの猗窩座じゃない、と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、一意見、一解釈として流していただけたらと思います。
個人の解釈は人それぞれです。解釈の不一致が存在するのも当然です。ご都合主義だなと思われるかもしれませんが、これが私の考えていたもしもの話です。
つな*様から優緋のイラストをいただきました!
素敵なイラスト、ありがとうございます!
【挿絵表示】