目覚めたらまさかの竈門一家の一人で禰豆子となぜか炭治郎が鬼化していた件 作:時長凜祢@二次創作主力垢
炎の継子になって二ヶ月。
これはある日の非番のこと。
「君の弟たちは任せておくといい! 楽しんでこい!」
「ありがとうございます。行ってきます。」
炎柱邸の正門前。
私は、師範である煉獄さんに炭治郎たちを預けてある場所へと向かう。
「あ、優緋ちゃん! こっちこっち!」
その場所とは蝶屋敷の前。
炎柱の継子になってから、煉獄さんが持つ屋敷で過ごすことが多くなったから、少しだけ久々だ。
……なぜ、ここに来たのかというと、今日、鬼殺隊女性メンバーのみのお茶会が行われることになったためだ。
向かう先は恋柱邸。
甘露寺蜜璃の屋敷である。
「おはようございます。」
「おはよう、優緋ちゃん。胡蝶さんから聞いたよ。炎柱様の継子になったんだって?」
「はい。一緒に任務をこなした際、腕を見込まれて継子にならないかとお誘いを受けまして……。引き受けることにしました。」
「私も優緋さんの腕を見込んで継子に誘ったんですけどね……。どうも優緋さんに、花や蟲は合わなかったみたいなんです。」
「優緋ちゃん……すごい……。」
しのぶさんの説明を聞いて引きつった笑みを浮かべる尾崎さん。
そんな表情しなくても……と言いたくなったが、よくよく考えてみると、鬼殺隊に入って一年も経たず下弦の頚を二回も斬っていて、尚且つ柱と一緒とは言え上弦の参を迎え撃ち、継子にまでなってるってかなりの状態だな……。
尾崎さんの反応も頷ける……のか?
「あはは……驚きますよね……。私自身も驚いてます……。」
自身の状態を冷静に考えるとかなりのものであることを理解した私は、尾崎さんに苦笑いを返す。
尾崎さんはやっぱり優緋ちゃんも驚いてるのね、なんて言いながら苦笑いをしていた。
「柱の方でも、優緋さんの評価はかなり高いんですよ。殆どの柱の皆さんが優緋さんの活躍っぷりは耳にしていて、お手並み拝見したいと思ってるそうです。」
「殆ど?」
「はい。音柱の宇髄さんと、岩柱の悲鳴嶼さん、それと今から会うことになる恋柱の甘露寺さん、蛇柱の伊黒さんと、風柱の不死川さんの五人です。柱合会議の時はあのようになってしまいましたが、それはそれとして、皆さんしっかりと実力に関しては評価しますからね。その点に関しては文句なしと言ったところです。実際、伊黒さんや不死川さんもあれさえなければ素直に認められるんだがと言ってますし。」
……あれとは間違いなく炭治郎と禰豆子のことだろう。
やっぱり鬼に対しては不信感が抜けないらしい。
伊黒さんと不死川さんの二人以外は、素直に認めてくれてるのか……。
「なるほど……。ん? 柱って確か九人ですよね? 名前が挙げられたのは五人ですが……」
「あ、残りは私と冨岡さんと煉獄さんと時透君だけですので、名前は挙げませんでした。私と煉獄さんは優緋さんを継子に誘うくらいですし、炭治郎君と禰豆子さんのことも信じているので挙げる必要はありませんから。冨岡さんに至っては最初から除外してます。だって優緋さんと炭治郎君たちを見つけて、自身の師を紹介したくらいですし、挙げなくても大丈夫でしょう。時透君は何事にも関心が薄いので、よくわからないため挙げませんでした。」
「なるほど。」
不死川さんと伊黒さん、炭治郎たちのことを抜きにしたら、力を認めるくらいはしてくれるんだ、と思いながら、一部挙げられなかったメンバーのことを聞けば納得する理由が返ってきた。
うん、わからなくもない。
「あ、ですが冨岡さんはちょっと拗ね気味な気がしますね。一緒の任務につくことが何回かありましたが、無愛想さにさらに拍車がかかってました。」
「え?」
「ひょっとしたら、妹弟子が煉獄さんの継子になってしまったのが気に入らなかったのかも知れませんね。」
嫌なら最初から水柱の継子にしておけば良かったのにと思いません?と笑って聞いてくるしのぶさん。
私は苦笑いをするしかできなかった。
なんかすみません……と思ってしまったのは仕方ない。
だって、義勇は自分は水柱に相応しくないって思ってるからな。
原作と同じ考えなら、炭治郎ポジにいた妹弟子である私に、水の呼吸を極めたのち、水柱になって欲しいと考えていただろう。
だけど、私が日の呼吸と炎の呼吸を極め始めちゃったから……うん。
怒っていてもおかしくない気がする。
「………なんか、彼に悪いことした気がする……。」
「はい?」
「……こっちの話です。」
……これ……いずれ謝罪した方が良さげ?
なんか、今になってちょっと罪悪感が………。
でも、私の体に合ってないんだよな、水………。
うーん……と頭を悩ます。
義勇に……なんで説明したらいいんだろう………。
「あ、着きましたよ。」
「ん?」
「ここが……恋柱のお屋敷……。」
「………。」
考え込みながら歩いていると、しのぶさんから声がかかる。
顔を上げれば大きな屋敷。
蜂蜜の甘い香りがする。
「あ、しのぶちゃん! 尾崎ちゃん! カナヲちゃんに優緋ちゃんも! ようこそ我が家へ!!」
しのぶさんについて行く形で足を進めていると、甘露寺さんが手を振りながら私たちの名前を呼ぶ。
「こんにちは、お久しぶりです。」
「うん、久しぶりね! あ、でもまともな自己紹介はしてないわね! 私は甘露寺蜜璃。蜜璃って呼んで欲しいな。」
「竈門優緋です。よろしくお願いします、蜜璃さん。」
「さん付けも敬語もいらないわよ? だって優緋ちゃん、煉獄さんの継子になったんでしょ? だったら私たち姉妹弟子だもの! だから普通に話してくれて大丈夫よ!」
「そ、そう? じゃあ……蜜璃……ちゃん……」
「うん!(ちょっとだけ照れちゃってる優緋ちゃん、可愛いわ!)」
ち、近づいたのはいいけど、視線がちょっとあらぬところに行ってしまう!!と思いながら、必死に彼女の胸元から目を逸らして名前を呼べば、満面の笑顔を向けられた。
……あのゲス眼鏡……なんつー服を蜜璃ちゃんに渡してんだよほんと。
同性の身であっても照れるんですが!!と少しだけこの制服隊服を渡した隠にツッコミを入れる。
「私も最初はこの隊服を支給されましたよ。すぐ目の前で燃やしてやりましたが。カナヲのところにももちろん届きました。燃やしてやりましたけど。優緋さんのところには行かなかったんですか?」
ゲス眼鏡に対しての文句を内心で言っていると、しのぶさんから質問される。
……燃やしてやりましたって二回言ったよなしのぶさん。
「はい。私のところには届きませんでしたね。育手が鱗滝さんだったからでしょうか……。」
「あ、それはあり得そうですね。冨岡さん曰く、鱗滝さんはとても厳しい方みたいですし。」
「そうですね。確かに鱗滝さんは厳しい方です。」
変な隊服が届かなかった理由をしのぶさんと考え、出てきた答えに納得する。
うん。
鱗滝さんみたいな育手の元にいる隊員に、ドスケベ隊服持っていけないよな。
「ねぇ、しのぶちゃん。優緋ちゃん。立ち話もいいけど、せっかくだからお茶を飲みながらゆっくり話しましょう? せっかく女の子同士で集まってるし!」
冷静にしのぶさんと話していると、蜜璃ちゃんが笑顔で声をかけて来た。
私たちは顔を見合わせた後小さく頷く。
それもそうかと思いながら。
「今日のお茶菓子はパンケーキなの! 焼きたてのパンケーキにバターと屋敷で作った蜂蜜を乗せて食べるんだけどこれがとても美味しくてね? 是非ともみんなにも食べて欲しいの! あったかい紅茶も淹れるから、ゆっくりと話しましょう!」
……大正時代にパンケーキ?とちょっと思ったけど、そういえばこの時代は洋食文化もそれなりに入って来てるから、なんら違和感はないんだった。
パンケーキは私も好きだったから、少しだけ楽しみだ。