目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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09.鱗滝の課題。優緋の企み。

 炭治郎と禰豆子に向けて日記を書き続けながらの生活も一年経ち、私は十五歳から十六歳となった。

 

「もう、教えることはない。」

 

「……え?」

 

 ある日の昼下がり。

 私は鱗滝さんから一言、バッサリと切られるようなカタチで告げられる。

 それが意味するものは、物語がまた一つ進んだという事実だった。

 

「あとはお前次第だ。お前が、儂の教えたことを昇華できるかどうか。……最後の課題を与える。儂についてこい。」

 

「…………わかりました。」

 

 鱗滝さんに連れられて、私は狭霧山の奥の方へと足を運ぶ。

 相変わらず霧が深いこの山は、周りが全く見えないけれど、それ(・・)の存在感だけは、やけに目についていた。

 

「この岩を斬れたら、“最終選別”に行くのを許可する。」

 

「……岩を……ですか。」

 

 私が連れてこられたのは、しめ縄が巻きついている大きな岩がある拓けた場所。

 鱗滝さんは、その岩に触れながら、この岩を斬ることができれば全ての課題をクリアしたとみなすと言ってきた。

 少しだけ苦笑いを溢す。

 知ってはいたが、なかなかにでかい岩だ。

 軽くノックをするように岩を叩けば、それなりの痛みを感じることができた。

 

「岩は、本来刀で斬るものじゃない気がするんですが……まぁ、やってみますよ。いや、やり遂げて見せます。どれだけ時間がかかろうとも。」

 

 やれやれ、と軽く思う。

 なんともまぁ、初見で聞いたらおかしいんじゃないかって言いたくなるような内容だ。

 だが、鬼滅の刃の世界では、強い鬼とぶつかった時、最低限でもこれくらいは斬れないと鬼の頸を刎ねることなんてできない、

 全く……原作知識を持ち合わせていて正解だったよ本当、

 まぁ……ちょいとばかしチートな気もするけどな、

 

「やる気は十分のようだな。……一日で斬ることができないのは理解している。必ず、暗くなる前には帰ってくるように。何回も斬りつけていたら刃こぼれもするだろう。それがどれだけ危険なことか、お前もこれまでの修行で理解しているはずだ。ひどい刃こぼれが目立つようになる前には必ず儂の元へ戻れ。刃こぼれの修繕くらいは儂がしよう。」

 

 呆れていいのか喜んでいいのか……複雑な気持ちを抱きながらも、鱗滝さんの指示を了承するように頷けば、鱗滝さんは私に背を向けて、自宅の方へと戻っていった。

 

 ああ、もう教えてもらえないんだな、と少しばかり感傷に浸る。

 だが、すぐに頭を切り替えて、一旦岩があるこの場から立ち去る。

 これは必要なことだ。

 痣を出すまで、なんて高望みはしない。

 でも、多少なりともヒノカミ神楽こと日の呼吸の練度を上げるくらいは許されてもいいはずだ。

 なぜならこれは多くの人を救うため……パラレルワールドならではの、最小限の被害に抑えるという行動に必要不可欠な力なのだから。

 

「よっし。気合いを入れてやりますか!! 水の呼吸の練度も、ヒノカミ神楽の練度も、今できる最大まで上げてやる!!」

 

 まずは半年、水の呼吸とヒノカミ神楽の練度を上げることと、全集中の呼吸に必要な肺を作ること……それと、どれだけ呼吸を使っても、体が追いつくように、体力と身体能力の向上を始めるとしよう。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ……そう決意した半年前はとうの昔に過ぎ去った。

 私は、この期間の間、鱗滝さんに教えてもらったことを全て一から学び直し、どのようにすれば昇華できるかを考えながら、ヒノカミ神楽の練度と水の呼吸の練度をそれなりに上げた。

 岩が斬れるほどまでにはいかないかもしれないが。

 

 でも、私は至って冷静だった。

 何度も何度も繰り返し同じ修行を行い、何度も何度もヒノカミ神楽を舞い続けて、何度も何度も水の呼吸と型を繰り返し行っていた。

 

 炭治郎は確か、ここで焦っていた記憶がある。

 何回も岩を斬ることに挑戦しては玉砕しての繰り返しだから、しょうがないと言えばしょうがないけど。

 

「ふぅむ……やっぱりまだなんか足りない……? 水の呼吸……上手くできてないような気がする。……多分、ヒノカミ神楽の方ならいけるんだろうな……。あっちの方が呼吸としてはかなり楽だ。まぁ、それが私に適性した呼吸だからなんだろうけど……。でもあれ、意外と体力削るんだよな……。だから、できれば水の呼吸である程度体力は温存しつつ、任務を終えたあとにヒノカミ神楽の練度上げを行いたいところなんだけど。」

 

 うーん……と頭を悩ませる。

 どうやれば水の呼吸をものにできるのか……。

 

「何を悩んでいるんだ?」

 

 首を傾げながら刀を見つめていると、突如頭上の方から声が聞こえてきた。

 ん?と思いながら上を見上げてみると、そこには狐の面をつけた宍色の髪をした少年が一人……。

 

 いや、かじボイスの宍色髪の狐小僧なんてこの世界には一人しかいねぇわ!!

 

「………誰だあんた?」

 

「錆兎。それが俺の名前だ。お前は?」

 

「……竈門優緋。」

 

 ですよね、錆兎だぁあぁあぁあぁああ!!

 

 

 


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