顔をあげて前を向いて   作:サルスベリ

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 他の作品が詰まったとか、色々なことを考えて発散したかったとかじゃなくて、仕事上のむしゃくしゃをぶつけたかった。
 
 たったそれだけで始まった、絶望の底の中での馬鹿騒ぎのお話です。









彼女の始まりの話

 

 

 

 

 

 彼女の始まりは、無菌室の中だった。

 

 生まれたときから体が弱くて、病原菌に対して抵抗力がないからと、ずっと無菌室の中で育っていた。

 

 両親の顔は見たことがない。一度も会ったことがないから、きっとこんな自分を嫌っているのだろう。でも、治療が続いているのだから嫌ってはいるが捨てることはないらしい。

 

 何度も痛い思いをして。

 

 何度も苦しい思いをして。

 

 どうにか年月を過ごして、やっと毎日を生きてきて。

 

 やっと普通の生活が送れると言われた。

 

 もう外の世界に出てもいいと保証してくれたのに。

 

 緊張して歩き出した一歩で足を滑らせて、あっと思う間もなく闇の中に落ちて行った。

 

 そこで出会ったのは綺麗な男の人だった。神様と名乗った男の人は、とても丁寧な口調で話しかけてきた。

 

『二度目の人生を上げる』

 

 彼女は、思わず飛び付いた。もっと生きたい、もっとやりたいことがあった、もっともっとと願っていた彼女は神と名乗った男の提案に乗って。

 

『ああ、いい玩具が手に入った』

 

 絶望に落とされた。ケタケタと笑う男は、そのまま右手を振るって、足元に穴が開いて落ちそうになった時。

 

 男の顔が潰れて消えた。

 

「まったく、なんでこう創造神って人間を転生して遊ぼうって奴ばかりなんだろうな。他にやることなんていくらでもあるだろうに」

 

 神と名乗った男を潰したのは、紫色の瞳をした青年だった。

 

「うわぁ~転生システムが動いている。途中介入はできないか、途中で止めたら君の魂が壊れるな。世界は? おいおいあんなところに女の子を送るなんて、よっぽどの性悪だな」

 

 青年は呆れたような顔をした後、こちらを見てきて。

 

「転生特典の追加も無理か。って、転生特典もつけてないのかよ。本当にまったく・・・お、データを挟む余裕はありそうだな」

 

 あの、と話しかけた時、青年は膝を折って目線を合わせてくれた。

 

「いいか? 君がいく世界はとても厳しくて辛い世界だから、気をしっかり持って」

 

 そんなこと言われても。

 

「まあ、難易度ルナティック・ナイトメアで、これ以下の最悪はないけど、その分、全体の容量が余っているから、色々と挟める」

 

 何の話をされているか解らないまま、意識がスッと溶けていく。

 

「転生システムが動き出した。まあ、そうだな」

 

 青年は、とても意地悪そうな顔で笑った。嫌じゃない、これってきっと。

 

「俺が知る限り、最高で最強の艦娘をお供につけてやるよ。後、俺の近衛騎士も貸してやるから。本当は騎士団ごと貸したかったけど、それは無理そうなんでね」

 

 この笑顔はきっと、『悪戯っ子』の笑顔だから。

 

「あっちで俺の艦娘とよろしく」

 

 名前を教えてと、薄れる意識の中で少女が願った。

 

「俺? 俺の名前は、テラ・エーテル。『神帝』なんて言われているけど、まあ簡単に言えば、破壊神だよ」

 

 歌うような気楽さで、彼は自分の名前を名乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事に転生したな。よしよし、座標点に近衛騎士は出たな。後は、艦娘だけど。ゲ、近衛騎士を入れたから容量が足りないって。うわぁ~~考えなしだったかな。仕方ない、俺の最強の二隻にしてやろう。これで何とか頑張ってくれ」

 

 『四宮かぐや』ちゃん。

 

 テラは笑顔で彼女の名前を告げたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、私は」

 

 かぐやが目を覚ましたのは、壊れた廃墟の中だった。

 

 体を起こして苦しくないことを知り、立ち上がって立てることに喜び、けれど転生前の記憶を思い出して気合を入れて気を引き締めて。

 

 周りを見回して固まってしまった。

 

 白い楯に白い鎧。赤い十字架を掲げた機械の騎士たちが、片膝をついて自分の周りを囲んでいた。

 

「レッド・ミラージュ?」

 

 物語を見たことがある、この騎士は知っている。最強の幻影、確かミラージュ騎士団の機体だったはずだ。

 

「目が覚めましたか?」

 

「初めましてとご挨拶してもいいかしら、提督?」

 

 声にかぐやが振り返ると、中学生と小学生くらいの少女たちが立っていた。

 

「初めまして、吹雪です」

 

 元気に笑顔で答える少女と。

 

「お初にお目にかかります、暁と申します」

 

 まるで淑女のように一礼する少女。

 

「え、あの、え」

 

「名前を教えて貰えますか、提督?」

 

「私達は名乗ったのだから、返すのが礼儀だと思うわよ?」

 

「あ、うん、そうだよね。私は、四宮かぐやっていいます」

 

 黒髪と赤い瞳の少女はそう名乗った。

 

 これが後の世界において、『地球帝国の女帝』と、その双璧となった艦娘達。そして彼女の絶対的な近衛騎士が出会った瞬間でした。

 

 

 

「ところでここ、何処?」

 

「南海の孤島ですよ、提督!」

 

「ほぼ無人島で周り中敵地だけれどね」

 

「え? 敵地なの?!」

 

 驚いて声を上げる彼女の叫びに釣られるように、空から爆弾が落ちてきましたとさ。

 

「敵地だって言ったでしょうが」

 

「いきなりのお祭りだね」

 

「ご、ごめんなさい」

 

 いきなり一万隻の深海棲艦に襲われるって、そんな波乱の始まりだったのはいい思い出らしいです。

 

 

 

 

 

 







 人類が敗北した世界で、女主人公が巻き返しを図る物語を夢想してしまって、これは書くしかないと思った次第です。

 のんびりゆっくり更新か、不定期更新ですが、頑張ります。


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