ゴボッ…。
そのような音と共に意識が覚醒し目に光が差し込んだ。
視界には淡い緑色の液体で満たされており時折気泡が浮かんでいる。
ぼやけた意識が完全に覚醒すると同時、その水が排水され地に足がつく。
「おっとっと…ふむ、筋力はちゃんとあるようだ」
足に巻かれていた電極が取り外されながら中で浮かんでいた高校生ほどの青年が足をぐるぐるしながら口についていたマスクを外す。
アームで届けられたタオルで体を噴きながら渡された服を着る。
「『ドライブ』現在の日時は?」
彼がドライブと呼ぶとディスプレイの付いたアームが出てきて画面を表示する。
『現在はXX年の1月X日です』
「…何? XX年? 想定より8年も遅い。時間設定をミスったか」
その青年は頭をがしがしと搔きながら息を吐く。彼はラボのような空間にあるテーブルの上に置いてある少し古い携帯を手に取りどこかへ電話をかける。
「約10年…彼女は24歳か…待たせてしまったな。変わってないといいのだが」
電話は問題なく通信状態になりどこかへと繋がる。すると不機嫌と言った声色を隠さないといった女性の声が電話口から響いた。
「…誰、なんでこの番号を知っているのか分からないけどすぐに突き止めて…」
「久し振りだね、束。10年も経てば忘れてしまったかい?」
「…………嘘」
カツンという音と共に何かが落ちる音がして電話口から絞り出すような声が聞こえた。手に何か工具か何かを持っていたようだ。
「嘘…嘘…だって…だって…っ!」
「予定では2年で目覚めるはずだったんだがね。遅くなって済まない」
バタバタという走る音と何かの起動音、そして風を切るような音が聞こえた。その間束はずっと動揺した声を発していた。時間にして約3分、束にかかれば壁にすらならないセキュリティで閉ざされていたはずのエレベーターが起動し、扉が開くと同時に一人の女性が現れた。
「…綺麗になったね、束」
「…くり、む……クリムゥッ!!!!」
女性、束はその青年。クリム・スタインベルトにふらふらと歩きだすが次第に走り出しクリムに抱き着く。
「だいぶ若くなったんだが…分かるのかい?」
「忘れるわけないっ! 分からないわけないっ! ずっと! ずっと!ずっと! 10年間…ずっと苦しかった…っ!」
クリムの胸に顔を押し付け泣きながら腰に回した手に力を籠める。クリムは背中に手を回しながらもとんとんとあやすかのように背中を叩いた。
高校生ほどに見えるこの青年の名はクリム・スタインベルト、研究所でテロリストと共に自爆したその人本人と細胞がほぼ変わらず同じ存在である。彼は25年前に本人の細胞から作られたクローン人間だ。15歳の姿で固定しており知識、記憶などは本体が死ぬ直前までリンクしている。『スワンプマン』と言ったら分かる人には分かるであろう。
束が泣き止み、束がクリムにくっつきながらも情報のすり合わせをする。
「…なるほど、今はそんなことになっていたんだね」
「うん、おかげで今私は指名手配犯」
「なるほど…元々の予定としては君と同世代になってサポートする予定だったのだが…今の歳だと一夏くんと同い年ぐらいか…」
「だったらIS学園に行ってみない?」
「IS学園?」
聞くと束が開発したISの操縦者を育成する学園らしい。10年ほどでそのような学園が出来るとは驚きだな。束は専用のISを作ろうかと目をキラキラさせるが私は手をとある方向に向ける。そこには赤と白と黒で構成されたものがあった、部分ごとに見ると車のパーツのような雰囲気を感じるが一見すればそこには『IS』がそこに存在した。
「え、なにあれ!?」
「私がISを見て開発した『AI搭載型高機動マルチスーツ ドライブ』だよ」
「……んー、確かに少しISとは少し違うね。あ、これもしかしてここのコア変えると性能まで変わるのかなこれ。空中もいけるけど陸上特化型だね。タイヤも付いてて本当に車みたい」
実際車をモチーフにした機体だ。フォームチェンジが特徴的で大きく分けると通常の『IS型』屋内での戦闘を目的とした『
「基本的には『ドライブ』と呼んでくれ」
『よろしくお願いいたします』
「ずっと前から作ってたんだ、ならIS学園に入れるね。今はちょっと面倒な状況だからこうして…」
「新しい男性操縦者が見つかった…」
織斑千冬はその男性操縦者がいるという面会室へと向かっていた。
相手は織斑千冬との会話を望んでおり他の人には目に入らないようにしてほしいとのこと。
「おまけに束が後見人…面倒ごとの予感しかしないな…」
この男も何者だ…と面会室に到着し、山田真耶を下がらドアを開けて入った。
中には簡素な机と椅子が二客だけ置かれており奥の椅子には一夏と同い年ぐらいの青年が座っており柔らかな笑みを浮かべている。千冬は警戒しながら椅子に座った。底知れぬ雰囲気に少し君の悪さを感じながらも手にあるろくに何も書いていない資料を眺めながら問いかける。
「…まず、君の名前を聞かせてもらえるか」
「…クリス、クリス・スタインベルトという」
「…っ」
ピクリ、と千冬の眉が動いた。
「それは本名か?」
「いや、本名はクリム・スタインベルトだ」
「-ッ!」
その瞬間、千冬はクリムの胸ぐらをつかみ上げた。その名前は千冬にとって家族と言っても差し支えのない恩師の名前だった。容姿は似てはいるがどう見ても一夏と同じほどの年齢、恩師に子供がいたとも親族にもこのような子はいなかった。ならこいつはなんだ、何が目的だ。束は何を企んでいる。
胸ぐらを掴まれたクリムは特に慌てる様子も見せずにその手を軽くつかむ。
「流石にすぐには信じられないだろう、千冬くん。君の…」
「黙れ…! 何者かは知らないな先生の真似を…!」
「『君の長所は家族のことを大切に思えることだ、だが家族は一人だけではない。束も…私もだ』」
「…え?」
そのセリフは今でも思い出せる。中学生の時、家族のことで揶揄されて落ち込んでいた私に先生がかけてくれた言葉だ。一夏以外全て敵だと思えた時も先生が亡くなってしまった時もこの言葉を思い出して束や周りの人と頑張った、おかげで今の私がある。先まで連絡を取ろうとしていた束にはいまだに忙しいのか返信がないがもしかして…。
そう思うと同時、私の目から涙があふれた。その瞬間、私はもう気づいてしまったのだと思う。彼が、先生が何故か若い姿になり私の目の前にいる。
「なんで…先生が…」
「詳しい事情は今から話そう、10年振りの会話を楽しもうじゃないか」
「…はいっ!」
しばらくの間、面会室には楽しげな声が聞こえた。
それから約3か月後、入学式が終わって少し経った頃 学年別タッグトーナメントが終わった頃。副担任の山田真耶が気まずそうに言った。
「え、えっと…て、転校生が来まーす…」
ざわつく教室、合宿や夏休みすら始まるこの時期に転校してくる。どうみてもおかしい。
更に教室に入ってくる生徒にさらに驚く。
シャルのように中性的でもなく男性的な身体と容姿を持ち、銀フレームの眼鏡をかけた青年は自己紹介を始めた。
「クリス・スタインベルトだ、二人目の男性操縦者としてよろしく頼むよ」
その瞬間、教室に黄色い歓声が飛んだ。
出来ました、この後は1~2話挟んだ後合宿編に行きます。
入学式からだと長くなるなって思いましたので